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答申第208号

2019年9月9日

ページ番号:622726

大個審答申第208
令和6年3月29日 

大阪市長 横山 英幸 様

大阪市個人情報保護審議会
会長 金井 美智子 

答申書

 大阪市個人情報の保護に関する法律の施行等に関する条例(令和5年大阪市条例第5号)附則第3項の規定によりなお従前の例によることとされた同条例による改正前の大阪市個人情報保護条例(平成7年大阪市条例第11号。以下「旧条例」という。)第45条に基づき、大阪市長(以下「実施機関」という。)から令和4年2月4日付け大大正窓第548号、同日付け大大正窓第550号、令和4年2月16日付け大大正窓第566号及び同日付け大大正窓第568号により諮問のありました件について、次のとおり一括して答申いたします。

第1 審議会の結論
 実施機関が、令和3年12月16日付け大大正窓第402号により行った部分開示決定(以下「本件決定1」という。)で開示しないこととした部分のうち、別表1に掲げる部分を開示すべきであり、その余の部分は妥当である。
 実施機関が、令和3年12月16日付け大大正窓第403号により行った部分開示決定(以下「本件決定2」という。)で開示しないこととした部分のうち、別表2に掲げる部分を開示すべきであり、その余の部分は妥当である。
 実施機関が、令和3年12月16日付け大大正窓第404号により行った部分開示決定(以下「本件決定3」という。)で開示しないこととした部分のうち、別表3に掲げる部分を開示すべきであり、その余の部分は妥当である。
 実施機関が、令和3年12月16日付け大大正窓第405号により行った部分開示決定(以下「本件決定4」といい、本件決定1から本件決定4までをあわせて「本件各決定」という。)で開示しないこととした部分のうち、別表4に掲げる部分を開示すべきであり、その余の部分は妥当である。

