答申第220号
2025年2月5日
ページ番号:649972
大個審答申第220号
令和7年3月27日
大阪市長 横山 英幸 様
大阪市個人情報保護審議会
会長 岡澤 成彦
答申書
個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号。以下「法」という。)第105条第3項において準用する同条第1項に基づき、実施機関から令和5年10月16日付け大天保生第1367号により諮問のありました件について、次のとおり答申いたします。
第1 審議会の結論
実施機関が令和5年9月8日付け大天保生第1342号により行った全部開示決定(以下「本件決定」という。)は、妥当である。
第2 審査請求に至る経過
1 開示請求
審査請求人は、令和5年8月25日、法第77条第1項に基づき、実施機関に対し、「私の家族の〇〇【審査請求人の子】の年金更新手続きに必要な診断書の作成につきの医療機関についてこちらの希望とそれが通らなかった理由の〇〇CW(当時)や〇〇SV(同)の口頭説明の記録(天王寺区生活保護担当保有分)」と表示して保有個人情報の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 本件決定
実施機関は、本件請求に係る保有個人情報を「請求人のケース記録(平成30年12月12日付、令和元年7月31日付、令和元年8月16日付、令和元年8月28日付、令和元年9月5日付、令和元年10月31日付、令和元年12月11日付、令和2年10月19日付、令和2年10月20日付)、請求人の子のケース記録(平成30年12月12日付)のうち請求人に係る情報」(以下「本件情報」という。)と特定して、その全部を開示する旨の本件決定を行った。
3 審査請求
審査請求人は、令和5年9月29日に本件決定を不服として、実施機関に対して、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づく審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。
第3 審査請求人の主張
審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
本件決定の取り消しを求める。
細かく日付を10に分けた上で全部開示としているが、それだけのはずがない。殊、「子のケース記録」が平成30年12月12日付のみなどということはあり得ないため。
第4 実施機関の主張
実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。
1 本件決定に係る主張
(1) 審査請求人の子の障がい年金にかかる手続について
審査請求人の子は、令和元年8月以降、障がい年金を継続して受給するための手続を行わなければならず、その手続には医療機関の診断書が必要であった。
(2) 本件情報について
実施機関では、審査請求人からの開示請求に対し、審査請求人が審査請求人の子の障がい年金の手続に関して医療機関の希望を述べた内容が記録された審査請求人のケース記録(平成30年12月12日付、令和元年7月31日付、令和元年8月16日付、令和元年8月28日付、令和元年9月5日付、令和元年10月31日付、令和元年12月11日付、令和2年10月19日付、令和2年10月20日付)及び審査請求人の子のケース記録(平成30年12月12日付)のうち審査請求人にかかる情報と、審査請求人に医療機関から受診を断られたことについて伝えた内容が記録された審査請求人のケース記録(令和元年9月5日付、令和2年10月20日付)を保有個人情報と特定し、本件決定を行った。
2 審査請求の理由について
法第76条1項によると、法第77条第1項に基づく開示請求の対象となるのは、自己を本人とする保有個人情報に限られている。よって、本件決定が審査請求人の開示請求に対する決定であることから、審査請求人についての記載がない審査請求人の子のケース記録は、そもそも特定の対象とはならないため、審査請求人の子のケース記録のうち、審査請求人にかかる情報のみを特定した本件決定に誤りはない。
第5 審議会の判断
1 基本的な考え方
法第3条は、個人情報がプライバシーを含む個人の人格と密接な関連を有するものであり、個人が「個人として尊重される」ことを定めた憲法第13条の下、慎重に取り扱われるべきことを示すとともに、個人情報を取り扱う者は、その目的や態様を問わず、このような個人情報の性格と重要性を十分認識し、その適正な取扱いを図らなければならないとの基本理念を示しており、本市は、かかる基本理念を十分に踏まえて個人情報の保護に取り組む必要がある。
そして、法は、何人も自己を本人とする保有個人情報について、開示(法第76条第1項)、訂正(法第90条第1項)及び利用停止(法第98条第1項)を請求することができることを規定するとともに、これらの請求を受けた行政庁が、一定の場合に開示(法第78条第1項)、訂正(法第92条)又は利用停止(法第100条)をすべき義務を負っていることを規定しているところである。
