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答申第201号

2019年9月9日

ページ番号:622717

大個審答申第201
令和6年3月29

大阪市長 横山 英幸 様

大阪市個人情報保護審議会
会長 金井 美智子

答申書

 大阪市個人情報の保護に関する法律の施行等に関する条例(令和5年大阪市条例第5号)附則第3項の規定によりなお従前の例によることとされた同条例による改正前の大阪市個人情報保護条例(平成7年大阪市条例第11号。以下「旧条例」という。)第45条に基づき、大阪市長(以下「実施機関」という。)から令和4年7月6日付け大健こ第161号により諮問のありました件について、次のとおり答申いたします。

第1 審議会の結論
 実施機関が令和4年5月25日付け大健こ第61号により行った部分開示決定(以下「本件決定」という。)で開示しないこととした部分(以下「本件非開示部分」という。)のうち、別表1に掲げる部分を開示すべきであり、別表2に掲げる情報を改めて特定した上で、開示決定等すべきであり、その余の部分は妥当である。

第2 審査請求に至る経過
1 開示請求
 審査請求人は、令和4年5月11日、旧条例第17条第1項に基づき、実施機関に対し、「20162017年の、私の訪問看護に関する情報の全て」を求める開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 本件決定
 実施機関は、本件請求に係る保有個人情報を、「自立支援医療(精神通院)にかかる訪問看護療養明細書(平成29年2月分 平成29年7月審査分)」(以下「本件情報」という。)と特定した上で、旧条例第23条第1項に基づき、「(1)心身の状態(2)提供した情報の概要」を開示しない理由を次のとおり付して、本件決定を行った。

旧条例第19条第3号に該当
(説明)
 「心身の状態」「提供した情報の概要」は訪問看護ステーションが行う事務に関する情報であって、個人の評価、診断、判定に係る事務に関し、開示することにより、訪問看護ステーションの事業運営が損なわれるおそれがあり、かつ同号ただし書にも該当しないため。
3 審査請求
 審査請求人は、令和4年6月6日に本件決定を不服として、実施機関に対して、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。

第3 審査請求人の主張
 
審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
1 審査請求の趣旨
 部分開示の決定を取り消し全ての開示の決定を求める。
2 審査請求の理由
 旧条例第19条第3号ただし書に大いに該当する(開示することにより訪看ステーションの~損なわれるおそれがあるなら信頼関係は無いということだ)
 また、そのステーションは二度と利用しない(事務所も閉業したもよう)
・当人の年金受給(資格取得)理由は、それが精神科にカテゴライズされることや疾病と扱われることの正誤とは別に現制度上の解釈に合わせて述べるとすると、完治するものではなく(失われた脳神経は復元・再生されない)ということは、例え「保存期限」が何年であろうと「完治してから」である以上、不存在は本人が生存している限り、あり得ない。
・また、レセプトのそれが5年なのに伴う関係書類は3年というのも考えられない(審査ができない)
・縦しんば、それらが切れていて処分するにしてもそれなりの手続き(決裁)があるのに、そこら辺の説明が担当者(健康局)のA職員は「期限は3年」を繰り返すのみ
・さらには、その「3年」の根拠をどの部署(総務局(B・女性 文書Gへ行ったがどこからか現れた)、政策企画室広聴(C課長代理以下数名)、健康局(前述のDにEという情開担当他)の職員も明示しない
 特に健康局総務課と思われる部署のDという職員は、数年に及んで訪看の担当局をはぐらかし続け、今回の請求についても、福祉局、しかも船場(運営指導課)と言い、更に「ちがうかもしれないから電話で確認して」と言ってきた。(ならばさきほど30分にも及んで貴殿(D)はいったいどこに電話していたのかとつっこまざるを得ない不誠実さ)
・開示された文書も、文字が潰れて解読できない物を1枚だった(その理由も「送られてきた物」と先方(送付元)に原因があるとの物言いだった(ならば送り直させるのではないか))

