答申第533号
2025年2月14日
ページ番号:629610
大情審答申第533号
令和6年6月27日
大阪市長 横山 英幸 様
大阪市情報公開審査会
会長 玉田 裕子
大阪市情報公開条例(平成13年大阪市条例第3号。以下「条例」という。)第17条に基づき、大阪市長(以下「実施機関」という。)から令和4年1月27日付け大環境事第960号により諮問のありました件について、次のとおり答申いたします。
第1 審査会の結論
実施機関が令和3年12月28日付け大環境事第868号により行った部分公開決定(以下「本件決定」という。)で実施機関が公開することとした部分のうち、次の部分を非公開とすべきである。
本件決定のその余の部分は妥当である。
【本件対象文書】
・大阪市A喫煙所設置工事中に発生した事象について(収受日:令和3年11月17日)(以下「文書1」という。)
・令和3年1月12日対話(収受日:令和3年11月17日)(以下「文書2」という。)
・令和3年2月23日対話(収受日:令和3年11月17日)(以下「文書3」という。)
・令和3年5月26日対話(収受日:令和3年11月17日)(以下「文書4」といい、文書1~4を合わせて「本件各文書」という。)
【非公開とすべき部分】
・文書2、3頁21から22行目の「これ」から始まる文
第2 審査請求に至る経過
1 公開請求
公開請求者は、令和3年11月18日、条例第5条に基づき、実施機関に対し、請求する公文書の件名又は内容として「環境局事業部事業管理課が法人である審査請求人(代理人を含む)との接触(対面、電話、FAX、手紙、メール、ウェブサイト閲覧等の一切)に際し令和3年11月17日(水)に作成・取得した文書」と表示して公文書の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 本件決定
実施機関は、本件請求に係る公文書について上記第1【本件対象文書】のとおり特定した上で、公開しないこととした部分及び公開しない理由を次のとおり付して本件決定を行った。
(1) 公開しないこととした部分
ア 文書1に記載されている当該事象に対する審査請求人の認識、主張、論点がわかる情報
イ 文書2~4(以下「本件各対話記録」という。)における個人の氏名、本件各対話記録における審査請求人の認識、主張、論点がわかる情報、本件各対話記録における本市の認識、主張、論点がわかる情報
(2) 上記の部分を公開しない理由
ア 条例第7条第1号に該当
個人の氏名については、個人に関する情報であって、当該情報そのものにより、特定の個人が識別される情報であると認められ、かつ同号ただし書ア、イ、ウのいずれにも該当しないため。
イ 条例第7条第3号に該当
本件各対話記録における審査請求人の認識、主張、論点がわかる情報(以下「本件非公開部分1」という。)については、実施機関の要請を受けて、公にしないとの条件で審査請求人から任意に提供された情報であって、当該法人等における通例として公にしないこととされているものその他当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められ、かつ同号ただし書にも該当しないため。
ウ 条例第7条第5号に該当
文書1に記載されている当該事象に対する審査請求人の認識、主張、論点がわかる情報(以下「本件非公開部分2」という。)及び本件各対話記録における本市の認識、主張、論点がわかる情報(以下「本件非公開部分3」という。)については、本市の喫煙設備設置に関する情報であって、公にすることにより、本件事故の交渉及び路上喫煙対策事業の遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。
3 審査請求
本件決定に利害関係を有する審査請求人は、令和3年12月28日、本件決定を不服として実施機関に対し、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき、審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。
4 執行停止
本件決定については令和4年1月4日付けで、行政不服審査法第25条第2項に基づき審査庁により執行停止がなされている。
第3 審査請求人の主張
審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
1 本件各文書の非公開部分について
本件各文書は、全て条例第7条第3号及び5号に該当するため、公開されるべきではない。
また、本件各文書のうち、次の部分(以下「本件各法人情報」という。)は、条例第7条第2号に該当するため、公開されるべきではない。
【本件各法人情報該当箇所】
・文書1の1頁目3から4行目「A株式会社B部」より後の全ての記載
・文書2の1頁目29から30行目「コミュニケーション」から始める文より後の全ての記録
・文書3の1頁目7行目「47」から始まる行より後の全ての記録
・文書4の1頁目6行目「大阪市)まず、」から始まる行以降の全ての記録
2 条例第7条第2号該当性について
(1) 「取引先企業の名称」について(文書1、4)
ア 取引先の情報を一般には公開しておらず、当該情報が公になることにより、審査請求人の競業他社等に対して、ある事業に関して審査請求人が外注するか否か、またその際の外注費という事業戦略上重要な情報を推知させ得、また、競業他社等が当該情報を使用して審査請求人の取引先に営業活動を行うなどして、審査請求人の取引先が不当に奪われる可能性がある。
