答申第216号
2024年10月30日
ページ番号:645280
大個審答申第216号
令和7年1月30日
大阪市長 横山 英幸 様
大阪市個人情報保護審議会
会長 岡澤 成彦
答申書
大阪市個人情報の保護に関する法律の施行等に関する条例(令和5年大阪市条例第5号)附則第3項の規定によりなお従前の例によることとされた同条例による改正前の大阪市個人情報保護条例(平成7年大阪市条例第11号。以下「旧条例」という。)第45条に基づき、実施機関から令和5年4月27日付け大福祉第201号により諮問のありました件について、次のとおり答申いたします。
第1 審議会の結論
実施機関が令和5年1月24日付け大福祉第2947号により行った不存在による非開示決定(以下「本件決定」という。)は、妥当である。
第2 審査請求に至る経過
1 開示請求
審査請求人は、令和5年1月13日に、旧条例第17条第1項に基づき、実施機関に対し、「請求者が2017年8月24日から大阪市福祉局生活福祉部自立支援課ないし都島区役所内社会福祉協議会の窓口担当に預けた個人情報と資料に関し支援終結までに開示請求をした記録と、請求人の支援が終結したとする日の記録」の開示を求める請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 本件決定
実施機関は、本件請求に係る保有個人情報を保有していない理由を「福祉局において、開示請求書記載の「請求者が2017年8月24日から大阪市福祉局生活福祉部自立支援課ないし都島区役所内社会福祉協議会の窓口担当に預けた個人情報と資料に関し支援終結までに開示請求をした記録と、請求人の支援が終結したとする日の記録」に係る文書は確認できないことから、当該保有個人情報をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」として、旧条例第23条第2項に基づき、本件決定を行った。
3 審査請求
審査請求人は、令和5年3月22日に本件決定を不服として、実施機関に対して、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。
第3 審査請求人の主張
審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
1 申立の趣旨
本件決定を取り消して改めて開示決定を求める
2 審査請求の理由
本件決定における不存在の理由について、“請求人の支援が終了したとする~(中略)”に関して請求人の個人情報を扱っていた事実が保管期間である5年間が過ぎているためによる不存在としてもその理由が成立しない証拠はあるし、また、そもそも契約外且つ同意もしていない調査を実行され、誤教示も受けていた。特に社協と福祉局は連携して業務を遂行していたはずなので不存在である自体おかしいし、当処分は不当である。
第4 実施機関の主張
実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。
1 決定の理由
(1)
生活困窮者自立相談支援事業の実施について
生活困窮者自立支援法(平成25年法律第105号。以下「法」という。)第5条は、「都道府県等は、生活困窮者自立相談支援事業を行うものとする。」と規定している。
また、法第5条第2項には「都道府県等は、生活困窮者自立相談支援事業の事務の全部又は一部を当該都道府県等以外の厚生労働省令で定める者に委託することができる。」と規定されている。
これを受け、本市では、公募型プロポーザル方式において選定した事業者(都島区においては、都島区社会福祉協議会。以下「受託事業者」という。)と業務委託契約(都島区においては、大阪市生活困窮者自立支援事業(相談支援)【都島区】業務委託(長期継続)。以下「業務委託契約」という。)を締結し、業務委託により生活困窮者自立相談支援事業を実施している。
(2)
生活困窮者自立相談支援事業に係る支援の記録について
生活困窮者自立相談支援事業に係る支援の記録については、業務委託契約6(1)において、「相談支援に当たっては、別に定める「自立相談支援機関使用標準様式(アセスメントシート・プランシート等帳票類)」を使用することとし、利用者ごとに支援台帳を作成すること。」定めており、個人情報の取り扱いについては、業務委託契約12(3)において、「個人情報の取り扱いについては、本市関係法令(ガイドラインを含む)を遵守し、厳重に取り扱うこととし、その保護に遺漏のないよう十分に留意すること」定めている。
