答申第214号
2024年10月30日
ページ番号:645270
大個審答申第214号
令和7年1月30日
大阪市長 横山 英幸 様
大阪市個人情報保護審議会
会長 岡澤 成彦
答申書
個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号。以下「法」という。)第105条第3項において準用する同条第1項に基づき、実施機関から令和5年11月16日付け大市第127号により諮問のありました件について、次のとおり答申いたします。
第1 審議会の結論
実施機関が令和5年10月6日付け大市第100号により行った保有個人情報の利用停止をしない旨の決定(以下「本件決定」という。)は、妥当である。
第2 審査請求に至る経過
1 利用停止請求
審査請求人は、令和5年9月6日、法第99条第1項の規定に基づき、実施機関に対し、「情報公開請求事務、不存在による非公開決定及び公開請求却下決定等にかかる審査請求事務/保有個人情報開示請求事務/いずれも市政改革室保有分」を対象として、「○○○(請求人)に係る住所、氏名、連絡先」の利用停止を求める請求(以下「本件請求」という。)を行った。
なお、審査請求人は法改正前の旧様式による利用停止請求書を用いたため、実施機関は適用条文を改正法に基づくものとして読み替えを行っている。
2 本件決定
実施機関は、本件請求に係る保有個人情報を「情報公開請求事務、不存在による非公開決定及び公開請求却下決定等にかかる審査請求事務/保有個人情報開示請求事務/いずれも市政改革室保有分/○○○(請求人)に係る住所、氏名、連絡先」(以下「本件保有個人情報」という。)と特定したうえで、本件保有個人情報の利用を停止しない理由を次のとおり付して法第101条第2項の規定に基づき、本件決定を行った。
(1) 本件請求者は、実施機関が本件保有個人情報を事務の目的の範囲を超えて利用しているとして、本件保有個人情報の消去を求めている。
本件請求者は大阪市個人情報の保護に関する法律の施行等に関する条例による改正前の大阪市個人情報保護条例(以下「旧条例」という。)第10条違反の主張をしているが、これは法第69条第1項及び第2項の違反の主張に相当することから、以下では現行法に基づいて記載する。
(2) 本件請求者は法第98条第1項第1号の定める利用停止請求を行っているものであるが、請求時点で実施機関が本件保有個人情報を事務の目的の範囲を超えて実施機関の内部で利用又は実施機関以外のものに提供している根拠を具体的に示していない。
(3) また、本件請求者は旧条例第7条違反を主張しており、これは法第62条違反に相当する主張であるが、法第98条第1項は法第62条違反を利用停止の要件としていない。
3 審査請求
審査請求人は、令和5年10月15日に本件決定を不服として、実施機関に対して、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。
第3 審査請求人の主張
審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
1 申立の趣旨
本件決定を取り消すとの裁決を求める。
2 審査請求書における主張
利用停止請求の内容は、請求書に添付していた「市民の声等の対応状況一覧」に記載されている情報が、法第2条第1項第1号の「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。」に該当するものであるとして、これを事務の目的を超えて利用し、外部への提供を行っているとしています。
次に決定通知書の「請求時点で実施機関が本件保有個人情報を事務の目的の範囲を超えて実施機関の内部で利用又は実施機関以外のものに提供している根拠を具体的に示していない」について、
ア 利用停止請求においては、対象となる個人情報を利用停止請求に添付していた「市民の声等の対応状況一覧」に記載されている情報であると特定しています。
イ 実施機関は、保有個人情報を天満警察署に提供するということは、審査請求人には事前に知らされておらず、審査請求人は、情報公開請求あるいは審査請求事務の目的の範囲内で利用されるものと認識でした。これは法第69条違反であり、このことも利用停止請求には明示しています。
ウ 利用停止請求にも記載した通り、実施機関は天満警察に提供した情報の開示を求めた請求に対して、「当該公文書は存在したが、保存期間(1年)が経過したため廃棄しており、実際に存在しない」としているにも関わらず、廃棄に係る意思決定文書や廃棄文書目録を示すことができておらず、「廃棄した」との主張は虚偽であるとしか考えられません。このように実施機関は保有個人情報を隠蔽しているとしか考えられない対応を行っているにも関わらず、「根拠を具体的に示していない」などと主張することは信義誠実義務違反です。また、実施機関には、天満警察に提出した資料がどのようなもので、この資料が違法に提供されたものではないということを積極的に説明する義務があるはずですが、このような対応は一切行っておりません。