また、近時、情報公開請求等により公開された文書について、開示請求者がSNS等において不適切な言動を伴い投稿する例も一定数見受けられ、実際にそのような事態が生じた場合に、取引先が情報公開請求の対象になることをおそれて、審査請求人との取引を中止・拒否する可能性があり、かかる事態が生じた場合、審査請求人の事業活動に重大な影響を与えることは明らかである。
イ 審査請求人の取引先企業の名称が、工事現場の看板に記されていたこと及びこれが公開されることによって審査請求人とその取引先の実態の全てが公開されるものではないことについては、積極的に争うものではない。しかしながら、条例第7条第2号への該当性の判断にあたっては、そのような理論的・形式的な事実関係ではなく、現実・実態に即して判断しなければならない。すなわち、仮に審査請求人の取引先企業の名称が工事現場の看板に記されていたとしても、一般市民がこれを目にする機会は稀であって、かかる名称が本事象と関係のある当事者として改めて公開されることによって、当該情報に基づいて「開示請求者がSNS等において不適切な言動を伴い投稿する」事態が生じ、取引先が情報公開請求の対象になることを恐れて、審査請求人との取引を中止・拒否するリスクが新たに発生することになる。
(2) 「計画段階の事業」について(文書3)
ア いまだ計画段階にあり未着手の審査請求人事業に関する情報が記載されている。
このような事業戦略上重要な情報が競業他社等に明らかになると、例えば、当該情報を使用して、審査請求人に先行して事業活動を実施するといった利用をされることになり、かかる事態が生じると、審査請求人の正当な利益が害されるおそれがある。
イ 実施機関は、審査請求人が関与を行った設備に関する事業であること等から、審査請求人が同事業に関与することは容易に推測できると主張するが、審査請求人が関与を行った設備に関する事業であることが当然に周知の事実になっているわけではない。
また、審査請求人は、競業他社等に先行して当該事業活動を実施されることのないよう、特に計画段階にある事業内容を非公開としているのであり、実施機関は、この点について何ら弁明していない。
(3) その他について(文書1~4)
ア 事案解明中の事象に関する情報である。
本件各文書に記載の情報が公開されると、本件事故の関係者が、本件事故に関する情報の提供を躊躇し、本件事故の事実関係・発生原因の正確な把握や、関係者間の今後の協議の妨げになる可能性があり、そのような事態が生じると、審査請求人の正当な利益が害されるおそれがある。
イ 審査請求人は、本件各法人情報の内容・性質のみならず、「未解決の事案に関する情報が、当事者の意図とは無関係に公にされ」ること自体により、本事象の関係者の実施機関に対する信頼が損なわれ、上記懸念が発生すると主張しているのであり、かかる懸念は、本件各法人情報の全てが非公開とされない限り払しょくされない。
3 条例第7条第3号該当性について
(1) 文書1について
実施機関は、審査請求人に対して文書1の提出を要請していないため、「実施機関の要請を受けて」との要件を満たさない旨主張するが、文書1は、実施機関との本事象の解決に向けた協議が円滑に行われなかったことからやむを得ず審査請求人が提出したものであるため、「実施機関の要請を受けて」提出されたものと実質的に同視することができる。また、実施機関が適時かつ適切に本事象に係る協議に応じていれば、文書1を提出する必要はなかったのであり、提出の原因を作出した実施機関が、「実施機関の要請を受けて」との要件を満たさないとの主張を行うことは、信義則に反し許されない。
(2) 本件各対話記録について
本件各対話記録は、実施機関と審査請求人との協議内容を記録として作成することを目的として、審査請求人が作成し、実施機関の要請に基づいて実施機関に提供したものである。したがって、本件各対話記録記載の情報全体が、実施機関の要請に従って任意に提供された情報に該当する。
実施機関は、本件各対話記録作成の元となった協議の場で審査請求人から提供された情報のみ本条例第7条第3号の対象たり得ると主張するが、実施機関は、協議の場での発言だけでなく、対話録の提供も要請していたのであるから、本件各対話記録全体が実施機関の要請に基づいて提供された情報に該当することは明らかであり、実施機関の主張は誤りである。
次に、「法人等又は個人における通例として公にしないこととされているもの」については、「当該個人又は当該法人等が属する業界、業種等の通常の慣行に照らして、公にしないことに客観的、合理的な理由があるもの」を意味するとされており、実施機関も認めるとおり、本件は、事実関係が確定しておらず、訴訟に発展する可能性もあるところ、一般企業において、紛争に発展する可能性がある未解決の事象に係る当事者間の協議内容は、その一部でも当事者(の一部)の意思に反して外部に公開された場合には、当事者間の信頼関係が破壊され、その後関係者から必要な情報の提供を得ることも協議交渉を継続することも困難となり得ること等から、その全てを公にしないことは当然で、本件各対話記録記載の全ての情報を公にしないことは「法人における通例」であり、実施機関は、本件各対話記録の非公開部分を判断するに際して、審査請求人が属する業界等の慣行ではなく、「今後同様の事象において関係者から必要な情報の提供を控えられる可能性があり」等、実施機関の利益等を考慮要素としている点で誤りである。
4 条例第7条第5号該当性について
(1) 文書1について
実施機関が本事象の解決交渉等に支障を及ぼすおそれのある、審査請求人の認識、主張及び論点がわかる情報については、本条例第7条第5号に該当することを理由として非公開情報としているが、文書1は、その全体が、審査請求人の認識及び主張を記載したものであるため(特に、文書1の2頁目の「2.」の最終段落は、明らかに、審査請求人の主張を記載したものである。)、実施機関の主張を前提としても、文書1は全て非公開とされるべきである。
