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答申第536号

2025年2月14日

ページ番号:639370

大情審答申第536
令和6年12月20日 

大阪市長 横山 英幸 様

大阪市情報公開審査会
会長 小谷 真理

答申書

 大阪市情報公開条例(平成13年大阪市条例第3号。以下「条例」という。)第17条に基づき、大阪市長から令和4年2月28日付け大市民第997号により諮問のありました件について、次のとおり答申いたします。

第1 審査会の結論
 大阪市長(以下「実施機関」という。)が令和3年1126日付け大市民第727号により行った不存在による非公開決定(以下「本件決定」という。)は、結論において妥当である。

第2 審査請求に至る経過
1 公開請求
 審査請求人は、令和3年1112日、条例第5条の規定に基づき、実施機関に対し、請求する公文書の件名又は内容として「本日公表された監査結果(令和3年1112日付大監第97号)において、監査委員に対して実施機関から以下の説明がなされています。/「具体的には、例えば、改革の柱1 地域社会における住民自治の拡充、3 多様な協働(マルチパートナーシップ)の推進、ア 地域活動協議会への支援、活動の活性化に向けた支援、の項目において、『地域活動協議会を知っている区民の割合 29年度30%、30年度35%、31年度40%』といった目標が設定されている。/この目標が達成されたかなどを測定するため、令和元年度においては、成果指標の測定等について、区長会議の人事・財政部会において『区政に関する区民アンケート等の実施』の方法等を検討し、各区役所から市民局へ予算配付して、市民局で一括して、無作為に抽出した区民に対してアンケートを実施した。」(14ページ)/「(1)市政改革プラン3.0に掲載されない『指標』における『○○と感じる区民の割合』の意味するところについて確認したところ、住之江区役所から次のとおり説明があった。/・アンケートにおいて回答された区民のうち、○○と感じていると回答された区民の割合を意味している。」(17ページ)/「アンケートにおいて回答された区民のうち、○○と感じていると回答された区民の割合を意味している。」との点は実施決裁文書の記載などとも矛盾していますが、この説明の根拠が分かる文書を公開してください。/また、「地域活動協議会を知っている区民の割合」は市政改革プラン2.0(区政編)の24ページに記載されている「地域活動協議会の認知度向上に向けた支援」を評価するものですが、区民アンケート回答者における割合が、上記支援の評価になるという根拠が分かる文書を公開してください。/「指標の測定は、各区調査対象者数を2,000人とした無作為抽出によるアンケートの実施をしたものであるため、標本が母集団を代表していないことは認識しているが、毎年調査することで経年による変化を把握し、施策を進めるうえでの参考資料として役立てていることから、『区民の割合』という表現で問題ないと考えている。」(17ページ)/区民アンケートの結果が経年比較できるものであるとする根拠が分かる文書を公開してください。また、区民アンケートの目的が経年変化の把握であるとすることの根拠が分かる文書を公開してください。/「各部会で議論いただいて、これは取っていかなくてはならないものは取って、これは目標値まで行っているからもう要らないという項目は取らない」(20ページ)/区民アンケートの結果で、市政改革プラン2.0に記載された目標が達成されたかどうかが判断できるとする根拠が分かる文書を公開してください。/「400弱の回答者数が必要と考えた理由は、これまでの市民の声に対する回答において、『一般的に国などが行っている標本調査では、信頼水準95%として調査の設計をされており、その場合のサンプル数が400弱必要であることを参考とし』と示しているとおり、調査結果の正確性は担保されている。」(18ページ)/ここでいう「調査結果の正確性」とは何か、また、「正確性は担保されている」とする根拠が分かる文書を公開してください。/「本件報告書の2ページ、35ページは、母集団の値を推計する場合の統計上のひとつの考え方を参考として記載しているもの」(18ページ)/区民アンケート結果報告書の2,3,35,36ページの記載について、その根拠が分かる文書として、市政改革室の世論調査結果報告書が示されました。しかし、これは当の市政改革室がその根拠、妥当性、合理性について説明できないものでしたが、この世論調査結果報告書の何をどのように区民アンケート結果報告書の2,3,35,36ページの記載の根拠にしているのかが分かる文書を公開してください。/「無作為抽出をすれば元々考えていた、区同士比較をする、経年で見るということでベースとしては問題がないと判断しすすめてきた。」(20ページ)/区民アンケートの結果が、区同士の比較ができるものであるということ、また、経年変化を測定できるものであるということについて、その根拠が分かる文書を公開してください。/「2000配れば400回収しようが600回収しようが、その信頼性は同じである。統計の入門書にも書いてありクリアできる。」/説明の根拠が分かる文書を公開してください。/区民アンケートの結果はどのような意味を持つデータで、取組の評価に用いることができるなどと言う根拠はどのようなものかが分かる文書を公開してください。/上記で請求する公文書について、これまでの公開請求で公開された文書や、既にホームページで公開されている情報は不要です。」(審査会にて原文中の改行箇所に「/」を挿入している。以下同)と表示して公文書の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 本件決定
 実施機関は、本件請求に係る公文書(以下「本件請求文書」という。)を保有していない理由を次のとおり付して、条例第10条第2項に基づき、本件決定を行った。
・「『アンケートにおいて回答された区民のうち、〇〇と感じていると回答された区民の割合を意味している。』との点は実施決裁文書の記載などとも矛盾していますが、この説明の根拠が分かる文書」については、令和3年1112日付け大監第97号通知による住民監査請求結果以外には当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。
・「『地域活動協議会を知っている区民の割合』は市政改革プラン2.0(区政編)の24 ページに記載されている『②地域活動協議会の認知度向上に向けた支援』を評価するものですが、区民アンケート回答者における割合が、上記支援の評価になるという根拠が分かる文書」、「区民アンケートの結果で 、市政改革プラン2.0に記載された目標が達成されたかどうかが判断できるとする根拠が分かる文書」及び「区民アンケートの目的が経年変化の把握であるとすることの根拠が分かる文書」については、令和3年8月30日付け大市民第517号通知により公開した区長会議資料以外には当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。
・「区民アンケートの結果が経年比較できるものであるとする根拠が分かる文書」、「区民アンケートの結果が、区同士の比較ができるものであるということ、また、経年変化を測定できるものであるということについて、その根拠が分かる文書」及び「区民アンケートの結果はどのような意味を持つデータで、取組の評価に用いることができるなどと言う根拠はどのようなものかが分かる文書」については、令和3年7月30日付け大市民第444号通知により公開した区民アンケート報告書以外には当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。
・「『調査結果の正確性』とは何か、また、『正確性は担保されている』とする根拠が分かる文書」については、令和3年1112日付け大監第97号通知による住民監査請求結果及び令和3年7月30日付け大市民第444号通知により公開した区民アンケート報告書以外には当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。
・「世論調査結果報告書の何をどのように区民アンケート結果報告書の2,3,35,36 ページの記載の根拠にしているのかが分かる文書」については、令和3年8月20日付け大市民第492号により公開した世論調査報告書以外には当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。
・「『2000配れば400回収しようが600回収しようが、その信頼性は同じである。統計の入門書にも書いてありクリアできる。』説明の根拠が分かる文書」については、ホームページで公開されている情報以外に公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。
3 審査請求
 審査請求人は、令和4年1月29日、本件決定を不服として、実施機関に対し、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。