第2 審査請求に至る経過
1 開示請求
 審査請求人は、令和3年12月2日、旧条例第17条第1項に基づき、実施機関に対し、「令和3年1月22日付、案件番号2-5の「事前連絡票」及び「相談記録」及び「令和2年度大正区リーガルサポート業務実施報告書」のメール文書を含む全文書。(相手先、○○法律事務所又は○○弁護士等)」を求める旨の開示請求(以下「本件請求1」という。)を行った。
 審査請求人は、令和3年12月2日、旧条例第17条第1項に基づき、実施機関に対し、「令和3年2月17日付、案件番号2-6の「事前連絡票」及び「相談記録」及び「令和2年度大正区リーガルサポート業務実施報告書」のメール文書を含む全文書。(相手先、○○法律事務所又は○○弁護士等)」を求める旨の開示請求(以下「本件請求2」という。)を行った。
 審査請求人は、令和3年12月2日、旧条例第17条第1項に基づき、実施機関に対し、「令和3年3月9日付、案件番号2-7の「事前連絡票」及び「相談記録」及び「令和2年度大正区リーガルサポート業務実施報告書」のメール文書を含む全文書。(相手先、○○法律事務所又は○○弁護士等)」を求める旨の開示請求(以下「本件請求3」という。)を行った。
 審査請求人は、令和3年12月2日、旧条例第17条第1項に基づき、実施機関に対し、「令和3年8月2日付、案件番号3-4の「事前連絡票」及び「相談記録」及び「令和3年度大正区リーガルサポート業務実施報告書」のメール文書を含む全文書。(相手先、○○法律事務所又は○○弁護士等)」を求める旨の開示請求(以下「本件請求4」という。)を行った。
2 本件決定
 実施機関は、本件請求1に係る保有個人情報を、「令和2年度大正区リーガルサポート業務(案件番号2-5)に係る ・メール本文及び添付文書(相手先:○○法律事務所 ○○弁護士) ①送信日時:令和3年1月22日 1538分 ②送信日時:令和3年1月22日 1703分 ③送信日時:令和3年1月25日 2140分 ④受信日時:令和3年1月25日 2320分 ⑤受信日時:令和3年1月30日 2309分 ⑥送信日時:令和3年2月4日 9時26分 ⑦受信日時:令和3年2月6日 2242分 ・事前連絡票(令和3年1月22日付け) ・相談記録(令和3年1月25日付け) ・事務実施報告書(令和3年2月8日付け)」(以下「本件情報1」という。)と特定し、本件請求2にかかる保有個人情報を「令和2年度大正区リーガルサポート業務(案件番号2-6)に係る ・メール本文及び添付文書(相手先:○○法律事務所 ○○弁護士) ①送信日時:令和3年2月17日 1819分 ②送信日時:令和3年2月26日 2143分 ③受信日時:令和3年2月27日 2132分 ④送信日時:令和3年3月3日 1105分 ⑤送信日時:令和3年3月15日 9時46分 ⑥送信日時:令和3年3月3日 1000分 ⑦受信日時:令和3年3月17日 2251分 ⑧送信日時:令和3年3月23日 1500分 ⑨送信日時:令和3年4月12日 1028日 ・事前連絡票(令和3年2月17日付け) ・相談記録(令和3年2月26日付け) ・業務実施報告書(令和3年3月17日付け)」(以下「本件情報2」という。)