(2)本件各対話記録について
実施機関が、本事象の解決交渉等に支障を及ぼすおそれのあることを理由に、実施機関の認識、主張及び論点がわかる情報については、本条例第7条第5号に該当することを理由として非公開情報としていると主張するが、実施機関の文書1に係る主張を前提とすると、本件各対話記録の内、審査請求人の認識、主張及び論点がわかる情報が公開された場合にも本事象の解決交渉等に支障を及ぼすおそれが生じるため、本件各対話記録全体が本条例第7条第5号の適用対象となり得ること、そして、本件各対話記録のうち、実施機関及び審査請求人の発言部分は、その全体が、実施機関及び審査請求人の認識及び主張を記載したものであるため、実施機関の主張を前提としても、本件各対話記録は全て非公開とされるべきである。
5 その他
本件各文書に記載の情報は条例第7条第2号及び第3号に該当する情報であるため、実施機関がこれを公開しようとする場合には、条例第13条第2項に基づき、第三者たる審査請求人に対して意見書を提出する機会を付与する義務があり、そのような手続を行わなかった実施機関の対応は、違法である。
第4 実施機関の主張
実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。
1 条例第7条第2号該当性について(文書1、4)
(1) 審査請求人の取引先企業の名称等について
喫煙所の整備工事を行う際には、道路工事現場における標示施設等の設置基準(昭和37年8月30日付け道発第372号建設省道路局長通達)に基づき工事の現場に当該工事の内容や期間とともに、工事の施工業者である審査請求人の取引先名称を標示した掲示板を設置する。本件事故が発生した喫煙所の整備工事についても同様であり、当該工事の現場には、審査請求人の取引先名称が施工業者として看板に標示されており、したがって審査請求人の取引先名称を公開したとしても、審査請求人とその取引先の実態のすべてが公開されるものではなく、よって、審査請求人とその取引先の正当な利益を害するおそれがあるとはいえない。
(2) 「計画段階の事業」について(文書3)
この計画段階とされる事業は、審査請求人が当該事業に何らかの形で関与することは容易に推測できることから、審査請求人の社会実験への参加の意向を公にしたところで、審査請求人の正当な利益が害されるおそれがあるとはいえない。
(3) その他について(文書1~4)
文書1については、実施機関としては条例の趣旨を踏まえ、審査請求人が非公開にすべきと主張する内容のうち、本件事故の解決交渉等に支障を及ぼすおそれのある情報については、条例第7条第5号に該当することを理由として非公開情報としており、審査請求人の正当な利益が害されるおそれは低いと考える。
本件各対話記録についても、審査請求人又は本市が述べた内容のうち、本件事故の解決交渉等に支障を及ぼすおそれのある本件事故に関連する審査請求人又は本市の認識、主張、論点がわかる情報については、条例第7条第3号又は第5号に該当するものと判断し、非公開としている。したがって、非公開部分を除いた部分が公開されたとしても、審査請求人の正当な利益が害されるおそれは低いと考える。
2 条例第7条第3号該当性について
(1) 文書1について
令和2年9月の事故発生後、本市と審査請求人は、本件事故に係る事実関係の確認、発生原因等の解明、今後の対応等について協議を行っていたが、令和3年11月17日、審査請求人が自らの本件事故に対する認識・主張等を詳述した文書1を、本市との対面での協議の場で本市に対して手渡しし、本市がこれを収受した。
条例第7条第3号の「実施機関の要請を受けて」とは、文書、口頭を問わず、実施機関から当該情報を提供してほしい旨の依頼があった場合をいう。この点については、実施機関は本件文書1を提供するよう要請はしておらず、審査請求人も審査請求書において「本件文書1は実施機関からの積極的な要請を受けて提出したものではないが、大阪市の本事象に関する検討の進捗状況により、大阪市との本事象の解決に向けた協議が円滑に行われなかったことからやむを得ず審査請求人が提出した」と述べている。したがって、本件文書1は実施機関の要請を受けて提供された文書ではないことから、条例第7条第3号の要件を満たしていない。
(2) 本件各対話記録について
令和2年9月の事故発生後、本市と審査請求人は、本件事故に係る事実関係の確認、発生原因等の解明、今後の対応等について協議を続けてきた。その中で、対面で協議を行った場合は、協議内容の記録として「対話」と題する文書を審査請求人が作成し、本市との調整を経たのち、本市に提供され、本市では公文書として組織内で共有している。文書2が令和3年1月12日に、文書3が令和3年2月23日に、文書4が令和3年5月26日にそれぞれ行われた協議の記録であり、協議での本市と審査請求人の発言内容が交互に、詳細に記載されている。
本件各対話記録については、本市と審査請求人との協議内容を記録として残すために作成することを本市と審査請求人との間で確認しており、それに基づき審査請求人が作成し、本市に提供された文書である。また、本件各対話記録のうち、審査請求人の発言部分については、本市の要請にしたがって、協議の場で任意に提供された本件事故に関連する情報であるといえることから、本件各対話記録のうち、審査請求人が発言した内容については、実施機関の要請に応じて、審査請求人が任意で提供した情報であるといえる。
