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答申第211号

2024年10月30日

ページ番号:640875

大個審答申第211
令和6年1213

大阪市長 横山 英幸 様

大阪市個人情報保護審議会
会長 岡澤 成彦

答申書

 大阪市個人情報の保護に関する法律の施行等に関する条例(令和5年大阪市条例第5号)附則第3項の規定によりなお従前の例によることとされた同条例による改正前の大阪市個人情報保護条例(平成7年大阪市条例第11号。以下「旧条例」という。)第45条に基づき、大阪市長(以下「実施機関」という。)から令和5年7月5日付け大市第39号により諮問のありました件について、次のとおり答申いたします。

第1 審議会の結論
 実施機関が令和5年5月26日付け大市第14号により行った開示決定(以下「本件決定」という。)は、妥当である。

第2 審査請求に至る経過
1 開示請求
 審査請求人は、令和2年1215日、旧条例第17条第1項に基づき、実施機関に対し、「大阪市が、情報公開請求及び審査請求に関する請求人あて郵便物を本人限定受取郵便で発送した理由、また、当初は普通郵便で送付されてきていたにも関わらず、本人限定郵便に変更になった理由」の開示を求める開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 本件決定
 実施機関は、本件請求に係る保有個人情報を「マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)」と特定した上で、旧条例第23条第1項に基づき本件決定を行った。
 なお、本件決定は、本件請求に対し、実施機関が当初、令和3年1月4日付けで「令和2年4月28日付け電子メール(件名:お問い合わせいただいた件について(回答))を保有個人情報として特定し、開示決定を行ったものの、本件審査請求人による別件の利用停止請求に関する審査請求に係る当審議会の答申(令和5年3月31日付け答申第170号)において、当該決定について「実施機関の当該決定については重大な瑕疵があるものと考えられるため、実施機関は適切な対応を取られたい。」との指摘を受けて、改めて開示決定を行ったものである。
3 審査請求
 審査請求人は、令和5年6月5日に本件決定を不服として、実施機関に対して、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。

