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答申第212号

2024年10月30日

ページ番号:640884

大個審答申第212
令和6年1213

大阪市長 横山 英幸 様

大阪市個人情報保護審議会
会長 岡澤 成彦

答申書

 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号。以下「法」という。)第105条第3項において準用する同条第1項に基づき、実施機関から令和5年8月22日付け大市第70号により諮問のありました件について、次のとおり答申いたします。

第1 審議会の結論
 実施機関が令和5年6月29日付け大市第37号により行った保有個人情報の開示をしない旨の決定(以下「本件決定」という。)は、妥当である。

第2 審査請求に至る経過
1 開示請求
 審査請求人は、令和5年6月15日、法第77条第1項に基づき、実施機関に対し、「市政改革室が天満警察署に提出した「市民の声等の対応状況一覧」、「情報公開請求」の文書には、請求人の情報が記載されていることは明らかです。これら天満警察署に提出した文書を開示してください。」とする開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 本件決定
 実施機関は、本件請求に係る保有個人情報について、保有していない理由を次のとおり付して、法第82条第2項に基づき、本件決定を行った。
 「請求に係る保有個人情報については、それが記載された可能性のある文書の保存期間(1年)が経過し、廃棄済であるため内容を確認できないことから、当該保有個人情報が存在したかどうか不明であり、実際に存在しないため。」
3 審査請求
 審査請求人は、令和5年7月21日に本件決定を不服として、実施機関に対して、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。