また、本件各対話記録の全頁の左上には「厳秘」の記載があり、審査請求人によって「公にしないとの条件」が明示されており、その点を本市も了承し受領している。
ただし、条例第7条第3号は形式的な要件に加えて、「当該個人又は当該法人等における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの」に限り、非公開とすることができると定めており、公にしないことの条件があれば、当該公文書のすべてを非公開とすることは、公文書公開請求権を保障した条例の趣旨に反することとなる。
実施機関が本件各対話記録において記載されている情報を精査したところ、審査請求人が述べた内容のうち、本件事故に関連する審査請求人の認識、主張、論点がわかる情報については、本市も含め関係者間の協議が未了のため、事実関係が確定しておらず、場合によっては事実関係等を巡り争訟に発展する可能性がある情報が含まれている。これらの情報を提供者の意思とは無関係に公開した場合、今後同様の事象において関係者から必要な情報の提供が控えられる可能性があり、結果として本件事故の事実関係や発生原因を正確に把握することができず、事故の解決や再発防止の観点からも適切な対策を講じることができなくなるおそれがある。
したがって、実施機関としては条例の趣旨を踏まえ、非公開とすべき箇所は最小限としながらも、審査請求人が述べた内容のうち、本件事故に関連する審査請求人の認識、主張、論点がわかる情報については、当該法人等における通例として公にしないこととされているものその他当該条件に付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められ、かつ同号ただし書にも該当しないとの理由から、当該箇所については条例第7条第3号に該当するものと判断し、非公開とした。
3 条例第7条第5号該当性について
(1) 文書1について
文書1の非公開部分は、審査請求人側の認識・主張としての喫煙所設置にかかる役割分担や、本件事故の発生原因、責任の所在等について具体的に記載されているため、その内容が公開されると、本市が事実と認識している状況とは異なる認識・主張により、あたかも本件事故の発生原因や責任等が本市にあるといった誤解を招くことにより、今後の本市の喫煙所整備に係り、工事関係者や調整先から本市の路上喫煙対策事業に対する協力を得られない可能性があること、また、本件事故に関係する施設等に関する情報が明らかになることにより、施設の損害内容や本件事故との関連等について無用な詮索を受けることで、改めて当該場所に喫煙所を設置することとなった際に、再び協力を得ることが困難になることが想定されるため、今後の本市の路上喫煙対策事業の遂行に支障を及ぼすおそれがあること、さらに、工事関係者が誤った情報による先入観により、本市に対して疑義を抱くおそれもあり、本件事故の解決に係る情報提供等の協力を得られなくなる可能性があり、その結果、本件事故の解決交渉に支障を及ぼすおそれがある。
(2) 本件各対話記録について
上記2(2)のとおり本件各対話記録は、本市の要請を受けて審査請求人が作成し、本市に任意で提供した文書であるが、本件各対話記録のうち、本市の発言部分については、協議の場で本市が述べた本件事故に関連する当庁の認識、主張、論点がわかる情報であり、当該情報については、本件事故の発生原因や関連すると考えられる事項といった認識や、事故原因に関する本市の主張、事故関係先等や本件事故の解決に必要となる事項等の論点と考えられる事項等、当庁の喫煙所設置に関する情報であって、公にすることにより、一部分を切り取ることで大阪市に責任があるように誤認されることや、大阪市の主張が事故の責任を回避していると誤解される可能性があることから本件事故の交渉に支障を及ぼすおそれがあること、また、これらの情報の公開により、事故に関係する施設の損害内容や事故との関連等について無用な詮索を受けることで、改めて当該地に喫煙所を設置することとなった際に、再び協力を得ることが困難になることが想定され、今後の本市路上喫煙対策事業の遂行に支障を及ぼすおそれがある。
4 その他
審査請求人は、本件各文書に記載の情報は、条例第7条第2号及び第3号に該当する情報であるため、実施機関はこれを公開しようとする場合には、条例第13条第2項に基づき、第三者たる審査請求人に対して意見書を提出する機会を付与する義務があり、そのような手続きを行わなかった実施機関の対応は、違法であると主張する。
しかし、条例第13条第2項は、第三者に関する情報が記録されている公文書を公開しようとする場合であって、第7条第1号から第3号までのただし書に規定する情報に該当すると認められるときは、公開決定に先立ち当該第三者に対し、意見書を提出する機会を与えなければならないとする規定であり、本件各文書に記載の情報が条例第7条第第2条及び3号ただし書に該当しないことは審査請求人も審査請求書において主張するところである。
1 基本的な考え方
条例の基本的な理念は、第1条が定めるように、市民の公文書の公開を求める具体的な権利を保障することによって、本市等の説明責務を全うし、もって市民の市政参加を推進し、市政に対する市民の理解と信頼の確保を図ることにある。したがって、条例の解釈及び運用は、第3条が明記するように、公文書の公開を請求する市民の権利を十分尊重する見地から行われなければならない。
しかしながら、条例はすべての公文書の公開を義務づけているわけではなく、第7条本文において、公開請求に係る公文書に同条各号のいずれかに該当する情報が記載されている場合は、実施機関の公開義務を免除している。もちろん、この第7条各号が定める情報のいずれかに該当するか否かの具体的判断に当たっては、当該各号の定めの趣旨を十分に考慮しつつ、条例の上記理念に照らし、かつ公文書の公開を請求する市民の権利を十分尊重する見地から、厳正になされなければならないことは言うまでもない。