第3 審査請求人の主張
 審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
1 審査請求の趣旨
 「本件処分を取り消し、改めて文書の特定を行うこと。」との裁決を求める。
2 審査請求の理由
・「令和3年8月30日付け大市民第517号通知により公開した区長会議資料以外には当該公文書を作成又は取得しておらず」との部分について、同通知をもって公開された「令和元年度第21回区長会議安全・環境・防災部会資料」、「第163回(令和元年度第19回)区長会議人事・財政部会資料」には、「地域活動協議会を知っている区民の割合」などの指標の取扱いについて「引き続き全区において目標値を設定し、進捗状況を把握する」こと及び、「全区統一様式による区民アンケート(無作為抽出)」による指標の測定を行うことを記載されているのみで、本件請求で求めている根拠が分かる記載はなかった。
・実施機関の情報公開審査会に対する「あくまで各調査の回答者の回答状況にとどまるもの」との説明(令和3年6月15日付け大阪市情報公開審査会答申第492号参照)は、本件決定の理由中の「『②地域活動協議会の認知度向上に向けた支援』を評価」できるとの判断と完全に矛盾するものである。
・「『②地域活動協議会の認知度向上に向けた支援』を評価」できるとの判断については、それがあればこそ区民アンケートを実施したものであり、判断に根拠がないはずはない。
3 令和4年8月29日付け意見書(弁明書に対する反論)
・実施機関の弁明書における主張は、審査請求人が、「統計学的な根拠が示された文書」を求めていることを前提にしているが、求めているのは、統計学に限らず根拠となる文書であり、実施機関の弁明書は審査請求人の請求の趣旨の解釈を誤っている。
・実施機関が、根拠が記載されているとする部分には、「地域活動協議会の認知度向上に向けた支援」の評価を行うために、「地域活動協議会を知っている区民の割合」を指標として、その指標を「全区統一様式による区民アンケート(無作為抽出)」で測定することを決定したことが書かれているだけである。
・実施機関による情報公開審査会に対する「回答者の回答状況を表すにとどまる」(令和3年6月15日付大情審答申第492号)との説明は、得られたデータはそれ以上の意味を持たないということであるにもかかわらず、監査委員に対しては、「『②地域活動協議会の認知度向上に向けた支援』を評価」する上で意味のあるデータであると説明しており、両者に対する説明は完全に矛盾しており、公開請求はこの矛盾に対して説明を求めるものである。
・市政改革2.0(区政編)の24ページで、指標が「地域活動協議会を知っている区民の割合」と定められ、区長会において、測定手法を「全区統一様式による区民アンケート(無作為抽出)」と判断された根拠は、この「マーケティング・リサーチツールの手引き」をはじめとしたマーケティング・リサーチツール関係文書に記載されているのであり、請求対象文書はこれらであることは明らかである。
・実施機関が言うように「当該アンケートは市民又は区民全体の状況を統計学的に推計できるよう設計されておらず、『市政改革プラン(区政編)の進捗状況(平成30年8月末時点)』に掲載した内容はあくまで各調査の回答者の回答状況にとどまるもの」であるのであれば、区民アンケートの結果は、区民全体の状態とは全く無関係なのであり、そのようなデータでなぜ施策事業の評価ができる(具体的には「地域活動協議会を知っている区民」が増えているのかどうかが判断できる)のはなぜなのかという点について説明が必要となるのであり、公開請求はこの点についての説明を求めるものである。
・実施機関の弁明書では、「(区民アンケートに係る)調査報告書が公開対象となる」との記載の根拠は「連年、同じ条件で行っているもの」とされているが、言うまでもなくこれが根拠になるはずはない。
・実施機関は監査委員に対して「無作為抽出をすれば元々考えていた、区同士比較をする、経年で見るということでベースとしては問題がないと判断しすすめてきた。」と説明しているが、公開請求の趣旨は、なぜ「無作為抽出」をすれば、「区同士比較をする、経年で見る」ことが可能である(問題がない)と考えたのか、その根拠を求めたものであり、調査結果報告書に根拠が記載されているはずはなく、また、公開を受けた区長会資料にもこの根拠は記載されていない。
・「区同士の比較」については弁明書では全く触れられていないが、調査対象者は人口規模には関係なく一律に「各区2,000人」となっている。このような区ごとの人口規模の違いを無視した調査対象者数で、「区同士の比較」がなぜ可能であるのかについては、区長会の資料にも記載はなく、説明もなされていない。
・区長会の説明資料では、統計学を持ち出して「調査結果の正確性」を説明しようとしているが、統計学に関してはまるで無知であり、逆に信頼性のある調査ができないことが露呈してしまっている。
・実施機関は、区民アンケートを用いて市政改革プランに記載されている各取り組みの効果測定を行っているわけであるが、この取り組みが、「市民(区民)を〇〇の状態にする」というものである以上、その効果を検証するためには、市民(区民)全体の状態やその変化が測定する必要があることは言うまでもない。
・ 「回答者の回答状況を表すにとどまる」にすぎない調査結果で取り組みの効果測定ができるという点について、実施機関は文書を示して説明しなければならないはずである。
・区民アンケートの妥当性を統計学を持ち出して説明しようとしているのは実施機関の方であり、そう主張するのであれば、統計学的根拠が記載された文書を特定すべきであり、また、統計学に基づくものではないと主張するのであれば、区民アンケートの妥当性や、区民アンケートの結果を用いた市政改革プランのマネージメントの合理性について説明できる文書を特定すべきである。
・もし仮に、請求対象文書が真に不存在であるということであれば、区民アンケートを用いた市政改革プランのマネージメントについて、その合理性や妥当性を文書をもって説明できないということを意味するのであり、本来作成されるべき文書が作成されていないという事を意味するのであり、これは説明責任を果たすための公文書作成指針違反である。
4 令和4年1215日付け意見書
・国立研究開発法人科学技術振興機構「地方自治体が実施する社会調査の深刻な問題」や日本学術会議の提言「社会調査をめぐる環境変化と問題解決に向けて」の現状認識や問題点の指摘は、現状の大阪市が行う調査にも完全に妥当するものである。
・調査を用いた運営方針のマネージメントについては、それが妥当で合理的であると判断したからこそ、そのように行っていることには疑いはなく、また、市民の声の回答でも「調査は妥当で合理的なものである」との主張になっているので、そのような判断や主張にいたる根拠についての説明を求めるものであり、その根拠が不存在であるはずがない。
・日本学術会議の提言「社会調査をめぐる環境変化と問題解決に向けて」の「社会調査は我々の社会の現状を的確に把握し、その時間的変化を追跡し、他の社会との比較をするために、さらにはエビデンスに基づいた政策立案をするために不可欠である。社会調査から得られる情報がなければ、民主社会の基盤が損なわれてしまう。」との記載は、大阪市の認識とも一致していると認められる。「マーケティング・リサーチツールの手引き」の「7 PDCAサイクルを意識した改善について」や、「運営方針の手引き」「運営方針策定要領」の記載内容について、その趣旨は提言の記載と同じであると認められる。
・また、日本学術会議の提言「社会調査をめぐる環境変化と問題解決に向けて」には、「社会の的確な実態を捉えるためには、適切な母集団を設定し、その母集団に対して代表性のある標本から情報を得る必要がある。このためには回収率が高くなければならないが、近年の社会調査ではこの回収率が低下する傾向にある。」との記載があるが、これに関して大阪市の説明は「母集団の代表になっているとは必ずしも言えないということを認識したうえで…」というものである。提言にあるように代表性のある標本でなければ社会の実態を的確にとらえることはできない。アウトカム指標は「めざす状態を数値化した指標」であるとされており、これを測定するためには、母集団たる区民全体などの実態を的確にとらえる必要があることは論を俟たない。そして、そのためには調査の標本は母集団に対する代表性を有するものでなければならないことは提言にある通りであるが、大阪市が行う調査に関しては、低回収率を起因として標本が偏り、代表性を有するものにはなっていない。
・「区民アンケートの結果は区民の状態を表すものではない」ということはいくつかの区の報告書に記載がある。大阪市はなぜこのような区民アンケートでこの測定ができる(アウトカム指標になりうる)と考えたのかを説明する責任があるはずである。そして、これに関しては、情報公開審査会に対しても「(調査結果は)調査の回答者の回答状況にとどまる」との説明になっている。しかし、「回答者の回答状況にとどまる」に過ぎない調査結果が、区民の状態を表す指標であるアウトカム指標になりうるのかという説明はなされておらず、昨年6月15日付の情報公開審査会の答申にもこの点に関する記載はない(令和3年6月15日付け大阪市情報公開審査会答申第492号参照)。
・「標本の代表性」については、大阪市において正しく認識できてはいない。これは、マーケティング・リサーチツール関連文書のどこにも標本の偏りに関する言及がないこと、市政改革室の市議会での答弁においても、標本の偏りが説明されることはなく、「一定の精度」の根拠が回答者数のみであることなどからもわかる。
・市政改革室については、平成30年3月段階での市民の声の回答では調査について「母集団あるいはセグメントごとの傾向の把握を行うもの」と母集団の推計を行うものであることを認めていたにもかかわらず、その後の回答では「統計学によるものではない」「母比率の推定は行っていない」などと過去の回答を完全に無視した説明を行い、過去の説明との整合性については説明を行うことなく無視を決め込むといった信じられない対応を続けており、これについては明確に虚偽説明であると言わざるを得ない。また、市民局についても、調査において「分散分析」といった統計学に基づいた手法を用いた分析を行っていながら、同様に「統計学に基づくものではない」などとの説明を行っている。
・昨年6月の情報公開審査会答申に関して、これらの過去の回答や分散分析に関する資料、マーケティング・リサーチツール関連文書の内容については、実施機関から情報公開審査会に対する説明はなかったものと認められるが、これは「隠ぺい」とも評価できるものである(令和3年6月15日付け大阪市情報公開審査会答申第492号参照)。
・なお、提言の内容は、社会調査の実務現場からはやや「理想論」であるように見受けられる。今日、社会調査をめぐる環境には様々な問題点があり、すべてが理論通りに進むわけではない。しかし、調査により社会の状態を的確に把握するためにはどのような問題点があり、それを解決するためにはどのような方法が考えられるかということを検討するにあたっては、やはり社会調査に関する知見が求められることは言うまでもない。そして、調査の結果得られたデータを実務に活用するにあたり、どのような制約が生じているのか、すなわち「データを読む力」を養うためにもこれは求められるのであり、この知見を欠いたまま不適切な調査によって得られたデータを不適切に使用することは、行政があるべき姿からどんどん乖離してしまうという結果を招くことになる。社会調査の実務の現場では、社会調査をめぐる環境に存在する問題について、これを解決すべく様々な努力がはらわれている。行政だけが例外であるはずがない。大阪市が社会一般の水準に追いつくことを願っている。
5 令和5年1月11日付け意見書(弁明書に対する反論)
・実施機関によれば、「2,000配れば400回収しようが600回収しようが、その信頼性は同じである。統計の入門書にも書いてありクリアできる。」の根拠は、「なるほど統計学園 調査に必要な対象者数」とのことであるが、当該ページのどこにも、「2, 000配れば400回収しようが600回収しようが、その信頼性は同じ」などと解釈できる記載はなく、明らかに実施機関の理解不足である。
・実施機関が統計学に基づいて、調査の信頼性や正確性を確保しようとしていたことは、区長会での説明や監査委員に対する説明、あるいは各種文書から明らかであるが、統計学に関する理解が極めて不十分であるために、誤った文書を作成したり、監査委員に対して統計学的には明白に誤っている説明を行ったりしている。
・実施機関は、監査委員に対しては調査の信頼性、正確性の根拠として統計学を持ち出しているにもかかわらず、市民の声の回答や情報公開請求の場面では、「統計調査ではない」などと説明しており、その場その場で説明が変遷している。
6 令和5年8月16日付け意見書(弁明書に対する求釈明)
・公開請求には「統計学的根拠が記載された文書」などとは一切記載していない。ま  た、審査請求書にもこのような記載は一切行っていない。
・実施機関はどのような根拠で「アンケート調査の設計と指標の評価にあたっては統計学的見地に基づいた検証が必要であり、請求対象である区民アンケート調査においても統計学的見地に基づいた設計と指標の評価が行われているはずであるというのが主な主張である」などとの判断を行い、請求対象文書を「統計学的根拠が記載された文書」であるとし、「決定は請求の趣旨に適合しており、文書特定に誤りはない。」としているのか、説明を求める。
・仮にこの点を置くとしても、区長会での「調査結果の正確性(標本誤差)から、統計学上、1区あたり400弱のサンプル数(アンケート回答者数)が求められる。平成29年度は回答率が23%の区もあったため、予算事情等を加味し、各区2,000名を調査対象者数として設定する」との説明や、公開された文書である「代表性検証シート」はまさに「統計学的根拠が記載された文書」であり、また、監査に対する「2000 配れば400回収しようが600回収しようが、その信頼性は同じである。統計の入門書にも書いてありクリアできる。」との説明も統計学的根拠の存在を前提としたものであるが、これらについてはどう説明するのか。
・弁明書では「公開請求のあった文書のうち、『区民アンケート回答者における割合が、地域活動協議会の認知度向上に向けた支援の評価になるという根拠が分かる文書』『区民アンケートの結果で、市政改革プラン2.0に記載された目標が達成されたかどうかが判断できるとする根拠が分かる文書』『区民アンケートの目的が経年変化の把握であるとすることの根拠が分かる文書』については、令和元年度に開催された区長会議資料のなかで、『地域活動協議会を知っている区民の割合』を指標として定めて全区統一様式による区民アンケートにより測定すること、今後も定点観測的に状況把握を行っていくことが記載されており、当該資料が公開対象文書となる」と記載されている。そして、令和3年8月30日付け大市民第517号通知により公開された文書には、確かに上記の点についての記載は認められる。しかし、公開請求には「区民アンケート回答者における割合が、上記支援の評価になるという根拠が分かる文書を公開してください」と記載しているにもかかわらず、上記公開文書にはこれらの根拠は一切記載がない。この公開文書が請求対象文書であるというのはいかなる根拠によるものなのか、また、この公開文書のどこに根拠が記載されているというのか、説明を求める。
・弁明書では「区民アンケートの結果が経年比較できるものであるとする根拠が分かる文書」 については、区民アンケートは施策の進捗状況など経年比較の参考のため、連年、同じ条件で行っているものであり、その調査報告書が公開対象文書となる」と記載されている。これも上記同様、公開請求には「区民アンケートの結果が経年比較できるものであるとする根拠が分かる文書」と記載しているにもかかわらず、公開された区民アンケート調査報告書にはこれらの根拠(調査結果報告書に記載された数値の比較に意味があるとする根拠)は一切記載がない。この区民アンケート調査報告書が請求対象文書であるというのはいかなる根拠によるものなのか、また、この区民アンケート調査報告書のどこに根拠が記載されているというのか、説明を求める。
・令和元年度および令和2年度の区民アンケート結果報告書に、統計学的な説明が記載されていた。そして、対象文書をこの記載の根拠が記された文書として行った公開請求では、令和3年8月20日付大市民第492号で市政改革室が作成した平成29 年度世論調査結果報告書が対象文書として特定され、公開された。市政改革室が作成した「運営方針の手引き」「運営方針策定要領」「マーケティング・リサーチの手引き」をはじめとしたマーケティング・リサーチ関連文書には、世論調査を用いた「〇〇である市民の割合」などが説明されている。請求対象文書としてはこれらの文書が考えられるが、これらが公開対象として特定されていないのはなぜか。
7 令和5年8月22日付け意見書(実施機関の令和5年8月8日付け意見書に対する反論)
・(「アンケートにおいて回答された区民のうち、〇〇と感じていると回答された区民の割合を意味している。」との点は実施決裁文書の記載などとも矛盾していますが、この説明の根拠が分かる文書について)実施決裁文書においては、調査の目的は、この「地域活動協議会を知っている区民の割合」が目標値に達しているのかどうかについて区民アンケートを用いて測定するというものであり、監査に対する「(区民の割合は)区民アンケートの結果を意味する(すなわち、区民アンケートの結果数値をもって「区民の割合」とする)という説明とは矛盾している。原決定では請求対象文書は「住民監査請求結果以外には当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しない」としているが、上記のとおり監査に対する説明は区長会での説明や関連文書の記載とも矛盾している。そもそも、監査での説明の根拠が記された文書の公開を求めているにもかかわらず、その監査に対する説明内容が記された文書が対象文書になるはずがない。実施機関は何らかの根拠をもって監査に対する説明を行っているはずであり、その根拠が記された文書が存在しないはずはない。実施機関は、「区民アンケート回答者における割合が、上記支援の評価になるという根拠が分かる文書」とした請求対象文書について、「区長会議資料以外には当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しない」としている。しかし、審査請求書やこれまでの意見書の中でも述べた通り、この区長会議資料には「地域活動協議会を知っている区民の割合」などの指標の取扱いについて「引き続き全区において目標値を設定し、進捗状況を把握する」こと及び、「全区統一様式による区民アンケート(無作為抽出)」による指標の測定を行うことが記載されているのみであり、「区民アンケート回答者における割合が、上記支援の評価になるという根拠」などはどこにも記載されてはいない。これは諮問庁意見書にある「実施決議を行っている区長会議(所管は人事・財政部会)において、従前からアンケートにおいて回答された区民の割合を『区民の割合』とする共通認識が図られてい」たためであると考えられるが、まさに公開請求の趣旨は「なぜそのように考えるのか」という根拠の開示を求めるものであり、そのような「共通認識」に至った根拠が存在しないはずはない。市政改革室が作成した「マーケティング・リサーチの手引き」の61ページには、区民アンケートによる「〇〇である区民の割合」の測定や、区民アンケートの結果を運営方針におけるアウトカム指標として使用することについての説明が行われている。区長会において、区民アンケートの結果を「区民の割合」であるとする共通認識が図られていたという背景には、このような資料の存在があったことは明らかであり、請求対象文書もこれらの資料であると考えられる。
・(⑥ここでいう「調査結果の正確性」とは何か、また、「正確性は担保されている」とする根拠が分かる文書について)監査に対する説明は「400弱の回答者数が必要と考えた理由は、これまでの市民の声に対する回答において、『一般的に国などが行っている標本調査では、信頼水準95%として調査の設計をされており、その場合のサンプル数が400弱必要であることを参考とし』と示しているとおり、 調査結果の正確性は担保されている。」というものであった。この説明の根拠が示された文書が、このやり取りが記載されている監査請求結果であるはずはない。事実、監査請求結果には、実施機関がこの説明を監査に対して行ったことが記載されているだけで、正確性の意味するところは何か、実施機関がどのような根拠をもってこのような説明を行ったのかに関しては一切記載がない。区民アンケート結果報告書も同様で、これには上記根拠などに関する説明は一切ない。総務省統計局Webページ「なるほど統計学園 調査に必要な対象者数」で説明されている384については、数さえ満たせばよいというものではなく、(標本(回答者集団)は)「母集団に対する代表性を有していなければならない」という隠れた条件がある。区長会では「平成29年度は回答率が23%の区もあったため、(略)各区2000名を調査対象者数として設定する」と説明されており、想定回答率20%で400の回答者数を確保するとの内容になっているが、このような調査の場合、回答率が20%程度では回答率が低すぎるために、標本(回答者集団)は母集団の代表には全くならない。
・(この世論調査結果報告書の何をどのように区民アンケート結果報告書の2,3, 35,36ページの記載の根拠にしているのかが分かる文書について)この論点については、特に述べることはない。
・(区民アンケートの結果が、区同士の比較ができるものであるということの根拠が分かる文書について)令和4年8月24日付け意見書で、区民アンケートの結果が激しく上下していることを示したが、これはこの区民アンケートの結果が比較可能性を喪失してしまっていることの現れである。報告書に記載されている数値を見比べるだけで比較ができるなどとの安直なものではない。
・(2000配れば400回収しようが600回収しようが、その信頼性は同じである。統計の入門書にも書いてありクリアできる。」説明の根拠が分かる文書について)  「その信頼性は同じ」については総務省統計局Webページ「なるほど統計学園 調査に必要な対象者数」を(定められた信頼水準、許容標本誤差のうえで母比率を推定するために必要な調査対象者数さえ確保できれば良いと)誤読したものと思われるが、この資料は中学生、高校生が統計学を学習する際の副教材とすることを目的に作成されたものであり、理解の妨げになることは極力省略されている。調査の回収率が100%であることを前提としていることはその一つであり、この資料では回収率が低くなると、信頼性に問題を生じ、回収率が著しく低い場合には、信頼性は致命的な打撃を受けるという点については説明されていない。そのためこのような誤読をしたものと思われるが、いずれにせよ、社会調査や統計学に関する理解が中学生レベルであることが露呈している。なお、請求対象文書としては、前述のとおり市政改革室が作成したマーケティング・リサーチ関連文書が該当するものと考えられる。