そして、決定通知書の理由に記載の「法第62条違反に相当する主張であるが、法第98条第1項は法第62条違反を利用停止の要件としていない」について、審査請求では、法62条及び第69条第1項違反を指摘していますが、このうち第69条第1項違反については、法第98条第1項において利用停止の要件とされています。
実施機関は天満警察署に提出した資料がどのようなものであるのかを一切明らかにしていません。
利用停止請求に「理由がない」、つまり法第100条に該当するものではないというのであれば、天満警察に提出された資料が違法に提供されたものでないということを明らかにしなければなりません。
大阪府警察から公開された文書には、「情報公開請求」、「審査請求」と題するものが大量にあります。これらはタイトル以外はすべて黒塗りされていますが、ここにも個人情報が記載されていた疑いが濃厚です。
3 令和6年2月27日付け審査請求人意見書における主張
(1) 開示請求の趣旨について
利用停止請求は、市政改革室が令和元年7月10日に天満警察署に提出した各種文書について、審査請求人に関する個人情報が記載されているものであり、大阪市個人情報保護条例(以下「条例」という。)の規定に反して提出されたものであり、個人情報の目的外利用がなされていることから、審査請求人に係る個人情報の利用停止を求めるものです。
(2) 実施機関の弁明書記載の各論点について
審査請求人の利用停止請求についてまとめると次のとおりになります。
ア 市政改革室が令和元年7月10日に天満警察署に提出した文書として大阪府警察から「市民の声等対応状況一覧」との記載がある大部分が黒塗りされた資料(以下「資料1」という。)が公開された。
イ 資料1は黒塗りされているが、判別できる部分については、市政改革室から公開された令和1年7月18日付決裁文書「マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について」に添付されている「市民の声等の対応状況一覧」(以下「資料2」という。)と全く同じものであり、時点更新されたのみのものであり、黒塗りされている部分については資料2と同様の内容が記載されたものであることが認められる。
ウ 資料2に記載されている情報は、公開請求書など他の情報と照合することで特定の個人が識別できるものであり、法第2条で言う「他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるもの」に該当することは明らかである。
エ 大阪府警察から公開された文書は、資料1のほかに、「情報公開請求」、「審査請求」と題するものが大量にある。これらも大部分は黒塗りされており、ここにも個人情報が記載されていたものと認められる。
オ 以上の文書に記載されている個人情報は、天満警察署に提出されることを予定して収集されたものではなく、また、そのように使用されることも審査請求人は知らされておらず、事務の目的の範囲を超えて利用し、外部提供が行われたものであることは明らかである。(法第69条違反)
カ これは法第98条第1項第1号に定める「(略)第六十九条第一項及び第二項の規定に違反して利用されているとき 当該保有個人情報の利用の停止又は消去」及び、第2号に定める「第六十九条第一項及び第二項(略)の規定に違反して提供されているとき 当該保有個人情報の提供の停止」に該当するものであるから、同条の規定に基づき利用停止を請求する。
弁明書で反論されているのは、上記のうちイ、ウ、カに係る部分ですが、以下、順にみていきます。
まず、イに関して、弁明書では、「黒塗りされており、内容が確認できるものではない。よって、審査請求人が主張する違反の事実を確認することができないため、法第69条第1項及び第2項の規定に反して利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供したと認めることはできない。」となっています。
しかし、上記イでも述べた通り、資料1の判別できる部分は、資料2と全く同じものです。市政改革室は資料2は「令和元年7月12日現在」との記載があることから令和元年7月10日に天満警察署に提出した文書ではないことは明らかであるとしていますが、市政改革室は資料2を時点更新しながら組織共有し、利用していたことは明らかであり、「令和元年7月10日に天満警察署に提出した文書でないことは明らか」との主張は事実を隠蔽するためのごまかしに過ぎません。