2 争点
本件審査請求の争点は、
(1) 本件各文書に記載された情報の条例第7条第3号該当性(以下「争点1」という。)
(2) 本件各文書に記載された情報の条例第7条第5号該当性(以下「争点2」という。)
(3) 本件各法人情報の条例第7条第2号該当性(以下「争点3」という。)
(4) 条例第13条第2項に基づく手続の必要性(以下「争点4」という。)
である。
3 争点1について
(1) 条例第7条第3号の基本的な考え方
合理的な条件の下で実施機関に情報を提供した個人又は法人等の非公開取扱いに対する正当な期待と信頼を保護するため、「実施機関の要請を受けて、公にしないとの条件で個人又は法人等から任意に提供された情報であって、当該個人又は当該法人等における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの」は、原則として非公開とすることを規定している。
(2) 文書1の条例第7条第3号該当性について
文書1について、実施機関は「実施機関の要請を受けて」提供されたものではないと主張しているのに対し、審査請求人は、実施機関との本件事故の解決に向けた協議が円滑に行われなかったことからやむを得ず審査請求人が提出したものであるため、「実施機関の要請を受けて」提出されたものと実質的に同視することができること、また、実施機関が適時かつ適切に本件事故に係る協議に応じていれば、文書1を提出する必要はなかったのであり、提出の原因を作出した実施機関が、「実施機関の要請を受けて」との要件を満たさないとの主張を行うことは、信義則に反し許されない旨を主張している。
「実施機関の要請を受けて」とは、文書、口頭を問わず、実施機関から当該情報を提供してほしい旨の依頼があった場合をいい、したがって、個人又は法人等の側から、自己に有利な政策決定を求めて、自ら実施機関に情報を提供したような場合は含まれず、また、法令等で定められた権限の行使として、実施機関が資料の提出等を求めた場合は、この要件に該当しないと解される。
そして、審査請求人は、「やむを得ず」提出した旨を主張しているものの、実施機関からの要請ではなく、自主的に提出しているのであるから、文書1が「実施機関の要請を受けて」提供された情報であるとは認められない。
よって、文書1は、条例第7条第3号のその他の要件及び同号ただし書について検討するまでもなく、同号に該当しない。
(3) 本件各対話記録の条例第7条第3号該当性について
審査請求人は、実施機関が本件各対話記録の提供を要請した旨を主張していることから、審査会から実施機関に確認を行ったところ、「実施機関から審査請求人に対し、本件対話記録の提供は要請していない。」旨の回答があり、双方の意見に相違がある。
そのため、審査会から双方に改めて経緯や主張を裏付ける資料の有無について確認したところ、審査請求人から、「当初、審査請求人と実施機関との協議のメモは、実施機関が作成していたが、その記載内容について審査請求人と実施機関の間に認識の齟齬があり、審査請求人と実施機関とでメモの読み合わせ及び記載内容の調整等を行う必要が生じた。」、「これを受けて、実施機関と協議検討の上、令和3年1月 12日以降の協議に係る対話記録は、審査請求人が作成したものを実施機関に提供することとなった。」、「当初の議事録と本件対話記録の作成者が異なっていることからも、審査請求人の主張が正しいことが推認可能と思われる。」、「口頭でのやり取りであり、要請があったことを示す記録は無い。」旨の回答があった。
これに対し、実施機関からは、「協議内容の認識を議事録により統一することについて審査請求人より提案があり、了承しているが、議事録をどちらが作成するかの役割分担等について協議したとは認識していない。」、「令和3年1月12日以降の協議に係る対話記録は、実施機関の要請に基づき提供された文書ではなく、協議内容の認識統一のため審査請求人が作成し実施機関に提供された文書であると認識している。」、「要請をしていないことを示す資料等はない。」旨の回答があった。
双方の主張について一定の合理性が認められるものの、非公開理由の立証責任は非公開を主張する側にあると解されることから(平20(行ウ)9号横浜地裁平成21年12月9日判決・判例地方自治 340号11頁参照)、審査請求人が非公開理由を立証すべきであるところ、実施機関から提供の要請があったことを示す記録は無いことから、審査請求人の主張を採用することはできず、本件各対話記録が「実施機関の要請を受けて」提供された情報であるとは認められない。
なお、実施機関の弁明書には、上記第4.3(2)で引用したとおり「本件各対話記録は、本市の要請を受けて審査請求人が作成し、本市に任意で提供した文書である」旨の記載があり、この記載のみを見ると、実施機関が審査請求人に対し、本件各対話記録の提供を要請したことを認めているとも考えられる。
しかしながら、実施機関は、本件各対話記録のうち、審査請求人の発言部分のみを条例第7条第3号に該当するとして非公開としていること、当該引用部分に先立って、上記第4.2(2)において引用したとおり、「本件各対話記録のうち、審査請求人の発言部分については、本市の要請にしたがって、協議の場で任意に提供された」旨を主張しており、上記第4.3(2)の引用部分の直前の「上記2⑵のとおり」との記載はこの部分を指していると考えられることを踏まえれば、実施機関が本件各対話記録全体について提供を要請した旨を主張したとは考えられないから、上記第4.3(2)の記載をもって本件各対話記録の提供に関し、実施機関からの要請があったとは判断しない。
