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答申第210号

2019年9月9日

ページ番号:637856

大個審答申第210
令和6年1030

大阪市長 横山 英幸 様

大阪市個人情報保護審議会
会長 岡澤 成彦

答申書

 大阪市個人情報の保護に関する法律の施行等に関する条例(令和5年大阪市条例第5号)附則第3項の規定によりなお従前の例によることとされた同条例による改正前の大阪市個人情報保護条例(平成7年大阪市条例第11号。以下「旧条例」という。)第45条に基づき、大阪市長(以下「実施機関」という。)から令和5年5月15日付け大こ青第299号により諮問のありました件について、次のとおり答申いたします。

第1 審議会の結論
 
実施機関が令和5年3月28日付け大こ青第3923号により行った部分開示決定(以下「本件決定」という。)は、妥当である。

第2 審査請求に至る経過
1 開示請求
 審査請求人は、令和5年3月14日、旧条例第17条第1項に基づき、実施機関に対し、「2023年3/9児童福祉審議会における、里親認定の審議にて使用された私の資料一式」を求める開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 本件決定
 実施機関は、本件請求に係る保有個人情報を、「令和5年3月9日児童福祉審議会において里親認定の審議に使用した、A氏(審査請求人)にかかる里親申込書類一式及び調査に関する資料一式」と特定した上で、旧条例第23条第1項に基づき、「里親になるための施設実習の実施機関の指導者氏名」(以下「本件非開示部分1」という。)及び「指導者からの評価と所見」(以下「本件非開示部分2」という。)を開示しない理由を次のとおり付して、本件決定を行った。
ア 本件非開示部分1
旧条例第19条第2号及び第6号に該当
(説明)
 本件非開示部分1は、開示請求者以外の個人に関する情報であって、当該情報そのもの又は他の情報と照合することにより開示請求者以外の特定の個人を識別することができ、かつ同号ただし書ア、イ、ウのいずれにも該当しないため。また、本市の機関が行う事務又は事業に関する情報であって、開示することにより、指導者からの意見聴取の中立性が損なわれるなど、当該事務若しくは将来の事務の目的が達成できなくなり、またはこれらの事務の公正若しくは円滑な遂行に支障が生じるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。
イ 本件非開示部分2
旧条例第19条第6号に該当
(説明)
 本件非開示部分2は、本市の機関が行う事務又は事業に関する情報であって、開示することにより、指導者からの意見聴取の中立性が損なわれるなど、当該事務若しくは将来の事務の目的が達成できなくなり、またはこれらの事務の公正若しくは円滑な遂行に支障が生じるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。
3 審査請求
 審査請求人は、令和5年4月19日に本件決定を不服として、実施機関に対して、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。

第3 審査請求人の主張
 審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
1 審査請求の趣旨
「記載の処分(のうち部分2)を取り消す」との裁決を求める。
2 審査請求の理由
 処分庁は、その理由を、当該事務若しくは将来の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正若しくは円滑な遂行に支障が生じるおそれがあるとしている。
 しかし、「個人情報保護条例解釈・運用の手引」には、理由は、単に条例上の根拠条項を示すだけでは足りず、請求者が当該理由を可能な限り明確に認識し得るものとする必要がある。提示された理由が抽象的、一般的なもので不十分である場合には、手続上瑕疵ある行政処分となるので、本項の趣旨にのっとった十分かつ明確な理由の提示をしなければならない、とある。
 以上の点から、本件処分の取消し、全部の開示を求め、本審査請求を提起した。

