答申第218号
2025年2月5日
ページ番号:649970
大個審答申第218号
令和7年3月27日
大阪市長 横山 英幸 様
大阪市個人情報保護審議会
会長 岡澤 成彦
答申書
個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号。以下「法」という。)第105条第3項において準用する同条第1項に基づき、実施機関から令和5年10月6日付け大天保福第144号及び同月24日付け大福祉第e-537号により諮問のありました件について、次のとおり一括して答申いたします。
第1 審議会の結論
実施機関が令和5年9月15日付け大天保福第123号により行った不存在を理由とする不開示決定(以下「本件決定1」という。)及び同月14日付け大福祉第e-411号により行った不存在を理由とする不開示決定(以下「本件決定2」といい、「本件決定1」と総称して「本件各決定」という。)は、いずれも妥当である。
第2 審査請求に至る経過
1 開示請求
審査請求人は、令和5年9月1日、法第77条第1項に基づき、実施機関に対し、「2022年度の私の家族の「福祉乗車証」が本人の手元に届かなかった件で、本庁福祉局の乗車証担当に相談し、区役所へはとりに行かれない旨を伝え、本庁で受け取るにつきの私の言い分と天王寺区の返答、さらには担当部署(天王寺区役2Fの福祉サービスグループ)ではない職員(天王寺区4階の生活保護グループ)が本庁へ出むくに至った記録(福祉局・天王寺区保有分)」と表示して保有個人情報の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 本件各決定
(1) 本件決定1
実施機関の天王寺区役所(以下「天王寺区役所」という。)は、本件請求のうち天王寺区役所保有分に係る保有個人情報について、保有していない理由を次のとおり付して、本件決定1を行った。
「開示請求書に記載の「2022年度の私の家族の「福祉乗車証」が本人の手元に届かなかった件で、本庁福祉局の乗車証担当に相談し、区役所へはとりに行かれない旨を伝え、本庁で受け取るにつきの私の言い分と天王寺区の返答、さらには担当部署(天王寺区役所2Fの福祉サービスグループ)ではない職員(天王寺区4階の生活保護グループ)が本庁へ出むくに至った記録」に該当する文書が確認できないことから、当該保有個人情報を、そもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」
(2) 本件決定2
実施機関の福祉局(以下「福祉局」という。)は、本件請求のうち福祉局保有分に係る保有個人情報について、保有していない理由を次のとおり付して、本件決定2を行った。
「福祉局において、開示請求書に記載の「2022年度の私の家族の「福祉乗車証」が本人の手元に届かなかった件で、本庁福祉局の乗車証担当に相談し、区役所へはとりに行かれない旨を伝え、本庁で受け取るにつきの私の言い分と天王寺区の返答、さらには担当部署(天王寺区役2Fの福祉サービスグループ)ではない職員(天王寺区4階の生活保護グループ)が本庁に出むくに至った記録」に該当する文書は作成していないことから、当該保有個人情報をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」
3 審査請求
審査請求人は、令和5年9月29日に本件決定1を、令和5年10月3日に本件決定2を不服として、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づきそれぞれ審査請求(以下、順に「本件審査請求1」及び「本件審査請求2」といい、あわせて「本件各審査請求」という。)を行った。
第3 審査請求人の主張
審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
1 本件審査請求1の趣旨及び理由
本件決定1の取り消しを求める。
記録がないはずがない。
(1) 実際に区役所の職員が区役所の外へ、山のような書類を持って出ているのにその記録がないはずがない(何も残さなかったとしたら、それはそれで大問題)
(2) 「福サ」の領分の「~乗車証」を他グループ、他フロアの職員が運ぶに至るに連絡等していないはずがない
(3) 「天王寺区保有分」とわざわざ記したのに、福祉サービスという名の担当からしか通知がないのも怪しいし不誠実である