・(区民アンケートの結果はどのような意味を持つデータで、取組の評価に用いることができるなどという根拠はどのようなものかが分かる文書について)ここでは「区民アンケートは、すべての区で統一的手法のもと無作為抽出した区民に対してアンケートを行った結果であり、施策を進めるうえでの参考資料として役立てているとの共通認識が図られている」と記載されている。しかし、公開請求の趣旨は「なぜそのように考えるのか」という根拠の開示を求めるものであり、そのような「共通認識」に至った根拠が存在しないはずはない。「施策を進めるうえでの参考資料として役立てているとの共通認識」に至った背景については、上記で示した「マーケティング・リサーチの手引き」の61ページなどの資料を基に、区民アンケートの結果を「地域活動協議会を知っている区民の割合」などであると解釈し、このことを根拠に市政改革プラン2.0区政編の「戦略・取組の方向性」に記載されている「地域活動協議会の認知度向上に向けた支援」などが奏功しているかどうかを判断できるとの認識であったことは疑いなく、請求対象文書は、これらに関して示されている市政改革室が作成した「運営方針策定要領」、「運営方針の手引き」やマーケティング・リサーチ関連文書であると考えられる。
・「行政の裁量に応じて行う事務」であるとしても、説明責任を果たさなければならないことは言うまでもない。仮に文書が不存在であるために説明が上記の内容にとどまり、説明責任を果たせないということであれば、これは「説明責任を果たすための公文書作成指針」の精神とは著しく乖離しており、同指針違反である。上記のように請求対象文書としては、市政改革室が作成した関係文書が考えられるが、実施機関がこれらの文書が対象文書ではないというのであれば、なぜこれらの文書が対象文書ではないのか、及び、どのような根拠をもって事務を行っているのかという点について説明責任を果たさなければならない。
8 令和5年8月23日付け意見書(実施機関の令和5年8月8日付け意見書に対する求釈明)
・実施機関は、区民アンケートは統計調査ではないと主張しているが、その調査の正確性、信頼性の根拠が統計学であるというのは一体どういうことなのか説明を求める。
・実施機関は監査に対し、「本件報告書の2ページ、35ページは、母集団の値を推計する場合の統計上のひとつの考え方を参考として記載しているものであり、本件契約では、母集団の推計は行っていない」と説明し、情報公開審査会に対しても、区民アンケートでは母比率の推定は行っていない旨の説明を行っているが、区民アンケートの正確性、信頼性の根拠として示されたものが、母比率の推定を行う際の統計学的説明であるというのはどういうことなのか、説明を求める。
9 令和5年8月31日付け意見書(審査会の実施機関に対する照会文書に対する意見)
・審査会から実施機関に対し、審査会が求めた資料が提出されなかった事情について問いただしていただき、提出されなかった理由、あるいは各文書のどこに根拠が記載されているというのかを審査請求人に明らかにしていただきたい。
10 令和5年9月19日付け意見書(令和5年8月22日付け審査請求人意見書の補足)
・区民アンケートの結果は真の値からは大きくかけ離れ、何を意味するものであるのかが分からないものになっている。そして、各区ごとに求めるべき真の値との誤差もばらばらであり、「区同士の比較」などは全くできないものになっている。
・実施機関は、「他区の報告書と見比べることで、区データの比較ができる」というのはなぜなのか、また、何を意味するものであるのかが分からないような値をもって「施策を進めるうえでの参考資料として役立て」ることができるというのはいかなる根拠によるものであるのかを説明すべきである。
11 令和5年9月27日付け意見書(実施機関の令和5年9月15日付け意見書に対する反論等)
・実施機関は、監査に対しては、「無作為抽出をすれば元々考えていた、区同士比較をする、経年で見るということでベースとしては問題がないと判断しすすめてきた。」(令和3年1112日付大監第9720ページ)と説明している。また、この区民アンケートを所管する区長会議人事・財政部会の今年度の事務局である旭区役所からの令和5年9月15日付市民の声No.2301-10577-001-0lの回答でも「『無作為抽出すれば』、『区同士比較する、経年で見るということでベースとしては問題がない』というのは、統計学的思考ではなく、単に無作為抽出をすれば、区民アンケート調査結果を見比べることで区同士や経年の比較が行えると考えているものです。」と回答している。これらの説明を行っている以上、このように考えるに至った根拠がないはずはない。「理論的に可能かについての検討は行っていない」にしても、何らかの根拠はあるはずである。
・区長会での説明にある「標本誤差」、「400弱の回答者数が求められる」や、監査に対する説明である「正確性は担保されている」、「信頼性」、「区同士の比較」、「経年での比較」の根拠は明らかに統計学に基づくものであり、そして、その根拠は市政改革室が作成した関係文書の記載の根拠と同じものである。ここから、請求対象文書は市政改革室が作成したこれら関係文書であることは明らかである。
・仮に文書が不存在であるために説明ができず、説明責任を果たせないということであれば、これは「説明責任を果たすための公文書作成指針」の精神とは著しく乖離しており、同指針違反である。
・区民アンケートの結果については、現実の区民の状態からは10%、15%もずれたものになっており、その「ずれ」自体も年度により大きく変動するものになっている。区民アンケートの結果データがこのような状態になっているにもかかわらず、区民アンケートにより施策事業の効果の測定ができ、また、「区同士の比較」「経年での比較」ができるというのはいかなる根拠によるものであるのか、明確に説明すべきである。
12 令和5年1010日付け意見書(令和5年9月27日付け審査請求人意見書の補足)
・区長会での説明において、統計学が調査の正確性や信頼性の根拠とされている点と、市民の声の回答で「本アンケートのサンプル数を決める際、あくまで参考として統計学上のひとつの考え方を引用している」と説明されている点については、完全に矛盾している。
・市民の声の冒頭では「区民アンケートについては、調査全体が統計学上必要とされるような調査設計を行っているものではありません。ただし、本アンケートのサンプル数を決める際、あくまで参考として統計学上のひとつの考え方を引用しているもの」とし、統計学は「本アンケートのサンプル数を決める際」に参考として引用しているものとの説明を行っているが、ここでは「回答者の年代別構成や性別構成が実際の母集団のどの程度の差であれば許容範囲なのか」について、参考として引用しているものとの説明が行われており、如何にこれらの説明が場当たり的であるかを物語っている。
・「本アンケートのサンプル数を決める際、あくまで参考として統計学上のひとつの考え方を引用している」との説明に沿っていえば、区長会での説明である「400弱のサンプル数(アンケート回答者数)が求められる」との説明の前提が崩れるということであり、この意味でも調査の正確性や信頼性の前提が崩れるということであるが、理解していないようである。
・各公開請求については、区民アンケートで施策、事業の効果測定ができるという理論的根拠は何か、「区同士比較する、経年で見るということでベースとしては問題がない」などとする理論的根拠は何かなどについて説明を求めるものであるが、これまでのところ実施機関はこの説明が全くできていない。
13 令和5年11月2日付け意見書(本件決定及び実施機関の令和5年8月8日付け意見書に対する意見)
・本件審査請求外で行われた実施機関による公開取消決定(令和5年1025日付け大市民第489号)及び不存在決定(同日付け大市民第490号)では、「令和3年11 12日付け大監第97号通知による住民監査請求結果」や「令和2年度区政に関す る区民アンケート報告書(24区分)」は請求対象文書ではないとしている。つまり、本件決定に記載された請求対象文書を「令和3年1112日付け大監第97号通知による住民監査請求結果」、「大市民第444号通知により公開した区民アンケート報告書」であるとしている決定理由は誤っていたということであり、この決定についても取り消されるべきである。
・実施機関の意見書(令和5年8月8日付け大市民第320号)においても、請求対象文書を「令和3年1112日付け大監第97号通知による住民監査請求結果」、「大市民第444 号通知により公開した区民アンケート報告書」であるとしているが、これについても上記不存在決定同様に修正されるべきである。
・調査結果を「〇〇である区民の割合」であるとすることができるのであれば、同じ根拠で性別を問う設問に対して「男性」と回答した人の割合をもって、「当該区の男性の割合」とすることができるはずである。そこで、平成29年度から令和3年度分の調査について「男性」と回答した人の割合と、各年度の12月末の20歳以上の住民基本台帳人口の男性の割合との乖離を一覧にしたものを作成したが、このデータを見ると調査結果は実際の男性の割合から10%近くもの誤差を生じており、この誤差は各年度及び各区でばらばらになっている。ここから、調査で得られた「地域活動協議会を知っている区民の割合」も区民の実態からは大きく乖離したものになっていることが容易に想像される。また、誤差が年度ごと、区ごとにばらばらになっていることから、「区同士の比較」や「経年でみる」などが全くできないデータになってしまっていることは明白である。
・実施機関は「正確性」、「信頼性」、「区同士の比較」、「経年でみる」について「インターネット上に公表されている資料や解説等をもとに区民アンケートの回収数が一定以上であれば、調査結果の分析を行うことができると知見を得た」としている。しかし、2023年9月24日付け意見書でも述べた通り、実施機関はこの「インターネット上に公表されている資料や解説等」を読み誤っている。今回の公開請求の対象文書としては、「調査結果の正確性(標本誤差)から…」との説明を行った区長会の関係文書が考えられるが、これを公開した場合、行っていることの学間的誤謬を指摘されることを恐れて隠蔽しているものと考えられる。
14 令和5年1114日付け意見書(本件決定及び実施機関の令和5年11月2日付け提出資料に対する意見)
・(請求対象文書②(下記第5、3、(1)の公開請求②に対応するもの。以下同)について)令和2年1月24日区長会議 安全・環境・防災部会資料「次期市政改革計画に掲載されない現行プランの『取組項目』及び『指標』の令和2年度以降の取扱いについて」に記載されているのは「地域活動協議会を知っている区民の割合」を指標として、この指標を「全区統一様式による区民アンケート(無作為抽出)」により測定する旨が書かれているだけであり、請求対象である「区民アンケート回答者における割合が、地域活動協議会の認知度向上に向けた支援の評価になるという根拠」はどこにも記載されていない。そもそも、「地域活動協議会を知っている区民の割合」を指標として、この指標を「全区統一様式による区民アンケート(無作為抽出)」により測定することを決定したということは、区民アンケートで測定した「地域活動協議会を知っている区民の割合」によって「地域活動協議会の認知度向上に向けた支援の評価」が可能であるという認識を前提として行われているのであり、請求対象文書はここで示された文書の前段となるものである。よって、これは請求対象文書ではない。
・(請求対象文書④について)令和2年1月24日区長会議 安全・環境・防災部会資料「次期市政改革計画に掲載されない現行プランの『取組項目』及び『指標』の令和2年度以降の取扱いについて」には、確かに区民アンケートの目的が経年変化の把握であるとする旨の記載が認められ、文書の特定は妥当なものであると認められる。
・(請求対象文書⑤について)令和2年1月16日区長会議 人事・財政部会資料「次期市政改革計画に位置付けられない項目にかかる全区共通実施内容について」に記載されているのは指標の内容、目標値の設定方法及び目標を達成したとする区の数が記載されているのみであり、請求対象である「区民アンケートの結果で、市政改革プラン2.0に記載された目標が達成されたかどうかが判断できるとする根拠」はどこにも記載されていない。区民アンケートの結果が「回答者の回答状況にとどまるもの」なのであれば、そのようなデータから市政改革プラン2.0の目標が達成されたのか、目標に近づいているのかなどの判断ができるはずがない。実施機関は、区民アンケートの結果で、市政改革プラン2.0に記載された目標が達成されたかどうかが判断できるとするのであれば、区民アンケートの結果数値が区民の状態を表したもの(つまりは母比率の推定値)になっているということを説明しなければならない。
・(請求対象文書⑩について)総務省統計局「なるほど統計学園 高等部」内「調査に必要な対象者数」(当該ウェブサイトが既に存在しないため、「国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」から取得したもの。)に記載されているのは、定められた信頼水準及び許容標本誤差の下で母比率(このWebページでは「制服/私服がよいと思う生徒の割合」)を求める標本調査において必要となるサンプルサイズの求め方である。そして、ここには「2000配れば400回収しようが600回収しようが、その信頼性は同じ」などとの説明はどこにも書かれていない。nはサンプルサイズ(アンケート回答者数)であるが、この式から分かるようにnが大きくなれば標本誤差は小さくなる。つまり「400回収しようが600回収しようが、その信頼性は同じ」ではない。資料中にあるサンプルサイズ(アンケート回答者数)を求める式は、・調査対象者は母集団から無作為に抽出する/・調査の回答率は100%であるという前提(これは、標本(回答者集団)は母集団に対する代表性を有するということを意味する。)の上に成立しているのであり、この前提が満たされない場合には384という値には何の意味もない。実施機関はこの点を見落としている。実施機関は裁決書(令和3年6月15日付け大情審答申第492号)において「当該アンケートは市民又は区民全体の状況を統計学的に推計できるよう設計されておらず、『市政改革プラン(区政編)の進捗状況(平成30 年8月末時点)』に掲載した内容はあくまで各調査の回答者の回答状況にとどまるもの」と説明している。その区民アンケートの「信頼性」の根拠が統計学によるものであるというのはどう理解すればよいのか。
15 令和6年1月12日付け意見書(実施機関の令和5年1227日付け意見書に対する反論)
・(請求対象文書①について)「アンケートにおいて回答された区民のうち、〇〇と感じていると回答された区民の割合を意味している」との説明については、令和5年8月19日付意見書で述べた通り実施決裁文書や市政改革プラン2.0区政編の記載とは矛盾している。また、これも同意見書で述べた通りこの説明は区長会での説明や、監査に対する「調査結果の正確性は担保されている」、「信頼性は同じ」などの説明とも矛盾している。公開請求の趣旨は理論的根拠の説明を求めるものであり、諮問庁が「正確性」、「信頼性」の根拠としている文書こそがまさに請求対象文書である。また、「代表性検証シート」に関しては、標本は代表性を有している必要があるとの知見や、この文書ではこれを「分散分析」という手法を用いて検証する知見、また、P値や帰無仮説といった統計学上の用語に関する知見がなければ記載できないものであり、これらの知見を得る根拠となった文書が存在しないはずはない。
・(請求対象文書③について)諮問庁の不存在による非公開決定(令和5年11月9日大市民第516号)で「『ここで言う「より詳細に区同士比較、経年の変化を評価、分析」の具体内容が示された文書』については、同じ質問項目については、その回答結果を見比べるに留まり」との記載がある。行っていることは「見比べているだけ」ということである。ところで諮問庁は情報公開審査会に対して「当該アンケートは市民又は区民全体の状況を統計学的に推計できるよう設計されておらず、『市政改革プラン(区政編)の進捗状況(平成30年8月末時点)』に掲載した内容はあくまで各調査の回答者の回答状況にとどまるもの」(令和3年6月15日付け情報公開審査会答申第492号)と説明している。「回答者の回答状況にとどまる」に過ぎない調査結果が記されているだけの報告書を見比べるだけで「経年の比較ができる」というのは何を根拠に言っているのか。公開請求のポイントはまさにそこにある。公開請求の趣旨は、区民アンケートの結果が経年比較できるものであるとする理論的根拠の説明を求めるものである。諮問庁が特定している「区民アンケート報告書」はこのような誤差まみれの数値が記載されているだけであり、まさに「回答者の回答状況にとどまる」に過ぎないものになっており、説明を求めている理論的根拠などはどこにも記載されていない。
・(請求対象文書⑦について)諮問庁から公開された「平成29年度世論調査報告書」における標本誤差を求める算出式は、令和2年度区民アンケート報告書の記載と全く同じものである。つまり、諮問庁の区民アンケートは世論調査と理論的根拠を同じくするものであり、単に報告書の記載のみを「参考」としたものではなく、調査のよって立つ理論的根拠そのものが同じものであるということである。これが分かる文書が存在しないはずはない。
・(請求対象文書⑧について)上述の通り、区民アンケート報告書には誤差まみれの数値が記載されているだけであり、とても「区同士の比較」などできるものではない。そして、公開請求の趣旨は、「区民アンケートの結果が、区同士の比較ができるものである」と言える理論的根拠の説明を求めるものであり、区民アンケート報告書にはこの理論的根拠は一切記載されていない。
・(請求対象文書⑨について)上述の通り、区民アンケート報告書には誤差まみれの数値が記載されているだけであり、とても「経年の比較」などできるものではない。そして、公開請求の趣旨は、「区民アンケートの結果が、経年の比較ができるものである」と言える理論的根拠の説明を求めるものであり、区民アンケート報告書にはこの理論的根拠は一切記載されていない。
・(請求対象文書⑪について)上述の通り、区民アンケート報告書には誤差まみれの数値が記載されているだけであり、記載されている数値が何を意味するものであるのかの解釈は極めて困難であり、とても「取組の評価に用いることができる」ものではない。そして、ここでは「区民アンケート報告書は、施策を進める上での参考資料としての意味があり」と記載されているが、これは区民アンケートの結果数値の使用方法をごまかすものである。現実には区民アンケートにより取得された数値は目標値との大小比較が行われ、目標達成との判断を行うために使用されているのであり、「施策を進める上での参考資料」との説明とは著しく乖離している。「毎年調査することで経年による変化を把握できる」についても、単に「手法が同じ」というだけでは、結果は意味を持つものにはならない。そして、これについても公開請求の趣旨は「区民アンケートの結果はどのような意味を持つデータで、取組の評価に用いることができるなどと言う理論的根拠」の説明を求めるものであり、区民      アンケート報告書にはこの理論的根拠は一切記載されていない。
・諮問庁は区民アンケートを巡って行っていることの根拠や合理性、妥当性を全く説明できていない。これは上記で触れた「代表性検証シート」の記載内容が学問(統計学)的には問題だらけで、この文書の作成者は統計学に関しては碌に理解していないことが分かる。そして、令和2年度の報告書に「男女間のP値2%:P値が有意水準5%未満なので、回答率に偏りがあると判断します」、「各年齢区分間のP値 3%:P値が有意水準5%未満なので、回答率に偏りがあると判断します」と記載しながら、標本誤差を求める式を示している。標本誤差を求める式については、「回答率に偏りがない」ことを前提に成立するものなのであり、このような記載をしていること自体が、統計学に関する理解を欠いていることを示している。その一方で調査の「正確性」、「信頼性」の根拠として統計学を持ち出しているのであるから、調査がまともなものになるはずがない。「正確性は担保されている」としているにもかかわらず、調査結果があるべき値から10%もの誤差を生じていることがこれを証している。諮問庁は請求対象文書を公開した場合に受ける学問的誤謬に対する指摘を恐れて、これを隠蔽しているものであると推察されるが、仮に真に請求対象文書が不存在であるとすれば、これは区民アンケートを巡って行っていることの理論的根拠が確認できるだけの(つまり本来作成すべき)文書を作成してこなかった結果として、行っていることの理論的根拠が忘れ去られて形骸化し、その帰結として不適切なものになり、そして説明責任を果たせない事態に陥っているのであり、これは「説明責任を果たすための公文書作成指針」の精神からは著しく乖離しており、同指針違反である。大阪市の電子調達システムを見ると、この区民アンケートの今年度実施分については10,359,378円もの費用をかけて実施するようである。根拠や合理性あるいは妥当性を説明できないような調査に一千万円を超える費用を費やすなど許されるはずがない。
・各年度の区民アンケートにおいて「男性」と回答した回答者の割合と、各年度12月末時点の住民基本台帳における20歳以上の男性の割合との差(誤差)を一覧にしたものを見ると、いずれの年度においても大きな誤差が発生しており、この誤差は区ごとあるいは年度ごとに大きく変動していることが分かる。非標本誤差が発生してしまっていることにより、データの差が「変動」や「違い」であるのか、単なる「誤差」であるのかの見分けがつかなくなってしまっていることがこのグラフからは読み取れる。
16 令和6年1月15日付け意見書(令和6年1月12日付け審査請求人意見書の補足)
・諮問庁は令和3年度の段階では「当該アンケートについて統計学上必要とされる、信頼度、標本誤差の設定を行っている設計内容が記載された文書は存在しない」との説明を行っていたわけであるが、今回の諮問庁意見書では、信頼水準を95%に設定するなどの調査設計の存在を認めている。これまでの意見書などで述べてきた通り、諮問庁は区長会で「調査結果の正確性(標本誤差)から…各区400弱のアンケート回答者数が求められる」との説明を行っている。ここでは「400弱」との具体的な値が示されているが、諮問庁が示している総務省統計局Webページに記載されている通り、この値を求めるためには、信頼水準95%、許容標本誤差を5%という設定を行う必要があるのであり、区長会で「400弱」という数値を示している以上、この設定内容が示されている調査設計文書が存在しないはずはない。つまり、令和3年段階での説明は真っ赤な嘘だったということである。
・令和6年1月12日付け意見書でも述べたが、諮問庁が示している総務省統計局Web ページには「400弱」(総務省Webページでは384)の前提には、「標本(回答者集団)が母集団に対する代表性を有する」という条件があることが(こっそりと)記載されている。そして、諮問庁が行う区民アンケートについては、低回収率が原因で標本(回答者集団)は母集団に対する代表性を有するものにはなっておらず、諮問庁はこの事実やこれが意味するところについての認識が極めて不十分である。令和6年1月12日付け意見書で述べた性別構成比に関する誤差はこのようなことが原因で発生しているものである。結論としては、諮問庁が特定している監査結果、区民アンケート報告書には「正確性は担保されている」とする根拠など一切記載されておらず、これらは請求対象文書ではない。