また、ウについては、弁明書では「『市民の声等の対応状況一覧』に『他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるもの』は記載されていない。」となっています。しかし、資料2には例えば「市民の声」に関する申出日や回答日の情報が記載されています。また、情報公開請求に関しては、請求日や決定日、審査請求を提起した日などが記載されています。これらの情報は、公開請求書などの関連情報と照合することで審査請求人を特定することが可能となるのであり、法第2条に該当するものです。先日建設局より審査請求人の氏名が記載された公開請求書を誤って大阪市Webサイトに公開してしまったとの謝罪文が送付されてきましたが、このような情報からも審査請求人が特定されてしまいます。
さらに、カに関しては弁明書では「天満警察署に提出した文書は保存期間が経過し、廃棄済みであるため内容を確認できないことから、保有個人情報が存在したかどうかは不明である。審査請求人は、大阪府警から公開された文書が黒塗りされていることから、実施機関が保有個人情報を天満警察に提供したと主張するが、黒塗りされており、内容が確認できるものでない。よって、審査請求人が主張する違反の事実を確認することができないため、法第69条第1項及び第2項の規定に反して利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供したと認めることはできない。」となっています。
まず「天満警察署に提出した文書は保存期間が経過し、廃棄済み」との点について、別途情報公開審査会に対して行っている審査請求の中で述べている通り、市政改革室はこの「廃棄済み」との点についてこれを証明する文書を示すことができておらず、廃棄済みであることを証明できておりません。そして、資料2は2022年11月に公開されたものです。そして、上記でも述べた通り資料2や資料1は、電子文書として組織共有し、時点更新をしながら使用していたものであると認められるものであり、この資料2が2022年11月の段階で存在していたということは、このもととなっている電子文書も存在している可能性が高いものと考えられます。
また、市政改革室はこの廃棄済みであるということを根拠に「内容を確認できないことから、保有個人情報が存在したかどうか不明」、「審査請求人が主張する違反の事実を確認することができない」、「法第69条第1項及び第2項の規定に反して利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供したと認めることはできない」としています。しかし、この点についても資料2や資料1の基となった電子文書は存在している可能性が高く、同時に法第69条違反の事実を確認できる可能性も高いものであると考えられます。
そもそも資料2は、令和1年7月18日付決裁文書「マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)」に記載されている「関係所属長におかれましては、これまで膨大な事務を発生させている本件公文書公開請求等について状況をご理解いただくとともに、今後、本件に係る取扱いは別紙に示す方法に基づいて証拠保全を実施し、所属内での情報の共有と管理を徹底」するように各所属に依頼するために添付されていたものです。つまり、このような利用自体が「事務の目的を超えた利用」です。
この決裁文書には「これまでの状況を勘案すると、同一人物が行っている可能性が高く、実在する他人の名前を騙る“なりすまし”によって文書偽造が行われた疑いがある」と記載されています。ここにある「実在する他人」とは審査請求人のことであり、ここに書かれたとおりであるのなら、審査請求人は名前を騙られた被害者であるということになります。そうであるのなら、被害者たる審査請求人に協力要請などがあってしかるべきものと考えられますが、そのような依頼などは一切ありませんでした。
(3) 結論
以上のとおり、市政改革室が法第69条に違反し、審査請求人に係る個人情報を事務の目的の範囲を超えて利用し、外部(市政改革室以外の大阪市各部署を含む)に提供したことは明らかであるので、利用停止請求書のとおり、利用の停止、削除を求めます。
4 令和6年7月22日付け審査請求人意見書における主張
実施機関の弁明書に記載された「決定の理由」について、実施機関はここでは「廃棄済みであるため内容を確認できないことから、保有個人情報が存在したかどうか不明」、「実施機関が保有個人情報を天満警察に提供したと主張するが、黒塗りされており、内容が確認できるものはない。よって、審査請求人が主張する違反の事実を確認することができない」としています。
審査請求人が行う大阪府警察に対する保有個人情報開示請求は存否応答拒否となり、現在審査請求中で、当面開示される見込みはありません。実施機関はそれをよいことに上記の主張を行っていますが、「本件決定には何ら違法又は不当というべき点はない」というのであれば、みずから大阪府警察に対して提出した文書の開示を請求し、「何ら違法又は不当というべき点はない」ということを証明すべきです。