第3 審査請求人の主張
 審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
1 申立の趣旨
 処分を取り消し、改めて文書の特定を行うことの裁決を求める。
2 審査請求書における主張
 審査請求人が20201214日付で行った保有個人情報開示請求について、「開示決定」を受けました。
 しかし、決定通知書に「開示請求に係る保有個人情報」として記載された「マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)」については、以下の点から請求対象文書ではありません。
 開示請求書に記載した請求対象は「本人限定受取郵便で発送した理由」、「本人限定受取郵便に変更になった理由」が記された文書です。
 この点について、実施機関が特定した文書には、本人限定受取郵便を使用することについて、実施機関が天満警察署に相談を行った際の、天満警察署からのアドバイスが記載されています。
 ここには、「本件は“なりすまし”の可能性があることから、(略)『本人限定受取郵便』で請求者宛に発送しました。(略)関係所属においても“なりすまし”の可能性を念頭に、(略)『本人限定受取郵便』の活用をお願いします。」と記載されているのみであり、本人限定受取郵便を活用した直接的な記載はありません。
 この点について、実施機関は、20201228日付で提起した個人情報利用停止請求に関して提出した20221118日付意見書及び2023年1月4日付意見書(補足)の中でも述べた通り、「本人に確実に届ける必要があり、本人限定受取郵便を使用する以外に方法がなかった」との理由を示していますが、これは上記意見書で述べた点を含め、以下の点から虚偽であり、真の理由が示された文書は別に存在すると認められます。
 まず、開示されたメールは組織アドレスから送信されており、これは公文書です。公文書である以上、メールの内容について意思決定を行った文書が存在するはずであり、請求対象文書が一片のメールであるはずがありません。
 次に、本人限定受取郵便については210円の追加料金が必要ですが、この費用を支出してでも本人限定受取郵便にしなければならない理由については、支出関係書類に記載されているはずです。
 さらに、実施機関が天満警察署に相談に行った際の、天満警察署からのアドバイスが記載された文書には、文書偽造を立証するために必要な事項が列挙されています。具体的には
 1 提出書類の管理
 2 電話等の録音について
 3 ≪その他≫継続的な本人確認のアプローチについて
 が記載されており本人限定受取郵便の利用については、文書偽造を立証するための一方策として記載されています。
 ここから、本人限定受取郵便を使用した真の理由は、「弁明書をご本人に確実にお届けするため」などというものではなく、文書偽造を裏付ける証拠にしようとしたものであり、この目的が示された文書は別に存在すると認められます。
 改めて特定することを求めます。
3 令和5年7月24日付け審査請求人意見書における主張
 令和元年7月に実施機関が「マーケティングリサーチにかかる公文書公開請求等への対応について(依頼)」を各所属に送付し、本人限定受取郵便の活用など何点かの依頼がなされていますが、実施機関がこの依頼を取り消した際に各所属に送付した通知文、依頼文などを公開することを求めた本年6月21日付公開請求において公開された文書には、「本件については、複数の市民の名前で行われていたものですが、先日代理人の委任状が出され、複数人の関係性が明らかになったところです。このことにより、これまでお願いしておりました本件に関わる証拠保全や郵送方法等の取扱の必要がなくなりましたので、今後通常どおりの取扱としていただきますようお願いします。」と記載されています。
 これは実施機関が令和元年7月10日に天満警察署に対して申し立てた「なりすまし」や「文書偽造」の疑いなどが、単なる実施機関の思い込みであったということを事実上認め、これらの犯罪立証のための対応が必要なくなったとするものであり、審査請求書に記載した「文書偽造を裏付ける証拠にしようとしたもの」との点を裏付けるものです。
 なお、実施機関は令和5年6月21日付公開請求において公開された文書を各所属に送付する際に意思決定書類は作成しなかったために存在しないとして不存在による非公開決定を行っていますが、多くの所属がこの公開された文書を公文書として保管し、公開請求に対して公開を行ったことから、実施機関がこの文書を各所属に送付するにあたり、文書での意思決定を行わなかったなどということはにわかには信じられません。
 実施機関は令和3年1月4日付大市第24号について、個人情報保護審議会から「重大な瑕疵がある」と指摘されて渋々令和5年5月26日付大市第14号による開示決定を行ったことに見られるように、天満警察署に相談に行ったという事実を何かと隠ぺいしようと、関係文書の公開を拒んでいます。本来であれば、この令和5年6月21日付公開請求において公開された文書も令和5年5月26日付大市第14号による開示決定の際に同時に開示されてしかるべきものですが、これも隠していました。
 実施機関の隠蔽体質は目に余るものがあります。
4 令和5年1017日付け審査請求人意見書における主張
 今回の審査請求に至るまでの経過の流れの中で重要なのは、2021年1月4日の開示決定です。この段階で実施機関は2023年5月26日の開示決定で対象文書とした文書の存在を認識していたはずであるにも関わらず、これを隠蔽していました。審査請求人は、インターネット上で公開されている大阪市の公文書目録によりこれを発見し、公開請求を行ったところ、当初の保有個人情報開示請求に関する文書であることが確認できました。そして、これを別件利用停止請求の中で提出した意見書の中で指摘したところ、審議会答申において「重大な瑕疵がある」と指摘されてようやく開示されるという流れになっています。審査請求人がこれを発見していなければ、明るみに出ることはなかったということです。
 そもそも、当初20201214日の開示請求の対象文書が、開示された一片の電子メールであるはずがなく、そもそも開示すべき文書を隠蔽するためのものであったことは明らかです。(審議会は実施機関に配慮してか「重大な瑕疵」というにとどめていますが。)
 実施機関の弁明書の決定の理由にある「本件は“なりすまし”の可能性があることから、当室では『公開請求却下決定通知書(令和元年6月6日付及び6月10付分)』を、身分証明書等の提示により宛名『本人』であることを確認できないと受け取れない『本人限定受取郵便』で請求者宛に発送しました」との一文を、前段にある「ご本人に確実にお届けする必要があることから、本人限定受取郵便により送付させていただきました。」の意味であるとしています。
 しかし、説明のとおりであるのであれば、2021年1月4日の開示決定で「マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)」を隠蔽する必要などないはずで、電子メールなどではなく、この段階でこの文書が公開されてしかるべきものです。
 実際にはこの文書は隠蔽され、電子メールが開示されています。ここからはこの文書には「公開してはまずい何か」があったことに間違いはありません。
 また弁明書の続きの記載からは、「警察相談に行く前から本人であることを確認できないと受け取れない本人限定受取郵便で請求者宛てに発送した」ことが「本人限定受取郵便を使用した理由は、本人に確実にお届けする必要があるため」ということの根拠となっていますが、これが根拠になるはずはありません。実施機関が「文書偽造ではないか」との疑念を抱いたのは警察に相談に出向く以前からであったことは明白であり、本人限定受取郵便を使用したことは、警察に相談に出向くにあたり証拠にしようとしたものであることが認められます。
 「マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)」の別紙の「≪その他≫継続的な本人確認のアプローチについて」の記載は、「今後、警察が捜査を行う場合に備えて、証拠の収集と適切な保全が必要であるため、関係所属の協力をお願いするもの」として記載されています。ここから、本人限定受取郵便の使用は、犯罪の立証を目的とするものであったことは明らかです。
 そして、この記載はこの文書の作成段階以前から実施機関が行う対応と同様に、本人限定受取郵便の使用を求めるものであることから、実施機関においてはこの文書の作成以前のいずれかの段階で本人限定受取郵便を使用するとの意思決定がなされていたことは明らかであり、この意思決定に係る文書が不存在であるはずはありません。
 以上のとおり、実施機関は何かと関係文書を隠蔽しようとしていますが、これは、審査請求人が別途行っている利用停止請求の中で述べている通り、天満警察への相談にあたり、保有個人情報保護条例に反して事務の目的を超えて他機関に提供した事実を隠蔽しようとする動機に基づくものであることは明らかです。