・諮問庁は標本誤差の算出式を含む「報告書を読む際の留意点」の記載について、「サンプル数を得るための参考にすぎず、母比率の推定を行っているとの誤解を招く」との理由で、令和3年度の報告書から削除した。しかし、諮問庁はこの区民アンケートの「正確性」、「信頼性」の根拠として、総務省統計局Webページ「なるほど統計学園高等部 調査に必要な対象者数」を示している(「資料の提出について」(令和5年11月2日付大市民第509号))。このWebページで説明されているのは、定められた「正確性」、「信頼性」の下で母比率の推定を行うために必要な条件に関する説明なのであり、このことから、区民アンケートが母比率の推定(すなわち「市民又は区民全体の状況を統計学的に推計」)を行うためのものであることは明らかである。そして、「母比率の推定を行っているとの誤解を招く」として削除したものを、区民アンケートの「正確性」、「信頼性」の根拠として持ち出すなど、諮問庁の説明は完全に論理破綻している。
17 令和6年1月19日付け意見書(令和6年1月12日付け審査請求人意見書の補足)
・弁明書(令和4年8月19日付大市民第319号)には「区民アンケート調査は統計調査には該当せず、統計学的見地に基づいた設計と指標の評価は行っていない」と記載されているが、諮問庁意見書には「同区民アンケート報告書においては、調査設計において設定した信頼水準95%を担保するために必要とされるサンプル数が確保されているかが記載されている」と記載されているのであり、「正確性」などに関する諮問庁の説明と合わせて、この弁明書の記載は明らかに虚偽である。そして、この「統計学的見地に基づいた設計と指標の評価は行っていない」との論点は、請求対象文書が不存在であるという根拠になっているのであり、不存在の根拠についても崩れている。
18 令和6年1月24日付け意見書(令和6年1月12日付け審査請求人意見書及び令和6年1月19日付け審査請求人意見書の補足)
・諮問庁は公開請求について「審査請求人はおおむね下記(1)および(2)の理由により、請求対象となる公文書が存在するはずであると主張している。」、「(1)アンケート調査の設計と指標の評価にあたっては統計学的見地に基づいた検証が必要であり、請求対象である区民アンケート調査においても統計学的見地に基づいた設計と指標の評価が行われているはずであるというのが主な主張である。」としたうえで、「区民アンケート調査は統計調査には該当せず、統計学的見地に基づいた設計と指標の評価は行っていない。」ことを根拠に請求対象文書は不存在であるとしている。しかし、諮問庁意見書の「調査設計において設定した信頼水準95%」との記載により、「区民アンケート調査は統計調査には該当せず、統計学的見地に基づいた設計と指標の評価は行っていない。」との根拠が虚偽説明であることが明らかになった。諮問庁は虚偽説明を重ねるのではなく、公開請求や説明責任に真摯に向き合うべきである。
19 令和6年3月4日付け意見書(令和5年1227日付け実施機関意見書に対する求釈明)
・諮問庁意見書では、統計学的根拠をもとに「正確性は担保されて」おり、その旨が記載されていることを根拠に監査結果と区民アンケート報告書が請求対象文書として特定した旨が説明されている。しかるに市民の声の回答では「区政に関する区民アンケートは、(略)統計学上の調査設計を行っているものではありません。」とし、また、実施機関の弁明書では「区民アンケートの正確性(信頼性)について、統計学を根拠とするものではない」としている。また2月28日の市民局担当者との電話でも、区民アンケートは統計調査ではないとの説明がなされている。一方で本件決定理由や弁明書では、「正確性」については、「なるほど統計学園」を示し、統計学的根拠をもとにした説明がなされている。このように監査結果と区民アンケート報告書を請求対象文書として特定する根拠について諮問庁の説明は二転三転しているが、特定の根拠について明確にされたい。
・「正確性」の根拠が統計学である場合、諮問庁が示した「なるほど統計学園」で議論されているのは標本誤差のみであり、非標本誤差については触れられていない。この非標本誤差について検討していないというのであれば「正確性は担保されている」などといえるはずがなく、監査結果と区民アンケート報告書を特定した根拠が失われるが、これはどういうことか。
・「正確性」の根拠が統計学ではないとする場合、400弱の回答者数を確保していることを理由に「正確性は担保されている」とする主張の根拠が不明となり、これも監査結果と区民アンケート報告書を特定した根拠が失われるが、これはどういうことか。
・「『区同士の比較』や『経年での比較』は単に区民アンケートの結果数値を見比べて、結果の増減に基づいて判断しているだけ」との説明が事実なのであれば、これまでの弁明書や意見書で主張してきたはずの「信頼性」や「正確性」に関する議論が、その意味を喪失するということである。つまり、そもそも区民アンケートは正確性や信頼性を追求するものではなく、単に結果数値の増減をみるためだけのものであり、実施機関意見書に記載されている「⑥についての公開請求の趣旨は…」との記載は全く無意味であり、「正確性が担保されている」とする根拠が分かるものとして区民アンケート報告書を特定したこともまた無意味なのであり、不存在の理由は「区民アンケートは正確性を求めるものではない」というものになるはずである。(もっともこの場合、監査に対して嘘をついたということになるが。)しかし、そもそも区民アンケートが単に結果数値の増減をみるためだけのものであるということなのであれば、令和元年度、令和2年度の報告書にあった「報告書を読む際の留意点」の記載や、その記載の根拠となっている「代表性検証シート」の作成などを行う動機が存在しないということになり、現実に行われたこととは明白に矛盾している。これも説明に詰まった挙句の詭弁であると認められる。
・市政改革プラン2.0区政編では、「多様な区民の意見やニーズを的確に把握する」ために、「区民の意見やニーズの把握手法について、これまでの取組や他都市の事例を参考に様々な工夫を凝らしていく」取り組みを、「区役所が、様々な機会を通じて区民の意見やニーズを把握していると感じる区民の割合」を指標として、「平成29年度35%」を目標として進めることが記載されている。ここで言う「区民」が区民全体をさすことは言うまでもない。そして、目標に記載されている「区民の割合」が文字通り、区民全体のうち「区役所が、様々な機会を通じて区民の意見やニーズを把握していると感じる人の割合」であることもまた明らかである。上記の区長会資料ではこの項目は平成30年度で目標末達となっており、引き続き区民アンケートで測定することとされている。つまり区長会では、「区民アンケートによる指標の(定点観測的な)測定」が決定されているのであり、これは区民アンケートにより「区民の割合」の測定が可能であるとの認識を前提になされているものであると認められる。そして、「定点観測的に」としていることから「経年の比較」ができるものであるとの認識であったことも認められる。請求対象文書はこの前提となる認識の根拠が記載されている、つまり区民アンケートにより「区民の割合」の測定が可能であるなどとの認識のもととなった文書であると認められる。
20 令和6年3月19日付け意見書(令和6年2月26日付け実施機関意見書に対する反論)
・「男性」と回答した人の割合が現実の男性の割合からはかけ離れており、区民アン ケートの結果データが何を表しているのかが分からないものになっている。その他の指標についてもこれと同様で、求めるべき真の値からはかけ離れて何を表しているのかが分からなくなっていることは明らかある。これは先の意見書でも言及した非標本誤差によるものである。この区民アンケートの結果は非標本誤差に塗りつぶされてしまっており、区民の状態やその変化が分からないものになり果ててしまっているということである。
・(請求対象文書⑧に係る記載について)諮問庁は、当初非公開決定においては「区同士の比較ができるという根拠が分かる文書」は区民アンケート報告書であるとしていたにもかかわらず、(審査請求外の)公開決定の取消決定では、区民アンケート報告書は「『無作為抽出をすれば元々考えていた、区同士比較をする(略)ということでベースとしては問題がないと判断しすすめてきた』ことに対する説明の根拠資料ではない」とされているのであり、判断は正反対になっている。現時点で当初非公開決定は取り消されていないので「他区の報告書と見比べることで、区データの比較ができる」との考えを維持しているものと思われるが、この点については情報公開審査会から質して明確にしていただきたい。
・西淀川区と東住吉区のいずれの区も住民基本台帳のデータは5年間で0.1%、0.3%の減少にとどまっているのに対し、回答割合はいずれの区も激しく乱高下している。また、回答割合について令和2年度までは西淀川区の方が高くなっているものが、令和3年度以後は逆転している。住民基本台帳のデータはずっと西淀川区の方が高いままだが、この場合「区同士の比較」は何を意味しているのか。この回答割合の推移は何を表しているのかを根拠を示して説明するように求めてください。この説明ができないのであれば、「区同士の比較ができるという根拠が示されているのは区民アンケート報告書である」との主張に根拠がないことになる。
・(請求対象文書⑪に係る記載について)実施機関は、「区民アンケート報告書並びに区長会議資料の両方」に「区民アンケートの結果はどのような意味を持つデータ」であるのかが記載され、「取組の評価に用いることができるなどと言う根拠」が記載されているとの認識を示している。しかし、これまでの意見書の中でも述べてきた通り、区民アンケート報告書を通して見ても、それらしい記載は「報告書を読む際の留意点」のみであり、その他は結果数値が並んでいるだけである。そして「報告書を読む際の留意点」の記載は「サンプル数を得るための参考」に過ぎないものであるとの説明だったはずであり、この区民アンケート報告書は請求対象文書ではない。また、区長会議資料についても、「地域活動協議会を知っている区民の割合」などの指標を「全区統一様式による区民アンケート(無作為抽出)」により測定する旨が記載されているのみであり、意見書にある「施策を進めるうえでの参考資料として役立てているとの共通認識が図られている」というのはいかなる根拠によるものであるのかも記載がない。よってこれも請求対象文書ではない。
・市民局の担当係長はこの区民アンケートに関して電話で「「区同士の比較ができる」、「経年での比較ができる」というのは、区民アンケート報告書に記載された数値が単なる数値として比較可能であるということを言っているにすぎない。施策、事業の評価を行っていることについては、区民アンケートの結果を用いて評価を行う旨を大阪市の裁量で決定したものであり、この数値の増減が施策、事業の効果を表しているということに関する根拠はない。(※この「根拠はない」という説明は直後に「区において説明されるべきもの」との説明に変遷した。)」との説明を行った。この「大阪市の裁量で決定したもの」との説明は、これまでの「区同士の比較ができる」、「経年での比較ができる」などとの説明とはその本質を異にするものであり、根拠がなく単に「そうすることに決めた」ものなのであれば、そのような決定の妥当性を示す文書を公開すべきである。
・実施機関は、令和3年1112日付け大監第97号「住民監査請求について(通知)」を根拠に実施機関に裁量がある旨主張するが、諮問庁が監査に対して「無作為抽出した区民にアンケートを行い、同じ条件でアンケートを行えば、区同士の比較や同一区における経年での比較の資料としては問題ない」と説明したことが判断の根拠となっているのであり、この監査の判断が「区民アンケートの結果を用いて評価を      行う旨を大阪市の裁量で決定した」ことの妥当性の根拠になるはずがない。
・このようにこの区民アンケートの結果は誤差にまみれ、区民の実態を全く表してはいない。このような区民アンケートの結果データに基づいて施策事業を云々することには、(そのように大阪市の裁量で決定したものであるとしても)なんの合性理も妥当性もない。にもかかわらず、現在までに諮問庁はこれまでのところ「区同士の比較ができる」、「経年の比較ができる」、「施策を進めるうえでの参考資料として役立てている」などとこの合理性、妥当性を主張している。このように主張する以上、主張の根拠が示されている文書が存在しないはずはない。仮に不存在であるのであれば、これまでにも主張している通り、説明責任を果たすための公文書作成指針違反である。
21 令和6年4月22日付け意見書(令和6年4月12日付け実施機関意見書に対する反論等)
・「平成29年度世論調査報告書」2頁の「報告書を読む際の留意点」やこれらの記載の中心は母比率の推定を行う際の誤差(標本誤差)に関する議論であり、「必要な回答者数」に関するものではない。「必要な回答者数」の算出方法に関する記載などどこにもなく、弁明書の「令和2年度区民アンケートにおける必要な回答者数の算定にあたって同報告書を参考とした」との説明は到底信用できるものではない。
・報告書2、3、3536ページの記載は、調査結果から母比率の推定を行う際の標本誤差(信頼区間)の説明を行うためのものであり、これを先行している平成29年度世論調査報告書から引用したものであることは明らかである。実施機関は請求対象文書について、世論調査報告書以外には存在しないとしているが、この報告書には記載内容の理論的根拠は全く記載されていない。これを引用するにあたっては、この理論的根拠に関する理解が不可欠なのであり、これまでに示したような統計学に関する資料などが不存在であるはずはない。
・弁明書では報告書のこの記載を削除したのは監査からの「誤解を招く」との指摘があったからであるとしているが、誤解を招くどころか監査が指摘している「施策により達成しようとしている目標が、区民全体の割合を目標値以上にすることである」などはまさにその通りのものである。この記載を削除するに至った直接の原因は、審査請求人が市民局を訪れ、この記載に関し、「母集団値を推定できます」との記載と、監査に対する「本件契約では、母集団の推計は行っていない」などの説明が矛盾していること、標本が代表性を備えていないために「母集団値を推定できます」との記載が成立しないことなどを指摘して説明を求めたところ、応対した担当職員はまともに説明することができず、挙句に「(この記載は)もう削除しますわ」と言い放って削除されたもので、要するに説明できずに削除されたものである。
・実施機関は、情報公開審査会に対して「各調査は市民又は区民全体の状況を統計学的に推計できるよう設計されたものではなく、あくまで各調査の回答者の回答状況にとどまるものであり」(令和3年6月15日付大情審答申第492号)などの説明を行っている。そしてこの説明を今日に至るまで続けているが、「統計学的に推計できるよう設計されたものではなく」との説明が虚偽であることは、実施機関が情報公開審査会に対して提出した意見書(令和5年1227日付大市民第720号)に「同区民アンケート報告書においては、調査設計において設定した信頼水準95%」との記載があったことから明らかである。つまり、「信頼水準を95%に設定」するということは、この精度で母比率の推定を行うということなのであり、「各調査は市民又は区民全体の状況を統計学的に推計できるよう設計されたものではなく」との説明は完全な虚偽説明である。
・(請求対象文書⑪について)実施機関が根拠が記載されているとして特定した部分には、ただ単に「全区統一様式による区民アンケート」で指標の測定を行うということのみであり、「区民アンケートの結果を取組の評価に用いること」ができるというのはなぜなのかという根拠などどこにも記載されていない。つまり請求の趣旨に合致してはいない。
・去る2月28日の市民局担当係長の電話による説明では、区民アンケートの結果を用いて施策事業の評価を行うことについては、「大阪市の裁量によりそのようにすると決定したものであり、根拠があるものではない」との説明を行った。(なお、「根拠はない」との説明は、直後に「区において説明されるべきもの」との説明に変遷した。)この説明のとおりなのであれば、そもそも区民アンケート報告書などを特定していることに根拠がないということになる。そして、不存在の理由についても「そのように判断すると決定したものであるため」というものになるはずである。しかし、「大阪市の裁量」を持ち出すのであれば、そのような決定に妥当性があるのかということが問題になる。決定に妥当性がないのであれば、それはすなわち「裁量権の濫用」ということになるからである。そして、論点は根拠から妥当性に移る。実施機関は「根拠はない」というのであれば、「区民アンケートの結果を用いて施策事業の評価を行う」と決定したことに関する妥当性について文書を公開して説明しなければならないはずである。
22 令和6年5月17日付け意見書(令和6年4月22日付け審査請求人意見書の補足及び求釈明)
・諮問庁資料では、「地域活動協議会を知っている区民の割合」などの指標を「全区統一様式による区民アンケート(無作為抽出)」により測定する旨が記載されているだけである。また、諮問庁の意見書(令和5年8月8日付け大市民第320号)には「実施決議を行っている区長会議(所管は人事・財政部会)において、従前から区民アンケートは、すべての区で統一的手法のもと無作為抽出した区民に対してアンケートを行った結果であり、施策を進めるうえでの参考資料として役立てているとの共通認識が図られている」、「実施決議を行っている区長会議(所管は人事・財政部会)において、従前からアンケートにおいて回答された区民の割合を『区民の割合』とする共通認識が図られている」との記載がある。区民アンケートの結果については、標本の偏りによる誤差の変動が大きく表れたものに過ぎないものであるが、このような単なる誤差の大小が表れているに過ぎないものが「区民の割合」とすることができ、「施策を進める上での参考資料として役立て」ることができるというのはいかなる根拠によるものであるのか、説明を求める。
・また、同意見書には「本件アンケートは、実施決裁のとおり『すべての区で、統一的手法のもと無作為抽出した区民に対してアンケートを行うもの』であり、具体的には各区調査対象者数を2,000人とした無作為抽出によるアンケートを実施し、経年による変化を把握し施策を進める上での参考資料としている。」との記載もあるが、上記同様単なる誤差の大小が表れているに過ぎないもので「経年による変化を把握」でき、「施策を進める上での参考資料」とすることができるのはいかなる根拠によるものであるのか、説明を求める。
23 令和6年6月20日付け意見書(令和6年6月7日付け実施機関意見書に対する反論)
・令和元年度、令和2年度の報告書にあった「『標本誤差』及び『母集団の代表性』」等の記載の根拠として公開されたのが「平成29年度世論調査報告書」及び「代表性検証シート」である。「平成29年度世論調査報告書」に関しては、情報公開審査会から「どのような理由で世論調査報告書の『報告書を読む際の留意点』を令和2年度区民アンケート結果報告書にも記載することとしたのかについて、意見書に記載の上、提出してください。」との照会を受け、「『平成29年度世論調査報告書』2頁の『報告書を読む際の留意点』については、令和2年度区民アンケートにおける必要な回答者数の算定にあたって同報告書を参考としたことから、令和2年度区民アンケート結果報告書の2、3、3536頁に同様の記載を行った。」との説明を行っている(令和6年4月12日付大市民第43号)。
 また、この報告書の記載について諮問庁は令和3年8月24日付市民の声の回答で、「サンプル数を決める際には統計学上の考え方を引用しています」としており、この報告書の記載を根拠に、区長会での「調査結果の正確性(標本誤差)から、統計学上、1区あたり400弱のアンケート回答者数が求められる」との説明の「400          弱」を導出した旨の説明を行っている。なお、この点に関する監査に対する説明は「本件報告書の2ページ、35ページは、母集団の値を推計する場合の統計上のひとつの考え方を参考として記載しているもの」との説明が行われており上記「必要な回答者数の算定にあたって…」との説明とは内容が異なっている。
・諮問庁は意見書(令和5年1227日付大市民第720号)において「同区民アンケート報告書においては、調査設計において設定した信頼水準95%」との説明を行っており、この区民アンケートの設計にあたり信頼水準を95%に設定したことを明らかにしている。諮問庁はここから、上記「アンケートの作業工程別ポイント!!アンケート方法を検討編」の記載を基に「必要な回答者数」を384(400弱)と判断したものと考えられる。
・なお、この「誤差±5%を確保するには約384標本」の理論的根拠は、諮問庁がこの区民アンケートの「正確性」「信頼性」などの根拠として示している総務省統計局Webページ「なるほど統計学園」に記載されているものであり、統計学の「母比率の推定」である。諮問庁意見書には、「「運営方針の手引き」「運営方針策定要領」「マーケティング・リサーチの手引き」には、令和3年8月12日付け公開請求の趣旨である「令和元年度区民アンケート報告書」に記載の「標本誤差」及び「母集団の代表性」に関する論理的根拠に関する記載がない」と記載されているが、標本誤差に関する記載は上記「アンケートの作業工程別ポイント!! アンケート方法を検討編」と題する文書においてなされている。
・上記で「アンケートの作業工程別ポイント!! アンケート方法を検討編」に記載されている標本誤差などの理論的根拠が統計学の「母比率の推定」であると述べたが、これらのマーケティング・リサーチの手引きの記載の根拠もまた統計学の「母比率の推定」である。区民アンケート報告書の「母集団値を推定できます」との記載は「平成29年度世論調査報告書」の記載(「母集団値を測定できます」)を基にしたものであることから、その理論的根拠は「マーケティング・リサーチの手引き」や「アンケートの作業工程別ポイント!! アンケート方法を検討編」の記載であり、そのもととなっている統計学である。
・諮問庁意見書では、もととなる公開請求を「令和3年8月12日付」のものであるとし、次のとおり請求の趣旨とは異なるとしている。
「運営方針の手引き」「運営方針策定要領」「マーケティング・リサーチの手引き」には、令和3年8月12日付け公開請求の趣旨である「令和元年度区民アンケート報告書」に記載の「標本誤差」及び「母集団の代表性」に関する論理的根拠に関する記載がないことから、対象文書ではないと考えている。/なお、区民アンケートの設計に際して、これらのマーケティング・リサーチ関連文書も参照にしていたのかは不明であるが、前述のとおり公開請求の趣旨と異なることから対象文書とならないと考えている。
 しかし、もととなる公開請求は令和3年8月12日付のものではなく、20211112日付のものである。ここでは請求対象文書を「世論調査結果報告書の何をどのように区民アンケート結果報告書の2、3、3536ページの記載の根拠にしているのかが分かる文書」としているのであり、標本誤差に関する記載に限定したものではなく、諮問庁の主張は請求の趣旨を矮小化するものである。