第4 実施機関の主張
 実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。
1 本件非開示部分1の旧条例第19条第2号及び第6号該当性について
 本件非開示部分1は、審査請求人が養育里親になるために養育里親研修の一環として民間児童福祉施設で養育実習を受けた際の実習指導者である審査請求人以外の個人の氏名であり、これを開示すると、当該情報そのもの又は他の情報と照合することにより、審査請求人以外の特定の個人を識別することができることとなる。よって、旧条例第19条第2号柱書に該当する。さらに同号ただし書ア、イ、ウのいずれかに該当する情報はない。
 したがって、本件非開示部分1の情報は、旧条例第19条第2号に該当するものと判断した。
 また、仮に本件非開示部分1が開示されることとなると、今後、当該実習指導者のみならず、当該民間児童福祉施設又は別の施設実習実施機関の他の実習指導者も、施設実習受講者に関する施設実習の結果を実施機関に報告する際、施設実習の受講者の感情や反応を考慮するあまり、中立の立場で評価することや率直な意見を表明することができなくなり、その結果、施設実習に関して実施機関が正確に事実を把握することが困難になるおそれがあることから、里親認定及び登録に係る事務事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。
 したがって、本件非開示部分1の情報は、旧条例第19条第6号にも該当するものと判断した。
2 本件非開示部分2の旧条例第19条第6号該当性について
 本件非開示部分2は、審査請求人が里親になるために施設実習を受けた際の実習指導者による評価や所見を記載したものであり、仮に本件非開示部分2が開示されることとなると、今後、当該実習指導者のみならず、当該民間児童福祉施設又は別の施設実習実施機関の他の実習指導者も、施設実習受講者に関する施設実習の結果を実施機関に報告する際、施設実習の受講者の感情や反応を考慮するあまり、中立の立場で評価することや率直な意見を表明することができなくなり、その結果、施設実習に関して実施機関が正確に事実を把握することが困難になるおそれがあることから、里親認定及び登録に係る事務事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。
 したがって、本件非開示部分2の情報は、旧条例第19条第6号に該当するものと判断した。
3 理由付記の程度について
 審査請求人は、「処分庁は、その理由を、当該事務若しくは将来の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正若しくは円滑な遂行に支障が生じるおそれがあるとしている。しかし、『個人情報保護条例解釈・運用の手引』には、理由は、単に条例上の根拠条項を示すだけでは足りず、請求者が当該理由を可能な限り明確に認識し得るものとする必要がある。提示された理由が抽象的、一般的なもので不十分である場合には、手続上瑕疵ある行政処分となるので、本項の趣旨にのっとった十分かつ明確な理由の提示をしなければならない、とある。」との理由で、本件処分を取り消して全部を開示するように求めている。
 審査請求人の主張は、「理由の提示」に係る違法又は不当を主張するものであると解するところ、開示請求に係る保有個人情報の一部を開示しないときには、非開示理由の有無について処分庁の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに、非開示理由を開示請求者に知らせることによって不服申立てに便宜を与える趣旨から、開示しないこととする根拠規定及びこれを適用する理由について、当該書面の記載自体から客観的に理解しうる程度に記載した書面をもって、開示請求者に対し、理由を提示しなければならない(旧条例第23条第3項)。
 審査請求人の指摘する旧条例第19条第6号に関して、実施機関は、本件開示請求に係る令和5年3月28日付け大こ青第3923号「部分開示決定通知書」において、非開示の理由として「大阪市個人情報保護条例第19条第6号に該当」し、「本市の機関が行う事務又は事業に関する情報であって、開示することにより、指導者からの意見聴取の中立性が損なわれるなど、当該事務若しくは将来の事務の目的が達成できなくなり、またはこれらの事務の公正若しくは円滑な遂行に支障が生じるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。」と記載している。
 まず、開示しないこととする根拠規定については、旧条例第19条第6号として指摘している。同条項は、開示しないこととする情報が本市の事務事業に関する情報であり、これを開示することにより当該事務事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることを非開示の理由として定めたものであり、本件請求が「令和5年3月9日児童福祉審議会において里親認定の審議に使用した、A氏にかかる里親申込書類一式及び調査に関する資料一式」たる保有個人情報について為されたものであることを踏まえると、ここで問題とされる事務事業が本市の里親認定及び登録に係る事務事業であることは推定可能である。
 また、「指導者からの意見聴取の中立性が損なわれるなど」として、開示しないこととする保有個人情報を開示することによって、いかなる影響を及ぼすかについての因果に係る具体例も指摘しているところであり、「開示しないこととした部分」について、「里親になるための施設実習の実施機関の指導者氏名」及び「指導者からの評価と所見」をあげていることも併せ考慮すれば、指導者に係るこれらの情報を開示することとすれば、指導者への影響が生じ、その結果、指導者からの意見聴取の中立性が損なわれることが懸念されていることも了解可能である。
 すなわち、「開示しないこととされた情報は、指導者の氏名や実習指導に係る評価や所見であるところ、これを開示することとすれば、指導者への影響が生じ、指導者からの意見聴取の中立性が損なわれるなど、結果として、里親認定及び登録に係る事務事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。」として、非開示理由に該当すると判断された根拠について、当該書面の記載自体から、開示請求者が客観的に理解しうる。
 よって、実施機関は、開示請求者に対して、本件部分開示決定通知書により、本件非開示部分1及び2が非開示となった根拠条項とともに、具体的な摘示を加え、書面全体から了解可能な程度に非開示理由を示しているものであり、本件部分開示決定通知書の理由付記に不備はない。