(4) 外へ出るにつき、それなり上司の決定(許可)が必須でその「外へ出た」のは生活保護の担当であり、その記録は存在する
2 本件審査請求2の趣旨及び理由
本件決定2の取り消しを求める。
他部署との公務中の連絡事項を記録していないはずがない。
第4 実施機関の主張
1 本件決定1について
(1) 「福祉乗車証」について
「大阪市身体障がい者等に関する交通機関乗車料金福祉措置実施要綱」【平成19年8月1日施行】(以下「実施要綱」という)に基づき、障がい者の自立と社会参加を促進するため、障がいの等級等に応じて市内交通機関(Osaka Metro、大阪シティバス)の無料乗車証または割引証の交付を行っている。
対象者は、市内に住所を有する身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者、戦傷病者、原爆被爆者、特別児童扶養手当1級受給者(※生活保護受給世帯を除く)である。
なお、重度障がい者等タクシー給付券及び敬老優待乗車証の交付を受けている者を除く。
交付申請手続きには、「身体障がい者手帳」「療育手帳」「精神障がい者保健福祉手帳」「戦傷病者手帳」「被爆者健康手帳」「特別児童扶養手当証書(1級)」のうち、いずれか一つ証明書類が必要となる。
対象となる交通機関は、Osaka Metro が運行する地下鉄・ニュートラム及び大阪シティバスが運行するバスと限られている。
(2) 福祉乗車証の更新について
平成28 年度までは、毎年更新申請書の提出を求めていたが、平成29 年4月1日付け「実施要綱」が改正され、更新期間は5年間となった。
令和4年度は、審査請求人の家族の「福祉乗車証」の更新時期にあたっていたため令和3年度中に令和4年度分乗車証にかかる更新申請書の提出を求めた。
(3) 「請求人の家族に対し『福祉乗車証』が手元に届かなかった」との主張について
従前、請求人より請求人の家族は自力で申請書を記載することが困難なことから、郵便物を送る際には、請求人にも必ずその写しを送付するよう依頼されていたが、当時の担当者がその対応を失念した結果、更新申請書の写しが請求人に届かなかった。
よって、請求人の家族は、令和3年度中に当区へ更新申請書の提出をすることが出来ず、令和4年4月1日に「福祉乗車証」を受け取るに至らなかった。
(4) 「記録がないはずがない」との主張について
「本庁で受け取るにつきの請求人の言い分と天王寺区の返答」にかかる記録については、請求人が福祉局の窓口へ出向いた際にあくまで局担当者を経由しての電話による口頭でのやり取りであったため、「福祉乗車証」を市役所の本庁舎(以下「本庁」という。)で受け取るに至った請求人の言い分及び天王寺区の返答の記録については、そもそも作成又は取得していない。
(5) 担当部署(天王寺区役所2F
の福祉サービスグループ)ではない職員(天王寺区4階の生活保護グループ)が本庁へ出向くに至った記録について
「他グループ他フロアの職員が運ぶに至る連絡」及び「外へ出たのは生活保護の担当でありその記録は存在する」との言い分については、当区の乗車証担当窓口は天王寺区役所2階の福祉サービスグループであるため、他グループ他フロアの職員が業務担当外の乗車証の件で、福祉サービスグループの職員に代わり本庁へ出向くことはない。
したがって、今回乗車証を本庁にて受け取るに至った経緯において、生活保護担当の職員にかかる記録については実際に存在しない。
2 本件決定2について
(1) 「本庁で受け取るにつきの請求人の言い分と天王寺区役所の返答」にかかる記録について
福祉局では実施要綱に基づき、障がい者の自立と社会参加を促進するため、障がいの等級等に応じて市内交通機関(Osaka Metro、大阪シティバス)の無料乗車証または割引証の交付を行っており、本件決定2における「福祉乗車証」は、この無料乗車証に該当する。
実施要綱では、第2条において「無料乗車証及び割引証の交付に関する事務は、各区役所福祉業務主管課において取り扱うこととする。」と規定されている。
請求人は、無料乗車証を福祉局で受け取る相談をするため来訪したものの、交付に関する事務は本来区役所にて取り扱われるべきであることから、請求人の言い分は、福祉局を経由して本来の所管である天王寺区役所へ口頭にて取り次がれた。
