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答申第204号

2019年9月9日

ページ番号:622720

大個審答申第204
令和6年3月29

大阪市長 横山 英幸 様

大阪市個人情報保護審議会
会長 金井 美智子

答申書

 大阪市個人情報の保護に関する法律の施行等に関する条例(令和5年大阪市条例第5号)附則第3項の規定によりなお従前の例によることとされた同条例による改正前の大阪市個人情報保護条例(平成7年大阪市条例第11号。以下「旧条例」という。)第45条に基づき、大阪市長(以下「実施機関」という。)から令和4年8月30日付け大総務第e-21号及び同日付け総務第e-22号により諮問のありました件について、次のとおり答申いたします。

第1 審議会の結論
 実施機関が令和4年5月20日付け大消救第99号により行った部分開示決定(以下「本件決定1」という。)は妥当であるが、実施機関が同日付け大消救第100号により行った部分開示決定(以下「本件決定2」という。)を取り消し、非開示とした部分を開示すべきである。

第2 審査請求に至る経過
1 開示請求
 審査請求人は、令和4年5月6日、旧条例第17条第1項に基づき、実施機関に対し、「令和3年1223日 私の救急活動記録」を求める開示請求(以下「本件請求1」という。)を行った。
 また、審査請求人は、令和4年5月11日、旧条例第17条第1項に基づき、実施機関に対し、「2021年11月15日18:00頃 平野消防署 救急隊が出動した際の救急活動記録 私 ○○○○の分」を求める開示請求(以下「本件請求2」という。)を行った。
2 本件各決定
 実施機関は、本件請求1に係る保有個人情報を「請求者に係る令和3年1223日の救急活動記録」(以下「本件情報1」という。)と、本件請求2に係る保有個人情報を「請求者に係る令和3年1115日の救急活動記録」(以下「本件情報2」という。)とそれぞれ特定した上で、旧条例第23条第1項に基づき、「警察官の氏」を開示しない理由を次のとおり付して、本件請求1に対して本件決定1を、本件請求2に対して本件決定2(以下本件決定1及び本件決定2を総称して「本件各決定」という。)を、それぞれ行った。

旧条例第19条第2号に該当
(説明)
 警察官の氏は、開示請求者以外の個人に関する情報であって、当該情報そのものにより、開示請求者以外の特定の個人を識別することができるものであり、かつ、同号ただし書ア、イ、ウのいずれにも該当しないため。
3 審査請求
 審査請求人は、令和4年7月13日に本件各決定を不服として、実施機関に対して、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。

第3 審査請求人の主張
 審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
1 審査請求の趣旨
 警察官の氏名を開示してすべてを開示決定してほしい。
2 審査請求の理由
 2021年1115日の事故では取扱者カードが発行されていて、警察官(ママ)氏を知っていますが、20211223日の事故では取扱者カードをもらっていないので取扱者カードがあれば知り得る情報なので開示をお願いしたいです。

第4 実施機関の主張
 実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。
1 本件各決定について
 実施機関では、消防部隊が出場した救急事案に係る警防活動の実施結果として、その救急事案の詳細について、救急活動記録を災害から帰署(所)した後に速やかに作成している。
 本件情報1は、令和3年1223日に大阪市平野区発生場所の行政区を管轄する平野消防署の職員が、本件事案出場に係り救急活動記録を作成したものであるが、実施機関は、本件情報1を請求日時点において実施機関が保有する本件請求内容に関わる公文書と特定し、本件決定1を行ったものである。
 本件情報2は、令和3年1115日に大阪市平野区発生場所の行政区を管轄する平野消防署の職員が、本件事案出場に係り救急活動記録報告を作成したものであるが、実施機関は、本件情報2を請求日時点において実施機関が保有する本件請求内容に関わる公文書と特定し、本件決定2を行ったものである。
2 本件各決定において非開示とした情報について
 本件情報1及び本件情報2について、実施機関が本件各決定において開示しないこととした情報(以下「本件各非開示部分」という。)は、救急活動記録に記録された警察官の氏である。
3 本件各非開示部分の旧条例第19条第2号該当性について
 本件各非開示部分について、当該部分が開示請求者以外の個人に関する情報に該当するか否か、また、当該情報そのものにより若しくは他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができる情報(以下「個人識別情報」という。)に該当するか否かを以下説明する。
4 警察官の氏名について
 本件各非開示部分は当該警察官の個人に関する情報に該当する。
 そして、氏名は当該情報そのものにより又は他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができるものであり、個人識別情報に該当する。
 なお、大阪府警察本部においては課長・警部以上の職階にある職員のみ氏名を公開していることを踏まえ、実施機関ではこれまでもそれに準じた対応をしていることから、本件各決定を行うに際しても、同様に非開示としている。
 審査請求人は、本件審査請求において、20211115日の事故では取扱者カードが発行されていて、警察官の氏を知っている旨と、20211223日の事故では取扱者カードをもらっていないので取扱者カードがあれば知り得る情報である旨を主張するが、審査請求人が大阪府警察本部から取扱者カードを得ているかどうかは当局が知り得る情報ではなく、また、審査請求人が取扱者カードを得ることが出来たのかについて実施機関は関与し得ない情報である。よって、同号ただし書アの法令等の規程により又は慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報には該当しない。