また、旧条例第1条において、開示請求の対象は、実施機関が保有する個人情報とする旨を定めている。
本件審査請求についてみると、審査請求人が請求する「請求者が2017年8月24日から大阪市福祉局生活福祉部自立支援課ないし都島区役所内社会福祉協議会の窓口担当に預けた個人情報と資料に関し支援終結までに開示請求をした記録」については、実施機関において開示請求を受けた記録はなく、また、受託事業者からも開示請求の報告を受けた事実はなく、実際に存在しない。
また、「請求人の支援が終結したとする日の記録」については、前述のとおり、審査請求人に対する生活困窮者自立相談支援事業による支援業務は、受託事業者において実施している。そのため、実施機関においては審査請求人に対する生活困窮者自立相談支援事業による支援業務を行っておらず、また、受託事業者からも当該記録の報告を受けた事実はなく、開示請求書に記載の文書を保有していないことから、当該保有個人情報をそもそも取得しておらず、実際に存在しない。
2 審査請求人の主張について
審査請求人は、「社協と福祉局は連携して業務を遂行していたはずなので不存在である自体おかしい」と述べているが、これは、実施機関においても受託事業者から報告等を受け、審査請求人の生活困窮者自立相談支援事業に係る支援の記録を保有しており、その情報を開示すべきであると主張しているものと解される。
前述のとおり、生活困窮者自立相談支援事業は業務委託により実施しており、支援の記録は受託事業者が保有している。受託事業者から当該記録の報告を受けた事実はなく、実施機関において生活困窮者自立相談支援事業に係る支援の記録は保有していない。
また、生活困窮者自立相談支援事業に係る支援の記録は、受託事業者において適切に保管・廃棄されている。この点、関連案件と思われる令和5年1月13日付け公開請求に対する令和5年1月24日付け大福祉第2948号により行った公開決定に基づき、令和5年1月25日に実施した公開(文書の閲覧)の際にも、審査請求人に対し、本件不存在理由について説明し、受託事業者への開示請求の手法について案内したところである。
第5 審議会の判断
1 基本的な考え方
旧条例の基本的な理念は、第1条が定めるように、市民に実施機関が保有する個人情報の開示、訂正及び利用停止を求める具体的な権利を保障し、個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項を定めることによって、市民の基本的人権を擁護し、市政の適正かつ円滑な運営を図ることにある。したがって、旧条例の解釈及び運用は、第3条が明記するように、個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する市民の権利を十分に尊重する見地から行わなければならない。
2 争点
実施機関は、本件請求に係る保有個人情報(以下「本件情報」という。)が存在しないとして本件決定を行ったのに対して、審査請求人は本件情報が存在するはずだと主張し、本件情報の開示を求めて争っている。
したがって、本件審査請求の争点は、本件情報の存否である。
なお、審査請求人は、口頭意見陳述において、無料低額診療に係る記録を含む受託事業者が作成又は取得した文書のすべてを請求する意図であったが、かかる文書の開示がない旨を主張したため、実施機関の対象情報の特定に誤りがないかも併せて検討することとする。
3 対象情報の特定について
審査請求人は、上記2のとおり、無料低額診療に係る記録を含む受託事業者が作成又は取得した文書のすべてを請求する意図であったにもかかわらず、かかる文書の開示がない旨主張するが、開示請求書の記載からは、審査請求人のかかる意図を読み取ることはできない。
したがって、実施機関において、開示請求書の記載に従って、開示請求の対象情報として、「請求者が2017年8月24日から大阪市福祉局生活福祉部自立支援課ないし都島区役所内社会福祉協議会の窓口担当に預けた個人情報と資料に関し支援終結までに開示請求をした記録と、請求人の支援が終結したとする日の記録」と特定したことに誤りはない。
4 本件情報の存否について
(1) まず、本件情報のうち、「請求者が2017年8月24日から大阪市福祉局生活福祉部自立支援課ないし都島区役所内社会福祉協議会の窓口担当に預けた個人情報と資料に関し支援終結までに開示請求をした記録」の存否について検討する。