なお、実施機関からの要請の有無は、条例第7条第3号該当性の判断に関する重要な部分であり、今後、弁明書等の作成にあたっては、記載内容の確認に一層留意するよう努められたい。
一方、実施機関は、本件各対話記録における審査請求人が発言した内容のうち、本件事故の解決交渉等に支障を及ぼすおそれのある「審査請求人の認識、主張、論点がわかる情報」を非公開としているところ、上記第1記載の【非公開とすべき部分】(以下「【非公開部分】」という。)については、本件事故の解決交渉等に支障を及ぼすおそれのある「審査請求人の認識、主張、論点がわかる情報」であると解されることから、非公開情報であると認められる。
よって、本件各対話記録のうち、本件非公開部分1及び【非公開部分】を除く部分については、条例第7条第3号のその他の要件及び同号ただし書について検討するまでもなく、同号に該当しないものの、【非公開部分】については、非公開とすべきある。
4 争点2について
(1) 条例第7条第5号の基本的な考え方
条例第7条第5号は、本市の機関等が行う事務又は事業の目的を達成し、公正、円滑な執行を確保するため、「本市の機関又は国等が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」は公開しないことができると規定している。
ここで「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」とは、事務又は事業に関する情報を公開することによる利益と支障を比較衡量した上で、公開することの公益性を考慮しても、なお、当該事務又は事業の適正な遂行に及ぼす支障が看過し得ない程度のものをいい、また、こうした支障を及ぼす「おそれがある」というためには、抽象的な可能性では足りず、相当の蓋然性が認められなければならないと解される。
(2) 文書1の条例第7条第5号該当性について
審査請求人は、実施機関が本件事故の解決交渉等に支障を及ぼすおそれのある、審査請求人の認識、主張及び論点がわかる情報については、本条例第7条第5号に該当することを理由として非公開としているが、文書1は、その全体が審査請求人の認識及び主張を記載したものであるため、実施機関の主張を前提としても、文書1は全て非公開とされるべきであり、特に文書1の2頁目の「2.」の最終段落(以下「最終段落部分」という。)は、明らかに、審査請求人の主張を記載したものである旨を主張している。
まず、実施機関が本件事故の解決交渉等に支障を及ぼすおそれのある審査請求人の認識、主張及び論点がわかる情報について、条例第7条第5号に該当するとした実施機関の判断に不自然・不合理な点はない。
次に、文書1のうち、実施機関が本件事故の解決交渉等に支障を及ぼすおそれのある審査請求人の認識、主張及び論点がわかる情報に該当する範囲について、検討する。
実施機関に最終段落部分を公開した事由について確認したところ、非公開部分は、公開されることで本市の路上喫煙対策事業の遂行に支障を及ぼす、または本件事故の解決に支障を及ぼすおそれがある情報であるところ、最終段落部分は、実施機関と審査請求人との間で論点となっている部分ではないことから、公開とした旨の回答があった。
そして、文書1について、審査会で見分したところ、最終段落部分及びその余の公開部分において明らかに「本件事故の解決交渉等に支障を及ぼすおそれのある審査請求人の認識、主張及び論点がわかる情報」に該当する情報はなかった。
以上の事実に加え、情報公開制度が原則公開の理念に基づき運用されなければならないことを踏まえると、実施機関自身が事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれはないと判断した当該情報については、条例第7条第5号には該当しないと判断せざるを得ない。
よって、文書1のうち、本件非公開部分2を除く部分については、条例第7条第5号に該当しない。
(3) 本件各対話記録の条例第7条第5号該当性について
審査請求人は、実施機関が、本件事故の解決交渉等に支障を及ぼすおそれのあることを理由に、実施機関の認識、主張及び論点がわかる情報について、条例第7条第5号に該当することを理由として非公開情報としていると主張するが、実施機関の文書1に係る主張を前提とすると、審査請求人の認識、主張及び論点がわかる情報が公開された場合にも本事象の解決交渉等に支障を及ぼすおそれが生じるため、条例第7条第5号の適用対象となり得ること、そして、実施機関及び審査請求人の発言部分は、その全体が、実施機関及び審査請求人の認識及び主張を記載したものであるため、実施機関の主張を前提としても、本件各対話記録は全て非公開とされるべきであることを主張している。
実施機関に、「審査請求人の認識、主張及び論点がわかる情報」を条例第7条第5号により非公開としていない理由について確認したところ、「審査請求人の認識、主張及び論点がわかる情報」は、条例第7条第3号に該当するものとして、非公開としており、条例第7条第5号に該当しないと判断したわけではない旨の回答があった。
したがって、本件各対話記録のうち、実施機関が条例第7条第3号に該当するとした部分以外の部分について、審査請求人は、これを公開することにより審査請求人と実施機関との間の本件事故の解決交渉等に支障を及ぼすおそれが生じると主張するが、実施機関は、これを積極的に否定していないものの、実施機関からそのような主張はなされていないこととなる。そして、本件各対話記録について、当審査会で見分したところ、明らかに「本件事故の解決交渉等に支障を及ぼすおそれのある審査請求人の認識、主張及び論点がわかる情報」に該当すると認められる情報はなかった。
