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答申第217号

2024年10月30日

ページ番号:645281

大個審答申第217
令和7年1月30

大阪市教育委員会
教育長 多田 勝哉 様

大阪市個人情報保護審議会
会長 岡澤 成彦

答申書

 大阪市個人情報の保護に関する法律の施行等に関する条例(令和5年大阪市条例第5号)附則第3項の規定によりなお従前の例によることとされた同条例による改正前の大阪市個人情報保護条例(平成7年大阪市条例第11号。以下「旧条例」という。)第45条に基づき、大阪市教育委員会(以下「実施機関」という。)から令和5年7月14日付け大市教委第1201号により諮問のありました件について、次のとおり答申いたします。

第1 審議会の結論
 
実施機関が令和5年3月31日付け大市教委第3770号により行った不存在による非開示決定(以下「本件決定」という。)は、妥当である。

第2 審査請求に至る経過
1 開示請求
 審査請求人は、令和5年3月17日に、旧条例第17条第1項に基づき、実施機関に対し、「私の勤務しておりました(〇〇〇〇小中一貫校の)大阪市立〇〇〇〇小学校での平成30年4月1日から平成31年3月30日までの勤務評価を示す文書をすべて開示してほしい。」の開示を求める請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 本件決定
 実施機関は、本件請求に係る保有個人情報(以下「本件情報」という。)を保有していない理由を次のとおり付して、旧条例第23条第2項に基づき、本件決定を行った。
「教職員の勤務評価については、教育委員会事務局において人事評価制度として実施している。開示請求者は平成30年4月1日から平成31年3月30日までの期間、臨時的任用職員として任用されたが、臨時的任用職員は人事評価制度の評価対象でないことから、当該保有個人情報をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」
3 審査請求
 審査請求人は、令和5年6月15日に本件決定を不服として、実施機関に対して、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。