と特定し、本件請求3にかかる保有個人情報を「令和2年度大正区リーガルサポート業務(案件番号2-7)に係る ・メール本文及び添付文書(相手先:○○法律事務所 ○○弁護士) ①送信日時:令和3年3月9日 1520分 ②送信日時:令和3年3月15日 9時46分 ③送信日時:令和3年3月15日 1000分 ④送信日時:令和3年3月17日 2253分 ⑤送信日時:令和3年3月23日 1500分 ⑥送信日時:令和3年4月12日 1028分 ・事前連絡票(令和3年3月9日付け) ・相談記録(令和3年3月12日付け) ・業務実施報告書(令和3年3月17日付け)」(以下「本件情報3」という。)と特定し、本件請求4にかかる保有個人情報を「令和3年度大正区リーガルサポート業務(案件番号3-4)に係る ・メール本文及び添付文書(相手先:○○法律事務所 ○○弁護士) ①送信日時:令和3年8月2日 1809分 ②送信日時:令和3年8月4日 1804分 ③受信日時:令和3年8月5日 1043分 ④送信日時:令和3年8月5日 1359分 ⑤送信日時:令和3年8月5日 1400分 ⑥受信日時:令和3年8月5日 1549分 ⑦受信日時:令和3年8月5日 1549分 ⑧送信日時:令和3年8月24日 1011分 ⑨受信日時:令和3年8月25日 9時31分 ・事前連絡票(令和3年8月2日付け) ・相談記録(令和3年8月4日付け) ・業務実施報告書(令和3年3月6日付け)」(以下「本件情報4」といい、本件情報1から本件情報4をあわせて「本件各情報」という。)と特定した上で、旧条例第23条第1項に基づき、「メール本文に記載された弁護士のメールアドレス」(以下「本件非開示部分1」という。)、「令和2年度大正区リーガルサポート業務実施報告書に記載された弁護士の印影」(以下「本件非開示部分2」という。)、「請求書に記載された弁護士が保有する口座の口座番号」(以下「本件非開示部分3」という。)、「メールに添付した資料のうち争訟に係る事務に関する情報」(以下「本件非開示部分4」という。)及び「事前連絡票の事案の概要欄及び相談事項欄、相談記録の相談内容及び結果欄、メール本文に記載された争訟に係る事務に関する情報」(以下「本件非開示部分5」という。)を開示しない理由を次のとおり付して、本件決定を行った。

旧条例第19条第3号に該当
(説明)
 本件非開示部分1については、一般に公にされておらず、日常の業務において相談者や依頼者など限られた者との連絡に使用されており、開示することにより、いたずらや偽計等に使用され、事業者の事業活動が損なわれるおそれがあるため。
 本件非開示部分2については、事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、開示することにより偽造あるいは転用のおそれがあり、当該個人の事業運営が損なわれるおそれがあると認められ、かつ同号ただし書にも該当しないため。
 本件非開示部分3については、事業を営む個人の当該事業における内部管理に属する事項に関する情報であって、開示することにより当該個人の事業運営が損なわれるおそれがあると認められ、かつ同号ただし書にも該当しないため。
旧条例第19条第6号に該当
(説明)
 本件非開示部分4及び本件非開示部分5については、争訟に係る事務に関する情報であって、開示することにより本市の当事者としての地位を不当に害するおそれがあるため。
3 審査請求
 審査請求人は、令和4年1月5日に本件決定1を不服として、令和4年1月6日に本件決定2を不服として、令和4年1月17日に本件決定3及び4を不服として、実施機関に対して、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき審査請求(以下「本件各審査請求」という。)を行った。