第5 審議会の判断
1 基本的な考え方
 旧条例の基本的な理念は、第1条が定めるように、市民に実施機関が保有する個人情報の開示、訂正及び利用停止を求める具体的な権利を保障し、個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項を定めることによって、市民の基本的人権を擁護し、市政の適正かつ円滑な運営を図ることにある。したがって、旧条例の解釈及び運用は、第3条が明記するように、個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する市民の権利を十分に尊重する見地から行わなければならない。
 しかしながら、旧条例は、すべての保有個人情報の開示を義務づけているわけではなく、第19条本文において、開示請求に係る保有個人情報に同条各号のいずれかに該当する情報が含まれている場合は、実施機関の開示義務を免除している。もちろん、第19条各号が定める非開示情報のいずれかに該当するか否かの具体的判断に当たっては、当該各号の定めの趣旨を十分に考慮するとともに、当該保有個人情報の取扱いの経過や収集目的などをも勘案しつつ、旧条例の上記理念に照らして市民の権利を十分に尊重する見地から、厳正になされなければならないことはいうまでもない。
2 争点
 実施機関は、本件非開示部分について、旧条例第19条第2号を理由に非開示としたのに対し、審査請求人は、旧条例第19条第2号には該当しないため開示すべきであるとして争っている。
 したがって、本件審査請求の争点は本件非開示部分の旧条例第19条第2号に該当するか否かである。
3 本件決定の妥当性について
(1) 本件非開示部分の旧条例第19条第2号該当性について
ア 旧条例第19条第2号の基本的な考え方について
 旧条例第19条第2号本文は、「開示請求者以外の個人に関する情報…であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により開示請求者以外の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、開示請求者以外の特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)…又は開示請求者以外の特定の個人を識別することはできないが、開示することにより、なお開示請求者以外の個人の権利利益を害するおそれがあるもの。」は開示しないものと規定しているが、同号ただし書では、これらの情報であっても、「ア 法令等の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報、イ 人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報、ウ 当該個人が…公務員等…である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」については、開示しなければならない旨規定している。
イ 本件各非開示部分の条例第19条第2号該当性について
(ア) 本件各非開示部分の条例第19条第2号本文該当性について
 当審議会において、本件各非開示部分を見分したところ、いずれも、審査請求人が当事者となった交通事故の対応をした大阪府警察平野警察署の警察官の氏であることが確認できた。
 したがって、警察官の氏は、審査請求人以外の個人に関する情報であって、当該情報そのものにより又は他の情報と照合することにより、審査請求人以外の特定の個人を識別することができるものと認められることから、旧条例第19条第2号本文に該当する。
(イ) 本件各非開示部分の旧条例第19条第2号ただし書該当性について
 当審議会において、本件各非開示部分を見分したところ、本件各非開示部分のうち、本件決定2において非開示とされた警察官の氏については、審査請求人が本件審査請求書に添付した「取扱者カード」に記載されている警察官の氏と一致していることが確認できた。
 したがって、本件決定2において非開示とされた警察官の氏については、開示請求を行った時点で審査請求人が知っていたものと認められるから、旧条例第19条第2号ただし書アに該当する。
 なお、実施機関は、本件決定2を行った時点では、審査請求人が「取扱者カード」を取得しているか否かは知り得る情報ではなかった旨を主張する。
 この点、本件の事実関係に鑑みれば、本件決定2を行った時点では、審査請求人が「取扱者カード」を取得し、当該警察官の氏を了知していた事実を知らなかったものと認められるが、実施機関が当該事実を了知していたか否か及びその点について実施機関に過失があったか否かは上記判断に影響を与えない。
 他方、本件決定1については、審査請求書によれば、審査請求人は「取扱者カード」は取得していないとのことであるから、開示請求を行った時点で審査請求人は本件決定1において非開示とされた警察官の氏を知らなかったものと認められる。
 そこで、本件決定1において非開示とされた警察官の氏について慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報に該当するか検討する。
 当審議会において「取扱者カード」の取扱いについて調査したところ、大阪府警察のホームページに掲載されている「取扱者カード交付要領」の「第3 カードの交付」には、「職員は、次に掲げる届出等を受理したとき(面接して受理したときに限る。)は、それぞれに定めるカードに所定の事項を記入した上、届出人等に交付するものとする。ただし、当該届出等が粗野又は乱暴な言動により不穏に行われた場合、カードを交付することにより今後の正常な業務が阻害され、又は自己に危害が及ぶことが予想される場合等特別な事情があると認めるときは、カードを交付しないことができる。」と定められており、交通事故の届出等を行った者が取扱者カードの交付を求めたとしても、必ずしも交付されるとは限らない取扱いであることが確認できた。
 したがって、本件決定1において非開示とされた警察官の氏については、慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報には該当しないと認められるから、旧条例第19条第2号ただし書アには該当せず、また、その性質上ただし書イ又はウにも該当しない。
(ウ) 小括
 以上のとおりであるから、本件各非開示部分のうち、本件決定1において非開示とされた部分は旧条例第19条第2号に該当せず、本件決定2において非開示とされた部分は旧条例第19条第2号に該当する。
4 結論
 したがって、第1記載のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
委員 野呂 充、委員 小林 邦子、委員 篠原 永明、委員 矢口 智春

(参考)調査審議の経過 令和4年度諮問受理第14号・第15

答申第204号

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