第4 実施機関の主張
1 決定の理由
(1) 本件保有個人情報の法第98条第1項第1号該当性について
ア 本件保有個人情報の利用の妥当性(法第69条第1項及び第2項違反の有無)について
審査請求人は、「実施機関は、保有個人情報を天満警察に提供するということは、審査請求人には事前には知らされておらず、審査請求人は、情報公開請求あるいは審査請求事務の目的の範囲内で利用されるものと認識でした。これは法第69条違反であり、このことも利用停止請求には明示しています。」として、法第69条違反を主張している。天満警察署に提出した文書は保存期間が経過し、廃棄済みであるため内容を確認できないことから、保有個人情報が存在したかどうか不明である。審査請求人は、大阪府警から公開された文書が黒塗りされていることから、実施機関が保有個人情報を天満警察に提供したと主張するが、黒塗りされており、内容が確認できるものではない。よって、審査請求人が主張する違反の事実を確認することができないため、法第69条第1項及び第2項の規定に反して利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供したと認めることはできない。
イ 本件保有個人情報の利用の妥当性(法第62条違反の有無)について
審査請求人は、「実施機関は、保有個人情報を天満警察に提供するということは、審査請求人には事前には知らされておらず、審査請求人は、情報公開請求あるいは審査請求事務の目的の範囲内で利用されるものと認識でした。これは法第69条違反であり、このことも利用停止請求には明示しています。」として法第62条違反を主張しているが、法第62条違反を保有個人情報の利用の停止又は消去を求める要件としていない。
(2) 小括
当庁は、以上の理由により本件決定を行ったものであり、本件決定には何ら違法又は不当というべき点はない。
2 本件審査請求における審査請求人の主張について
審査請求人は、市政改革室から公開された決裁文書「マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)」に添付されている「市民の声等の対応状況一覧」に記載されているものは、「他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるもの」であることは明らかであり、個人情報であると主張しているが、「市民の声等の対応状況一覧」に「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるもの」は記載されていない。
また、審査請求人は、「廃棄に係る意思決定文書や廃棄文書目録を示すことができておらず」と主張しているが、簿冊の廃棄について意思決定した決裁文書「保存期間が満了する簿冊の廃棄について」を公開決定している。なお、実施機関は大阪市公文書管理条例施行規則に規定のとおり廃棄簿冊目録を作成しているが、請求人の言う廃棄文書目録については公開請求に対する不存在による非公開決定通知書にて作成していないことを説明している。
そのほか、審査請求人は、本件審査請求において法に違反して保有個人情報を利用又は提供していると主張し、本件保有個人情報の消去を求めている。
法第98条及び第100条は、法に違反して保有個人情報を保有されているとき、取り扱われているとき、取得されたものであるとき、又は利用されているとの事実があると認めるときは、個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な限度で、当該保有個人情報の利用を停止することを規定しているところ、本件保有個人情報の消去を求めた本件請求の理由に係る主張は、法に違反して保有個人情報を利用されていることについての理由に該当しないものであり、本件決定の正当性を覆すものではない。
3 結論
以上の次第であり、本件決定は法に則った適正なものである。
第5 審議会の判断
1 基本的な考え方
法第3条は、個人情報がプライバシーを含む個人の人格と密接な関連を有するものであり、個人が「個人として尊重される」ことを定めた憲法第13条の下、慎重に取り扱われるべきことを示すとともに、個人情報を取り扱う者は、その目的や態様を問わず、このような個人情報の性格と重要性を十分認識し、その適正な取扱いを図らなければならないとの基本理念を示しており、本市は、かかる基本理念を十分に踏まえて個人情報の保護に取り組む必要がある。
そして、法は、何人も自己を本人とする保有個人情報について、開示(法第76条第1項)、訂正(法第90条第1項)及び利用停止(法第98条第1項)を請求することができることを規定するとともに、これらの請求を受けた行政庁が、一定の場合に開示(法第78条第1項)、訂正(法第92条)又は利用停止(法第100条)をすべき義務を負っていることを規定しているところである。