第4 実施機関の主張
1 請求対象文書について
 令和2年1214日付けの本件請求に対して、令和3年1月4日付けで「令和2年4月28日付け電子メール(件名:お問い合わせいただいた件について(回答))」を開示決定した。当該メールには「ご本人に確実にお届けする必要があることから、本人限定受取郵便により送付させていただきました。」と記載されているとおり、本人限定受取郵便で発送した理由が記載されている当該メールを対象文書として、当時開示決定を行ったものである。
 審査請求人は、別件の利用停止請求の審査請求において、実施機関が決裁文書「マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)」の存在(つまりは「本人限定受取郵便」を使用した真の目的)を隠蔽し、開示請求に対し虚偽の文書を開示したとする意見書を提出した。この意見書を受けて大阪市個人情報保護審議会は、審査請求人は開示請求にかかる対象文書の特定が不十分である点を主張しており、本審議会での審議対象ではないが、審査請求人の主張には一定の合理性があると考えられるため、実施機関は適切な対応を取られたいとの答申を行った。
 大阪市個人情報保護審議会からの答申を受け、「マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)」を追加で開示決定したものであるが、審査請求人は、追加で開示決定した文書には、「本人限定受取郵便を使用した直接的な理由の記載はありません。」と主張している。また、本人限定受取郵便を使用した真の目的は、「弁明書をご本人に確実にお届けするため」などというものではなく、文書偽造を裏付ける証拠にしようとしたものであり、この目的が示された文書は別に存在するとして、改めて文書の特定を求めている。
 審査請求人は、「本人限定受取郵便を使用した直接的な理由の記載はありません。」と主張しているが、決裁文書「マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)」には、審査請求書では省略されているが、「本件は“なりすまし”の可能性があることから、当室では『公開請求却下決定通知書(令和元年6月6日付分及び6月10日付分)』を、身分証明書等の提示により宛名『本人』であることを確認できないと受け取れない『本人限定受取郵便』で請求者宛てに発送しました」と記載されている。
 また、審査請求人は、真の目的が示された文書は別に存在すると認められると主張しているが、当時開示した「令和2年4月28日付け電子メール(件名:お問い合わせいただいた件について(回答))」の決裁文書には、開示したメールに記載された以外の理由は記載されておらず、郵便料金の支払いにかかる支出関係書類にも、本人限定受取郵便を使用した理由は記載されていない。
 審査請求人は、決裁文書「マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)」の記載内容から本人限定受取郵便の利用は、文書偽造を立証するための一方策として記載されていると主張しているが、決裁文書の別紙「≪その他≫ 継続的な本人確認のアプローチについて」は、「1 提出書類の管理について」、「2 電話等の録音について」とは異なり、警察相談に行く前から本人であることを確認できないと受け取れない本人限定受取郵便で請求者宛てに発送したことが記載されている。このように本人限定受取郵便を使用した理由は、本人に確実にお届けする必要があるためであり、審査請求人が主張する本人限定受取郵便を使用した真の目的が示された文書は存在しない。
2 意見書について
 当時、公文書公開請求等が複数の市民の名前で行われていたため、「マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)」により各所属へ対応を依頼していたが、代理人の委任状が提出され、複数人の関係性が明らかになったことにより、各所属に依頼していた対応の必要がなくなった。当時の担当者が、そのことを上司に報告した際に、今後は通常の取扱とすることを各所属の担当者宛てにメールで連絡することが口頭で意思決定されたため、意思決定文書は存在しない。
 また、審査請求人は、本件決定の際に、各所属に依頼していた対応の必要がなくなった旨のメールも同時に開示されてしかるべきと主張しているが、当該メールには各所属に依頼していた取扱の必要がなくなった旨が記載されているのみであり、「大阪市が、情報公開請求及び審査請求に関する請求人あて郵便物を本人限定受取郵便で発送した理由、また、当初は普通郵便で送付されてきていたにも関わらず、本人限定受取郵便に変更になった理由」は記載されていないため、請求対象文書にはあたらない。