以上の事実に加え、情報公開制度が原則公開の理念に基づき運用されなければならないことを踏まえると、実施機関自身が事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると主張していない以上、本件各対話記録のうち、実施機関が条例第7条第3号及び5号に該当するとした部分並びに【非公開部分】以外の部分については、条例第7条第5号には該当しないと判断せざるを得ない。
よって、本件各対話記録のうち、本件非公開部分1、3及び【非公開部分】を除く部分については、条例第7条第5号に該当しない。
5 争点3について
(1) 条例第7条第2号の基本的な考え方
条例第7条第2号は、法人その他の団体(以下「法人等」という。)の事業活動や正当な競争は、社会的に尊重されるべきであるとの理念のもとに、「法人等に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」は、原則として非公開とすることを規定している。そして、この「権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」とは、ア 法人等の事業者が保有する生産技術上又は販売上の情報であって、公開することにより、当該法人等の事業者の事業活動が損なわれるおそれがあるもの、イ 経営方針、経理、人事等の事業活動を行う上での内部管理に属する事項に関する情報であって、公開することにより、法人等の事業者の事業運営が損なわれるおそれがあるもの、ウ その他公開することにより、法人等の事業者の名誉、社会的評価、社会的活動の自由等が損なわれるおそれがあるものがこれに当たると解される。
(2) 「取引先企業の名称」の条例第7条第2号該当性について
審査請求人は、本件各文書中の「取引先企業の名称」について、公にされると当該取引先が不当に奪われる可能性がある旨を主張している。
審査請求人が主張する取引先企業とは、本件工事の施工業者である。そして、施工業者名は、実施機関が主張するとおり、道路工事現場における標示施設等の設置基準(昭和37年8月30日付け道発第372号建設省道路局長通達)に基づき工事の現場に当該工事の内容や期間とともに、看板に表記の上掲示することとされている。よって、本件事故が発生した道路上にある喫煙所の工事においても、審査請求人の取引先名称が施工業者として看板に公示されていたと認められる。
また、実施機関に確認したところ、本件請求時点においても、本件工事に係る看板は公示されている状態であった旨の回答を得た。
そうであれば、当該情報は、慣行として公にされている情報であるといえ、それを実施機関が公にすることにより審査請求人の正当な利益を害するおそれがある情報に該当しないといえる。
なお、この点、審査請求人は、「仮に審査請求人の取引先企業の名称が工事現場の看板に記されていたとしても、一般市民がこれを目にする機会は稀であって、かかる名称が本事象と関係のある当事者として改めて公開されることによって、当該情報に基づいて「開示請求者がSNS等において不適切な言動を伴い投稿する」事態が生じ、取引先が情報公開請求の対象になることを恐れて、審査請求人との取引を中止・拒否するリスクが新たに発生することになるのである。かかる事態が審査請求人の正当な利益を害することは明らかである。」と主張する。
しかし、工事現場における公示によって、既公開情報とあわせれば、審査請求人と施工業者との関係性を推知可能であったといえ、そうであれば、本件決定によって当該情報を公にしたとしても、それは既知の情報を明らかにするものであり、それによって、審査請求人に不利益を生じさせるものとは認められない。
よって、当該情報は、条例第7条第2号に該当しない。
(3) 「計画段階の事業」の条例第7条第2号該当性について
審査請求人は、いまだ計画段階にあり未着手の審査請求人事業に関する情報が記載されており、このような事業戦略上重要な情報が競業他社等に明らかになると、審査請求人の正当な利益が害されるおそれがあること、また、実施機関は、審査請求人が関与を行った設備に関する事業であること等から、審査請求人が同事業に関与することは容易に推測できると主張するが、審査請求人が関与を行った設備に関する事業であることが当然に周知の事実になっているわけではないことを主張している。
当該情報に関し、審査会において見分したところ、空間整備事業後の喫煙所の必要性に関する実施機関と審査請求人との対話が記載されているものの、喫煙所に係る具体的な事業に関する記載については、確認できなかった。
そして、当該情報が公になることによる権利侵害について、より具体的な内容を審査請求人に確認したところ、「喫煙スペースをどこにどのような態様で提供するのかという点は、審査請求人による社会的貢献の成果という意味で審査請求人の広報活動にとって極めて重要である。それにもかかわらず、審査請求人が本件事業への参画を検討していた事実が公開されると、競合他社が、審査請求人の事業を奪うべく、本件事業への関与に乗り出すことが想定され、審査請求人の事業機会が奪われ、審査請求人の広報活動の機会も奪われ、また審査請求人の上記事業目的の達成も阻害されるリスクがある。」、「企業は、経済的利益の追求のみならず、社会的貢献を行うことが求められている。社会的貢献活動を行うことで企業の社会的価値を高めることにつながる。つまり、自らが活動を行うことが企業にとって重要であり、他社が行えばよいというものではない」、「喫煙スペースの設置に当たり、土地ごとの人口や喫煙者の割合などによって、喫煙スペースの必要性等に差があるため、審査請求人にとって、どこにどのような態様で提供するのかという情報は重要である。」旨の回答を得た。
