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答申第227号

2025年2月5日

ページ番号:649979

大個審答申第227
令和7年3月27

大阪市長 横山 英幸 様

大阪市個人情報保護審議会
会長 岡澤 成彦

答申書

 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号。以下「法」という。)第105条第3項において準用する同条第1項に基づき、実施機関から令和6年3月7日付け大都島保生第657号及び同日付け大都島保生第658号により諮問のありました件について、次のとおり一括して答申いたします。

第1 審議会の結論
 実施機関が令和6年2月5日付け大都島保生第570号により行った全部開示決定(以下「本件開示決定」という。)は、妥当である。
 実施機関が令和6年1月23日付け大都島保生第546号により行った不存在による不開示決定(以下「本件不存在決定」といい、本件開示決定とあわせて「本件各決定」という。)に対する審査請求は、不適法なものであるので、実施機関は、却下すべきである。

第2 審査請求に至る経過
1 開示請求
 審査請求人は、令和6年1月22日、法第77条第1項に基づき、実施機関に対し、「都島区役所保健福祉センター課長代理の〇〇氏と大阪福祉局生活福祉部保護課(査察指導グループ)が、本日請求人と同行者・〇〇〇氏に向けて、本庁の指示と称して請求人に関することに対し受け答えした内容の記録や請求人のケース記録保有分。」と表示して保有個人情報の開示請求(以下「本件請求1」という。)を行った。
 審査請求人は、令和6年1月9日、法第77条第1項に基づき、実施機関に対し、「別紙1枚のケース記録票に関して、①黒く塗られている部分②年月日の欄に『12:40』と書き加えられている③課長印が無いこれら3点の経緯にまつわる記録と、③の課長の押印のある正式なケース記録」と表示して保有個人情報の開示請求(以下「本件請求2」という。)を行った。
2 本件各決定
 実施機関は、本件請求1に係る保有個人情報を、「ケース記録(令和6年1月22日)」と特定した上で、本件開示決定を行った。
 実施機関は、本件請求2のうち、「①黒く塗られている部分」を除く部分に係る保有個人情報を保有していない理由を次のとおり付して、本件不存在決定を行った。
 「開示請求書別紙1枚のケース記録票に関して、②年月日の欄に『12:40』と書き加えられている③課長印が無いこれらの経緯にまつわる記録と、③の課長の押印のある正式なケース記録」に合致する文書は確認できないことから、当該保有個人情報をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」
3 審査請求
 審査請求人は、令和5年2月9日に本件開示決定を不服として、また、同月13日に本件不存在決定を不服として、それぞれ、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき審査請求(以下、それぞれ「本件審査請求1」及び「本件審査請求2」といい、これらを総称して「本件各審査請求」という。)を行った。

第3 審査請求人の主張
 審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
1 本件開示決定について
(1) 審査請求の趣旨
 当決定通知の取り消し処分を求める。
(2) 審査請求の理由
 審査請求人は現在にかけて2021年には既に生活保護を停止しているにもかかわらず都島区生活支援は未だケース記録という誤処理で審査請求人の個人情報を区別している。
2 本件不存在決定について
(1) 審査請求の趣旨
 取り消しを求める。
(2) 審査請求の理由
 課長印の無い課長を通さずに課長代理で完結しているりんぎは成立しないため、文書の誤記入や不作為とも思うが、当該発行元自体機能していない模様であるため、開示をしないこととした理由に整合性が取れない。(現在に至り、都島区生活支援に限って明らかになっている部分だけ照らしても、公文書にまつわる処理にミスが多過ぎるので、開示決定事項の不備や見落としによるミスは出現し出しているし他にもあると思われる)。

第4 実施機関の主張
 実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。
1 ケース記録票について
 ケース記録票は、大阪市生活保護法施行細則(昭和31年大阪市規則第63号)第4条第1項第6号において、保健福祉センター所長が作成しなければならないものとされており、生活保護の被保護世帯の実情を明らかにし、保護決定の根拠を示す基礎資料とされている。ケース記録票には、その世帯の実態(家族構成・生活歴・職歴・生活実態・病状等)をはじめ、訪問調査活動の結果や指導指示の内容、今後の援助方針等その世帯への援助や決定に関する重要な事項を、一貫した援助を行うため継続的に記録するが、詳細の規定は特になく実施機関の裁量に委ねられているところである。
2 本件決定1の理由
 審査請求人は、令和2年〇月〇日付けで保護廃止となり、現在まで当区の生活保護受給者ではないが、審査請求人の生活保護受給期間に係る事項について経過等の記録が必要な場合として、ケース記録の形式を使用し作成したものである。
3 本件決定2の理由
 本件のケース記録については、審査請求人は既に被保護者ではなく、事実の記載のみであり、保護の決定等に関与したものではない。しかしながら、ケース記録として決裁回付しながら、課長まで完了していないことは、事務処理として不適切であったことは事実である。今後の事務処理において、遺漏なきように処理を進めるよう適正な事務処理の徹底が必要である。
 課長印が無いことの経緯について、どのような経緯であったかは不明であり、その経緯を記録した文書は実際に存在しない。また、事実の記載のみである本件のケース記録の再作成を行う必要もないため、「課長印のある正式なケース記録」は実際に存在しない。