第5 審議会の判断
1 基本的な考え方
 旧条例の基本的な理念は、第1条が定めるように、市民に実施機関が保有する個人情報の開示、訂正及び利用停止を求める具体的な権利を保障し、個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項を定めることによって、市民の基本的人権を擁護し、市政の適正かつ円滑な運営を図ることにある。したがって、旧条例の解釈及び運用は、第3条が明記するように、個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する市民の権利を十分に尊重する見地から行わなければならない。
 しかしながら、旧条例は、すべての保有個人情報の開示を義務づけているわけではなく、第19条本文において、開示請求に係る保有個人情報に同条各号のいずれかに該当する情報が含まれている場合は、実施機関の開示義務を免除している。もちろん、第19条各号が定める非開示情報のいずれかに該当するか否かの具体的判断に当たっては、当該各号の定めの趣旨を十分に考慮するとともに、当該保有個人情報の取扱いの経過や収集目的などをも勘案しつつ、旧条例の上記理念に照らして市民の権利を十分に尊重する見地から、厳正になされなければならないことはいうまでもない。
2 争点
 審査請求人は、本件決定の理由が抽象的、一般的なもので不十分なものであり、取り消されるべきである旨を主張する一方で、実施機関は理由付記に不備は無いと主張している。そのため、本件審査請求における争点は、本件決定の理由付記の不備の有無である。
 また、審査請求人は、本件非開示部分2を開示しないこととした決定の取消しを求めているため、本件非開示部分2についての旧条例第19条該当性も争点となる。審議会としては、まず、この点について検討した後に、本件決定の理由付記の不備の有無について検討する。
3 本件決定の妥当性について
(1) 本件非開示部分2の旧条例第19条該当性について
ア 旧条例第19条第6号の基本的な考え方について
 旧条例第19条第6号は、本市の機関又は国、独立行政法人等、他の地方公共団体若しくは地方独立行政法人が行う事務又は事業の目的を達成し、その公正、円滑な執行を確保するため、「開示することにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」は開示しないことができると規定している。
 ここでいう「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」とは、事務又は事業に関する情報を開示することによる利益と支障を比較衡量した上で、開示することの必要性を考慮しても、なお、当該事務又は事業の適正な遂行に及ぼす支障が看過し得ない程度のものであることが必要である。
 したがって、「支障を及ぼすおそれ」は、抽象的な可能性では足りず、相当の蓋然性が認められなければならないと解される。
イ 本件非開示部分2の旧条例第19条第6号該当性について
 当審議会において本件非開示部分2を見分したところ、審査請求人が里親希望者の実習を受けた際の、実習指導者による評価及び所見が記載されていることが確認できた。実施機関の説明によると、里親希望者の実習は民間児童福祉施設が受け入れて実施しているとのことであるから、本件非開示部分2を、その一部でも開示することで、施設実習受講者に関する施設実習の結果を実施機関に報告する際、施設実習の受講者の感情や反応を考慮するあまり、指導者からの意見聴取の中立性が損なわれるなど、当該事務若しくは将来の事務の目的が達成できなくなり、またはこれらの事務の公正若しくは円滑な遂行に支障が生じる相当の蓋然性があるものと認められる。
ウ 小括
 よって、本件非開示部分2は旧条例第19条第6号に該当する。
 なお、審査請求人は直接主張しているものではないが、本件非開示部分1についても当審議会で見分したところ、審査請求人以外の個人に関する情報であって、当該情報そのものにより審査請求人以外の特定の個人を識別することができるものと認められることから、旧条例第19条第2号本文に該当し、またその性質上、同号ただし書ア、イ、ウのいずれにも該当しないものと認められた。
(2) 本件決定の理由付記の不備の有無について
 審査請求人は、本件決定の理由提示に不備がある旨主張する。
 この点、開示請求に係る保有個人情報の全部又は一部を開示しないときの理由の提示について、旧条例第23条第3項は、「開示しないこととする根拠規定及び当該規定を適用する根拠が、当該書面の記載自体から理解され得るものでなければならない。」と規定している。
 上記条文は、実施機関の判断の慎重と公正妥当を担保し、その恣意を抑制するとともに、開示しない理由を開示請求者に知らせることによって、その不服申立てに便宜を与える趣旨であると認められる。
 このような理由の提示の趣旨に鑑みれば、部分開示決定通知書に付すべき理由は、開示請求者において、何故非開示となるのかを了知し得るものでなければならず、非開示とすることについて、根拠規定を明示し、これを適用する理由を客観的に理解し得る程度に記載することが求められるものと解される。
 そして、実施機関が本件非開示部分2の非開示理由として本件決定の通知書に付した理由は、第2 2記載のとおりであり、その記載によれば根拠規定として旧条例第19条第6号を明示するとともに、具体的に当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることを記載しているのであるから、理由提示に不備があるものとは認められない。
4 結論
 したがって、第1記載のとおり判断する。 

(答申に関与した委員の氏名)
委員 岡澤 成彦、委員 小岩井 理史、委員 篠原 永明、委員 野田 崇 

(参考)調査審議の経過 令和5年度諮問受理第7号

答申第210号

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