第4 実施機関の主張
 
実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。
1 本件情報において非開示とした情報について
 本件情報は、訪問看護療養費及び公費負担医療に関する費用の請求に関する費用の請求に関する省令(平成4年厚生省令第5号)第2条の規定に基づき厚生労働大臣が定めた様式で、訪問看護ステーションが利用者にサービスを提供した報酬として訪問看護療養費を請求する際、訪問看護ステーションが保険者に請求するものである。また、本件情報には、訪問看護療養費を請求するために必要な情報(公費負担者番号、利用者氏名、生年月日、訪問した住所、訪問日等)が記載されており、処分庁が本件情報において開示しないこととした情報は、「心身の状態」及び「提供した情報の概要」である。
2 本件情報に対して本件決定を行った理由
 本件非開示部分については、訪問看護を行った日時や訪問場所等の客観的な事実ではなく、訪問看護ステーションが主観的な見解に基づき作成した部分であり、開示することで審査請求人の解釈によっては不快に感じる可能性を排除することができず、訪問看護ステーションと審査請求人の間にトラブルを招く恐れも否定できないことから訪問看護ステーションの事業運営が損なわれるおそれがあると考えられ、本市が開示するという判断を行うことは困難であったため本件決定を行った。
3 審査請求人の主張について
 審査請求人は3号ただし書に該当すると主張しているが、当該情報を開示することにより得られる審査請求人の生命、身体、健康、生活又は財産の保護という公益が優越するとは考えられないため、該当しないと考える。
 また、審査請求人は「二度と使わない、事務所も閉業したもよう」と述べているが、本決定に際し審査請求人が今後利用を行うか否かということは、開示するかどうかという判断に影響を与えるものではなく、当該事務所が閉業しているとはいえ、運営会社は現在も訪問看護ステーションを運営していることから、本件決定は妥当であると考える。
 次に文書の保存期限について、審査請求人は「レセプトのそれが5年なのに伴う関係書類は3年というのも考えられない」と主張しているが、大阪市公文書管理条例第6条に基づき、定められた公文書の保存期間を遵守しているもので、審査請求人の主張に応えることはできない。
 最後に文字がつぶれて読めないものを送りなおさせていないとの主張であるが、こちらに保管しているデータのサイズがA4サイズであったため、拡大等せずに印刷し提供したものである。また、提供後に審査請求人から文字がつぶれて読めないとの申出があったため、A3に拡大したものを後日提供している。