実施機関は、実施機関において上記の内容についての開示請求(以下「別件開示請求」という。)を受けた記録はなく、また、受託事業者からも開示請求の報告を受けた事実はなく、実際に存在しないと主張する。
これに対し、審査請求人は、実施機関又は受託事業者に対して、別件開示請求をした具体的な日時等を主張せず、また、別件開示請求を行ったことを裏付ける客観的な資料も提出しない。
さらに、当審議会においても、審査請求人が別件開示請求を行ったことを裏付け、または推認させる資料を発見することはできなかった。
したがって、審査請求人が実施機関に対して、別件開示請求を行ったものと認めることはできない。
(2) 次に「審査請求人の支援が終結したとする日の記録」の存否について検討する。
ア 実施機関においては、生活困窮者自立相談支援事業について、受託事業者との間で業務委託契約を締結し、実施させているため、審査請求人に対する当該事業による支援業務を行っておらず、また、受託事業者からも審査請求人に対する支援業務について報告を受けた事実はないことから、対象情報が記載された文書を保有していないとして、当該保有個人情報をそもそも取得しておらず、実際に存在しないと主張する。
そして、当審議会において事務局職員をして実施機関に確認させたところ、実施機関と受託事業者の間で、「大阪市生活困窮者自立支援事業(相談支援)【都島区】業務委託(長期継続)」と題する契約を締結し、大阪市生活困窮者自立支援事業の実施を委託していたことが確認できた。
また、実施機関から、次のとおり説明があった。
・受託事業者が相談を受けた際に、継続的な支援が妥当であると判断された場合には、本人の自立に向けた支援方針、支援内容、本人の達成目標を盛り込んだプラン案を策定し、支援調整会議にプラン案に基づく支援を行うか否かを諮ることとされており、支援の終結についても、支援調整会議に諮って判断を受けることとされている。
・受託事業者に確認したところ、審査請求人については、受託事業者において、複数回にわたって相談を受けたが、継続的な支援が妥当との判断に至らなかったため、プラン案は策定されておらず、審査請求人に対しては、支援プランに基づく支援が行われていないため、支援を終結したとの記録は存在しないとのことであった。
上記の説明に不自然・不合理な点はなく、また、審査請求人においては、自らに対する支援プランに基づく支援が開始され、または、終結したとする具体的な日時を主張せず、それらを示す客観的な証跡も提出しないうえ、当審議会においても、審査請求人に対する支援プランに基づく支援が開始され、その後終結したと認めるに足る客観的な資料を見出すことはできなかった。
したがって、実施機関においては、審査請求人に対する支援プランに基づく支援は開始していないものと認められるから、審査請求人に対する支援プランに基づく支援が終結した日の記録は存在しないものと認められる。
イ また、審査請求人は、受託事業者が審査請求人の相談を受けること自体が支援であると認識していた可能性があることから、「審査請求人の支援が終結したとする日の記録」についても、「支援プランに基づく支援が終結した日の記録」ではなく、単なる相談を含めて、受託事業者における審査請求人との対応が終了した日の記録の開示を求めているとも解しうるため、かかる記録の存否について検討する。
この点、受託事業者が相談等を受けた場合の記録がどのように作成・保管されているかについて、当審議会において事務局職員をして実施機関に確認させたところ、実施機関から次のとおり説明があった。
・受託事業者が相談等を受けた場合を含む自立支援相談事業に係る支援記録は、国において構築され平成29年から全国で運用されている「生活困窮者自立支援統計システム」(以下「統計システム」という。)上に記録することとされている。
・実施機関においては、統計システム上のデータを確認する権限を割り当てられていないため、その内容を確認できる状態にない。
・個々の支援記録を実施機関が提供を受けるのは、受託事業者から、支援調整会議資料として、ケースごとに支援の決定や支援内容の確認に必要な範囲で個々の支援記録の提供を受ける場合や、実施機関が警察等からの照会を受けた際に受託事業者から支援記録の提供を受ける場合に限られる。