第3 審査請求人の主張
 審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
1 申立の趣旨
 処分を取り消し、改めて開示を行うことの裁決を求める。
2 審査請求書における主張
 審査請求人が、開示請求を行ったところ、「保有個人情報の開示をしない旨の決定」 を受けました。
 決定通知書に記載された「開示をしないこととした理由」について述べる前に、まず、本年6月8日に天満警察署に提出した「市民の声等の対応状況一覧」、「情報公開請求」などの資料の公開を求める情報公開請求を行いました。
 これに対して実施機関は、令和5年6月21日大市第28号で「不存在による非公開決定」を行いました。
 ここで不存在の理由が「当該公文書は存在したが、保存期間(1年)が経過した」となっていたため、本年6月25日に請求対象文書を「当該公文書は存在した」とする根拠が示された文書として公開請求を行いました。
 これに対し実施機関は令和5年7月10日付大市第45号で部分公開決定を行い、「第三者意見書提出機会通知書」が公開されました。
 この「第三者意見書提出機会通知書」は、大阪府警察に対して別途行った公開請求について、大阪府警が実施機関に公開に関しての意見を求めるものです。
 実施機関は、6月8日付公開請求で「天満警察署に提出した『市民の声等の対応状況一覧』、『情報公開請求』などの資料」とした請求対象文書に関して、令和5年6月21日大市第28号で「当該公文書は存在したが、保存期間(1年)が経過した」としており、実施機関が天満警察署に提出した資料については特定したと説明しています。
 しかし、「『当該公文書は存在した』とする根拠が示された文書」として公開された「第三者意見書提出機会通知書」のどこにも、実施機関が天満警察署に提出した資料が何であるかがわかる記載はなく、実施機関は根拠なく「当該公文書は存在した」としており、不存在による非公開決定(令和5年6月21日付大市第28号)に記載された理由は虚偽であると認められます。
 なお、「第三者意見書提出機会通知書」には、「市民の声等の対応状況、情報公開請求対応状況などの資料を示し」との記載はありますが、この記載のみでは、具体的にどのような資料を提出したのか、また、「示し」とするにとどまっていることから、提示するにとどめたのか、提出したのかを判断することはできません。
 また、本年6月24日に行った公開請求では、実施機関が令和5年6月21日付大市第28号による不存在による非公開決定において対象文書が廃棄されたことが不存在の理由とされていることから、対象文書が廃棄されたことがわかる廃棄文書目録などの文書の公開を求めました。
 これに対し実施機関は令和5年7月10日付大市第44号で不存在による非公開決定を行いました。決定通知書の「公開請求に係る公文書を保有していない理由」には、「請求対象文書が廃棄されたことが分かる廃棄文書目録などの文書は作成しておらず、実際に存在しないため。」と記載されていました。
 大阪市公文書管理条例第8条には保存期間が満了した公文書の取扱いが規定されており、大阪市公文書管理条例施行規則第6条には廃棄について定められています。
 この規定は、保存期間が1年未満の文書について適用されるとされており、不存在による非公開決定(令和5年6月21日付大市第28号)では「保存期間(1年)となっていたことから、この規定が適用されるはずです。
 つまり、「廃棄文書目録などの文書は作成しておらず、実際に存在しない」との理由が事実であるとすれば、これは条例違反です。
 そして、不存在による非公開決定(令和5年6月21日付大市第28号)で示された理由にある「廃棄しており、実際に存在しない」について、実施機関が公開した令和1年7月18日付決裁文書「マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)」に添付されていた、資料「市民の声等の対応状況一覧」が、大阪府警から公開された文書に含まれていました。
 つまり、この文書は実施機関が天満警察署に提出したものであり、これが実施機関から公開されていることから現存していることも明らかであり、「廃棄しており、実際に存在しない」については明白に虚偽の理由です。
 以上の事実経過から、6月8日付で行った公開請求の請求対象文書である「天満警察署に提出した『市民の声等の対応状況一覧』、『情報公開請求』などの資料について、実施機関は特定できておらず、廃棄したとの確認も取れていないということは明らかであり、「当該公文書は存在したが、保存期間(1年)が経過したために廃棄しており、実際に存在しない」などという理由が虚偽であることは明らかです。
 6月12日付で行った保有個人情報開示請求も、その内容は6月8日付情報公開請求と同じものです。
 そして、令和5年6月29日付大市第37号による「保有個人情報の開示をしない旨の決定」通知書に記載された、「請求に係る保有個人情報については、それが記載された可能性のある文書の保存期間(1年)が経過し、廃棄済であるため内容を確認できないことから、当該保有個人情報が存在したかどうか不明であり、実際に存在しない」との理由も、上記の通り虚偽です。
 付言すれば、実施機関が天満警察署に提出した資料の公開を大阪府警に請求したところ、大阪府情報公開条例第9条第1項に該当する個人情報であるとして、大部分が黒塗りされて公開されました。つまり、実施機関が天満警察署に提出した資料には、第三者がみて個人情報であると判断される情報が記載されていたということです。