第5 審議会の判断
1 基本的な考え方
 旧条例の基本的な理念は、第1条が定めるように、市民に実施機関が保有する個人情報の開示、訂正及び利用停止を求める具体的な権利を保障し、個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項を定めることによって、市民の基本的人権を擁護し、市政の適正かつ円滑な運営を図ることにある。したがって、旧条例の解釈及び運用は、第3条が明記するように、個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する市民の権利を十分に尊重する見地から行わなければならない。
 しかしながら、旧条例は、すべての保有個人情報の開示を義務づけているわけではなく、第19条本文において、開示請求に係る保有個人情報に同条各号のいずれかに該当する情報が含まれている場合は、実施機関の開示義務を免除している。もちろん、第19条各号が定める非開示情報のいずれかに該当するか否かの具体的判断に当たっては、当該各号の定めの趣旨を十分に考慮するとともに、当該保有個人情報の取扱いの経過や収集目的などをも勘案しつつ、旧条例の上記理念に照らして市民の権利を十分に尊重する見地から、厳正になされなければならないことはいうまでもない。
2 争点
 実施機関は、本件非開示部分について、旧条例第19条第3号を理由に非開示としたのに対し、審査請求人は、旧条例第19条第3号には該当しないため開示すべきであるとして争っている。
 また、審査請求人は、本件決定において特定した情報の他にも特定すべき情報があるはずだと主張しているのに対し、実施機関は、本件決定において特定した情報以外に特定すべき保有個人情報は存在しないと主張して争っている。
 したがって、本件審査請求の争点は本件非開示部分が旧条例第19条第3号に該当するか否か及び本件決定において特定した情報以外に特定すべき保有個人情報が存在するか否かである。
3 本件決定の妥当性について
(1) 本件非開示部分の旧条例第19条第3号該当性について
ア 旧条例第19条第3号について
 条例第19条第3号本文は、法人その他の団体(以下「法人等」という。)や事業を営む個人の事業活動や正当な競争は社会的に尊重されるべきであるとの理念のもとに、「法人等に関する情報又は開示請求者以外の事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、開示することにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」は、原則として開示しないことができると規定している。
 そして、この「権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」とは、()法人等又は事業を営む個人(以下「法人等の事業者」という。)が保有する生産技術上又は販売上の情報であって、開示することにより、当該法人等の事業者の事業活動が損なわれるおそれがあるもの、()経営方針、経理、人事等の事業活動を行う上での内部管理に属する事項に関する情報であって、開示することにより、法人等の事業者の事業運営が損なわれるおそれがあるもの、()その他開示することにより、法人等の事業者の名誉、社会的評価、社会的活動の自由等が損なわれるおそれがあるものがこれに当たると解される。
イ 本件非開示部分の条例第19条第3号該当性について
 本件対象情報は、審査請求人が利用した訪問看護ステーションが作成し、実施機関に提出した自立支援医療(精神通院)にかかる訪問看護療養明細書であり、本件非開示部分は、同明細書の「心身の状態」欄及び「提供した情報の概要」欄に当該訪問看護ステーションが記載した内容である。
 当審議会において、本件非開示部分を見分したところ、本件非開示部分は、訪問看護ステーションが主観的な見解に基づき作成した部分であることが認められる。そして、本件非開示部分のうち別表1に掲げる部分を除く部分については、これを審査請求人に開示することで審査請求人が不快に感じ、当該訪問看護ステーションと審査請求人との間にトラブルを招き、当該訪問看護ステーションの事業運営が損なわれ、もって、その正当な利益を害するおそれがあると認められることから、旧条例第19条第3号本文に該当し、かつ、その内容から同号ただし書にも該当しない。
 他方、当審議会において見分したところ、本件非開示部分のうち別表1の項番1に掲げる部分に記載されている情報は、本件対象情報において開示されている情報が記載されているものであると認められ、本件非開示部分のうち別表1の項番2に掲げる部分に記載されている情報は、一般的な内容であり、当該訪問看護ステーションの主観的な見解を記載したものとは認められない。したがって、これらを開示したとしても、当該訪問看護ステーションと審査請求人との間にトラブルを招くなどして、その正当な利益を害するおそれがあるものとは認められないから、これらの部分は、旧条例第19条第3号には該当しない。
(2) 本件決定において特定した情報以外に特定すべき保有個人情報が存在するか
ア 保有個人情報の存否を検討する範囲について
 実施機関は、審査請求人の「20162017年の私の訪問看護に関する情報の全て」の開示を求める請求に対して、実施機関は、健康局健康推進部こころの健康センターの所管業務に係る保有個人情報について本件決定を行ったほか、天王寺区役所保健福祉課及び福祉局総務部総務課(総務グループ)において、それぞれの所管業務に係る保有個人情報については、不存在であるとして非開示決定を行っている。これに対して、審査請求人は、本件決定についてのみ審査請求を行っており、天王寺区役所及び福祉局の所管業務に係る非開示決定については争っていないことから、本件審査請求においては、実施機関の健康局健康推進部こころの健康センターの所管業務に係る保有個人情報について、本件決定において特定した情報以外に特定すべき保有個人情報が存在するかを検討することとする。
イ 本件決定において特定した情報以外に特定すべき保有個人情報が存在するか
 事務局職員をして、実施機関に確認させたところ、次のとおりであった。
・健康局健康推進部こころの健康センター(以下「センター」という。)は、請求人の訪問看護ステーションの利用に係る事務のうち、自立支援医療費に関する事務を行っている。
・センターは、当該事務に関して、公費請求内訳書、連名簿、診療報酬明細書の写し、精算報告書、請求書の5つの書類を取得するが、このうち、連名簿と診療報酬明細書の写しには審査請求人を含む自立支援利用の利用者の個人情報が記載されているが、他の文書には個人情報は記載されていない。
・本件請求を受けて、診療報酬明細書は開示請求の対象となっているものとして、特定したが、連名簿については、公費請求のために、いわば、根拠書類である診療報酬明細書の目次として作成されたものであり、その記載内容は、根拠書類である診療報酬明細書の転記したものに過ぎないから、公費請求に当たっての根拠資料として作成されたものであり、訪問看護に関して作成された書類ではないものと判断し、対象情報として特定しなかった。
・連名簿のデータは、総合福祉システムに取り込み、保管される。
 そして、当審議会において、連名簿を見分したところ、診療報酬明細書に記載されている情報の一部が転記されていた。
 したがって、仮に実施機関の主張するように連名簿と診療報酬明細書はその利用目的が異なるものであって、また連名簿が診療報酬明細書のデータを単に抜き出して転記したものであったとしても、そのことをもって、診療報酬明細書と同一視できるものではなく、それぞれが別個の保有個人情報であることは明らかであるから、実施機関は、本件請求に対して、連名簿のうち、審査請求人に係るデータが含まれるものについて、対象情報として特定すべきであった。
 また、連名簿のデータは、総合福祉システムに取り込まれて、同システム内で保管されるとのことであるから、連名簿と同様に同システム内のデータのうち、審査請求人の訪問看護ステーションの利用に係る自立支援医療費の支出に関するデータについては、対象情報として特定すべきであった。
4 結論
 したがって、第1記載のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
委員 野呂 充、委員 小林 邦子、委員 篠原 永明、委員 矢口 智春

別表1及び2

(参考)調査審議の経過 令和4年度諮問受理第 9 号

答申第201号

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