第3 審査請求人の主張
 審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
1 申立の趣旨
 本件決定を取り消し、開示決定を求める。
2 審査請求における主張
 6か月後ごとに更新される契約であるから、更新されるには公的な何らかの勤務評価があってしかるべきである。かつ、「臨時的任用職員の採用要綱」においても、臨時的任用職員を任命した場合にあたっては、その内容を年2回、人事室長へ報告しなければならないとあることからみても、本件決定において勤務評価を示す文書すべてが不存在とされたことはありえないため。
3 反論書における主張
(1) 弁明書記載事項の認否
 弁明書第2の1については不知。その余については否認する。
 理由は、入職にあたり大阪市教育委員会事務局教務部担当係長A氏および大阪市立中央図書館担当係長B氏の両名の面談時において、また、入職後も地公法および大阪市職員基本条例についての規定の説明を受けた事実はなく、また、人事考課制度運用の手引きについて、人事評価制度の運用が審査請求人が該当しないという説明もなく、さらにそれらを記した資料を渡されることもなかったからである。
(2) 審査請求人の反論
 実施機関は、審査請求人の「6か月後ごとに更新される契約であるから、更新されるには、公的な何らかの勤務評価があってしかるべきである」との主張について、法的根拠を欠いており、主張する文書が存在する理由には当たらない」と主張している。
 しかしながら、臨時的任用職員は、仮に人事考課制度の対象から除くとしても、人事評価については、任命権者がこの場合は校長および教頭が審査請求人の評価について、しないあるいはしてはならない、する必要がないとは定めたものではない。よって、実施することはできるとの解釈余地がある。
 したがって、法的根拠を欠いているとは言えず、6か月後の更新について、何をもって評価し、更新されたかという客観的根拠が全く示されずに更新されることについて、説明がつかないことが問題となる。
 しかも、新規に行われた平成31年度の面接選考について、6項目の評価がなされている事実を見ても、たった10分間で評価採点をすることは不可能である項目内容であることは、常識的観点からも明らかである。面接選考試験までの約1年間勤務していたところの大阪市立〇〇〇〇小学校のC校長・D教頭から人事考課制度という名目とは限らず、何らかの人事評価がなされていたことを否定するには無理があると考える。そもそも常識的に考えて、評価なくして更新などありえず、評価された文書が全くないと主張するのであれば、実際に更新されているのであるから、何らかの評価となるものが存在していたことは明らかで、根拠となるものについての説明は必要となる。
 さらに、面接選考での6項目の点数の根拠となるべきものについての説明も必要である。更新時同様に、勤務期間の評価を把握した上での採点であることは明白であり、業務遂行の評価一つをとっても、期待レベルをはるかに上回った成果をだしており、面接選考での採点は、高い点数でもって採用されていなければならないことになる。
 審査請求人の「臨時的任用職員を任用した場合にあたっては、その内容を年2回、人事室長へ報告しなければならないとあることから、本件決定において勤務評価を示す文書がすべて不存在とされたことはありえない」との主張について、当該要綱は、市長部局の臨時的任用職員を対象としたものであり、学校園の職員には直接的な適用がなく、実施機関から人事室に報告していないと主張している。
 しかしながら、「市長部局」の但し書きはなく、また、「直接的な適用がない」とする注釈による説明書きもないことから、説明不足であり、これを見た者が、臨時的任用職員を条件付きの内容であると認識するに至って無理があるから、弁明書の主張は認められるものではない。審査請求人には説明がなく不知であるが、D教頭は人事考課の用紙を審査請求人に手交し、審査請求人は記載した用紙を提出した経緯があることを付言しておく。
 また、これに付随して、大阪市職員の標準職務遂行能力に関する要綱、第3条(標準的な職として掲げられているが)特別の事情により要綱にすることができない場合は、総務局長は別段の取り扱いをすることができるとあり、第4条には、この要綱に関して必要な事項は総務局長が定めるとしている。
 したがって、標準職務遂行能力についての評価は、人事考課以外によってなされてもよいということであり、仮に人事考課制度の適用を否定したとしても、評価の存在自体を否定するものではないのであって、不存在を証明したことにはならない。
 大阪市教育委員会事務局指導部初等教育担当E指導主事の訪校があり、C校長、D教頭、審査請求人の4人で話をした際に、審査請求人は、入職後から今日までの数々の不適切な違法行為を受けたことについての訴えを行った。これに対して、E氏は審査請求人の業務遂行に対して、高い評価をすると同時にC校長およびD教頭に対して、苦言を述べている。このような事態は前記と同様に、当然ながら、審査請求人に対する重要な評価に繋がるものとして、記録として報告が提出されていて然るべきものである。
 また、C校長は常日頃から、審査請求人についての性格も把握するほど詳細な連絡を取り合っていると証言しているのである。つまり報告義務を果たしていると証言をしているのである。報告は文書として残されるものであり、勤務評価について影響を及ぼすものであり、当然ながら、評価がなされていたと理解されるものであることから、文書としての存在を示す証拠である。
(3) 結果
 審査請求人の主張であるところの、〇〇〇〇小学校での平成30年4月1日から平成31年3月30日までの勤務評価を示す文書をすべての開示請求に対して、文書は作成しておらず、実際に存在していないという本件決定は、審査請求人に対する評価に繋がる報告書類が隠蔽されたと判断せざるを得ないもので、到って重大な意味を持つ回答と受け止められるものである。

第4 実施機関の主張
1 臨時的任用職員の人事評価制度について
 地方公務員法(昭和25年法律第261号)第23条の2第1項は、「人事評価の基準及び方法に関する事項その他人事評価に関し必要な事項は、任命権者が定める。」と規定している。
 大阪市職員基本条例(平成24年大阪市条例第71号)第23条は、「この条例に定めるもののほか、人事評価の基準及び方法その他人事評価の実施に関し必要な事項は、任命権者が別に定める。」と規定しており、教育委員会所管の学校の教員等の人事評価については、「人事考課制度運用の手引き」(以下「手引き」という。)を定め、「手引き」に基づき人事評価制度の運用を行っている。
 審査請求人が臨時的任用職員として任用されていた平成30年4月1日から平成31年3月30日までの期間の人事評価制度の運用については「平成30年度人事考課制度運用の手引き(職員向け)」により定められており、臨時的任用職員は人事考課制度の評価対象から除くと定めている。
2 臨時的任用職員の任用について
 審査請求人は審査請求の理由について「6か月後ごとに更新される契約であるから、更新されるには公的な何らかの勤務評価があってしかるべきである。」と主張しているが、当該主張については法的根拠を欠いており、審査請求人の主張する文書が存在する理由には当たらない。
 また、審査請求人は審査請求の理由について、「臨時的任用職員の採用要綱」においても、臨時的任用職員を任用した場合にあたっては、その内容を年2回、人事室長へ報告しなければならないとあることから、本件決定において勤務評価を示す文書すべてが不存在とされたことはありえないと主張している。
 当該要綱は、市長部局の臨時的任用職員を対象としたものであり、学校園の職員に直接的な適用がなく、当庁から人事室に報告していない。
 なお、報告内容としては、臨時的任用職員等の任用形態や任用期間等を報告するものであり、勤務評価を報告するものではない。
 よって、審査請求人の主張する勤務評価を示す文書は作成しておらず実際に存在しない。