 そして、これは当然のことながら「事務の目的を超えた外部提供」であり、明白に個人情報保護条例違反です。実施機関はこの事実が露見することを恐れて「廃棄したため存在しない」などの虚偽の理由で決定を行っているものであると認められます。
 改めて開示することを求めます。
3 令和5年1228日付け審査請求人意見書における主張
 第三者意見書提出機会通知書には「市民の声等の対応状況 情報公開請求対応状況 などの資料」とするにとどまっており、これらが具体的にどのようなものかわかる記載は一切ありません。また、「資料を示し」となっていることから、示すにとどめたのか、提出したものであるのかも判然としません。
 これを特定した根拠として弁明書には「天満警察署に提出した資料及び廃棄したことについて、当時の担当者への聞き取りにより確認した」と記載されています。しかし、本件開示請求を行ったのは本年6月21日付であり、それから「担当者への聞き取りにより確認した」というのであれば、4~5年も前の記憶に基づき文書や簿冊を特定したということであり、とても正確なものであるとは考えられません。文書の特定が不十分であることは明らかです。
 これは、不存在による非公開決定(令和5年6月21日付大市第28号)には「当該公文書は存在したが、保存期間(1年)が経過したために廃棄しており、実際に存在しない」と記載されていますが、請求対象文書を「令和元年7月10日に実施機関が天満警察署に提出した文書を廃棄する旨の意思決定を行った文書」とした公開請求に対して、実施機関は公開決定(令和5年8月3日付大市第54号)を行い、令和2年3月3日付決裁文書「保存期間が満了する簿冊の廃棄について」を特定しましたが、この文書の<案の1>、<案の2>には保存期間が1年の簿冊が存在しないことでも裏付けられます。
 保存期間が1年未満になっている「庶務関係文書」が該当するのかもしれませんが、「大阪市公文書管理条例解釈・運用の手引」によれば、保存期間が1年未満の簿冊に編綴する文書は「その他の公文書」となっています。保存期間が1年の簿冊に編綴する文書ですら「庶務に関する軽易なもの」となっており、また、本件天満警察に対する相談の結果に基づいて、各所属に対応を求めるものである令和1年7月18日付決裁文書「マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)」の簿冊は保存期間3年の「庶務関係書類」となっていることから、本件天満警察に対する相談の関係文書が編綴されている簿冊が、保存期間1年未満となっている「庶務関係文書」であるとは考えられません。
 なお、第三者意見書提出機会通知書に添付されている令和2年2月14日付「保存期間が満了する簿冊の廃棄について(通知)」には、「廃棄の可否についての精査をし」と記載されていますが、ここでは廃棄予定の簿冊に誤って編綴されるべきではない文書が編綴されていないかどうかなどについて、当該簿冊に編綴されている文書の一覧を出力して確認しているはずです。
 そして、事務担当者の作業については、文書主任等が確認することになっており、上記一覧などは組織共用文書です。
 つまり、廃棄される簿冊にどのような文書が編綴されているのかがわかる文書は保存されていてしかるべきものであり、「保存期間(1年)が経過したため廃棄しており」とするのであれば、文書及び簿冊の特定はできないはずはなく請求対象文書である「『当該公文書は存在した』とする根拠が示された文書」が不存在であるはずはありません。
 また、弁明書では「第三者意見書提出機会通知書に、『公開する行政文書(広聴相談カード)に記録された情報』の「2 広聴相談カードの申出内容」として、「市民の声等対応状況情報 公開請求対応状況などの資料を示し、」と記載されていることから、当該公文書が存在したことは明らか」とされていますが、実施機関が天満警察署に提出した文書は、大阪府警から公開(大部分が黒塗りとなっていますが)されており、これが存在していたことは明らかです。しかし、実施機関はこの文書がどの簿冊に編綴されていたものであるかについては、明確には確認できていません。
 いずれにせよ、実施機関が請求対象文書を廃棄したとする根拠は「当時の担当者の(何年も前の)記憶」のみであり、その内容も上記のとおり俄かには信じがたいものであり、文書の特定が不十分であることは明らかです。
 さらに弁明書では「(略)当該決裁に添付されている資料 『市民の声等の対応状況一覧』には令和元年7月12日時点と記載されており、令和元年7月10日に天満警察署に提出した文書とならないことは明らかである」となっています。しかし、大阪府警から公開された資料「市民の声対応状況」は大部分が黒塗りされていますが、判別できる部分については、当該決裁に添付されていた資料「市民の声等の対応状況一覧」と全く同じです。この事実からわかることは、実施機関がこの文書を電子文書として保管し、これを更新しつつ使用していたということです、そして、天満警察に相談に出向いたのは実施機関の室長及び課長であることから、この電子文書が組織共用されていたことは明らかです。また、令和1年7月18日付決裁文書にこの電子文書の7月12日時点のものが添付されていたという事実からも、組織共用しながら時点更新して使用していたということは明らかです。
 改めて特定することを求めます。