第3 審査請求人の主張
 審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
1 審査請求の趣旨
 部分開示決定の取消しを求める。
 部分開示決定の理由には誤りがあり理由不記である。
 本件非開示部分1及び本件非開示部分3を除き全ての開示を求める。
2 審査請求の理由
(1) 本件非開示部分2は弁護士としての印影だから公開すべきものです。
(2) 本件非開示部分4及び本件非開示部分5の非開示理由は同じため、合せて記載します。
(3) 審査請求人は戸籍謄本等交付請求を行ったが大正区長から不交付の決定書を受領しました。そこで、大阪法務局長に審査請求書を提出したものです。その審理手続き中に、区長の弁明書に対する審査請求人の反論書の対応において、大正区長及び同戸籍事務担当者らは、弁明書作成及び不交付処分の取消しと新たな理由による不交付の決定を審査請求人に送付しました。その2件処分作成において、区長らが、大阪市リーガルサポート要綱外の〇〇弁護士に市税を払って相談記録等の文書を作成していたことを公開請求で知り、本件開示請求したものです。開示請求した理由は、区長の弁明書は、主語述語が複雑に書かれていて、よく理解できません。また、審査請求人は法令解釈を間違わないようにするため、区長が、市長選任外の〇〇弁護士に照会して、その回答書には法律根拠を基にする文書だから、よく読めば理解できると思い、開示請求したしだいです。
(4) 争訴に係る事務に関する情報とは何か具体的説明がありません。
 黒塗り部分が、争訴に係る事務に関する情報であると確認できないから、納得できません。
 審査会が見て該当するか判断してください。
 争訴に係る事務に関する情報とは何か具体的に説明して下さい。なんでもかんでも、そう書いたら隠ぺいできるじゃあないですか。
 市の当事者としての地位をとは具体的に説明していません。
 地位を不当に害するおそれ、の不当に害するものとは何かを説明して下さい。
 すでに区長は正式な弁論書、取消し決定書、新しい不交付の決定書を作成し審査請求人に送付しています。そして非開示部分を開示することは、不交付となった戸籍謄本請求者に対して、ていねいな説明になると確信します。
 よって、すみやかな審理手続きにより、早めの答申、裁決を求めます。
 くれぐれも、答申する間際になって、市長又は区長は理由を追加するため本件処分を取消し、裁決を却下させないで下さい。
 その却下後に市長は、再度、部分開示の決定書を行いますから、そうすると、審査請求人は、新たに審査請求をしなければなりません。
 審査請求人が生きているあいだに答申が出ますように。
3 令和6年2月25日付け「[大大正402号[大大正403号[大大正404号[大大正405号]について意見陳述及び質問申し立て](以下「審査請求人意見書」という。)における主張
(1) 審査会設置法9条4項(審査会の調査権限)及び10条1項(意見の陳述)及び審査会設置法施行令4条(審査請求人等の意見陳述)の規定により、審査会運営規則13条(口頭での説明の求め)2項、審査請求人に対し、様式第5号の書面により、その旨を通知する。との法律規定ですが、通知書面は、11日前の216日金曜に届きました。その通知書面の記載は、大個情審第123号令和6年2月14日付けです。さらに、指定した追加資料の提出期日は短期間で違法です。226日を提出期限とする短期間の通知処分は行審法に違反します。審議会は諮問庁には弁明書送付期限を600日間を超えて指定しているが、審査請求人には実質4日間しか与えていないことは、不当な差別待遇です。
(2) 7件の意見陳述及び応答時間が45分間では、行審法31条の「意見を述べる機会を与える」に該当せず不十分であり同法に違反する。実際は、審査請求人の1件あたりの陳述は質疑応答も含め45分でしょう。審議会が7件の口頭意陳述について調査審議を一括して行うには、行審法第39条審理手続の併合又は分離の規定を準用して、審査会令2条2項の通知様式第17条の1、又は様式第17条の2に準じる書面で、審査請求人に通知を行う義務があります。しかし、意見陳述通知において、審査請求人に対して、併合又は分離の通知書がないことから1件ずつの答申となり、裁決となります。なお、事務局から、大阪市の条例にはこの併合・分離の通知条文がないと言うが、行審法及び個人情報保護法等の準用規定により、地方公共団体は法令遵守規定になっており、条例規定がないことを理由に、併合・分離の通知書を作成することと、通知書を送付することは免責されません。