しかし、上記のとおり、当該情報は、空間整備事業後の喫煙所の必要性に関する対話に留まっており、喫煙所に係る具体的な事業について述べているものではないことから、公になったとしても正当な利益を害するおそれがあるとは認められない。
よって当該情報は、条例第7条第2号に該当しない。
(4) その他の本件各法人情報の条例第7条第2号該当性について
審査請求人は、当該情報が公になると、本件事故の関係者が、本件事故に関する情報の提供を躊躇し、本件事故の事実関係・発生原因の正確な把握や、関係者間の今後の協議の妨げになる可能性があり、そのような事態が生じると、審査請求人の正当な利益が害されるおそれがあること、「未解決の事案に関する情報が、当事者の意図とは無関係に公にされ」ること自体により、関係者の実施機関に対する信頼が損なわれる旨を主張している。
当該情報の公開部分について、審査会において見分したところ、一般的に支障となると思われる交渉の具体的内容等の協議の機微に触れる情報とは考えられず、公にすることによって審査請求人を含めた関係者の協議に支障があるとは認めがたい。
また、「未解決の事案に関する情報が、当事者の意図とは無関係に公にされ」ること自体により、関係者の実施機関に対する信頼が損なわれるという主張についても、仮にそのような事態が生じた場合、実施機関の不利益にはなり得ても、審査請求人の正当な利益を害するおそれがある事情とは認められない。
よって、本件各対話記録のうち、本件非公開部分1、2、3及び【非公開部分】を除く部分については、条例第7条第2号に該当しない。
6 争点4について
(1) 条例第13条第2項について
条例第13条第2項は、「実施機関は、第三者に関する情報が記録されている公文書を公開しようとする場合であって、当該情報が第7条第1号ただし書、第2号ただし書又は第3号ただし書に規定する情報に該当すると認められるときは、第10条第1項の決定(以下「公開決定」という。)に先立ち、当該第三者に対し、公開請求に係る公文書の表示その他市長が定める事項を書面により通知して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。(以下略)」と規定している。
よって、公益上の必要から、実施機関が、第7条第1号ただし書、第2号ただし書又は第3号ただし書の規定により例外的に公開を行う場合に必要となる手続といえる。
(2) 条例第13条第2項の適用について
本件では、実施機関が、第7条第1号ただし書、第2号ただし書又は第3号ただし書を適用して公開決定を行った事実はなく、条例第13条第2項が適用される要件を満たさない。
(3) 小括
よって、実施機関は、条例第13条第2項に基づく手続を行う必要がなかったといえる。
(4) その他の審査請求人の主張について
また、審査請求人は、本件において、条例第13条第2項が適用されることを前提に、「意見書提出の機会を付与する場合は、審査請求人に対して、所定の様式により、ア 公開請求の年月日、イ 公開請求に係る公文書に記録されている当該第三者に関する情報の内容、ウ 当該第三者に関する情報が本条例第7条第1号から第3号までの但書に規定する情報に該当すると認められる理由及びエ 意見書を提出する場合の提出先及び提出期限を通知しなければならない(〔令和5年3月31日規則第35号による改正前の〕大阪市情報公開条例施行規則(以下「施行規則」という。)第7条第2項及び3第項)。/しかしながら、実施機関は、施行規則に定められた様式とは全く異なる様式で、本件各文書記載の情報の一部を開示する予定であることについて、審査請求人に対して「情報提供」をしたのみで、上記ウ及びエの通知も怠っており、審査請求人に対して、意見書を提出する機会を付与したとはいえない。」(〔〕内大阪市情報公開審査会補足)旨を主張している。
この点、本件各決定が、条例第13条第2項が適用される要件を満たさないことは、上記(2)のとおりである。しかし、条例第13条第1項に基づく意見書提出の機会の付与であっても、令和5年3月31日規則第35号による改正前の施行規則第7条第1項及び第3項に基づき通知事項や様式が定められていることから、手続面で実施機関に施行規則に反する点がなかったか以下検討する。
上記審査請求人の主張に関して、実施機関に事実確認を行ったところ、審査請求人に対し条例に基づき意見書を提出する機会を与えたのではないとのことであった。
ここで、条例第13条第1項は、「公開請求に係る公文書に本市、国等及び公開請求者以外のもの(以下この条、第18条及び第19条において「第三者」という。)に関する情報が記録されているときは、実施機関は、公開決定等をするに当たって、当該情報に係る第三者に対し、公開請求に係る公文書の表示その他市長が定める事項を通知して、意見書を提出する機会を与えることができる。」と規定しており、その解釈としては、同条同項によらない単なる「情報提供」として、第三者に一部情報を提供することも排除されていないと考えられる。
よって、施行規則に基づく様式を使用しなかったこと等について、施行規則に反する点はない。
7 結論
以上により、第1記載のとおり、判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
委員 玉田 裕子、委員 小林 美紀、委員 重本 達哉
(参考)答申に至る経過
令和3年度諮問第48号
略
答申第533号
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