第4 実施機関の主張
1 決定の理由
 審査請求人は、天満警察署に提出した「市民の声等の対応状況一覧」、「情報公開請求」などの資料を求めているものである。
 審査請求人は、令和5年6月8日の公開請求に対し、当庁が行った令和5年6月21日付け(大市第28号)不存在による非公開決定の理由として「当該公文書は存在したが、保存期間(1年)が経過したために廃棄しており、実際に存在しないため」と記載したことについて、「『“当該公文書は存在した”とする根拠が示された文書』として公開された『第三者意見書提出機会通知書』のどこにも、実施機関が天満警察署に提出した資料が何であるかがわかる記載はなく、実施機関は根拠なく『当該公文書は存在した』としており、不存在による非公開決定(令和5年6月21日付大市第28号)に記載された理由は虚偽であると認められます。」と主張している。実施機関は、天満警察署に提出した資料及び廃棄したことについて、当時の担当者への聞き取りにより確認した。また、第三者意見書提出機会通知書に、「公開する行政文書(広聴相談カード)に記録された情報」の「2広聴相談カードの申出内容」として、「市民の声等の対応状況 情報公開請求対応状況などの資料を示し、」と記載されていることから、当該公文書が存在したことは明らかである。
 審査請求人は、「『廃棄文書目録などの文書は作成しておらず、実際に存在しない』との理由が事実であるとすれば、これは条例違反です。」と主張しているが、大阪市公文書管理条例施行規則第6条1項に規定されているものは、「請求対象文書が廃棄されたことがわかる廃棄文書目録などの文書」ではないため、条例違反には当たらない。
 なお、大阪市公文書管理条例施行規則に規定のとおり廃棄簿冊目録を作成している。
 また、審査請求人は、「実施機関が公開した令和1年7月18日付決裁文書『マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)』に添付されていた、資料『市民の声等の対応状況一覧』が、大阪府警から公開された文書に含まれていました。つまり、この文書は実施機関が天満警察署に提出したものであり、これが実施機関から公開されていることから現存していることも明らかであり、『廃棄しており、実際に存在しない』については明白に虚偽の理由です。」と主張しているが、当該決裁に添付されている資料「市民の声等の対応状況一覧」には令和元年7月12日時点と記載されており、令和元年7月10日に天満警察署に提出した文に天満警察署に提出した文書とならないことは明らかである。
 よって、審査請求人は、本件請求における「開示をしないこととした理由」及び同内容である令和5年6月8日付け公開請求における「公開請求に係る公文書を保有していない理由」が虚偽であると主張しているが、上記のとおり当該公文書は廃棄済であり、内容を確認できないことから、当該保有個人情報が存在したかどうか不明であり、実際に存在しない。
2 結論
 以上の次第であり、本件決定は法に則った適正なものである。