第4 実施機関の主張
 実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。
1 本件請求にかかる保有個人情報について
 実施機関においては、当該職務を担当する職員が、自身による法令調査や法務担当職員へ相談を行う以外に、事案に応じて弁護士によるアドバイスを得られる体制を整えることを目的に、総務局において大阪市リーガルサポーターズ制度を設けているが、大正区役所では、これまで以上にタイムリーかつ、スピーディに法律相談を行える体制を構築することを目的に、〇〇法律事務所所属の〇〇弁護士と直接業務委託契約を締結し、大正区リーガルサポート業務を実施している。
 令和2年7月に審査請求人から、叔母の戸籍謄本等の請求があったが、「審査請求人が戸籍法第10条の2第1項の要件を満たしていることが確認できないため。」として、不交付決定を行った。この処分について、同年9月、審査請求人から大阪法務局長に対して処分の取消し等を求める審査請求があった。
 この審査請求における弁明書の作成や対応方針の決定を行うにあたり、実施機関は大正区リーガルサポート業務を利用し、令和3年1月25日(案件番号2-5)、同年2月26日(案件番号2-6)、同年3月12日(案件番号2-7)、同年8月4日(案件番号3-4)にそれぞれ、法律相談を行った。
 法律相談を行うにあたっては、効率的な相談を受けることができるよう、相談に係る事案及び法的事項を整理して、実施機関の職員が「事前連絡票」を作成し、事前に弁護士に送付し、相談の実施後、実施機関の職員が相談の結果を漏れなく簡潔にまとめた「相談記録」を作成し、弁護士の確認・修正を受けている。
 業務完了後、業務の履行を確認し、報酬を支払うために必要な書類である「大正区リーガルサポート業務実施報告書」を弁護士が作成し、実施機関に提出する。
 審査請求人は、リーガルサポート業務の実施において作成された「事前連絡票」、「相談記録」、「大正区リーガルサポート業務実施報告書」のほか、弁護士との間で交わされたメール文書の開示を求めるものである。
2 印影の旧条例第19条第3号該当性について
 本件にかかる弁護士の印影は、大正区リーガルサポート業務における履行を報告する際に提出する報告書に押印されたものであり、当該弁護士によりその職務上真正に作成されたことを認証する意義を有するものとして使用されているものである。また、弁護士の印章は、個人がその私生活において使用する印章とは異なり、職印として別個に作成され、事務所等で保管されているものである。当該職印は、弁護士にとっての実印にあたり、その所属する弁護士会へ職印として登録を行っているものである。
 したがって、当該印影については、当該弁護士の内部管理に属する情報であり、これを公にすることにより偽造あるいは転用のおそれがあり、当該弁護士の事業運営が損なわれるおそれがあると認められることから、旧条例第19条第3号に該当し、かつ同号ただし書にも該当しないため、開示しないこととした。
3 旧条例第19条第6号該当性について
 事前連絡票に記載されている事案の概要及び相談事項には、事実経過や一般的な法的解釈の教示を求める相談事項等の他、係争中の審査請求についての実施機関の戦略に関わる事項も記載されていることから、この部分については開示しないこととした。
 本件にかかる相談記録に記載されている相談内容及び結果には、事前連絡票に記載した実施機関の相談事項に加え、相談事項に対する弁護士の法的見解やアドバイスが記載されていることから、この部分については開示しないこととした。
 本件にかかるメール本文には、係争中の審査請求についての実施機関の戦略に関わる事項や弁護士のコメントも記載されていることから、この部分については開示しないこととした。
 本件にかかるメール添付資料には、事前連絡票や相談連絡票の他、相談に必要な資料が含まれており、これらの資料の中には係争中の審査請求についての実施機関の戦略に関わる事項が記載されたものもあることから、この部分については開示しないこととした。
 また、資料の中には作成過程の弁明書が含まれており、この文中には大阪法務局への提出前における内部検討及び意思形成過程の情報も記載されていることから、この部分についても開示しないこととした。
 これら開示しないこととした部分を開示すると、現在係争中の相手方である審査請求人に実施機関の審査請求への対応戦略に関わる事項や内部検討及び意思形成過程の情報が伝わることとなり、その結果、係争において不利となり、実施機関の当事者としての地位を不当に害するおそれがある。
 また、法律相談は、その性質上、内容は秘密で、弁護士と本市との間の信頼関係に基づいており、みだりに相談結果が公となると、実施機関は率直な見解や資料を弁護士に示すことに消極的になり、弁護士においては差し障りのない意見しか言わなくなるおそれがある。そうすると、弁護士と率直な意見交換ができなくなり、適切な方針を決定できなくなるおそれがあり、結果、係争において不利となり、実施機関の当事者としての地位を不当に害するおそれがある。
 以上のことから、条例第19条第6号に該当するため、開示しないこととした。
 なお、争訟に係る事務に関する情報については、「現在係属し、又は係属が予想される争訟についての対処方針の策定などに限らず、一般的な争訟事務に関する対処方針の策定や事実調査の手法などの情報をも含むと解するのが相当である」との裁判例(参考判例:東京高裁平成221111日判決)もある。
 とはいうものの、やみくもに非開示としたわけではなく、弁明書等において既に審査請求人に対して明らかにしている見解等については非開示としていない。