他部署との公務中の連絡事項を必ず記録しておかなければならない旨の規定はないことから、当該記録については福祉局においてそもそも作成又は取得しておらず、実際には存在しない。
(2) 「担当部署(天王寺区役所2Fの福祉サービスグループ)ではない職員(天王寺区4階の生活保護グループ)が本庁へ出向くに至った記録」について
上記にて福祉局が取り次いだ先は、天王寺区役所における無料乗車証担当窓口となる2階の福祉サービスグループである。
取り次ぎ後の交付に関する事務は、所管である天王寺区役所にて行われるため、当該記録については福祉局においてそもそも作成又は取得しておらず、実際には存在しない。
第5 審議会の判断
1 基本的な考え方
法第3条は、個人情報がプライバシーを含む個人の人格と密接な関連を有するものであり、個人が「個人として尊重される」ことを定めた憲法第13条の下、慎重に取り扱われるべきことを示すとともに、個人情報を取り扱う者は、その目的や態様を問わず、このような個人情報の性格と重要性を十分認識し、その適正な取扱いを図らなければならないとの基本理念を示しており、本市は、かかる基本理念を十分に踏まえて個人情報の保護に取り組む必要がある。
そして、法は、何人も自己を本人とする保有個人情報について、開示(法第76条第1項)、訂正(法第90条第1項)及び利用停止(法第98条第1項)を請求することができることを規定するとともに、これらの請求を受けた行政庁が、一定の場合に開示(法第78条第1項)、訂正(法第92条)又は利用停止(法第100条)をすべき義務を負っていることを規定しているところである。
したがって、当審議会において、法の定める個人情報の開示、訂正、利用停止の各請求に対する処分の当否を審議するにあたっては、上記の法の理念を踏まえ、個人の人格と密接な関連を有するものであることに配慮し、個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する市民の権利を十分に尊重する見地から行うこととする。
2 争点
実施機関は、本件請求に係る個人情報(以下「本件各情報」という。)が存在しないとして本件各決定を行ったのに対して、審査請求人は、記録がないはずがないと主張し、本件各決定の取消しを求めて争っている。
したがって、本件各審査請求の争点は、本件各情報の存否である。
3 本件各情報の存否について
(1)
交付に係る手続
「福祉乗車証」の申請から交付に至る事務手続について、当審議会において事務局職員をして天王寺区役所に確認させたところ、各区役所において自区内の「福祉乗車証」の交付対象者に対して更新申請書を送付し、交付対象者から区役所の窓口又は郵便で更新申請書の提出がなされると、簡易書留郵便で交付を行うとのことである。
したがって、交付対象者との書類のやり取りなどの事務手続については、本件においては天王寺区役所が行い、福祉局はその事務手続を行うことがない。
なお、天王寺区役所によれば、審査請求人の家族に係る「福祉乗車証」の更新の経過については次のとおりである。
・令和4年度が更新時期にあたっていたことから、天王寺区役所は令和3年度中に令和4年度分の「福祉乗車証」の更新申請書の提出を求めた。
・審査請求人からは、従前より審査請求人の家族が自力で申請書を記載することが困難なことから、審査請求人の家族に郵便物を送る際には、審査請求人にも必ずその写しを送付するよう申入れがあり、天王寺区役所においてもその旨を了承していた。
・しかしながら、更新申請書の送付を送る際、当時の担当者が、審査請求人の家族に更新申請書を送付した際、その写しを審査請求人に送付することを失念していたため、審査請求人の家族は、令和3年度中に天王寺区役所へ更新申請書の提出をすることができず、その結果、審査請求人の家族は令和4年4月1日に「福祉乗車証」を受け取ることができなかった。
(2)
審査請求人への対応について
福祉局及び天王寺区役所によれば、審査請求人の家族の「福祉乗車証」の発行に関する審査請求人とのやり取りは次のとおりである。
・上記(1)の経過があったことから、審査請求人は、福祉局において「福祉乗車証」を受け取れないかを相談するため福祉局に来庁した。
・上述のとおり、「福祉乗車証」の交付事務は、「福祉乗車証」の交付対象者の居住地の区役所が所管することから、福祉局では審査請求人の要望に応じることができず、本件の所管部署である天王寺区役所に審査請求人からの相談内容を取り次いだ。