第5 審議会の判断
1 基本的な考え方
 法第3条は、個人情報がプライバシーを含む個人の人格と密接な関連を有するものであり、個人が「個人として尊重される」ことを定めた憲法第13条の下、慎重に取り扱われるべきことを示すとともに、個人情報を取り扱う者は、その目的や態様を問わず、このような個人情報の性格と重要性を十分認識し、その適正な取扱いを図らなければならないとの基本理念を示しており、本市は、かかる基本理念を十分に踏まえて個人情報の保護に取り組む必要がある。
 そして、法は、何人も自己を本人とする保有個人情報について、開示(法第76条第1項)、訂正(法第90条第1項)及び利用停止(法第98条第1項)を請求することができることを規定するとともに、これらの請求を受けた行政庁が、一定の場合に開示(法第78条第1項)、訂正(法第92条)又は利用停止(法第100条)をすべき義務を負っていることを規定しているところである。
 したがって、当審議会において、法の定める個人情報の開示、訂正、利用停止の各請求に対する処分の当否を審議するにあたっては、上記の法の理念を踏まえ、個人の人格と密接な関連を有するものであることに配慮し、個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する市民の権利を十分に尊重する見地から行うこととする。
2 争点
 実施機関は、本件請求に係る保有個人情報が保存期間の経過により廃棄されたとして本件決定を行ったのに対して、審査請求人は、実施機関の本件決定の理由は虚偽によるものであり、文書の特定が不十分であると主張し、本件情報の開示を求めて争っている。
 したがって、本件審査請求の争点は、本件請求に係る保有個人情報を廃棄して存在しないとする実施機関の本件決定の理由が妥当か否かである。
3 本件決定の理由の妥当性について
(1) 前提となる事実
 審査請求人は、本件請求に並行して、本件請求に関連した内容の複数の情報公開請求を行い、これにより入手した資料に基づき主張を行っているが、本件審議にあたって、審査請求人はその一部しか提出していないため、当審議会においては、審査請求人から提出された資料の範囲で判断を行うこととする。
 そして、審査請求人から提出された一連の文書の内容を踏まえると、実施機関が令和元年7月10日に天満警察署に相談に行ったこと、相談の際に実施機関が天満警察署に「市民の声等の対応状況一覧」、「情報公開請求対応状況」などの資料を提出又は提示したことは事実であると認められることから、これらを前提として判断を行う。
(2) 対象文書の作成の有無、保管状況について
 審査請求人は、本件決定について、別件の請求で入手した決裁文書「マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)」に添付されていた「市民の声等の対応状況一覧」が、別途大阪府警に対する情報公開請求により部分公開された文書に含まれていたことを指摘したうえで、当該文書には自らの個人情報が記載されていたことは明らかであるとして、実施機関の請求対象の文書を廃棄しており、実際に存在しないとする本件決定の理由が虚偽であると主張している。
 この点、事務局職員をして実施機関に対して、警察へ提出した資料を含め相談に係る公文書の存否を確認させたところ、現に決裁、内部検討資料、打合せメモなどの記録として残されておらず、実際に確認することができないことから、記録として作成していたかどうかを含めて詳細は不明であるとしたうえで、仮に当時、記録が作成されていたとしても平成31年度の庶務関係書類(保存期間1年未満)に編綴されるべきものであり、保存期間満了により廃棄しているものになるとのことであり、現に記録として残されていないことについては、警察に相談に行った際に使用した資料は、その後の方針検討にあたって一時利用するための参考資料であり、事務処理上必要な期間経過後は不要となる性質のものであることから、大阪市公文書管理条例(条例第15号)第6条第3項別表の保存期間30年から1年までの公文書の区分のいずれにも当てはまらないため、平成31年度庶務関係書類(保存期間1年未満)に編綴し、保存期間満了により廃棄しているものとのことであった。
 なお、実施機関の説明における「事務処理上必要な期間」とは、審査請求人が以前に情報公開請求や市民の声等を行っていた際に審査請求人に対する対応方針として「マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)」を意思決定するまでの期間を指しているものであり、当該意思決定により対応方針が決定したことにより、警察への相談内容や相談に行くこととなった経緯等については、職務上必要な情報ではなくなることから、当該意思決定がなされるまでの期間のみ事務処理上保管しておくべきものであるとして位置付けていたとのことである。
(3) 「市民の声等の対応状況一覧」について
 審査請求人が指摘している「市民の声等の対応状況一覧」については、実施機関は令和元年7月12日時点と記載されていることから、その時点において作成されたものであり、実施機関が天満警察署に相談に行った令和元年7月10日以降のものであることから、天満警察署に提出された文書ではないと主張している。この実施機関の主張に対し、審査請求人は、大阪府警から公開された資料が、その大部分が黒塗りであるものの判別できる部分については上記の決裁文書「マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)」に添付されていた「市民の声等の対応状況一覧」と全く同じであることを指摘したうえで、「市民の声等の対応状況一覧」は組織共用しながら時点更新して使用していたものであると反論している。