第5 審議会の判断
1 基本的な考え方
 旧条例の基本的な理念は、第1条が定めるように、市民に実施機関が保有する個人情報の開示、訂正及び利用停止を求める具体的な権利を保障し、個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項を定めることによって、市民の基本的人権を擁護し、市政の適正かつ円滑な運営を図ることにある。したがって、旧条例の解釈及び運用は、第3条が明記するように、個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する市民の権利を十分に尊重する見地から行わなければならない。
 しかしながら、旧条例は、すべての保有個人情報の開示を義務づけているわけではなく、第19条本文において、開示請求に係る保有個人情報に同条各号のいずれかに該当する情報が含まれている場合は、実施機関の開示義務を免除している。もちろん、第19 条各号が定める非開示情報のいずれかに該当するか否かの具体的判断に当たっては、当該各号の定めの趣旨を十分に考慮するとともに、当該保有個人情報の取扱いの経過や収集目的などをも勘案しつつ、旧条例の上記理念に照らして市民の権利を十分に尊重する見地から、厳正になされなければならないことはいうまでもない。
2 争点
 審査請求人は、本件各決定を取り消し、本件非開示部分2、本件非開示部分4及び本件非開示部分5(以下「本件各非開示部分」という。)を開示すべき旨を主張しているのに対して、実施機関は本件各非開示部分は旧条例第19条第3号及び第6号に該当すると主張している。したがって、本件各審査請求における争点は、本件各非開示部分の旧条例第19条第3号及び第6号該当性である。
3 本件各非開示部分の旧条例第19条第3号及び第6号該当性について
(1) 旧条例第19条第3号の基本的な考え方について
 旧条例第19条第3号本文は、法人その他の団体(以下「法人等」という。)又は事業を営む個人の事業活動や正当な競争は、社会的に尊重されるべきであるとの理念のもとに、「法人等…に関する情報であって、開示することにより、当該法人等…の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」は、原則として非開示とすることを定めている。
 そして、この「権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」とは、①法人等又は事業を営む個人(以下「法人等の事業者」という。)が保有する生産技術上又は販売上の情報であって、開示することにより、当該法人等の事業活動が損なわれるおそれがあるもの、②経営方針、経理、人事等の事業活動を行う上での内部管理に属する事項に関する情報であって、開示することにより、法人等の事業者の事業運営が損なわれるおそれがあるもの、③その他開示することにより、法人等の事業者の名誉、社会的評価、社会的活動の自由等が損なわれるおそれがあるものがこれに当たると解される。
 なお、同号ただし書において、「人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報」は、旧条例第19条第3号本文に該当する場合であっても、開示しなければならない旨規定している。
(2) 旧条例第19条第6号の基本的な考え方について
 旧条例第19条第6号は、本市の機関又は国、独立行政法人等、他の地方公共団体若しくは地方独立行政法人が行う事務又は事業の目的を達成し、その公正、円滑な執行を確保するため、「開示することにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」は開示しないことができると規定している。
 ここでいう「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」とは、事務又は事業に関する情報を開示することによる利益と支障を比較衡量した上で、開示することの必要性を考慮しても、なお、当該事務又は事業の適正な遂行に及ぼす支障が看過し得ない程度のものであることが必要である。
 したがって、「支障を及ぼすおそれ」は、抽象的な可能性では足りず、相当の蓋然性が認められなければならないと解される。
(3) 本件非開示部分2の旧条例第19条第3号該当性について
 本件非開示部分2を当審議会で見分したところ、実施機関が第4 2で主張するとおりであることが確認できた。これらは、法人等の事業者の事業活動を行う上での内部管理に属する事項に関する情報であって、開示することにより偽造等のおそれがあり、当該法人等の事業者の事業運営が損なわれるおそれがあると認められることから、旧条例第19条第3号に該当し、かつ同号ただし書にも該当しない。
(4) 本件非開示部分4及び本件非開示部分5の旧条例第19条第6号該当性について
 本件非開示部分4及び本件非開示部分5を当審議会で見分したところ、第4 3で主張するとおり、これら情報が記載された文書は実施機関の対象区役所において、〇〇法律事務所所属の〇〇弁護士と直接業務委託契約を締結している「大正区リーガルサポート業務」において、審査請求人が大阪法務局長に対して行った審査請求への対応にあたり、弁明書等の内容や方針を弁護士に相談するために実施機関が作成又は取得した「事前連絡票」、「相談記録」、「大正区リーガルサポート業務実施報告書」及びこれらに関連した弁護士との間で交わされたメール文書であり、本件非開示部分4及び本件非開示部分5には、事案の概要及び相談事項、相談事項に対する弁護士の法的見解やアドバイスが記載されていることが認められた。
