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答申第213号

2024年10月30日

ページ番号:640888

大個審答申第213
令和6年1213

大阪市長 横山 英幸 様

大阪市個人情報保護審議会
会長 岡澤 成彦

答申書

 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号。以下「法」という。)第105条第3項において準用する同条第1項に基づき、大阪市長(以下「実施機関」という。)から令和5年9月28日付け大天企総第67号により諮問のありました件について、次のとおり答申いたします。

第1 審議会の結論
 実施機関が令和5年8月4日付け大天企総第44号により行った不開示決定(以下「本件決定」という。)で不開示とした情報のうち、次の部分を開示すべきであり、その余の部分は妥当である。
 【開示すべき部分】
 企画総務課作成資料のうち上から1行目及び2行目並びに下から4行目19文字目から2行目まで。保健福祉課作成資料のうち上から1行目及び2行目。(なお、行数はいずれも空白の行は含めない行数を数えるものとする。)

第2 審査請求に至る経過
1 開示請求
 審査請求人は、令和5年7月21日、法第77条第1項に基づき、実施機関に対し、「令和5年〇月〇日から現在に至る迄の天王寺区役所で私○○○○が警察に拘束された経緯がわかる書類の一切全て。」と表示して開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 本件決定
 実施機関は、本件請求に係る保有個人情報を、「開示請求に係る市民対応記録(以下「本件情報」という。)」と特定した上で、法第82条第2項に基づき、全てを開示しない理由を次のとおり付して、本件決定を行った。
 【不開示とした理由】
 法第78条第1項第7号に該当
 (説明)
 当該保有個人情報を開示することで、犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認められるため
3 審査請求
 審査請求人は、令和5年8月31日に本件決定を不服として、実施機関に対して、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。

第3 審査請求人の主張
 審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
 天王寺区役所は、開示しないことの旨の決定を取消してほしい。
 天王寺区役所が開示しないこととした理由は、犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の安全と秩序に支障を及ぼすあると認められるためと言っているが、自分が犯罪をしていないため。

第4 実施機関の主張
 実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。
 1 本件情報について
 本件情報は、令和5年〇月〇日付けの市民対応記録である。
 本件情報には、天王寺区役所における、審査請求人の行動及びそれに対する対応が記録されており、審査請求人が警察に同行し区役所を退所した経緯が記載されている。
2 不開示とした本件情報の保護法第78条第1項第7号該当性について
 保護法第78条第1項は「行政機関の長等は、開示請求があったときは、開示請求に係る保有個人情報に次の各号に掲げる情報…のいずれかが含まれている場合を除き、開示請求者に対し、当該保有個人情報を開示しなければならない。」と定め、同項第7号において「国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、開示することにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」を掲げている。
 本件情報には、審査請求人の行動が記録されており、開示請求日現在、天王寺区役所職員が審査請求人の令和5年〇月〇日の行動について提出した被害届が受理され、検察により捜査が継続されている状況であった。
 本件情報には、天王寺区役所職員が警察における供述調書作成時に供述した内容を含むことから、開示することにより捜査における対抗策を講じるなど審査請求人による捜査の防御活動を容易にし、犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあることから、本件情報は保護法第78条第1項第7号に該当するものである。