 この点について、時点修正されてきた資料であれば、本件決定の際に、作成時点としては警察に相談に行った令和元年7月10日以降のものではあったとしても、相談日以降に上書きされた部分を白抜きにして文書特定することもありうると考えられることから、不存在であるとした理由について事務局職員をして実施機関に確認したところ、「マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)」に添付されていた「市民の声等の対応状況一覧」は、時点更新し使用していた資料であったが、現在は更新していない資料であるとしたうえで、天満警察署に提出又は提示したとされる資料を時点更新し、または加工したものと推測されるが、天満警察署に提出又は提示したとされる資料自体は保存期間経過により既に廃棄済みであるためその内容を確認することができないものであり、現存する最新時点での「市民の声等の対応状況一覧」が令和元年7月12日時点のものを時点更新してきたものであったとしても、記載事項が一部異なるなど、単純に時系列に追記したものではなく、修正が行われており、どの時点でどのような修正が行われていたのか確認できないため、令和元年7月10日の時点の状態のものを復元できるものではなく、本件請求に対する対象文書として特定することが不可能なため不存在として判断したとのことであった。
(4) 不存在の理由における保存期間について
 実施機関が、本件決定に係る不存在の理由において、保存期間(1年)が経過し、廃棄済とした点について、審査請求人は、別件の情報公開請求で公開された決裁文書「保存期間が満了する簿冊の廃棄について」をもとに保存期間が1年の簿冊が存在しないことを指摘している。
 当審議会において実施機関に対して、廃棄簿冊目録の提出を求め、これを確認したところ、当該廃棄簿冊目録は審査請求人が言及している決裁文書に含まれる資料と同一のものであり、保存期間が1年の簿冊は存在しなかった。
 この点について、事務局職員をして実施機関に確認させたところ、前述のとおり平成31年度の庶務関係書類(保存期間1年未満)に編綴されるべきものであるとしたうえで、本件決定において保存期間(1年)と記載したのは、当該簿冊(1年未満)の保存期間が最長でも1年であり、実際に1年保管したうえで廃棄を行ったことを説明しようとしたものとのことであるが、かかる説明は合理性を欠くものであり、本件決定において保存期間(1年)と記載したことは、誤記と評価するほかない。
 しかしながら、本件決定の理由について、正確性を欠く記載ではあるものの、保存期間を1年未満とすべきところを1年としたという比較的軽微な誤記であること、対象文書である可能性のある文書について保存期間が経過し、廃棄されているという不存在理由の根幹については誤りがないことに鑑みると、不存在理由について当該誤記があることをもって、本件決定には取り消すべき瑕疵があるとまでは評価できない。そして、現に記録が残されていないとする実施機関の説明を覆すに足りる事実も見受けられないことを併せて考えると、本件決定については、妥当と評価するほかない。
(5) 条例違反の当否について
 なお、上記に関連して、請求対象文書が廃棄されたことがわかる廃棄文書目録などの文書は存在していないとの実施機関の説明に対して、審査請求人は、公文書管理条例違反であると主張しているが、大阪市公文書管理条例施行規則第6条は、「条例第8条第1項の規定により公文書(保存期間が1年未満のものを除く。以下この項において同じ。)を廃棄するときは、当該公文書を編集した簿冊の名称、当該簿冊に最初に公文書が編集された年度…その他の廃棄する公文書を編集した簿冊を特定するために必要と認める項目を記録した目録を作成しなければならない。」と規定しているところ、上述のとおり、請求対象文書が編綴されていたと考えられる簿冊の保存期間は1年未満であり、当該条文の適用がないことは明らかである。さらに言えば、大阪市においては、文書を廃棄する際に作成する廃棄簿冊目録には、廃棄される簿冊の名称は記載されているが、廃棄される簿冊に編綴されている個々の文書名は記載されない取扱いとなっていることを踏まえると、対象文書が仮に保存期間が1年以上の簿冊に編綴されていたとしても、請求対象文書の名称が記載された文書の目録は存在しないとの実施機関の説明に大阪市公文書管理条例・同条例施行規則に違反する点は見当たらない。
 また、審査請求人は、大阪府に対する情報公開請求により入手した実施機関が天満警察署に提供した資料の大部分が個人情報に該当することを理由として非公開となったことをもって、当該資料に審査請求人の個人情報が記載されているとして、実施機関が天満警察署に当該資料を提供したことが「事務の目的を超えた外部提供」であり、大阪市個人情報の保護に関する法律の施行等に関する条例(令和5年大阪市条例第5号)による改正前の大阪市個人情報保護条例(平成7年大阪市条例第11号。以下「旧条例」という。)違反であると主張する。しかしながら、事務の目的を超えた外部提供か否かについては、対象文書の存否を含む本件決定の当否には影響しないから、本件においては検討しない。当審議会では、大阪府が審査請求人の公開請求に対し、どのような公文書を特定し、そのうちどの部分を非公開としたかについては把握していないため不明であるが、仮に審査請求人が主張するとおり、決裁文書「マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)」に添付されていた「市民の声等の対応状況一覧」が天満警察署に提出した資料であるとしても、当審議会で見分したところ、当該文書には、特定の個人を識別することができる情報は記載されていなかったため、旧条例違反の問題は生じない。
4 結論
 以上により、第1記載のとおり、判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
委員 塚田 哲之、委員 林 晃大、委員 堀田 善之、委員 矢口 智春

(参考)調査審議の経過 令和5年度諮問受理第15号

答申第212号

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