・実施機関が、統計システム上のデータが業務上必要であると判断した場合には、実施機関から受託業者にデータの提供を依頼し、依頼を受けた受託業者においては、提供が妥当であるかを検討し、提供が妥当であると判断した場合には、受託事業者が統計システムからデータを取り出し(プリントアウトし)実施機関に提供する(ただし、実施機関が警察等から法令に基づく照会を受け、受託事業者にデータの提供を求め、提供を受ける場合もあるが、この場合には、法令に基づくものであるため、受託事業者には判断の余地がないとのことである。)。
・審査請求人については、これらの場合に該当しないため、実施機関においては、実施機関が受託事業者において審査請求人の相談を受けた個別の記録の提供を受けていない。
上記の説明については、不自然・不合理な点はないから、これを踏まえると、審査請求人が受託事業者に相談等を行った際の記録については、統計システム上には存在していたが、実施機関としては、取得していなかったものと認められる。
さらに、統計システム上に記録された個人情報を含むデータが「保有個人情報」に該当するか、すなわち、当該データを「実施機関が保有している」といえるか否かが問題となる。
この点、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第60条第1項の「保有個人情報」における「保有」の意味について、「物理的に占有していなくても、当該個人情報の利用、提供、廃棄等について決定する権限を有し、事実上当該情報を管理しているといえる場合は、「保有」していることになる。したがって、個人情報の電子計算機処理を民間委託しても、委託した行政機関が、当該情報の利用、提供、廃棄等について決定する権限を留保している場合には、本法の下でも、行政機関が保有する情報といえる。」(宇賀克也「新・個人情報保護法の逐条解説」(有斐閣、初版2021年12月発行)441頁)とされており、当該解釈は旧条例第2条第5号にも妥当するものと解される。
これを本件においてみると、当審議会の事務局職員において、実施機関と受託事業者との業務委託契約に係る契約書及び仕様書を確認させたところ、その各条項において、実施機関から受託事業者に対して統計システム上のデータについて、利用、提供、廃棄等を求める条項が見当たらないことが確認できた。そして、実施機関は、統計システム上のデータを直接利用、提供、廃棄等する権限を有しておらず、実施機関において当該データが業務上必要になった場合には、実施機関から受託事業者に提供を依頼し、受託事業者において提供が妥当であると判断した場合に限って、統計システムから必要なデータを取り出して、実施機関に提供する取扱いであったことを考慮すると、統計システム上にのみ存在しているデータについては、実施機関がその利用、提供、廃棄等について決定する権限を留保しているとは認められない。
したがって、実施機関は、統計システム上のデータを保有しているものとは認められないから、統計システム上に記録された個人情報を含むデータは、実施機関の保有個人情報には該当しない。
以上のとおりであるから、個々の支援記録については、実施機関が受託事業者から提供を受け、保管しているものは保有個人情報に該当するが、実施機関が受託事業者から提供を受けず、統計システム上に記録されているにとどまるものは、保有個人情報に該当しないと認められるから、本件において、審査請求人が受託事業者に相談等を行った際の記録については、実施機関が受託事業者から提供を受けていない以上、実施機関の保有個人情報としては存在していなかったものと認められる。
ウ なお、審査請求人は、審査請求書において「請求人の個人情報を扱っていた事実が保管期間である5年間が過ぎているためによる不存在としてもその理由が成立しない証拠はある」と主張しており、かかる主張は実施機関が保有個人情報の保管期間を誤って廃棄したとの主張と解されるが、上記のとおり、そもそも、実施機関は、審査請求人に係る支援記録を取得した事実がないと認められる以上、実施機関の支援記録の廃棄の適否については検討の必要がない。
5 結論
以上により、第1記載のとおり、判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
委員 岡澤 成彦、委員 小岩井 理史、委員 篠原 永明、委員 野田 崇
(参考)調査審議の経過 令和5年度諮問受理第1号
略
答申第216号
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