第5 審議会の判断
1 基本的な考え方
 法第3条は、個人情報がプライバシーを含む個人の人格と密接な関連を有するものであり、個人が「個人として尊重される」ことを定めた憲法第13条の下、慎重に取り扱われるべきことを示すとともに、個人情報を取り扱う者は、その目的や態様を問わず、このような個人情報の性格と重要性を十分認識し、その適正な取扱いを図らなければならないとの基本理念を示しており、本市は、かかる基本理念を十分に踏まえて個人情報の保護に取り組む必要がある。
 そして、法は、何人も自己を本人とする保有個人情報について、開示(法第76条第1項)、訂正(法第90条第1項)及び利用停止(法第98条第1項)を請求することができることを規定するとともに、これらの請求を受けた行政庁が、一定の場合に開示(法第78条第1項)、訂正(法第92条)又は利用停止(法第100条)をすべき義務を負っていることを規定しているところである。
 したがって、当審議会において、法の定める個人情報の開示、訂正、利用停止の各請求に対する処分の当否を審議するにあたっては、上記の法の理念を踏まえ、個人の人格と密接な関連を有するものであることに配慮し、個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する市民の権利を十分に尊重する見地から行うこととする。
2 争点
 審査請求人は、本件決定が取り消されるべきである旨を主張する一方で、実施機関は本件情報は法第78条第1項第7号に該当するため、本件決定の維持が適当である旨を主張している。そのため、本件審査請求における争点は、本件情報の法第78条第1項第7号該当性である。
 また、審査請求人は明確に主張しているものではないが、本件情報以外に保有個人情報が存在するか否かも本件決定の妥当性に影響を与えるため、あわせて当審議会において検討する。
3 本件情報について
 本件情報は、審査請求人が天王寺区役所に来所した際の対応記録であり、企画総務課及び保健福祉課においてそれぞれ作成されている。これらの記録の作成経緯について、事務局職員をして実施機関に確認させたところ、審査請求人について窓口での長時間対応が断続的に発生していた状況下で本件情報に係る事象が発生し、担当課内において職員間で対応内容を共有する必要があったことから、審査請求人に対応した両課において当日若しくは翌日に本件情報を作成したとのことであった。
4 本件情報の法第78条第1項第7号該当性について
(1) 法第78条第1項第7号の基本的な考え方について
 法第78条第1項第7号は、国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報で、「開示することにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」は開示しないことができると規定している。
 ここでいう「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」とは、当該事務又は事業の本質的な性格、具体的には、当該事務又は事業の目的、その目的達成のための手法等に照らして、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるかどうかで判断されるものと解される。
 また、条例第6条第1項は、「法第78条第2項の規定により読み替えて適用する同条第1項の開示することとされている情報として条例で定めるものは、大阪市情報公開条例(平成13年大阪市条例第3号)第7条第6号に掲げる情報に該当しないもの(法第78条第1項各号に該当するもの(同項第7号ロに規定する情報を除く。)を除く。)とする。」と規定している。
 したがって、法第78条第1項第7号に基づき、開示の可否を判断するに当たっては、同号ロについては、大阪市情報公開条例第7条第6号の規定に基づき判断することとなる。
(2) 本件情報の法第78条第1項第7号該当性について
 本件情報は3記載のとおり、審査請求人が天王寺区役所に来所した際の対応記録であり、当審議会で見分したところ、客観的な事実や審査請求人が知っていると思われる情報が含まれているものと認められた。かかる情報も含めて本件情報の全てを不開示としている理由について、事務局職員をして実施機関に確認させたところ、次のとおり説明があった。
 ・本件請求日において捜査機関における捜査が終結しておらず、本件情報に記載されている内容は被害者が実際に供述調書作成の際に応答した内容と同一であるため、本件情報を開示することにより捜査に少なからず影響を与えることは容易に想像できる。
 ・また、審査請求人は実施機関に連日来庁し、事実関係の説明を求め、再三にわたり被害者と面会を求めていたことから、本件情報を開示することにより、その記載内容が自身の認識と異なることを主訴として来庁し、応対した被害者が対応に疲弊し萎縮した結果、被害届の取り下げを検討し、又は審査請求人の不利にならないよう裁判での陳述内容を変更する可能性がある。このことは、公共の安全と秩序の維持に多大な影響をもたらすこととなる。
 ・そのほかにも、窓口で長時間にわたり対応を求めることは、実施機関の事務を停滞させ、大声をあげることは他の来庁者に恐怖を抱かせる要因ともなる。
 ・以上より、審査請求人が警察に拘束された事実関係を客観的に記載した本件情報を得ることにより、捜査における対抗策を講じることができるようになる点、及び本件情報が供述調書と同一の内容を含むことから捜査に影響を及ぼすことが考えられる点、被害者保護の観点から、本件情報を開示することは犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると判断した。
 本件決定の理由として実施機関が付したのは、上記第2の2のとおり、「犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ」であるが、かかる主張は、大阪市情報公開条例第7条第6号の「犯罪の予防、犯罪の捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障が生じると認められる」との主張を含むものと解し得ることに加え、上記説明は、実質的に実施機関の市民対応事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることも主張していると解される。客観的な事実や審査請求人が知っていると思われる情報については、不開示とすべき事務支障は通常考えにくいが、上記実施機関の説明のとおり事実関係にも争いが生じている本件の経過に鑑みると、かかる情報であっても上記第1記載の【開示すべき部分】を除く部分については、開示することで犯罪の予防、犯罪の捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障が生じるとまでは認めがたいが、少なくとも実施機関の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれは相当の蓋然性があるものと認められるため、例外的に不開示とすることが妥当である。しかし、上記第1記載の【開示すべき部分】については、上記事情を考慮してもなお、開示することで捜査機関又は実施機関の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものとは認められない。なお、審査請求人は「自分が犯罪をしていない」と主張しているが、本件請求日時点で捜査機関による捜査が終結していない状況であったことから、犯罪構成要件の該当性の有無は法第78条第1項第7号該当性の判断に影響しない。
 したがって、上記第1記載の【開示すべき部分】については法第78条第1項第7号に該当せず、その余の記載については法第78条第1項第7号に該当する。
5 本件情報以外の保有個人情報の存否について
 本件情報の作成経緯は3記載のとおりであり、かかる経緯を踏まえると、他に特定すべき保有個人情報があると認められる事情は見出せない。
6 結論
 したがって、第1記載のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
委員 塚田 哲之、委員 林 晃大、委員 堀田 善之、委員 矢口 智春

(参考)調査審議の経過 令和5年度諮問受理第17

答申第213号

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