 そして、本件非開示部分4及び本件非開示部分5について、実施機関は、「争訟に係る事務に関する情報であって、当該情報を開示することにより本市の当事者としての地位を不当に害するおそれがある」とし、「法律相談は、その性質上、内容は秘密で、弁護士と本市との間の信頼関係に基づいており、みだりに相談結果が公となると、実施機関は率直な見解や資料を弁護士に示すことに消極的になり、弁護士においては差し障りのない意見しか言わなくなるおそれがある。」と主張している。この点について、当審議会より事務局職員をして確認させたところ、本件非開示部分4及び本件非開示部分5を開示することにより、審査請求等の争訟対応への支障が生じるだけでなく、大正区リーガルサポート業務そのものへの支障も生じるとのことである。
 しかしながら、紛争の一方当事者である実施機関が行う法律相談については、その内容や背景事情は様々であり、当該法律相談に対する弁護士の回答に係る開示の可否については、類型的に一律に判断できるものではなく、個別の事情を考慮して判断する必要がある。
 この点、当審議会で対象情報を見分したところ、別表1から別表4までに掲げる情報については、実施機関が審査請求への対応にあたり検討していた情報及び弁護士による一般的な解釈が示された情報であると認められる一方で、実施機関が争訟対応に関する方針を決定する際の重要な情報であるものとは認められなかった。
 さらに、これらの情報は既に審査請求人に示している弁明書等の書面に記載され、又はその記載から推測が可能なものであるところ、事務局職員をして実施機関に確認させたところ、弁護士に相談した本件各情報に記載の弁明書等については、請求日時点で審査請求人に発送済みとのことであった。
 さらに、実施機関の主張する争訟にかかる事務への支障も抽象的なものにとどまることから、請求日時点で係属し、係属が予想され、又は実施機関が対応するその他の争訟を考慮したとしても、争訟にかかる事務への支障は認められない。
 したがって、これらの情報は審査請求人が行っていた大阪法務局長あて審査請求に影響を及ぼす蓋然性は認められず、実施機関の主張する当該事務若しくは将来の同種の事務に支障が生じるおそれがあるとは認められない。これらの情報を除く各記載については、審査請求への対応にあたって関係機関とやり取りした内容や、弁護士の率直な見解が記載されたものであると認められ、開示することにより、関係機関や弁護士との信頼関係に基づく率直な見解が今後得られなくなり、争訟に係る事務及び大正区リーガルサポート業務の適正な遂行に支障を及ぼす相当の蓋然性があると認められる。
 したがって、本件非開示部分4及び本件非開示部分5のうち別表1から別表4までに掲げる情報については旧条例第19条第6号に該当せず、別表1から別表4までに掲げる情報を除いた部分については旧条例第19条第6号に該当する。
 なお、審査請求人は、審査請求人意見書において、口頭意見陳述の通知が直前になされたこと、口頭意見陳述の時間が短すぎること及び審議の併合に係る通知がなされていないことをもって、当審議会の審議手続が違法である旨を主張しているところ、かかる主張については、本件各決定の妥当性を左右するものではないが、念のため検討する。
 まず、かかる審査請求人の主張のうち、情報公開・個人情報保護審査会設置法(平成15年法律第60号)、情報公開・個人情報保護審査会設置法施行令(平成15年政令第550号)、情報公開・個人情報保護審査会運営規則の各規定に違反するとの主張については、これらの法令は国の情報公開・個人情報保護審査会についての規定であって、当審議会の審議手続に直接適用されるものではなく、また、本市の条例等においてこれらの規定を当審議会の手続に適用するとの定めもないことから、そもそも違法の問題は生じない。
 次に、上記の審査請求人の主張のうち、当審議会の各審議手続が、行政不服審査法(平成26年法律第68号)、個人情報保護法に違反するとの主張については、これらの法律並びに旧条例及びこれに基づく本市の各規程に違反する点があるものとは認められない。
 また、口頭意見陳述の通知については、審査請求人が指摘するように令和6年2月28日に口頭意見陳述が実施される旨の通知を同月16日に審査請求人が受領しており、この点をもって審査請求人は口頭意見陳述の準備のための期間が設けられていないと主張している。この点、事務局によると審査請求人から令和5年12月下旬頃に口頭意見陳述が実施されるかと電話で問合せがあったため、審査請求人の第一希望である令和6年2月28日に開催に向けて準備している旨を伝えており、その後、審査請求人から令和6年1月下旬頃に口頭意見陳述が行われると聞いているが、通知がされていないとの申出が電話であったため、予定どおり令和6年2月28日に開催されること、文書は追って送る旨を伝えたとのことであるから、実質的に、審査請求人において、口頭意見陳述の準備のための期間は十分に確保されていたものである。
 また、行政不服審査法、本市の条例などの各規程において、口頭意見陳述を実施する際に審査請求人に文書で通知する旨を定めた規定はない。したがって、文書による口頭意見陳述の通知については、事務局が事実上の取扱いとして行っているに過ぎず、本件においては、電話での問合せに対して口頭で口頭意見陳述の日程を伝え、その後、審査請求人からの求めに応じて改めて文書で通知したものであって、これらの経過については、手続上の過誤はなく違法とはいえない。
4 結論
 したがって、第1記載のとおり判断する。
5 付言
 審査請求人に対する口頭意見陳述の通知については、審査請求人によれば令和6年2月28日に口頭意見陳述が実施される旨の文書による通知を同月16日に審査請求人が受領したとのことであり、口頭意見陳述の重要性に鑑みれば、口頭意見陳述の準備が十分に行えるようその日程が決定した後に速やかに事務局から審査請求人に対してその日時を文書で通知することが望ましいことは言うまでもない。

 (答申に関与した委員の氏名)
 委員 金井 美智子、委員 岡澤 成彦、委員 塚田 哲之、委員 野田 崇

別表1

別表2

別表3

別表4

(参考)調査審議の経過 令和3年度諮問受理第86号、第87号、第91号及び第92
 略

答申第208号

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