第5 審議会の判断
1 基本的な考え方
 旧条例の基本的な理念は、第1条が定めるように、市民に実施機関が保有する個人情報の開示、訂正及び利用停止を求める具体的な権利を保障し、個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項を定めることによって、市民の基本的人権を擁護し、市政の適正かつ円滑な運営を図ることにある。したがって、旧条例の解釈及び運用は、第3条が明記するように、個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する市民の権利を十分に尊重する見地から行わなければならない。
2 争点
 実施機関は、本件情報が存在しないとして本件決定を行ったのに対して、審査請求人は本件情報が存在するはずだと主張し、本件情報の開示を求めて争っている。
 したがって、本件審査請求の争点は、本件情報の存否である。
3 勤務評価の実施の有無について
 審査請求人は、平成30年4月1日から平成31年3月30日までの期間、臨時的任用職員として任用されていたが、その勤務条件における雇用期間は、採用時に平成30年4月1日から平成30年9月30日までとしていたものについて、継続発令により平成3010月1日から平成31年3月30日まで更新したものである。このことについては採用募集の際の募集要項においても、任用期間について、任用開始日より6ヶ月以内、ただし書きにおいて6ヶ月を限度に期間を延長する場合があると記載されており、争いの余地がないものと認められる。
 勤務評価が実施されたかどうかについて、実施機関は、教職員の勤務評価は人事考課制度において実施しているものの、臨時的任用職員は同制度の対象外であり、審査請求人に係る評価は実施していないと主張している。この点、事務局職員をして当時の人事考課制度運用の手引きを確認させたところ、評価対象となる職員から臨時的任用職員を除くことが明記されており、人事考課制度に基づく評価を実施していないとする実施機関の主張に不自然・不合理な点はない。
 これに対して、審査請求人は、実施機関が人事考課制度に基づかず、採用期間を延長する継続発令や平成31年度の面接選考などの際に、何らかの形で審査請求人に対する評価を行っているはずであるとして、その評価に係る情報の開示を求めているものと解されるため、この点についても検討する。
 この点について、当審議会の事務局職員をして実施機関に確認させたところ、実施機関は、臨時的任用職員に対しては、任用期間の延長や平成31年度面接選考などのいかなる形態であっても勤務状況の評価を行っていないとのことであった。また、当審議会の事務局職員をして任用期間の延長及び平成31年度面接選考に係る資料を確認させたところ、勤務評価に係る項目、記載は一切見受けられなかった。
 さらに、審査請求人は、日常的に校長等から教育委員会に対して、審査請求人の能力等について勤務評価という形式をとらない何らかの形式での報告がなされていたと主張し、口頭意見陳述においても、自己評価を記入した人事考課シートを作成し、提出した旨の陳述を行うが、当審議会の審議・調査において、審査請求人の主張を裏付ける証跡などの実施機関の上記主張を覆すに足りる客観的な証跡を発見するに至らなかった。
 以上のことから、実施機関の、いかなる形でも審査請求人については勤務評価を行った事実はないからその事実を記録した文書は存在しないとする主張については、不自然、不合理な点があるとまでは認められないから、審査請求人に係る勤務評価を記した文書は存在しないものと認められる。
 なお、審査請求人は、実施機関は、対象文書が不存在であることを証明していない旨主張するが、一般に、存在しないことを証明することは極めて困難であるから、不存在を理由とする非開示決定の審査にあたっては、実施機関において、対象文書が存在しないことについて、不自然・不合理ではないといえる程度に主張・立証がなされれば、特段の反証のない限り、当該不存在を理由とする非開示決定については、妥当とするほかない。
4 結論
 以上により、第1記載のとおり、判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
委員 岡澤 成彦、委員 小岩井 理史、委員 篠原 永明、委員 野田 崇

(参考)調査審議の経過 令和5年度諮問受理第13号

答申第217号

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