・諮問庁は区民アンケート結果報告書の「今回の調査は標本調査ですので、標本による測定値(調査の結果)に基づいて、母集団値を推定できます」との記載を削除し、区民アンケートを「統計調査ではない」、「標本調査ではない」と説明するに至りますが、標本調査ではない区民アンケートで統計学を基に「必要な回答者数の算定」を行う必要がどこにあったのかという質問に全く説明がないこと、統計調査ではない区民アンケートの「正確性は担保されている」根拠が統計学であるというのはどういうことなのかという質問にも全く説明がないことが、区民アンケートが統計学に基づいた標本調査ではないという説明が虚偽であることを証している。なお、上記「必要な」について、何のために必要であったのかの説明もありませんが、これは上記のとおり信頼水準95%での標本誤差を最大±5%という精度で母比率を推定するために必要であるということは明らかである。
24 令和6年8月1日付け意見書(令和5年1227日付け実施機関意見書に対する審査請求人既提出意見書の補足)
・審査請求人は、令和6年7月12日付けで、区民アンケートについて、年度ごとに同じ条件でアンケートを実施することで、同じ質問項目については、その回答結果を見比べることで経年の比較ができると考えた根拠がわかる文書の公開請求を行った。それに対し、実施機関は、「区政に関する区民アンケートは、毎年実施しており、同じ質問項目については、その回答結果を見比べることで経年の比較ができると考えているが、その根拠について、当該公文書をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」との理由を付して不存在による非公開決定を行った。
・一方、実施機関の弁明書では、区民アンケートの結果が経年比較できるものであるとする根拠が分かる文書とした請求対象文書は区民アンケート調査報告書であるとされており、また、実施機関意見書においても、「③についての公開請求の趣旨は、区民アンケートの結果が経年比較できるものであるとする根拠が分かるものと理解し、経年比較できるものとして区民アンケート報告書を特定した。区民アンケートは毎年実施しており、同報告書には、区別回答者数と回答率、肯定的な意見の割合など、区別に表やグラフ等でまとめており、同じ質問項目については、その回答結果を見比べることで経年の比較ができる。」と主張しているとおり、請求対象文書は区民アンケート報告書であるとされている。
・上記のとおり、今回同じ趣旨の公開請求を行っているにもかかわらず不存在となっているのであり、そちらが正しいということであれば、実施機関の弁明書や意見書は虚偽であると言える。
25 令和6年8月14日付け意見書(令和5年1227日付け実施機関意見書に対する令和6年8月1日付け意見書の補足)
・本年7月12日の公開請求では、請求する公文書の件名及び内容の記載「この区民アンケート(区政に関する区民アンケート)についても、「年度ごとに同じ条件でアンケートを実施することで、同じ質問項目については、その回答結果を見比べることで経年の比較ができる」と考えた根拠がわかる文書」に対して、「当該公文書をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しない」として不存在決定がなされている。
・弁明書(令和4年8月19日大市民第319号)のもととなった公開請求及び諮問庁意見書のもととなった公開請求における請求対象文書の内容では、請求する公文書の件名及び内容の記載「区民アンケートの結果が、区同士の比較ができるものであるということ、また、経年変化を測定できるものであるということについて、その根拠が分かる文書」に対して、「令和3年7月30日付け大市民第444号通知により公開した区民アンケート報告書」を特定している(なお、決定としては不存在)。
・諮問庁は上記のいずれについても請求の趣旨を同様にとらえているが、結果は異なっている。そして、なぜこのような違いが生ずるのかについて、市民の声でもまともに説明しようとはしていない。
・このように、今回の一連の公開請求に関しては、諮問庁の説明はあちこちで矛盾している。これは、この「区政に関する区民アンケート」が、当初は統計学的根拠をもって行っていたところ、その学問的誤謬について説明できなくなったとたんに「統計学に基づく調査ではない」などと説明を変えたために、それまで作成した資料や区長会での説明などと矛盾を生じ、それが随所で露呈した結果であると考えられる。諮問庁は弁明書、意見書などにおいて多数の嘘をついており、その主張はとても信用できるものではない。
26 令和6年8月19日付け意見書
・令和6年7月29日付け「(前略)区民アンケート報告書のどの部分が「根拠」に該当するのか特定して公開してください。」との公開請求に対し、「区政に関する区民アンケートは、毎年実施しており、同じ質問項目については、その回答結果を見比べることで経年の比較ができると考えていることから、見比べる資料としては同調査報告書となるものの、経年比較ができると考えた根拠がわかる文書については、当該公文書をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」との理由で不存在による非公開決定がなされた。ここでは区民アンケート調査報告書は「見比べる資料」ではあるものの、「経年比較ができると考えた根拠がわかる文書」ではないとされている。
・従前の諮問庁の説明では、市民局は「区民アンケートの結果が経年比較できるものであるとする根拠が分かる文書」は区民アンケート調査報告書であるとしている。今回の決定内容である「区民アンケート調査報告書は『見比べる資料』ではあるものの、『経年比較ができると考えた根拠がわかる文書』ではない」との説明が事実なのであれば、これまでの説明は虚偽だったということである。
27 令和6年8月23日付け意見書
・令和6年8月5日に行った「当区(港区のこと。以下同)においても市民局が実施する区民アンケート調査業務委託に準じたもののため、当区の区民アンケート調査によって取得したデータについても、区民の縮図として標本を集計しているわけではなく、最初の数字を起点として、実施している施策が進んでいるか、どれだけ向上させていくかを経年比較している。」との説明、及び、「400人取ってその区の縮図とすることは技術的に出来ないから、せめて無作為で取っておけば、最初の数値を起点として、同じやり方をして、それを上げていこうと目標にしているので、施策としての目的は果たしている。」との説明の根拠を明らかにする公開請求に対し、市民局は、「区政に関する区民アンケートは、施策を進めるうえでの参考資料としているが、「最初の数値を起点として、同じやり方をして、それを上げていこうと目標に」すれば施策・事業の効果が判断できるとする根拠が示された文書については、当該公文書をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」、「区政に関する区民アンケートは、毎年実施しており、同じ質問項目については、その回答結果を見比べることで「経年比較」ができると考えているが、「経年比較」ができる(つまり比較することに意味がある)ものであるとする根拠が示された文書については、当該公文書をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」との理由で、不存在による非公開決定を行った。
・一方、市民局の令和5年8月8日付け意見書には、「令和3年1126日付け大市民第727号「不存在による非公開決定通知書」に記載のとおり、令和3年8月30日付け大市民第517号で通知により公開した区長会議資料以外には、当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在していない。/実施決議を行っている区長会議(所管は人事・財政部会)において、従前から区民アンケートは、すべての区で統一的手法のもと無作為抽出した区民に対してアンケートを行った結果であり、施策を進めるうえでの参考資料として役立てているとの共通認識が図られていることから、同会議において議論になることもなかったため、既公開している公文書以外に当該公文書を作成又は取得していない。」とあり、ここでは「取組の評価に用いることができるなどという根拠はどのようなものかが分かる文書」は「令和3年8月30日付け大市民第517号で通知により公開した区長会議資料」であるとされている。これは「施策・事業の効果が判断できるとする根拠が示された文書」は存在しないという不存在理由の記載とは矛盾している。
・また、この間の経過から、市民局が「区民アンケートの結果が経年比較できるものであるとする根拠が分かる文書」が区民アンケート調査報告書であると考えていることは明白であり、原決定の、「『経年比較』 ができる(つまり比較することに意味がある)ものであるとする根拠が示された文書については、当該公文書をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しない」との説明とは明白に矛盾している。
・以上のとおり、原決定の不存在理由のとおり、請求対象文書が「そもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しない」ということなのであれば、市民局がこれまで主張してきた内容はいずれも虚偽であったということである。
28 令和6年9月2日付け意見書
・この間請求している請求対象文書が不存在であるはずがない。
・公開対象文書としては市政改革室が作成したマーケティング・リサーチ関連文書、運営方針関連文書が該当するものと考えられる。
・公開対象として特定された文書はいずれも公開を求めたものではない。
・諮問庁は意見書などにおいて、「経年の比較ができると考えている」などと何の根拠を示すこともなく一方的に主張しており、なぜそのように考えているのかについては一切説明できていない。仮に「この説明できていない」原因が文書の不存在であるのならば、説明責任を果たせるだけの文書を作成し、保管するという指針の精神に違反している。
・区長会議において、区民アンケートを所管する人事財政部会の構成メンバー7区中4区でこの区民アンケートの結果を運営方針で使用している。そしてこの4区のすべてで「回答者の回答状況にとどまるもの」としては取り扱っておらず、区の現状を説明する上で意味のあるもの、あるいはプロセス指標やアウトカム指標としての意味を持つものとして取り扱っている。(プロセス指標やアウトカム指標とするということは、区民アンケートの結果を「区民全体における割合を示すもの」として扱っているということである。区長会議においてこの区民アンケートを所管する人事財政部会の構成区の多くがこのような認識を有している以上、令和3年6月15日付け大情審答申第492号及び弁明書にある実施機関の説明は虚偽であると言わざるを得ない。
・諮問庁の「統計調査ではない」などとの主張は、この区民アンケートの統計調査としての妥当性を説明できない挙句に言い出した詭弁に過ぎず、いずれも虚偽の説明である。諮問庁は統計学に基づきこの区民アンケートを設計し、その正確性を説明しようとしていた。これらの説明の根拠が記載された文書(請求対象文書)が存在しないはずはなく、これまでの意見書でも述べている通り、これらを明らかにした場合に、「統計調査ではない」などとの主張が虚偽であることが明白になり、さらには区民アンケートを巡って行っていることの学問的誤謬が明らかになり、調査が適切には実施されていないということが白日の下にさらされてしまうということを恐れて隠蔽しているものであると考えられる。これは公開請求において請求対象文書を単に「根拠が示された文書」としているにもかかわらず、故意に「統計学的根拠が記載されたもの」と請求の趣旨を捻じ曲げて不存在としたり、根拠が記載されていない文書ばかりを特定したりしていることにも表れている。また情報公開審査会の照会に対する「意見書の提出について」(令和5年9月15日付け大市民第400 号)で「根拠」として特定された部分がいずれも「このように決定した」、「このように行っている」との事実を示すにとどまり、「根拠」と呼べるような代物ではなかったことにも表れている。そして、根拠となる文書が存在していることは「なるほど統計学園」を示していることでも裏付けられ、また、公開された文書である「代表性検証シート」については、この文書が単独で存在しているとは考えられず、関連した文書が存在しているはずである。調査が適切には実施されていないということは、「母集団の代表性」や「代表性検証シート」の記載には学問的には初歩的な誤りが多数認められること、標本(回答者集団)には母集団に対する代表性が必要であるとの認識を全く欠落させていることや、「なるほど統計学園」を読み誤り、監査に対して「2000配れば…」との誤った説明を行っていることなどからも裏付けられる。
・仮に請求対象文書が不存在なのだということであれば、諮問庁はこの区民アンケートの合理性や妥当性を説明する根拠を有していないということであり、上記の「統計学ではないということであれば『正確性は担保されている』とする根拠は何か」との質問に対して全く説明がないのは、根拠となる文書が不存在であるために説明不能に陥っているものであると解される。これは「説明責任を果たすための公文書作成指針」の精神とは著しく乖離しており、行っていることの合理性、妥当性を説明できるだけの公文書を作成しなかったことが原因で説明不能に陥っているということであり、同指針違反であることは明白である。
・令和6年8月8日付け大市民第316号及び317号不存在による非公開決定の理由に、「区政に関する区民アンケートは、毎年実施しており、同じ質問項目については、その回答結果を見比べることで経年の比較ができると考えているが、その根拠が示された文書については、当該公文書をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」、「区政に関する区民アンケートは、その回答結果を見比べることで経年の比較ができると考えているため、「比較対象となるデータの意味内容が同じである」及び「比較対象となるデータの差は誤差ではない」という条件を満たしているとする根拠について、当該公文書をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」と記載されている。まず一点目について、「その回答結果を見比べることで経年の比較ができると考えている」のは組織としての大阪市であり市民局である。大阪市は文書主義で業務を行っており、すべての意思決定、判断は文書で行われているはずである。組織として「経年の比較ができると考えている」ということは、組織として「経年の比較ができる」ことを確認したということであり、この確認を行った文書が存在しないはずはない。二点目について、これも「当該公文書をそもそも作成又は取得しておらず」ということなのであれば、区民アンケートの結果データが比較できるものであるのかについて何らの確認も行っていないということであり、「その回答結果を見比べることで経年の比較ができると考えてい る」との部分と論理矛盾をきたしている。つまり、「その根拠が示された文書」が存在しないというのであれば、「(組織として)その回答結果を見比べることで経年の比較ができると考えている」との説明が成立する余地はない。
・マーケティング・リサーチ関連文書の一つである「アンケートの作業工程別ポイント!! アンケート方法を検討編」の記載内容の理論的根拠と、諮問庁がこの区民アンケートの「サンプル数」を決める際に引用しているとする「統計学上の考え方」や、報告書の記載内容の理論的根拠は同じものである。そして、報告書の「報告書を読む際の留意点」の記載の根拠として「平成29年度世論調査報告書」が示されていることから、この区民アンケートの理論的根拠を求める公開請求の対象文書がマーケティング・リサーチ関連文書であることは明らかである。
・公開対象として特定された「令和3年1112日付け大監第97号通知による住民監査請求結果」、「令和3年8月30日付け大市民第517号通知により公開した区長会議資料」、「令和3年7月30日付け大市民第444号通知により公開した区民アンケート報告書」のいずれにも審査請求人が求めている「根拠」は記載されておらず請求対象文書ではない。
・鶴見区における令和4年度及び令和5年度の区民アンケート結果を見ればわかるように、回答率が低いと非標本誤差が大きく発生してしまうために、結果は全く信頼できないものになってしまう。
・先日も南海トラフ地震に関して「巨大地震注意」との情報が政府から出された。くだらない議論をしている暇はない。区民アンケートのような社会調査の精度を上げ、市民区民の状態を適切にとらえられるようなものにし、これにより得られたデータで施策事業の立案や評価を行うことが求められている。このようなデータの信頼性等について「文書がない」の一文で何の説明も行わないなど許されるはずがない。
29 令和6年9月9日付け意見書(令和6年9月2日付け審査請求人意見書の補足)
・そもそも各区の区民アンケートは平成17年度まで市民局広聴相談課で行われていた「市政モニター」をそのルーツとしている。現在でもいくつかの区の事業名に「モニター」が残っているのはその名残である。
・そして「市政モニター」は、モニターの半数を住民基本台帳からの無作為抽出とし、残り半分を公募に応じた人から選任するという形で行われていた。モニターの選任にあたっては、モニター全体の性別、年齢階層別や外国籍住民の割合などが大阪市民全体のそれと一致するように行われてた。つまり「市政モニター」は有意抽出による標本調査(統計調査)として行われていた。
・その後、有意抽出ではなくすべてを無作為抽出とする方が客観性を担保できるとの理由から世論調査(これも市民局広聴相談課が所管していた)と同じ手法へと変化していったという経過がある。
・市民局広聴相談課が世論調査や市政モニターを行っていた頃には、大学教授など有識者の参画を得て、統計調査としての妥当性が損なわれないように行われていた。しかし、その後所管が市民情報部、政策企画室、市政改革室へと移り変わる中で有識者の参画がなくなり、統計調査としての本質や理論的根拠が見失われてしまう。これは、市民局広聴相談課が所管していたころには80%もあった世論調査の回答率が、政策企画室が所管した最後の年度である平成23年度には63%にまで落ち込むが、これに対し何の危機感も持たず漫然と見過ごし何の対策も取られなかったことに表れている。
・そして、所管は市政改革室に移り、世論調査や市政モニターは「マーケティング・リサーチ」と位置付けられ、各区の区民(モニター)アンケートもこれに位置付けられている。
・つまり、市政改革室が作成したマーケティング・リサーチ関連文書や運営方針関連文書は区民アンケートがマーケティング・リサーチツールのひとつとの認識のもとに記載されている。その具体例が、「マーケティング・リサーチの手引き」にある区民アンケートの結果を「区民の割合」とする記載である。
・そして、マーケティング・リサーチ関連文書の中に、統計学を根拠とした記載が見られることについても、これらがそもそも統計調査として行われていたことによるものである。
・以上のとおり、請求対象文書としては市政改革室が作成したマーケティング・リサーチ関連文書、連営方針関連文書が該当するものと考えられる。
30 令和6年9月10日付け意見書(令和6年9月2日付け意見書の補足)
・実施機関に対し8月23日に質問を行い、9月6日付けで回答があったが、それによれば、「インターネット上に公表されている資料や解説等」は「総務省の『なるほど統計学園のWEBペ ージ』の資料や解説等」であるとのことであった。つまり、「調査結果の正確性・信頼性」、「区民アンケートの回収数が一定以上であれば、調査結果の分   析を行うことができる」、「区同士比較をする、経年で見るということでベースとしては問題がない」などの説明の根拠はすべて統計学だったということである。
・この点、弁明書では、「インターネット上に公表されている資料や解説等をもとに得た知見を参考に、区民アンケートの調査対象者数を算定したものであるが、区民アンケートの正確性(信頼性)について、統計学を根拠とするものではない。」との矛盾を指摘したところ、実施機関の回答は、「調査結果の正確性を確保するため、あくまで参考として統計学上のひとつの考え方を引用しており」と何とか「統計学を根拠とするものではない。」との説明との整合性を持たせようとするものであった。
・一方、実施機関が当時の区長会議人事財政部会の部会長であった住之江区とともに、監査に対して行った説明では、必要な「サ ンプル数400弱」を確保していることを根拠に「調査結果の正確性は担保されている」との説明が行われている。
・よって、「区民アンケート調査は統計調査には該当せず」、「統計学的見地に基づいた設計と指標の評価は行っていない」との記載は明白に虚偽であり、「調査設計において設定した信頼水準95%」としている以上、この設計内容が示された文書が存在しないはずはない。
31 令和6年9月12日付け意見書
・市民局の市民の声の回答では、「区政に関する区民アンケート」は「行政の裁量に応じて行う事務」であることから「本アンケートにかかる事務すべてに根拠を示す文書があるものではありません」とし(なお、諮問庁の意見書(令和5年9月15日付大市民第400号)などにも同様の記載があります。)、また、「根拠や基準を明らかにして行うものではなく」と根拠を明らかにする必要もないとしている。「行政の裁量に応じて行う事務」であるということは、裁量権の行使(当該事務)について合理性や妥当性が説明できなければならず、この説明ができないということは裁量権の濫用となるものである。一見して合理性や妥当性が明らかな場合には、文書が不存在であるということも許される場合もあるかもしれない。しかし、本件「区政に関する区民アンケート」はそうではない。区民アンケートで行おうとしているのは、施策事業の効果測定である。具体的には「地域活動協議会を知っている割合」であれば、市政改革プラン2.0区政編に記載されている「地域活動協議会の認知度向上に向けた支援」が奏功しているかどうかを判断するために行われているのであり、なぜ区民アンケートの結果でこの判断ができるのかという点は、一見して明らかなものではなく説明が必要となるものである。
・区民アンケートの合理性、妥当性は「一見して明らか」なものではなく、説明が必要になるものであるにもかかわらず、諮問庁が特定するものにはこの説明ができるだけの根拠は記載されておらず、また、「行政の裁量に応じて行う事務」であることを根拠に「本アンケートにかかる事務すべてに根拠を示す文書があるものではありません」としており、必要な説明が全くできていない。これはこの区民アンケートの合理性や妥当性の説明ができないということを意味するのであり、「裁量権の濫用」にあたるものである。
・「説明責任を果たすための公文書作成指針」の前文を踏まえれば、「区政に関する区民アンケート」についてその合理性や妥当性を説明できるだけの文書は「作成すべき公文書」にほかならない。この文書が不存在だとするのであれば、説明責任を全うすることができず、市政に対する信頼を損なうばかりか、「裁量権の濫用」とまで指摘される事態となるのであり、指針の精神に反していることは明らかである。
・監査の「裁量権の範囲を逸脱濫用するものとは認められない。」との判断は、その前提を欠き誤っている。