第5 審議会の判断
1 基本的な考え方
 旧条例の基本的な理念は、第1条が定めるように、市民に実施機関が保有する個人情報の開示、訂正及び利用停止を求める具体的な権利を保障し、個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項を定めることによって、市民の基本的人権を擁護し、市政の適正かつ円滑な運営を図ることにある。したがって、旧条例の解釈及び運用は、第3条が明記するように、個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する市民の権利を十分に尊重する見地から行わなければならない。
2 争点
 審査請求人は、本件決定において特定した情報の他にも特定すべき情報があるはずだと主張しているのに対し、実施機関は、本件決定において特定した情報以外に特定すべき保有個人情報は存在しないと主張している。
 したがって、本件審査請求の争点は、本件決定において特定した情報以外に特定すべき保有個人情報が存在するか否かである。
3 本件決定で特定した情報以外に特定すべき保有個人情報の存否について
 審査請求人は、情報公開請求及び審査請求に関する審査請求人宛ての郵便物を本人限定郵便で発送した理由、当初は普通郵便で送付されてきたものが本人限定受取郵便を使用することに変更となった理由の開示を求めているところ、実施機関は、当初、「令和2年4月28日付け電子メール(件名:お問い合わせいただいた件について(回答))」を対象情報として特定したものの、審査請求人が行った別件の審査請求にかかる当審議会の答申での指摘を踏まえて、「マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)」を改めて対象情報として特定している。
 これに対して、審査請求人は、実施機関が本人限定受取郵便を使用した真の目的が文書偽造を裏付ける証拠にしようとしたものであり、この目的が示された文書が別に存在すると主張し、その文書の開示を求めている。
 審査請求人宛の文書の送付方法を普通郵便から本人限定受取郵便に変更した経過及びそれを示す文書の有無について、事務局職員をして実施機関に確認させたところ、「マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)」のほかは、送付方法を変更する旨の決裁文書、内部検討資料、打合せメモなどの記録など事実経過を示す文書は存在しないとのことであり、当審議会においてかかる実施機関の主張を覆す証跡を見出すことはできなかった。
 そして、審査請求人は、実施機関が当初に開示した令和2年4月28日付けメールの内容について意思決定した文書が存在するはずである、本人限定受取郵便の費用を支出した支出関係書類に本人限定受取郵便にしなければならない理由が記載されているはずであると主張するため、かかる主張の当否について検討する。
 この点、実施機関は弁明書において「『令和2年4月28日付け電子メール(件名:お問い合わせいただいた件について(回答))』の決裁文書には、開示したメール以外の理由は記載されておらず、郵便料金の支払いにかかる支出関係書類にも、本人限定受取郵便を使用した理由は記載されていない」と主張しているところ、当審議会において実施機関から提出された当該資料(支出関係における財務会計システムにおける入力内容の画面情報を含む)を見分したところ、いずれの資料からも審査請求人が主張する内容の記載は一切見受けられなかった。
 以上を踏まえると、実施機関の主張を覆すに足る事実が認められないことから、審査請求人が主張する真の理由を記載した文書が作成されたとは認められない。
4 結論
 以上により、第1記載のとおり、判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
委員 塚田 哲之、委員 林 晃大、委員 堀田 善之、委員 矢口 智春

(参考)調査審議の経過 令和5年度諮問受理第12号

答申第211号

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