したがって、当審議会において、法の定める個人情報の開示、訂正、利用停止の各請求に対する処分の当否を審議するにあたっては、上記の法の理念を踏まえ、個人の人格と密接な関連を有するものであることに配慮し、個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する市民の権利を十分に尊重する見地から行うこととする。
2 争点
本件審査請求における争点は、本件保有個人情報について、実施機関が利用停止を行う義務の有無である。
3 保有個人情報の利用停止請求について
法第98条第1項は、実施機関における個人情報の適正な取扱いを確保する趣旨から、何人に対しても、実施機関が保有する自己を本人とする保有個人情報の利用の停止、消去又は提供の停止(以下「利用停止」という。)を請求することができると定めるとともに、その要件を定めている。そのうち、同項第1号は、何人も、自己を本人とする一定の保有個人情報が、利用目的の達成に必要な範囲を超えて保有されているとき、違法若しくは不当な行為を助長し、若しくは誘発するおそれがある方法により利用されているとき、偽りその他不正の手段により取得されているとき又は所定の事由に該当しないにもかかわらず利用目的以外の目的のために利用され、若しくは提供されていると思料するときは、当該保有個人情報の利用停止の請求を行うことができるとしたものである。
4 本件決定の理由の妥当性について
(1)
保有個人情報の利用停止義務について
法第100条は、実施機関は利用停止請求があった場合において、当該利用停止請求に理由があると認めるときは、当該実施機関における個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な限度で、当該利用停止請求に係る保有個人情報の利用停止をしなければならない旨を規定している。
(2) 本件保有個人情報の利用停止義務の有無について
審査請求人は、本件請求において請求書に添付していた「市民の声等の対応状況一覧表」に記載されている情報が、法第2条第1項第1号の「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものも含む。」に該当するものとして、これを実施機関が事務の目的を超えて利用し、外部への提供を行っていると主張し、具体的には、大阪府に対する情報公開請求により入手した実施機関が天満警察署に提供した資料の大部分が個人情報に該当することを理由として非公開となったことをもって、当該資料に審査請求人の個人情報が記載されているとして、実施機関が天満警察署に当該資料を提供したことを「事務の目的を超えた外部提供」であると指摘している。
この点、当審議会において、審査請求人から提出された一連の資料の内容を踏まえると、実施機関が令和元年7月10日に天満警察署に行ったこと、相談の際に実施機関が天満警察署に「市民の声等の対応状況一覧」、「情報公開請求対応状況」などの資料を提出又は提示したことは事実であると認められるが、大阪府が審査請求人の公開請求に対し、どのような文書を特定し、そのうちどの部分を非公開としたかについては把握していないため不明である。
仮に審査請求人が主張するとおり、決裁文書「マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)」に添付されていた「市民の声等対応状況一覧」が天満警察署に提出した資料であるとしても、当審議会で見分したところ、当該文書には、特定の個人を識別することができる情報は記載されていなかったため、法第98条第1項違反の問題は生じない。
なお、審査請求人は当該文書に、市民の声に関する申出日や回答日の記載、情報公開請求に関する請求日や決定日、審査請求を提起した日の記載があり、これらの情報は公開請求書などの関連情報と照合することで審査請求人を特定することが可能となると主張しているが、これらの記載は単なる日付の記載であり、それ自体で特定の個人を識別することが出来ないことはもちろん、公開請求書などの関連情報は、請求者本人でない限り他の情報と照合することで特定の個人を識別することもできないことから、他の情報と組み合わせることによっても特定の個人を識別することができるものとは認められないから、法第2条第1項の個人情報には該当しない。
5 結論
以上により、第1記載のとおり、判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
委員 塚田 哲之、委員 林 晃大、委員 堀田 善之、委員 矢口 智春
(参考)調査審議の経過 令和5年度諮問受理第31号
略
答申第214号
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