第4 実施機関の主張
 実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。
1 弁明の趣旨
 本件決定は条例に則った適正なものである。
2 弁明の理由(弁明書)
・公開請求のあった文書のうち、「区民アンケート回答者における割合が、地域活動協議会の認知度向上に向けた支援の評価になるという根拠が分かる文書」、「区民アンケートの結果で、市政改革プラン2.0に記載された目標が達成されたかどうかが判断できるとする根拠が分かる文書」、「区民アンケートの目的が経年変化の把握であるとすることの根拠が分かる文書」については、令和元年度に開催された区長会議資料のなかで、「地域活動協議会を知っている区民の割合」を指標として定めて全区統一様式による区民アンケートにより測定すること、今後も定点観測的に状況把握を行っていくことが記載されており、当該資料が公開対象文書となるが、これについては、令和3年8月30日付け大市民第517号通知により公開しており、これ以外には当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため本件決定を行った。また、「区民アンケートの結果が経年比較できるものであるとする根拠が分かる文書」については、区民アンケートは施策の進捗状況など経年比較の参考のため、連年、同じ条件で行っているものであり、その調査報告書が公開対象文書となるが、これについては令和3年7月30日付け大市民第444号通知により公開しており、これ以外には当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため本件決定を行った。
・区民アンケート調査は統計調査には該当せず、統計学的見地に基づいた設計と指標の評価は行っておらず、経年比較等を行うための統計学的根拠を示した文書はそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しない。
・本件既公開文書以外に当該公文書を作成又は取得しておらず、同決定は請求の趣旨に適合しており、文書特定に誤りはない。
3 令和5年8月8日付け意見書
 本件決定のうち、上記2記載の弁明の理由において言及がなかった箇所について、審査会から実施機関に追加の主張を求めたところ、以下のとおり、補足の主張がなされた。
・「「アンケートにおいて回答された区民のうち、○○と感じていると回答された区民の割合を意味している。」との点は実施決裁文書の記載などとも矛盾していますが、この説明の根拠が分かる文書」については、本件アンケートは、実施決裁のとおり「すべての区で、統一的手法のもと無作為抽出した区民に対してアンケートを行うもの」であり、具体的には各区調査対象者数を2,000人とした無作為抽出によるアンケートを実施し、経年による変化を把握し施策を進める上での参考資料としており、実施決議を行っている区長会議(所管は人事・財政部会)において、従前からアンケートにおいて回答された区民の割合を「区民の割合」とする共通認識が図られていることから、同会議において議論になることもなかったため、既公開している公文書以外に当該公文書を作成又は取得していない。
・「ここでいう「調査結果の正確性」とは何か、また、「正確性は担保されている」とする根拠が分かる文書」については、調査結果の正確性等は、アンケート実施の資料を起案する市民局において、インターネット上に公表されている資料や解説等をもとに知見を得たものであり、既公開している公文書以外に当該公文書を作成又は取得していない。
・「この世論調査結果報告書の何をどのように区民アンケート結果報告書の2,3,35,36ページの記載の根拠にしているのかが分かる文書」については、「世論調査報告書」の何をどのように区民アンケートに報告書に記載したのかは、両報告書を見比べるとわかることから、既公開している公文書以外に当該公文書を作成又は取得していない。
・「区民アンケートの結果が、区同士の比較ができるものであるということの根拠が分かる文書」については、区民アンケート報告書の大阪市全体ページにおいては、区別回答者数と回答率、肯定的な意見の割合など、区別に表やグラフ等でまとめており、また他区の報告書と見比べることで、区データの比較ができることから、既公開している公文書以外に当該公文書を作成又は取得していない。
・「「2000配れば400回収しようが600回収しようが、その信頼性は同じである。統計の入門書にも書いてありクリアできる。」説明の根拠が分かる文書」については、ホームページで公開されている情報以外には公文書を作成又は取得しておらず、当該ホームページで公開されているデータは、アンケート実施の資料を起案する市民局において、インターネット上に公表されている資料や解説等をもとに知見を得たものであり、既公開している公文書以外に当該公文書を作成又は取得していない。
・「区民アンケートの結果はどのような意味を持つデータで、取組の評価に用いることができるなどという根拠はどのようなものかが分かる文書」については、実施決議を行っている区長会議(所管は人事・財政部会)において、従前から区民アンケートは、すべての区で統一的手法のもと無作為抽出した区民に対してアンケートを行った結果であり、施策を進めるうえでの参考資料として役立てているとの共通認識が図られていることから、同会議において議論になることもなかったため、既公開している公文書以外に当該公文書を作成又は取得していない。
・審査請求人は、上記項目について根拠を示す公文書があるはずとの主張を申し述べているが、本件は行政処分のように根拠や基準を明らかにして行うものではなく、行政の裁量に応じて行う事務である。そのため、審査請求人が求めるようにすべての事務に根拠を示す文書があるものではないため、本既公開文書以外に当該公文書を作成又は取得していない。
4 令和5年9月15日付け意見書
・令和5年8月8日付け意見書のとおり、既公開している公文書以外に当該公文書を作成又は取得していない。
・また、審査会の指摘である「令和3年度区民アンケート調査業務委託」に際して、「区同士の比較」、「経年でみる」ということが理論的に可能かについての検討は行っていない。
・本件は行政処分のように根拠や基準を明らかにして行うものではなく、行政の裁量に応じて行う事務である。そのため、審査請求人が求めるようにすべての事務に根拠を示す文書があるものではないため、本既公開文書以外に当該公文書を作成又は取得していない。
5 令和5年1227日付け意見書
・①(下記第5、3、(1)の公開請求①に対応するもの。以下同)についての公開請求の趣旨は、アンケートにおいて回答された区民のうち、〇〇と感じていると回答された区民の割合を意味していることが分かるものと理解し、その説明が掲載されている令和3年1112日付け大監第97号通知による監査結果を特定した。同監査結果においては、住之江区役所からの説明として「市政改革プラン3.0に掲載されない『指標』における『〇〇と感じる区民の割合』とはアンケートにおいて回答された区民のうち、〇〇と感じていると回答された区民の割合を意味している。」とした上で、なぜ「区民の割合」という表現を用いたのか、また区民全体に占める割合以外の値を指標としたのかについては、「指標の測定は、各区調査対象者数を2,000 人とした無作為抽出によるアンケートの実施をしたものであるため、標本が母集団を代表していないことは認識しているが、毎年調査することで経年による変化を把握し、施策を進めるうえでの参考資料として役立てていることから、『区民の割合』という表現で問題ないと考えている。」と記載されている。
・③についての公開請求の趣旨は、区民アンケートの結果が経年比較できるものであるとする根拠が分かるものと理解し、経年比較できるものとして区民アンケート報告書を特定した。区民アンケートは毎年実施しており、同報告書には、区別回答者数と回答率、肯定的な意見の割合など、区別に表やグラフ等でまとめており、同じ質問項目については、その回答結果を見比べることで経年の比較ができる。
・⑥についての公開請求の趣旨は、「調査結果の正確性」とは何かと「正確性は担保されている」とする根拠が分かるものと理解し、令和3年1112日付け大監第97号通知による監査結果と、区民アンケート報告書を特定した。同監査結果においては、住之江区役所からの説明として「400弱の回答者数が必要と考えた理由は、これまでの市民の声に対する回答において、『一般的に国などが行っている標本調査では、信頼水準95%として調査の設計をされており、その場合のサンプル数が400弱必要であることを参考とし』と示しているとおり、調査結果の正確性は担保されている。」と記載されている。また、同区民アンケート報告書においては、調査設計において設定した信頼水準95%を担保するために必要とされるサンプル数が確保されているかが記載されている。
・⑦についての公開請求の趣旨は、世論調査報告書の何をどのように令和2年度区民アンケート報告書の2ページ、3ページ、35ページ及び36ページの記載の根拠にしているのか分かるものと理解し、参考とした標本誤差等が記載されている「世論調査報告書」を特定した。
・⑧についての公開請求の趣旨は、区民アンケートの結果が、区同士の比較ができるものであるということが分かるものと理解し、区民アンケート報告書を特定した。区民アンケート報告書には、区別回答者数と回答率、肯定的な意見の割合など、区別に表やグラフ等でまとめており、また他区の報告書と見比べることで、区データの比較ができる。
・⑨についての公開請求の趣旨は、区民アンケートの結果が、経年比較を測定できるものであることが分かるものと理解し、区民アンケート報告書を特定した。区民アンケートは毎年実施しており、区民アンケート報告書には、区別回答者数と回答率、肯定的な意見の割合など、区別に表やグラフ等でまとめており、同じ質問項目については、その回答結果を見比べることで経年の比較ができる。
・⑪についての公開請求の趣旨は、区民アンケートの結果はどのような意味を持つデータで、取組の評価に用いることができるなどと言う根拠はどのようなものかが分かる文書と理解して、区民アンケート報告書を特定した。区民アンケート報告書は、施策を進める上での参考資料としての意味があり、全区統一した手法で無作為抽出した区民から得られた回答状況を集計したもので、毎年調査することで経年による変化を把握できることから、取組の評価に用いることができる。
・以上のとおり審査請求人の公開請求の趣旨を理解し、作成又は取得している公文書の特定を行っている。
6 令和6年2月26日付け意見書(令和5年1227日付け実施機関意見書の補足)
・⑧の公開請求の趣旨について、令和3年1126日付け大市民第727号通知による非公開決定(以下、当初非公開決定)においては、区民アンケートの結果が、区同士の比較ができるものであるということが分かるものと理解し、区民アンケート報告書を特定した。区民アンケート報告書の大阪市全体ページにおいては、区別回答者数と回答率、肯定的な意見の割合など、区別に表やグラフ等でまとめており、また他区の報告書と見比べることで、区データの比較ができる。一方、令和5年9月2日に「住民監査請求について(通知)(令和3年1112日付大監第97号)において、実施機関は監査に対して次の説明を行っています。『無作為抽出をすれば元々考えていた、区同士比較をする、経年で見るということでベースとしては問題がないと判断しすすめてきた。』この説明の根拠が示されている文書」の公開請求があった。同公開請求に対し、上記区民アンケート報告書を特定し、令和5年9月19日付け大市民第401号により公開決定を行ったところ、令和5年9月22日に同決定に対する審査請求が提起され、文書特定に対する異議があった。これを受け、令和5年9月19日付け大市民第401号による公開決定について、令和5年1025日付け取消決定及び同日付け新たな非公開決定を行った。他方、令和5年1120日付け大情審第112号において主張を求める内容は、当初非公開決定に際して、どのように公開請求の趣旨を理解し文書を特定したのかであると考えた。よって、令和5年1227日付け大市民第720号意見書においては、当初非公開決定に際しての公開請求の趣旨理解及び文書特定理由について述べた。
・⑪の公開請求に対し、当初非公開決定においては、⑪の前部「区民アンケートの結果はどのような意味を持つデータ」に着目し、その趣旨を区民アンケートの結果から得られた情報が分かるものと理解し、令和3年7月30日付け大市民第444号通知により公開した区民アンケート報告書を特定した。一方、情報公開審査会に別途提出した令和5年8月8日付け大市民第320号による意見書においては、⑪の後部「取組の評価に用いることができるなどと言う根拠はどのようなものかがわかる文書」に着目し、その趣旨を区民アンケートの結果を取組の評価に用いることが示されたものと理解し、令和3年8月30日付け大市民第517号通知により公開した区長会議資料を特定した。同区長会議資料においては、令和2年度以降、区民アンケートにより成果指標の測定を行うことが記載されている。この点、当初非公開決定及び令和5年8月8日付け大市民第320号による意見書のいずれにおいても、⑪の公開請求に係る対象文書は区民アンケート報告書並びに区長会議資料の両方であると述べるべきであった。他方、令和5年1120日付け大情審第112号において主張を求める内容は、当初非公開決定に際して、どのように公開請求の趣旨を理解し文書を特定したのかであると考えた。よって、令和5年1227日付け大市民第720号意見書においては、当初非公開決定に際しての公開請求の趣旨理解及び文書特定理由のみについて述べた。
7 令和6年4月12日付け意見書
・「平成29年度世論調査報告書」2頁の「報告書を読む際の留意点」については、令和2年度区民アンケートにおける必要な回答者数の算定にあたって同報告書を参考としたことから、令和2年度区民アンケート結果報告書の2、3、3536頁に同様の記載を行った。なお、令和3年9月13日付け住民監査請求に係る監査において監査委員から「こういった記載は、施策により達成しようとしている目標が、区民全体の割合を目標値以上にすることである、区民全体の割合の把握のために調査が実施されている、また調査の結果についても、区民全体の割合を示すもの、といった誤解を容易に招くおそれのあるものである」との指摘があったことを受け、令和3年度以降の区民アンケート結果報告書においては記載していない。
8 令和6年6月7日付け意見書
 審査請求人が令和3年8月12日付けで行った公開請求については、「令和元年度区民アンケート報告書」に記載の「標本誤差」及び「母集団の代表性」に関して論理的根拠がわかる公文書の請求があったと理解し、「標本誤差」については、「平成29年度世論調査報告書」、「母集団の代表性」については、「代表性検証シート」を対象公文書として特定し、令和3年8月20日付け大市民第492号において、「平成29年度世論調査報告書」及び「代表性検証シート」を公開した。
 「運営方針の手引き」「運営方針策定要領」「マーケティング・リサーチの手引き」には、令和3年8月12日付け公開請求の趣旨である「令和元年度区民アンケート報告書」に記載の「標本誤差」及び「母集団の代表性」に関する論理的根拠に関する記載がないことから、対象文書ではないと考えている。
 なお、区民アンケートの設計に際して、これらのマーケティング・リサーチ関連文書も参照にしていたのかは不明であるが、前述のとおり公開請求の趣旨と異なることから対象文書とならないと考えている。