したがって、当審議会において、法の定める個人情報の開示、訂正、利用停止の各請求に対する処分の当否を審議するにあたっては、上記の法の理念を踏まえ、個人の人格と密接な関連を有するものであることに配慮し、個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する市民の権利を十分に尊重する見地から行うこととする。
2 争点
本件は、「私の家族の〇〇【審査請求人の子】の年金更新手続きに必要な診断書の作成につきの医療機関についてこちらの希望とそれが通らなかった理由の〇〇CW(当時)や〇〇SV(同)の口頭説明の記録(天王寺区生活保護担当保有分)」の開示を求める本件請求に対して、実施機関が対象情報として本件情報を特定し、全部開示決定である本件決定を行い、審査請求人がその取消しを求めて審査請求を行ったものである。
本件審査請求において審査請求人は、本件決定で特定された本件情報以外にも特定すべき情報が存在していると主張していると解され、実施機関はこの点を争っているから、本件情報以外に、本件請求に対して特定すべき情報が存在するかが争点となる。
3 本件情報以外の保有個人情報の存否について
本件請求は、審査請求人の子の障害年金更新手続に係る実施機関の特定職員の口頭説明の記録の開示を求めるものであることから、当審議会において事務局職員をして、実施機関に生活保護受給者に係る障害年金の更新手続について確認させたところ、次のとおり説明があった。
・障害年金の更新については、日本年金機構から障害年金の受給者に障害状態確認届(診断書)が送付され、受給者において、同届の「診断書」欄に医師の診断を記載してもらったうえで、日本年金機構に同届を提出することとされている。
・医師の診断書への記入に係る費用は、保険診療の対象外となる。
・生活保護受給者については、医師の診断書への記入に係る費用を医療扶助で支給する必要があるため、診断書の作成について相談援助を行うことがある。
また、生活保護事務において作成されるケース記録については、それぞれの世帯に対する生活保護の実施に必要な事実が記載されるものであり、本件情報からは、審査請求人とその子はそれぞれ別の世帯として生活保護を受給しており、それぞれについてケース記録が作成されていることが認められるから、審査請求人に係るケース記録については審査請求人本人の状況が記載され、審査請求人の子のケース記録については、審査請求人の子の状況が記載されることとなる。
そして、審査請求人の子の年金の更新手続に係る情報は、審査請求人の子に関する情報であるから、審査請求人の子の年金更新手続に関して実施機関の特定の職員が母である審査請求人に説明したとしても、そのこと自体は審査請求人本人の生活保護の実施に直接影響を与えるものではないから、必ずしも、審査請求人本人のケース記録に記載する必要があるものとは認められない。
同様に、審査請求人の子の年金更新手続に関して実施機関の特定の職員が母である審査請求人に説明した場合には、説明内容自体は審査請求人の子に係る情報であるともいえるが、例えば、別の機会に同様の説明を審査請求人の子に説明している場合など、母である審査請求人に対して説明をしたことを審査請求人の子のケース記録に記載する必要がない場合が相当程度あると推測される。
また、当審議会において、本件情報を見分したところ、その記載事項は、審査請求人の子が障害年金の更新にあたって必要とされる医師の診断について、いずれの医療機関又は医師を受診すべきかについての相談等であり、これらは、診断書の作成についての相談援助に該当するものであり、実施機関の説明と矛盾しないことが認められた。
さらに、これらの事情に加え、審査請求人において、実施機関が特定した本件情報以外に特定すべき情報が存在するとの点について、具体的な主張や資料の提供を行っていないことを踏まえれば、審査請求人本人及び審査請求人の子のケース記録のうち、実施機関が特定した特定日の記録である本件情報以外に特定すべき情報が存在することをうかがわせる事情は見当たらないから、実施機関の主張に、特段、不自然、不合理な点はなく、また、当審議会においても実施機関の主張を覆すに足るその他の事情は見出せないから、実施機関の特定した本件情報以外に特定すべき情報が存在するものとは認められない。
4 結論
以上により、第1記載のとおり判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
委員 岡澤 成彦、委員 小岩井 理史、委員 篠原 永明、委員 野田 崇
(参考)調査審議の経過 令和5年度諮問受理第22号
略
答申第220号
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