・天王寺区役所からは、審査請求人が福祉局に申請書を提出したいのであれば、福祉局において受領し、天王寺区に送るよう指示があった。
・そのため福祉局職員はその旨を審査請求人に伝えたところ、後日に審査請求人の家族が福祉局に来庁し、申請書を提出したため、受領した申請書を天王寺区役所に送付したとのことである。その際のやり取りは福祉局において申請書を受け取って終わっており、天王寺区役所の職員が福祉局に出向いた事実はない。
・また、改めて提出された申請書に対して、後日、天王寺区役所が「福祉乗車証」を書留郵便にて送付し、審査請求人にも送付状を送ったものの、その後、審査請求人がその家族に付き添って福祉局を訪れ、紛失したため再発行して欲しいとの申出があったことから、審査請求人がその場において再発行の申請書を記載することとなった。
・福祉局からの連絡を受け、本件事務の所管である天王寺区役所の福祉サービスグループの職員が本庁に出向き、審査請求人の家族に再発行された「福祉乗車証」を直接交付しようとしたものの、審査請求人が天王寺区役所の職員と会うことを拒絶したことから、再発行された「福祉乗車証」は天王寺区役所の職員が福祉局の職員に預けたうえで、福祉局の職員から審査請求人に手渡した。
なお、審査請求人が言及している天王寺区役所の生活保護グループについては、「福祉乗車証」の交付事務とは全く無関係の案件で審査請求人が保有個人情報開示請求を行っており、その開示実施にあたって生活保護グループの職員が本庁に出向き、審査請求人と接触したことはあるものの、「福祉乗車証」の交付事務の担当ではないことから、「福祉乗車証」に関連して本庁に出向いた事実はないとのことである。
(3)
本件各決定の妥当性について
審査請求人が本件請求で開示を求めている情報の範囲は、開示請求書の記載からは必ずしも明確ではないが、「2022年度の私の家族の「福祉乗車証」が本人の手元に届かなかった件」「福祉局・天王寺区保有分」との記載があることから、審査請求人の家族に対する「福祉乗車証」の交付に係る審査請求人と福祉局及び天王寺区役所の職員とのやり取りに係る情報であると解してその妥当性を検討する。
福祉局においては、審査請求人の申出内容は所管業務外のものであり、本来の所管である天王寺区役所に取り次いだにすぎないことから、その内容を記録に残しておく必要性はなく、実際に記録していないとのことである。そもそも、「福祉乗車証」の交付手続は、区役所の窓口において行われているものであるから、その交付に関して、福祉局を訪れたとしても、当該手続を所管していない福祉局において処理できず、区役所の窓口に取り次ぐ程度の対応とならざるを得ないことは明らかである。ましてや他部署である天王寺区役所の職員が本庁に出向くことについては関知しないことであることから、その記録を作成又は取得していないとしても何ら不自然な点は認められない。したがって、福祉局の主張に不自然、不合理な点は認められない。
次に、天王寺区役所においては、審査請求人とのやり取りは、一般的な問合せや事務手続の確認等であったことから、本件請求内容に係る当該やりとりについて記録を作成していないとのことであるが、この点、電話対応や窓口対応の業務において、その対応に係る経緯、経過等をすべて記録に残すことは現実的ではなく、その場で完結するような事項について記録を作成しないことは通常であり、本件において福祉局を介したやりとりの記録を天王寺区役所が残していないことについて、不自然、不合理があるとは認められない。
また、審査請求人が求める、天王寺区役所の生活保護グループの職員が出向くに至った記録については、生活保護グループの職員は本件とは別件で本庁に出向いたことは認められるものの、本件請求内容は「「福祉乗車証」が本人の手元に届かなかった件で」を前提としており、「福祉乗車証」とは無関係の案件での記録を含むべきものとは到底認められない。
4 結論
以上により、第1記載のとおり、判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
委員 岡澤 成彦、委員 小岩井 理史、委員 篠原 永明、委員 野田 崇
(参考)調査審議の経過 令和5年度諮問受理第19号及び第29号
略
答申第218号
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