第5 審査会の判断
1 基本的な考え方
 条例の基本的な理念は、第1条が定めるように、市民の公文書の公開を求める具体的な権利を保障することによって、本市等の説明責務を全うし、もって市民の市政参加を推進し、市政に対する市民の理解と信頼の確保を図ることにある。したがって、条例の解釈及び運用は、第3条が明記するように、公文書の公開を請求する市民の権利を十分尊重する見地から行われなければならない。
2 争点
 審査請求人は、本件請求文書が存在するはずであると主張するのに対し、実施機関は、本件請求文書は存在しないとして争っている。
 したがって、本件各審査請求の争点は、本件請求において公開を求めている公文書の存否である。
3 本件請求文書の存否について
(1) 審査請求人が公開を求めている文書について
 第2、1に記載のとおり、審査請求人は、令和3年1112日付け大監第97号「住民監査請求について(通知)」(以下「監査結果報告書」という。)を前提に、その中で説明された内容の根拠文書の公開を求めている。
 そこで、まず、大阪市ホームページで公表されている監査結果報告書について確認したところ、当該監査請求は、「令和2年度区民アンケート調査業務委託」(契約金額:6,006,000 円、事業担当:市民局)(以下「区民アンケート」という。)について、委託内容が契約の目的を達成できるものになっておらず、また、費用の支出の際の履行確認においても、契約の目的が達成された履行内容になっているのかの確認がなされておらず、その結果、委託費用が支出の目的を達成されないまま支出されており、当該支出が地方自治法第2条第14項、地方財政法第4条に違反するとしてなされたものであることが確認できた。
 上記監査結果報告書については、監査結果報告書の「第3 監査の結果」、「2 監査対象所属に対する調査」にあるとおり、行政委員会事務局職員が、市民局及び住之江区役所職員に行った調査や、同「3 監査対象所属の陳述」にあるとおり、監査委員が監査対象所属職員から事情聴取した内容をもとに、同「4 判断」にあるとおり、判断を行ったものである。
審査請求人が行った公開請求は、
・「アンケートにおいて回答された区民のうち、○○と感じていると回答された区民の割合を意味している。」との点は実施決裁文書の記載などとも矛盾していますが、この説明の根拠が分かる文書を公開してください。(以下「公開請求①」という。)
・また、「地域活動協議会を知っている区民の割合」は市政改革プラン2.0(区政編)の24ページに記載されている「地域活動協議会の認知度向上に向けた支援」を評価するものですが、区民アンケート回答者における割合が、上記支援の評価になるという根拠が分かる文書を公開してください。(以下「公開請求②」という。)
・区民アンケートの結果が経年比較できるものであるとする根拠が分かる文書を公開してください。(以下「公開請求③」という。)
・また、区民アンケートの目的が経年変化の把握であるとすることの根拠が分かる文書を公開してください。(以下「公開請求④」という。)
・区民アンケートの結果で、市政改革プラン2.0に記載された目標が達成されたかどうかが判断できるとする根拠が分かる文書を公開してください。(以下「公開請求⑤」という。)
・ここでいう「調査結果の正確性」とは何か、また、「正確性は担保されている」とする根拠が分かる文書を公開してください。(以下「公開請求⑥」という。)
・区民アンケート結果報告書の2,3,35,36ページの記載について、その根拠が分かる文書として、市政改革室の世論調査結果報告書が示されました。しかし、これは当の市政改革室がその根拠、妥当性、合理性について説明できないものでしたが、この世論調査結果報告書の何をどのように区民アンケート結果報告書の2,3,35,36ページの記載の根拠にしているのかが分かる文書を公開してください。(以下「公開請求⑦」という。)
・区民アンケートの結果が、区同士の比較ができるものであるということが分かる文書を公開してください。(以下「公開請求⑧」という。)
・経年変化を測定できるものであるということについて、その根拠が分かる文書を公開してください。(以下「公開請求⑨」という。)
・説明の根拠が分かる文書を公開してください。(以下「公開請求⑩」という。)
・区民アンケートの結果はどのような意味を持つデータで、取組の評価に用いることができるなどと言う根拠はどのようなものかが分かる文書を公開してください。(以下「公開請求⑪」という。)
のとおり、主として、上記監査結果報告における市民局職員の説明等の根拠文書を求めるものである。
(2) 区民アンケートを実施する際の実施機関における検討状況について
 第3、2の「審査請求の理由」に記載しているとおり、審査請求人は、運営方針評価について、区民アンケートの結果をもとに行っているにもかかわらず、区民アンケートが経年比較できるように設計した上で実施されていないことを前提に、経年比較等ができる根拠を求めるものである。
 ここで、審査請求人が求める文書が存在する場合というのは、経年比較等ができる根拠について実施機関において検討し、かつ、検討結果を文書として残している場合であり、逆に、審査請求人が求める文書が存在しない場合というのは、経年比較等ができる根拠について検討したが文書として残していなかったり、そもそも経年比較等ができる根拠について検討していなかったりする場合である。
 よって、そもそも、検討を行っていないと認められる場合には、文書を探索するまでもなく不存在であることが明らかである。
 そこで、上記公開請求①~⑪の文書の存否について検討する前提として、実施機関において区民アンケートを実施する際に、そもそも、上記の検討がなされたか否かについて検討する。
 まず、審査請求人が審査請求書等で指摘するように、実施機関は当該区民アンケート結果を用いて経年比較や目標達成の判断を行っているが、これは、区民アンケートを、あたかも、各区の代表性を有するかのように扱うものである。
 一方、監査報告書中の市民局の説明によれば、当該区民アンケートは、「母集団の推計は行っていない」、「回答率の偏りの検証は行っていない」、「統計学的に推計できるよう設計されたものではない」ものであると認められる。
 そうであれば、調査結果について、統計学上、各区の代表性を有していることを保証できないものであり、統計学以外の理論を用いて比較可能な理由を説明できるとも考えられない。
 したがって、本件公開請求の決定通知書やこの間の調査・審議から、各区の代表性が担保されていない結果に基づき、(意味のある)経年比較や目標達成評価ができるのかについて、実施機関において検討がなされたとは認められない。
 なお、審査請求人が指摘するように、区民アンケート結果報告者や実施機関職員の監査の際の説明等において、統計学を前提としたような説明が散見されるが、それらは一貫性のないものであると認められるから、そのような説明がなされた事実をもって、本区民アンケートの設計等に際して、統計学を含めた学問的な検討がなされたとは認められない。
 以上を前提に、以下、公開請求①~公開請求⑪について、個別にその存否の検討を行う。
(3) 公開請求①について
 公開請求①については、監査結果報告書17頁の「(1)市政改革プラン3.0に掲載されない『指標』における『○○と感じる区民の割合』の意味するところについて確認したところ、住之江区役所から次のとおり説明があった。/・アンケートにおいて回答された区民のうち、○○と感じていると回答された区民の割合を意味している。」との箇所を引用した上で、「「アンケートにおいて回答された区民のうち、○○と感じていると回答された区民の割合を意味している。」との点は実施決裁文書の記載などとも矛盾していますが、この説明の根拠が分かる文書を公開してください。」との請求を行っている。
 この点、審査請求人は、第3「審査請求人の主張」の記載のとおり、実施機関は自身が求めている文書を適切に理解していないとの主張を行っているため、まず、本件請求の趣旨をどのように解するかが問題となる。
 そこで、審査会から実施機関に対し、公開請求の趣旨をどのように理解したか確認したところ、「アンケートにおいて回答された区民のうち、〇〇と感じていると回答された区民の割合を意味していることが分かるもの」と理解したとのことであった(令和5年1227日付け意見書)。
 しかし、審査請求人が、あえて、「実施決裁文書の記載などとも矛盾してい」ると指摘した上で、「この説明の根拠が分かる文書」を求めていることから、本件請求で審査請求人が求めているのは、「『指標』における『○○と感じる区民の割合』」に「アンケートにおいて回答された区民のうち、○○と感じていると回答された区民の割合」を用いることができる根拠が記載された文書と解するのが相当である。
 それを前提に、次に、実施機関の決定が妥当であったかを検討する。
 ここで、公開請求①について、実施機関は、「『アンケートにおいて回答された区民のうち、○○と感じていると回答された区民の割合を意味している。』との点は実施決裁文書の記載などとも矛盾していますが、この説明の根拠が分かる文書」については、「令和3年1112日付け大監第97号通知による住民監査請求結果以外には当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」ということを不存在の理由としている。
 それを踏まえ、審査会から、実施機関に対し、決定通知書において対象文書としている「令和3年1112日付け大監第97号通知による住民監査請求結果」の提出を求めるとともに、同文書のうち、「アンケートにおいて回答された区民のうち、○○と感じていると回答された区民の割合を意味している。」、「アンケートにおいて回答された区民のうち、○○と感じていると回答された区民の割合を意味している。」との説明の根拠は上記文書のどこに記載されているのか確認したところ、次の部分であるとの回答があった。
「(1)市政改革プラン3.0に掲載されない「指標」における「○○と感じる区民の割合」の意味するところについて確認したところ、住之江区役所から次のとおり説明があった。 /・アンケートにおいて回答された区民のうち、○○と感じていると回答された区民の割合を意味している。/(2)「○○と感じる区民の割合」について前記(1)のとおりであるなら、なぜ「区民の割合」という表現を用いたのか、また区民全体に占める割合以外の値を指標としたのかについて確認したところ、住之江区役所から次のとおり説明があった。 /・指標の測定は、各区調査対象者数を2,000人とした無作為抽出によるアンケートの実施をしたものであるため、標本が母集団を代表していないことは認識しているが、毎年調査することで経年による変化を把握し、施策を進めるうえでの参考資料として役立てていることから、「区民の割合」という表現で問題ないと考えている。」
 しかし、当該部分は、説明を行った住之江区役所職員の認識を示しているに過ぎず、組織としての意思決定とは認められないため、審査請求人が求めている「『指標』における『○○と感じる区民の割合』」に「アンケートにおいて回答された区民のうち、○○と感じていると回答された区民の割合」を用いることができる根拠ではないと考える。
 よって、「令和3年1112日付け大監第97号通知による住民監査請求結果」については、公開請求①に合致する文書ではないと言える。
 次に、不存在との決定が妥当か否かについて検討すると、上記(2)に記載したとおり、実施機関は特段の検討を行うことなく、市政改革プラン2.0における「○○と感じる区民の割合」について区民アンケートの結果を用いて測定していると認められるので、審査請求人が求めている公文書が存在しないとの結論については、不自然・不合理な点はないと言える。
 よって、結論として、公開請求①について、「不存在」との決定は妥当である。
(4) 公開請求②について
 公開請求②については、監査結果報告書17頁の「(1)市政改革プラン3.0に掲載されない『指標』における『○○と感じる区民の割合』の意味するところについて確認したところ、住之江区役所から次のとおり説明があった。/・アンケートにおいて回答された区民のうち、○○と感じていると回答された区民の割合を意味している。」との箇所を引用した上で、「「地域活動協議会を知っている区民の割合」は市政改革プラン2.0(区政編)の24ページに記載されている「地域活動協議会の認知度向上に向けた支援」を評価するものですが、区民アンケート回答者における割合が、上記支援の評価になるという根拠が分かる文書を公開してください。」との請求を行っている。
 上記請求に対し、実施機関は、「「『地域活動協議会を知っている区民の割合』は市政改革プラン2.0(区政編)の24ページに記載されている『②地域活動協議会の認知度向上に向けた支援』を評価するものですが、区民アンケート回答者における割合が、上記支援の評価になるという根拠が分かる文書」(中略)については、令和3年8月30日付け大市民第517号通知により公開した区長会議資料以外には当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」との理由を付して、本件決定を行っている。
 そこで、審査会から、実施機関に対し、決定通知書において該当文書として示している令和3年8月30日付け大市民第517号通知により公開した「令和2年1月24日区長会議 安全・環境・防災部会資料」のうち、「「地域活動協議会を知っている区民の割合」は市政改革プラン2.0(区政編)の24ページに記載されている「地域活動協議会の認知度向上に向けた支援」を評価するものですが、区民アンケート回答者における割合が、上記支援の評価になるという根拠」がどこに記載されているのか確認したところ、
「指標(測定内容)を、地域活動協議会を知っている区民の割合、測定手法を、全区統一様式による区民アンケート(無作為抽出)※区政支援室に予算を配布して一括実施」
と表で示した部分とのことであった。
 そうであれば、本件請求の「区民アンケート回答者における割合が上記支援の評価になるという根拠」との部分を、各区役所が区民アンケート回答者における割合を市政改革プラン2.0の達成評価として用いている根拠と解せば、該当文書として不適切なところはなく、当該意思決定が令和2年1月24日の区長会議においてなされたことを考慮すると、当該文書以外に該当する文書が不存在ということについても不自然・不合理な点はない。
 なお、審査請求人が提出した意見書等によれば、審査請求人は、「「地域活動協議会を知っている区民の割合」によって「地域活動協議会の認知度向上に向けた支援の評価」が可能である」根拠を求めていると思われるが、本件請求の文言からは、実施機関が審査請求人の主張のように理解しなかったとしても、不合理とまでは言えない。
 よって、公開請求②について、「不存在」との決定は妥当である。
(5) 公開請求③について
 公開請求③については、監査結果報告書17頁の「指標の測定は、各区調査対象者数を2,000人とした無作為抽出によるアンケートの実施をしたものであるため、標本が母集団を代表していないことは認識しているが、毎年調査することで経年による変化を把握し、施策を進めるうえでの参考資料として役立てていることから、『区民の割合』という表現で問題ないと考えている。」との箇所を引用した上で、「区民アンケートの結果が経年比較できるものであるとする根拠が分かる文書を公開してください。」との請求を行っている。
 この点、審査請求人は、第3「審査請求人の主張」に記載のとおり、実施機関は自身が求めている文書を適切に理解していないとの主張を行っているため、まず、本件請求の趣旨をどのように解するかが問題となる。
 そこで、審査会から実施機関に対し、公開請求の趣旨をどのように理解したか確認したところ、「区民アンケートの結果が経年比較できるものであるとする根拠が分かるものと理解し、経年比較できるものとして区民アンケート報告書を特定した。区民アンケートは毎年実施しており、同報告書には、区別回答者数と回答率、肯定的な意見の割合など、区別に表やグラフ等でまとめており、同じ質問項目については、その回答結果を見比べることで経年の比較ができる。」とのことであった(令和5年1227日付け意見書)。
 しかし、審査請求人が、監査報告書の「毎年調査することで経年による変化を把握し」との部分を引用した上で、「経年比較できるものであるとする根拠が分かる文書」を求めていることから、本件請求で審査請求人が求めているのは、ただ単純に経年で比較した表やグラフが掲載された文書ではなく、そのような比較が可能であることを理論的に説明した文書と解するのが相当である。
 それを前提に、次に、実施機関の決定が妥当であったかを検討する。
 ここで、公開請求③について、実施機関は、「「区民アンケートの結果が経年比較できるものであるとする根拠が分かる文書」については、令和3年7月30日付け大市民第444号通知により公開した区民アンケート報告書以外には当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」ということを不存在の理由としている。
 それを踏まえ、審査会において、実施機関から提出された「令和3年7月30日付け大市民第444号通知により公開した区民アンケート報告書」を見分したところ、審査請求人が求めている経年比較が可能であることを理論的に説明するような記載は認められなかった。
 よって、「令和3年7月30日付け大市民第444号通知により公開した区民アンケート報告書」については、公開請求③に合致する文書ではないと言える。
 次に、不存在との決定が妥当か否かについて検討すると、上記(2)に記載したとおり、実施機関は特段の検討を行うことなく、区民アンケートを実施していると認められ、そうであれば、経年比較についても、どのような前提条件があれば比較可能かについて検討することなく、ただ単純に比較していると認められることから、審査請求人が求めている公文書が存在しないとの結論については、不自然・不合理な点はないと言える。
 よって、結論として、公開請求③について、「不存在」との決定は妥当である。
(6) 公開請求④について
 公開請求④については、監査結果報告書17頁の「指標の測定は、各区調査対象者数を2,000人とした無作為抽出によるアンケートの実施をしたものであるため、標本が母集団を代表していないことは認識しているが、毎年調査することで経年による変化を把握し、施策を進めるうえでの参考資料として役立てていることから、『区民の割合』という表現で問題ないと考えている。」との箇所を引用した上で、「区民アンケートの目的が経年変化の把握であるとすることの根拠が分かる文書を公開してください。」との請求を行っている。
 上記請求に対し、実施機関は、「『地域活動協議会を知っている区民の割合』は市政改革プラン2.0(区政編)の24 ページに記載されている『②地域活動協議会の認知度向上に向けた支援』を評価するものですが、(中略)「区民アンケートの目的が経年変化の把握であるとすることの根拠が分かる文書」については、令和3年8月30日付け大市民第517号通知により公開した区長会議資料以外には当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」との理由を付して、本件決定を行っている。
 そこで、審査会から、実施機関に対し、決定通知書において該当文書として示している令和3年8月30日付け大市民第517号通知により公開した「令和2年1月24日区長会議 安全・環境・防災部会資料」及び「令和2年1月16日区長会議 人事・財政部会資料」のうち、「区民アンケートの目的が経年変化の把握であるとすることの根拠」がどこに記載されているのか確認したところ、「地活協に関する以下の指標(審査会補足:地域活動協議会を知っている区民の割合)については、次期市政改革計画において「地域活動協議会による自律的な地域運営の促進」を掲げ、次年度以降も取組を進めていくことから、引き続き全区において目標値を設定し、進捗状況を把握する。」等区民アンケートにより継続的に成果指標を測定する旨記載されている部分が示された。
 ここで、(実施機関が行った方法で理論的に経年変化の把握ができるかはともかく)上記実施機関適示部分から、区民アンケートを経年比較も目的の1つとして実施することとしたことが読み取れ、本件請求の「区民アンケートの目的が経年変化の把握であるとすることの根拠が分かる文書」を文字通り解せば、該当文書として不適切なところはないと認められる。
 また、実施機関が「令和2年1月24日区長会議 安全・環境・防災部会資料」及び「令和2年1月16日区長会議 人事・財政部会資料」の両資料を根拠だと主張している以上、令和2年1月16日の人事・財政部会及び令和2年1月24日の安全・環境・防災部会において、資料どおりの意思決定がなされたものと認められ、そうであれば、当該文書以外に根拠となる文書が存在しないということについても不自然・不合理な点はないと言える。
 よって、公開請求④について、「不存在」との決定は妥当である。
(7) 公開請求⑤について
 公開請求⑤については、監査結果報告書20頁の「各部会で議論いただいて、これは取っていかなくてはならないものは取って、これは目標値まで行っているからもう要らないという項目は取らない」との箇所を引用した上で、「区民アンケートの結果で、市政改革プラン2.0に記載された目標が達成されたかどうかが判断できるとする根拠が分かる文書を公開してください。」との請求を行っている。  この点、審査請求人は、第3「審査請求人の主張」に記載のとおり、実施機関は自身が求めている文書を適切に理解していないとの主張を行っているため、まず、本件請求の趣旨をどのように解するかが問題となるが、審査請求人は、監査結果報告書の「これは取っていかなくてはならないものは取って、これは目標値まで行っているからもう要らないという項目は取らない」との部分を引用した上で、「区民アンケートの結果で、市政改革プラン2.0に記載された目標が達成されたかどうかが判断できるとする根拠」を求めていることから、本件請求で審査請求人が求めているのは、市政改革プラン2.0に記載された目標の達成状況を区民アンケート結果で評価することが妥当であると言える根拠と解するのが相当である。
 それを前提に、実施機関の決定が妥当であったかを検討する。
 ここで、公開請求⑤について、実施機関は、「「区民アンケートの結果で、市政改革プラン2.0に記載された目標が達成されたかどうかが判断できるとする根拠が分かる文書」については、令和3年8月30日付け大市民第517号通知により公開した区長会議資料以外には当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」ということを不存在の理由としている。
 また、意見書では、「「区民アンケートの結果で、市政改革プラン2.0に記載された目標が達成されたかどうかが判断できるとする根拠が分かる文書」については、令和元年度に開催された区長会議資料のなかで、「地域活動協議会を知っている区民の割合」を指標として定めて全区統一様式による区民アンケートにより測定すること、今後も定点観測的に状況把握を行っていくことが記載されており、当該資料が公開対象文書となるが、これについては、令和3年8月30日付け大市民第517号通知により公開しており、これ以外には当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため本件決定を行った。」と主張している。
 それを踏まえ、審査会から、実施機関に対し、決定通知書において対象文書としている「令和3年8月30日付け大市民第517号通知により公開した区長会議資料」の提出を求めるとともに、同文書のうち、審査請求人が説明を求めている根拠はどこに記載されているのか確認したところ、「令和2年1月24日区長会議 安全・環境・防災部会資料」別紙の各区の達成状況を示す部分と、「令和2年1月16日区長会議 人事・財政部会資料」の各種の取組項目等とその達成状況を示す部分とのことであった。
 しかし、上記両部分は、区民アンケート結果によって目標達成判断が可能であることを前提にその達成状況を示すものであり、審査請求人が求めている市政改革プラン2.0に記載された目標の達成状況を区民アンケート結果で評価することが妥当であると言える根拠ではないと考える。
 よって、「令和3年8月30日付け大市民第517号通知により公開した区長会議資料」については、公開請求⑤に合致する文書ではないと言える。
 次に、不存在との決定が妥当かについて検討すると、上記(2)に記載したとおり、実施機関は特段の検討を行うことなく区民アンケートを行っており、そうであれば、市政改革プラン2.0に記載の目標達成判断資料として区民アンケートを用いていることの妥当性についても特段の検討は行っていないと認められるので、審査請求人が求めている公文書が存在しないとの結論については、不自然・不合理な点はないと言える。
 よって、結論として、公開請求⑤について、「不存在」との決定は妥当である。
(8) 公開請求⑥について
 公開請求⑥については、監査結果報告書18頁の「400弱の回答者数が必要と考えた理由は、これまでの市民の声に対する回答において、『一般的に国などが行っている標本調査では、信頼水準95%として調査の設計をされており、その場合のサンプル数が400弱必要であることを参考とし』と示しているとおり、調査結果の正確性は担保されている。」との箇所を引用した上で、「ここでいう「調査結果の正確性」とは何か、また、「正確性は担保されている」とする根拠が分かる文書を公開してください。」との請求を行っている。
 この点、審査請求人は、第3「審査請求人の主張」に記載のとおり、実施機関は自身が求めている文書を適切に理解していないとの主張を行っているため、まず、本件請求の趣旨をどのように解するかが問題となる。
 そこで、審査会から実施機関に対し、公開請求の趣旨をどのように理解したか確認したところ、「「調査結果の正確性」とは何かと「正確性は担保されている」とする根拠が分かるもの」と理解したとのことであり(令和5年1227日付け意見書)、その点に誤りは認められない。
 それを前提に、実施機関の決定が妥当であったかを検討すると、公開請求⑥について、実施機関は、「「『調査結果の正確性』とは何か、また、『正確性は担保されている』とする根拠が分かる文書」については、令和3年1112日付け大監第97号通知による住民監査請求結果及び令和3年7月30日付け大市民第444号通知により公開した区民アンケート報告書以外には当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」ということを不存在の理由としている。
 また、意見書では、「調査結果の正確性等は、アンケート実施の資料を起案する市民局において、インターネット上に公表されている資料や解説等をもとに知見を得たものであり、既公開している公文書以外に当該公文書を作成又は取得していない。」と主張している。
 それを踏まえ、審査会から、実施機関に対し、決定通知書において対象文書としている令和3年1112日付け大監第97号通知による住民監査請求結果及び令和3年7月30日付け大市民第444号通知により公開した区民アンケート報告書のうち、「「調査結果の正確性」とは何か、また、「正確性は担保されている」」とする根拠はどこに記載されているのか確認したところ、令和3年1112日付け大監第97号通知による住民監査請求結果については、「(3)「市政改革プラン2.0(区政編)」の成果指標の測定等についてという文書と、本件契約の調査対象数の決定の関連性、及び400弱の回答者数が必要と考えた理由等について確認したところ、住之江区役所から次のとおり説明があった。/・「市政改革プラン2.0(区政編)」の成果指標等の測定等については、平成30年度区民アンケートの実施にかかる区長会議 人事・財政部会の決裁文書なので、本件契約の調査対象数の決定に関係する文書ではないが、400弱の回答者数が必要と考えた理由は、これまでの市民の声に対する回答において、「一般的に国などが行っている標本調査では、信頼水準95%として調査の設計をされており、その場合のサンプル数が400弱必要であることを参考とし」と示しているとおり、調査結果の正確性は担保されている。」との部分と、令和2年度区民アンケート調査報告書については24区分のすべての部分とのことであった。
 しかし、令和3年1112日付け大監第97号通知による住民監査請求結果の該当部分については、審査請求人は同監査結果の当該部分を引用した上で本件請求を行っており、審査請求人が求めているのは、住之江区役所職員が発言した「調査結果の正確性」の意味するところや、いかなる理由で「正確性は担保されている」と言えるのかであり、「令和3年1112日付け大監第97号通知による住民監査請求結果」が対象文書にはならないと考える。また、「令和3年7月30日付け大市民第444号通知により公開した区民アンケート報告書」については、審査会において見分した結果、「調査結果の正確性」の意味するところや、いかなる理由で「正確性は担保されている」と言えるのかは記載されていない。
 よって、令和3年1112日付け大監第97号通知による住民監査請求結果及び令和3年7月30日付け大市民第444号通知により公開した区民アンケート報告書については、公開請求⑥に合致する文書ではないと言える。
 次に、不存在との決定が妥当か否かについて検討すると、上記(2)に記載したとおり、実施機関は特段の検討を行うことなく、区民アンケートを実施していると認められ、監査に際して本市職員が行政委員会事務局職員に対して説明した内容についても、説明内容が正しいかどうかはともかく、実施機関の主張のとおり、説明者が個人的にインターネットで得た知見をもとに回答を行ったと認められることから、審査請求人が求めている公文書が存在しないことに不自然・不合理な点はないと言える。
 よって、結論として、公開請求⑥について、「不存在」との決定は妥当である。
(9) 公開請求⑦について
 公開請求⑦については、監査結果報告書18頁の「本件報告書の2ページ、35ページは、母集団の値を推計する場合の統計上のひとつの考え方を参考として記載しているもの」との箇所を引用した上で、「区民アンケート結果報告書の2,3,35,36ページの記載について、その根拠が分かる文書として、市政改革室の世論調査結果報告書が示されました。しかし、これは当の市政改革室がその根拠、妥当性、合理性について説明できないものでしたが、この世論調査結果報告書の何をどのように区民アンケート結果報告書の2,3,35,36ページの記載の根拠にしているのかが分かる文書を公開してください。」との請求を行っている。
 公開請求⑦に対し、実施機関は、「「世論調査結果報告書の何をどのように区民アンケート結果報告書の2,3,35,36ページの記載の根拠にしているのかが分かる文書」については、令和3年8月20日付け大市民第492号通知により公開した世論調査報告書以外には当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」との理由を付して本件決定を行っている。
 そこで、実施機関に対し、令和2年度区民アンケート調査報告書及び平成29年度世論調査結果報告書の提出を求め、令和2年度区民アンケート調査報告書の2頁、3頁、35頁、36頁と平成29年度世論調査結果報告書の実施機関から根拠が記載されていると示された2頁を審査会において比較見分したところ、ともに「報告書を読む際の留意点」との標題が付され、当該調査における「標本誤差」を算出しようとしたものであることが確認できた。
 ここで、世論調査とは、令和3年6月15日付け大情審答申第491号によれば、「市政改革室では、市民のニーズを把握し、今後の基礎資料とするため、市の施策について各所属からの希望に基づき、市政モニターアンケート、民間ネット調査、世論調査を実施してきた。/このうち世論調査とは、大阪市に居住している18歳以上の市民2,500人を無作為に抽出し、調査票を送付することにより調査を行うものであり、年に1~2回実施しているものである。/世論調査は、実施機関に業務委託による成果物として調査結果のローデータ(回答そのもので、集計や編集などを施していないデータのこと)(Excel形式)、数表のデータ(Excel形式)に加えて、回答結果のグラフやグラフから読み取れる客観的な事実を簡潔に説明した文章等を記載した調査報告書のデータが提出される。/調査によって取得したデータは、母集団を代表するもの、つまり、市民全体の状況を統計学的に推計できるものとなっているとは必ずしも言えないということを認識した上で、必要に応じて様々な関連情報を合わせて、施策・事業を進める上での総合的な判断を行う際に活用している。/また、実施機関が行う世論調査は、統計法に基づく統計調査ではなく、「標本の代表性や、観測された偏りなどが母集団について有意であるかを確認」しなければならないとする法令等の定めはないことから、こういった確認を実施しておらず、また、調査から得られたデータを母比率の推計値として扱うことも行っていない。」ものであり、区民アンケート報告書の作成にあたって先行して行われていた世論調査報告書の記載を参考にしたものと思われる。
 そこで、審査会から実施機関に対し、どのような理由で世論調査報告書の「報告書を読む際の留意点」を令和2年度区民アンケート結果報告書にも記載することとしたのかについて確認したところ、実施機関の回答は、「「平成29年度世論調査報告書」2頁の「報告書を読む際の留意点」については、令和2年度区民アンケートにおける必要な回答者数の算定にあたって同報告書を参考としたことから、令和2年度区民アンケート結果報告書の2、3、3536頁に同様の記載を行った。」とのことであった。
 この点、審査請求人は、意見書において、「報告書2、3、3536ページの記載は、調査結果から母比率の推定を行う際の標本誤差(信頼区間)の説明を行うためのものであり、これを先行している平成29年度世論調査報告書から引用したものであることは明らかである。実施機関は請求対象文書について、世論調査報告書以外には存在しないとしているが、この報告書には記載内容の理論的根拠は全く記載されていない。これを引用するにあたっては、この理論的根拠に関する理解が不可欠なのであり、これまでに示したような統計学に関する資料などが不存在であるはずはない。」との主張を行っている。
 そこで、平成29年度世論調査報告書以外に審査請求人が求める根拠が記載された文書が存在するか否か検討すると、(本来的には)審査請求人が主張するような理論的な根拠の検討を行ってしかるべきなのかもしれないが、上記(2)に記載のとおり、実施機関は、特段、統計学を含めた学問的な検討を行うことなく区民アンケートの設計を行ったと認められ、そうであれば、こと本件においては、そのような理論的な検討がなされず、漫然と平成29年度世論調査報告書の記載が参考にされたと認められることから、実施機関の「令和3年8月20日付け大市民第492号通知により公開した世論調査報告書以外には、当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しない。」との主張に不自然・不合理な点はないと言える。
 よって、公開請求⑦について、「不存在」との決定は妥当である。
(10)公開請求⑧について
 公開請求⑧については、監査結果報告書20頁の「無作為抽出をすれば元々考えていた、区同士比較をする、経年で見るということでベースとしては問題がないと判断しすすめてきた。」との箇所を引用した上で、「区民アンケートの結果が、区同士の比較ができるものであるということの根拠が分かる文書を公開してください。」との請求を行っている。
 この点、審査請求人は、第3「審査請求人の主張」の記載のとおり、実施機関は自身が求めている文書を適切に理解していないとの主張を行っているため、まず、本件請求の趣旨をどのように解するかが問題となる。
 そこで、審査会から実施機関に対し、公開請求の趣旨をどのように理解したか確認したところ、「区民アンケートの結果が、区同士の比較ができるものであるということが分かるもの」と理解したとのことであり(令和5年1227日付け意見書)、その点に誤りは認められない。
 それを前提に、実施機関の決定が妥当であったかを検討すると、公開請求⑧について、実施機関は、「区民アンケートの結果が、区同士の比較ができるものであるということについては、令和3年7月30日付け大市民第444号通知により公開した区民アンケート報告書以外には当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」ということを不存在の理由としている。
 また、意見書では、「区民アンケート報告書の大阪市全体ページにおいては、区別回答者数と回答率、肯定的な意見の割合など、区別に表やグラフ等でまとめており、また他区の報告書と見比べることで、区データの比較ができることから、既公開している公文書以外に当該公文書を作成又は取得していない。」と主張している。
 それを踏まえ、審査会から、実施機関に対し、決定通知書において対象文書としている令和3年7月30日付け大市民第444号通知により公開した区民アンケート報告書のうち、「区民アンケートの結果が、区同士の比較ができるものである」との根拠はどこに記載されているのか確認したところ、令和2年度区民アンケート調査報告書24区分のすべての部分とのことであった。
 そこで、審査会において令和2年度区民アンケート調査報告書の24区分を見分したところ、無作為抽出を行って対象者の選定を行った旨の記載は認められたが、「区民アンケートの結果が、区同士の比較ができるものである」ことの根拠の記載は認められなかった。
 この点、実施機関は、無作為抽出を行えば区同士の比較が可能であると考え、当該文書が対象文書であると特定したのかもしれないが、審査請求人が求めているのはそのように言える理由であると解されることから、無作為抽出を行って対象者の選定を行った旨の記載をもって対象文書であるとは認められない。
 また、意見書において、「区別回答者数と回答率」が記載されていることも1つの理由として、当該報告書が、審査請求人が求めている文書である旨の主張を行っていることから、当該記載をもって対象文書として特定したのかもしれないが、審査請求人が求めているのは当該報告書記載の「区別回答者数と回答率」でもって、理論的に区同士の比較が可能であると判断できる根拠であると解され、そのような記載も認められなかったところである。
 よって、令和3年7月30日付け大市民第444号通知により公開した区民アンケート報告書については、公開請求⑧に合致する文書ではないと言える。
 次に、不存在との決定が妥当か否かについて検討すると、上記(2)に記載したとおり、実施機関は特段の検討を行うことなく、区民アンケートを実施していると認められ、そうであれば、区同士の比較についても、どのような前提条件があれば比較可能かについて検討することなく、ただ単純に比較していると認められることから、審査請求人が求めている公文書が存在しないとの結論については、不自然・不合理な点はないと言える。
 よって、結論として、公開請求⑧について、「不存在」との決定は妥当である。
(11)公開請求⑨について
 公開請求⑨については、監査結果報告書20頁の「無作為抽出をすれば元々考えていた、区同士比較をする、経年で見るということでベースとしては問題がないと判断しすすめてきた。」との箇所を引用した上で、「経年変化を測定できるものであるということについて、その根拠が分かる文書を公開してください。」との請求を行っている。
 この点、審査請求人は、第3「審査請求人の主張」に記載のとおり、実施機関は自身が求めている文書を適切に理解していないとの主張を行っているため、まず、本件請求の趣旨をどのように解するかが問題となる。
 そこで、審査会から実施機関に対し、公開請求の趣旨をどのように理解したか確認したところ、「区民アンケートの結果が、経年比較を測定できるものであることが分かるもの」と理解したとのことであり(令和5年1227日付け意見書)、その点に誤りは認められない。
 それを前提に、実施機関の決定が妥当であったかを検討すると、公開請求⑨について、実施機関は、「経年比較を測定できるものであるということについて、その根拠が分かる文書」については、令和3年7月30日付け大市民第444号通知により公開した区民アンケート報告書以外には当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」ということを不存在の理由としている。
 それを踏まえ、審査会において令和2年度区民アンケート調査報告書の24区分を見分したところ、無作為抽出を行って対象者の選定を行った旨の記載は認められたが、「経年変化を測定できるものである」ことの根拠の記載は認められなかった。
 この点、実施機関は、無作為抽出を行えば経年変化の測定が可能であると考え、当該文書が対象文書であると特定したのかもしれないが、審査請求人が求めているのはそのように言える理由であると解されることから、無作為抽出を行って対象者の選定を行った旨の記載をもって対象文書であるとは認められない。
 よって、令和3年7月30日付け大市民第444号通知により公開した区民アンケート報告書については、公開請求⑨に合致する文書ではないと言える。
 次に、不存在との決定が妥当か否かについて検討すると、上記(2)に記載したとおり、実施機関は特段の検討を行うことなく、区民アンケートを実施していると認められ、そうであれば、経年比較についても、どのような前提条件があれば比較可能かについて検討することなく、ただ単純に比較していると認められることから、審査請求人が求めている公文書が存在しないとの結論については、不自然・不合理な点はないと言える。
 よって、結論として、公開請求⑨について、「不存在」との決定は妥当である。
(12)公開請求⑩について
 公開請求⑩については、監査結果報告書20頁の「2000配れば400回収しようが600回収しようが、その信頼性は同じである。統計の入門書にも書いてありクリアできる。」との箇所を引用した上で、「説明の根拠が分かる文書を公開してください。」との請求を行っている。
 公開請求⑩に対し、実施機関は、「「『2000 配れば400回収しようが600回収しようが、その信頼性は同じである。統計の入門書にも書いてありクリアできる。』説明の根拠が分かる文書」については、ホームページで公開されている情報以外に公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」との理由を付して、本件決定を行っている。
 そこで、審査会から、実施機関に対し、当該ホームページが何でどの部分に「説明の根拠」が記載されているのかについて、資料の提出を求めたところ、当該ホームページは総務省統計局作成の「意外なところに統計学」であり、そのうちの説明の根拠が記載されている部分は、必要な標本数を、数式を用いて説明する部分であることが確認できた(令和5年11月2日付け提出資料)。
 ここで、実施機関が「説明の根拠」としている部分からは、審査請求人が令和5年1月11日付け意見書で主張しているように、「2000配れば400回収しようが600回収しようが、その信頼性は同じである。」との記載は読み取れなかった。
 しかし、統計知識のない者が当該ホームページを見て上記のように理解する可能性は否定できず、上記(2)のとおり、実施機関においては、そもそも統計学的な観点からの検討はなされていなかったのであるから当該説明を行った職員が統計学的な知識を有してなかったとしても不自然ではなく、仮に説明内容が誤っていたとしても、「説明の根拠」が、当該ホームページであると説明していることについて不自然・不合理であるとまでは言えない。
 そして、審査請求人の求める根拠が、実施機関以外の者が作成したホームページということであれば、担当者が当該ホームページの閲覧のみを行い、その内容を公文書として保存していなかったということも十分にあり得ることであるから、公開請求⑩について、「不存在」との決定は妥当である。(13)公開請求⑪について
 公開請求⑪については、「区民アンケートの結果はどのような意味を持つデータで、取組の評価に用いることができるなどと言う根拠はどのようなものかが分かる文書を公開してください。」との請求を行っている。
 これに対し、実施機関は、「「区民アンケートの結果はどのような意味を持つデータで、取組の評価に用いることができるなどと言う根拠はどのようなものかがわかる文書」については、令和3年7月30日付け大市民第444号通知により公開した区民アンケート報告書以外には当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」との理由を付して、本件決定を行っているところであるが、令和6年2月26日付け意見書において、「⑪の公開請求に対し、令和3年1126日付け大市民第727号通知による非公開決定(以下、当初非公開決定)においては、⑪の前部「区民アンケートの結果はどのような意味を持つデータ」に着目し、その趣旨を区民アンケートの結果から得られた情報が分かるものと理解し、令和3年7月30日付け大市民第444号通知により公開した区民アンケート報告書を特定した。/一方、情報公開審査会に別途提出した令和5年8月8日付け大市民第320号による意見書においては、⑪の後部「取組の評価に用いることができるなどと言う根拠はどのようなものかがわかる文書」に着目し、その趣旨を区民アンケートの結果を取組の評価に用いることが示されたものと理解し、令和3年8月30日付け大市民第517号通知により公開した区長会議資料を特定した。/同区長会議資料においては、令和2年度以降、区民アンケートにより成果指標の測定を行うことが記載されている。/この点、当初非公開決定及び令和5年8月8日付け大市民第320号による意見書のいずれにおいても、⑪の公開請求に係る対象文書は区民アンケート報告書並びに区長会議資料の両方であると述べるべきであった。」との主張を行い、理由の差し替えを行っているところである(なお、両資料ともに既に審査請求人に公開済みであることから不存在との本件決定を取り消すものではない。)。
 そこで、以下、「区民アンケートの結果はどのような意味を持つデータ」について、審査請求人は「区民アンケートの結果から得られた情報が分かるもの」を求めていると解釈し、令和3年7月30日付け大市民第444号通知により公開した区民アンケート報告書を特定したこと、及び、「取組の評価に用いることができるなどと言う根拠」について、審査請求人は「区民アンケートの結果を取組の評価に用いることが示されたもの」を求めていると解釈し、令和3年8月30日付け大市民第517号通知により公開した区長会議資料を特定したことの是非について検討する。
 まず、「区民アンケートの結果はどのような意味を持つデータ」については、「どのような」との修飾語が付されていることから、単に「区民アンケートの結果から得られた情報」を求めていると解するのではなく、集計結果が理論的に(統計学を念頭に置いているがそれに限られない。)どのような意味を持つかがわかる文書と解するのが適切である。
 それを踏まえ、審査会において、実施機関から提出を受けた令和3年7月30日付け大市民第444号通知により公開した区民アンケート報告書を見分したところ、回答率や男女間及び各年齢区分間のP値の記載以外に統計学等の理論的な検討を行った記載は認められなかった。
 そこで、次に、それらの記載をもって対象文書と言えるかが問題となるが、審査請求人が求めているのは、回答率や男女間及び各年齢区分間のP値を踏まえて、回答結果が理論上どのような意味を持つデータであると言えるかがわかる文書であり、その点の記載がない以上、令和3年7月30日付け大市民第444号通知により公開した区民アンケート報告書については、公開請求に合致する文書ではないと言える。
 また、「取組の評価に用いることができるなどと言う根拠」については、「言う根拠」との記載があることから、単に「区民アンケートの結果を取組の評価に用いることが示されたもの」ではなく、区民アンケート結果が取組評価に用いるに値するものであることが理論的に検討された資料であると解するのが適切である。
 それを踏まえ、審査会において、実施機関から提出を受けた令和3年8月30日付け大市民第517号通知により公開した区長会議資料を見分したところ、当該資料には、「「区民アンケートの結果を取組の評価に用いる」旨は記載されているが、区民アンケート結果が取組評価に用いるに値するものについての理論的な検討に係る記載は認められなかった。
 よって、令和3年8月30日付け大市民第517号通知により公開した区長会議資料については、公開請求⑪に合致する文書ではないと言える。
 次に、不存在との決定が妥当かについて検討すると、上記(2)に記載したとおり、実施機関は特段の検討を行うことなく区民アンケートを行っており、そうであれば、その集計データの理論的な意味や、取組評価の判断資料として区民アンケートを用いていることについての理論的な検討も特段行っていないと認められるので、審査請求人が求めている公文書が存在しないとの結論については、不自然・不合理な点はないと言える。
 よって、結論として、公開請求⑪について、「不存在」との決定は妥当である。
4 その他の審査請求人の主張について
(1) マーケティング・リサーチ関連文書が対象文書であるとの主張について
 審査請求人は、意見書において、「市政改革室が作成した「運営方針の手引き」「運営方針策定要領」「マーケティング・リサーチの手引き」をはじめとしたマーケティング・リサーチ関連文書には、世論調査を用いた「〇〇である市民の割合」などが説明されている。請求対象文書としてはこれらの文書が考えられる。」との主張を行っていることから、これらの文書が対象文書となるかについて検討する。
 この点、実施機関に対し、審査請求人が対象文書であると主張する上記文書を特定していないのはなぜかを確認したところ、「審査請求人が令和3年8月12日付けで行った公開請求については、「令和元年度区民アンケート報告書」に記載の「標本誤差」及び「母集団の代表性」に関して論理的根拠がわかる公文書の請求があったと理解し、「標本誤差」については、「平成29年度世論調査報告書」、「母集団の代表性」については、「代表性検証シート」を対象公文書として特定し、令和3年8月20日付け大市民第492号において、「平成29年度世論調査報告書」及び「代表性検証シート」を公開した。/「運営方針の手引き」「運営方針策定要領」「マーケティング・リサーチの手引き」には、令和3年8月12日付け公開請求の趣旨である「令和元年度区民アンケート報告書」に記載の「標本誤差」及び「母集団の代表性」に関する論理的根拠に関する記載がないことから、対象文書ではないと考えている。」との主張であった。
 しかし、本件請求以前に審査請求人が行った公開請求の趣旨がどうであったかはともかく、本件請求においては、公開請求①~⑩については、監査結果報告書に記載された職員の説明の根拠を求めるものであり、公開請求⑪については、「区民アンケートの結果はどのような意味を持つデータで、取組の評価に用いることができるなどと言う根拠はどのようなものかが分かる文書」を求めるものである。
 そして、これらの審査請求人が求める根拠については、本件請求の文面上なんらの限定も付されていない。よって、上記マーケティング・リサーチ関連文書が本件請求の対象文書になるか否かの判断にあたっては、審査請求人が令和6年6月20日付け意見書で主張するように、「標本誤差」及び「母集団の代表性」に関する論理的根拠に関する記載の有無に限定されないと考える。
 そこで、改めて、審査会において、「運営方針の手引き」、「令和2年度運営方針策定要領」、「マーケティング・リサーチの手引き」を見分したところ、その内容は、それぞれ以下のとおりであった。
 まず、「運営方針の手引き」については、「はじめに」に「職員の皆さんが、事業を実施するうえで、常に成果を意識したマネジメントサイクル(PDCAサイクル)に取り組んでいただけるよう、運営方針を策定・評価するためのポイントをまとめたもの」とあるように、なぜ運営方針を定めないといけないのか、運営方針におけるアウトカム指標の設定の仕方、アウトカム指標の達成状況の判断方法等を説明している文書であることが確認できた。そのうえで、本件請求との関係では、「成果目標が既存データにより把握(設定)できない場合は、アンケート調査による区民・市民の意識等の測定が必要になりますが、モニター調査以外にも会場(参加者)アンケートなど、アンケートには様々な手法がありますので、目標に応じて手法を検討してください。また、調査が輻輳する場合には、質問数に配慮しながら、分野の異なるテーマを一本のアンケート調査にまとめて実施する等の対応も考えられます。」との記載が認められるところである。
 次に、「令和2年度運営方針策定要領」については、運営方針を策定するにあたっての様式の具体的な作成方法が記載されていることが確認できた。そのうえで、本件請求との関係では、アウトカム指標の具体例として、「区民モニターアンケートで「・・・・」と回答した割合○年度末までに□%以上」との記載が認められるところである。
 最後に、「マーケティング・リサーチの手引き」については、マーケティング・リサーチの必要性や目的、調査における質問作成のポイント、調査結果の集計方法、調査結果の分析方法、報告書の作成方法、アウトカムの改善例等が記載されていることが確認できた。そのうえで、本件請求との関係では、「市政改革室が所管するアンケート調査の紹介と特徴(各所属が活用できます)」の中で、区民アンケート結果報告書の2,3,35,36ページの記載について、その根拠として実施機関が示した(公開請求⑦参照)世論調査が挙げられている。
 そして、ここで想定しているアンケート調査は、アウトカムの測定のために使用するものであることから、市民・区民を代表する結果が得られるものとして取扱っていると認められる。
 以上から、仮に実施機関(市民局)が、実施機関(市政改革室)が作成した「運営方針の手引き」、「令和2年度運営方針策定要領」及び「マーケティング・リサーチの手引き」が想定している区民アンケートを行っているのであれば、これら文書が対象文書となり得るところである。
 しかし、上記3、(2)のとおり、実施機関(市民局)においては、区民アンケートの実施にあたってそもそも統計学等を含めた学問的な観点からの検討はなされておらず、また、令和2年度区民アンケート調査については統計調査には該当しないとのことであるので、実施機関(市政改革室)の想定にかかわらず、実際上は、これらマーケティング・リサーチ関連文書の想定する調査が行われてはいないことから、公開請求①~公開請求⑪の根拠になるものではない。
 また、区民アンケートの設計に際してこれらのマーケティング・リサーチ関連文書を参照したのか否か実施機関に確認したところ、「区民アンケートの設計に際して、これらのマーケティング・リサーチ関連文書も参照にしていたのかは不明」との回答であった。
 以上を踏まえると、本件請求の対象文書としてマーケティング・リサーチ関連文書を特定すべきとまでは認められない。
(2) 公文書作成指針違反に係る主張について
 また、審査請求人は、区民アンケートが実施機関の主張するように代表性を有するものでないのであれば何故に施策事業の評価として用いることができるのかと尋ね、また、その点について説明できなければ説明責任を果たすための公文書作成指針違反である旨主張している。
 この点、実施機関が一般的な意味での説明責任を負うことは審査請求人の主張するとおりであるが、同指針に「本指針では、次のことを主眼として、公文書を確実に作成し、適正に管理する方法を示しています。/1 意思形成過程の文書についても、確実に作成されるようにすること/2 決裁や供覧の手続を経ていない組織共用文書についても、適正な保存管理がされるようにすること」とあるように、同指針は意思形成がなされていることを前提に、意思形成に係る文書を作成することを求めるものである。
 本件では、上記3、(2)において述べたとおり、それが適切であるかどうかはともかく、そもそも、区民アンケートを実施するという以上に、このようなアンケートの行い方で実施目的を達成できるかについて実施機関において検討がなされたとは認められないところであり、そうであれば、審査請求人が求める文書が作成されていないからといって、説明責任を果たすための公文書作成指針に違反するとまでは認められない。
 むろん、この点に関しては、審査請求人が意見書において主張するように、そのような実施決定の妥当性が問われるところであるが、それは情報公開審査会において判断する事項ではない。
5 審査請求人の求釈明について
 審査請求人は、意見書において、複数回にわたって、審査会から実施機関に質問するよう求めているところである。
 このうち、審査会において、本件の争点(対象文書の存否)にかかわるものについては、実施機関に対して、意見書の求めや資料の提出の求めを行って確認を行ったところであるが、審査会が本件の争点にかかわらないと判断したもの(たとえば、実施機関がある部分では統計学的説明を持ち出している点を捉えて、弁明書との矛盾についての説明を求めるものについては、上記3、(2)のとおり、審査会としては統計学も含めて学問的な検討は行われていないとの心証に至ったことから、争点にかかわらないと考える。)については、確認を行っていない。
 釈明を行うか否かは、もとより、審査会の裁量によるところであるが、念のため釈明を行っていない理由について申し添えておく。
6 結論
 以上により、第1記載のとおり、判断する。
7 付言
 本件において、審査請求人は、主として、監査結果報告書における市民局職員の説明等の根拠文書等を求めているが、その主たる問題意識は、審査請求書及び審査請求人が提出した多数の意見書並びに口頭意見陳述の内容を踏まえると、区民アンケートが統計学的な見地からみると母集団である区民を代表するものとはいえないにもかかわらず、実施機関がその結果を用いて経年比較や目標達成の判断を行うなど、区民アンケートを、あたかも、母集団である区民の代表性を有するかのように扱っている点について、実施機関の考えを明らかにすることにあると考えられ、かかる問題意識に基づいて、審査請求人は、実施機関の各部署に対して、本件を含む多数の公開請求を行っている。
 このように同一の問題意識に基づいて多数の公開請求がなされた場合、これに対する不存在などを理由とした非公開処分に付される理由については、個別の処分理由として十分かつ正確であることにとどまらず、他の処分に付された理由と一貫性・整合性があるかについての配慮も求められる。
 また、当審査会においては、上記の実施機関の区民アンケートの取扱いを含む事務事業自体の当否について見解を述べる立場にはないが、条例第1条の目的に照らせば、実施機関においては、本市の説明責任を全うするため、区民アンケートを含む事務事業について、合理的かつ一貫性のある説明が求められていることを指摘しておく。

 (答申に関与した委員の氏名)
委員 玉田 裕子、委員 小林 美紀、委員 重本 達哉、委員 榊原 和穂

 (参考)答申に至る経過

答申第536号

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