第5 審議会の判断
1 基本的な考え方
 法第3条は、個人情報がプライバシーを含む個人の人格と密接な関連を有するものであり、個人が「個人として尊重される」ことを定めた憲法第13条の下、慎重に取り扱われるべきことを示すとともに、個人情報を取り扱う者は、その目的や態様を問わず、このような個人情報の性格と重要性を十分認識し、その適正な取扱いを図らなければならないとの基本理念を示しており、本市は、かかる基本理念を十分に踏まえて個人情報の保護に取り組む必要がある。
 そして、法は、何人も自己を本人とする保有個人情報について、開示(法第76条第1項)、訂正(法第90条第1項)及び利用停止(法第98条第1項)を請求することができることを規定するとともに、これらの請求を受けた行政庁が、一定の場合に開示(法第78条第1項)、訂正(法第92条)又は利用停止(法第100条)をすべき義務を負っていることを規定しているところである。
 したがって、当審議会において、法の定める個人情報の開示、訂正、利用停止の各請求に対する処分の当否を審議するにあたっては、上記の法の理念を踏まえ、個人の人格と密接な関連を有するものであることに配慮し、個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する市民の権利を十分に尊重する見地から行うこととする。
2 争点
 審査請求人は、本件各決定が取り消されるべきである旨を主張しており、実施機関は本件各決定の維持が適当であると主張する。
 そして、本件各決定がそれぞれ、全部開示決定、不存在を理由とする不開示決定であるとすると、その争点は、本来、本件請求1について本件開示決定において特定された情報以外の対象情報の存否及び本件請求2に係る対象情報の存否である。
 しかしながら、審査請求人は、本件開示決定については、審査請求人に対する保護が廃止されたのちに「ケース記録」が作成されことが誤った事務処理であること、本件不存在決定については審査請求人に係るケース記録の記事に対して、課長代理までの押印はあるが課長の押印がないことを指摘するにとどまり、他に文書が存在することを主張していない。したがって、本件では、かかる理由による審査請求が適法か否かについても併せて検討する。
3 本件各審査請求の当否について
(1) 本件審査請求1について
 本件審査請求1の理由として、審査請求人は、「審査請求人は現在にかけて2021年には既に生活保護を停止しているにもかかわらず都島区生活支援は未だケース記録という誤処理で審査請求人の個人情報を区別している」とするが、その趣旨が明らかでないため、令和6年1224日付け大個審第32号により、審査請求人に対して、審査請求人の主張の趣旨を明らかにするよう求めたところ、次のとおり回答があった。
ア 令和6年1月22日には、生活保護を受給していないため、ケース記録票の様式を用いて、同日の対応記録を作成していることは誤りであるから、ケース記録票の様式を用いない形で新たに対応記録を作り直すべきである。
イ 令和6年1月22日には、生活保護を受給していないため、ケース記録票の様式を用いて、同日の対応記録を作成していることは誤りであるから、当該ケース記録票以外に同日の記録を作成しているはずなので、その記録を開示するべきである。
 また、回答のイについては審査請求人より「福祉局と連係すべき案件であるし、都島区生活支援が請求人に対し、公文書の誤教示を当日追求されていて、応対した〇〇課長代理は「訂正すべき」と言っていたので本庁に対しての記録はあると思われる。」との補記があった。
 まず、上記アの主張について検討すると、審査請求において、ケース記録票の様式を用いない形で新たに対応記録を新たに作成して開示することを目的としているものと解され、かかる審査請求は不適法であると言わざるを得ない。
 次に、上記イの主張について検討する。
 開示請求を行った時点で、審査請求人に対する保護が廃止されていたことについては、審査請求人と実施機関の間で争いはないから、対象情報として特定された「ケース記録(令和6年1月22日)」と題する文書(以下「本件文書」という。)は、大阪市生活保護法施行細則第4条第1項第6号において、保健福祉センター所長が作成を義務付けられている本来の「ケース記録」ではないものと認められる。
 しかしながら、本件文書それ自体が審査請求人と実施機関の職員とのやり取りが記載された文書であることは明らかであるから、本件文書が「ケース記録」に該当しないことが、実施機関における事務処理における何らかの「誤り」に該当するとしても、本件開示決定が特定した対象情報に誤りがあるとか、他に対象情報が存在するとかいうことにはならないことは明らかである。
 そして、本来のケース記録の作成が義務付けられている場面ではなくとも、ケース記録票の様式を流用して対応記録等を作成することを禁止する法令や実施機関の規程等は確認できなかったから、審査請求人は令和2年特定日付けで保護廃止となり、生活保護受給者ではなかったが、審査請求人の生活保護受給期間に係る事項について経過等の記録が必要な場合として、ケース記録票の形式を使用し作成したとの主張についても、特段不自然、不合理な点はないものと認められる。
 また、「福祉局と連係すべき案件であるし、都島区生活支援が請求人に対し、公文書の誤教示を当日追求されていて、応対した○○課長代理は「訂正すべき」と言っていたので本庁に対しての記録はある」との点については、審査請求人が実施機関の都島区職員に対して、教示文に誤りがあったことを認めているのであるから、その点に関して、福祉局に報告した記録があるはずであるとの主張と解される。
 この点、本件文書には、審査請求人から移送費の保護申請却下通知において教示が誤っていたとの指摘があり、これに対して実施機関の職員から、誤りがあったことは把握しており、引き続き注意すると回答した旨の記載があることは認められるが、実施機関の都島区職員が福祉局に対して報告を行ったとの記載があることは認められない。
 したがって、教示文の誤りに係る審査請求人と実施機関の都島区職員のやり取りについて、実施機関の都島区職員が福祉局に対して報告を行ったものと認めることはできないし、そもそも、そのようなやり取りについて、実施機関の都島区職員が福祉局に対して報告を行ったのであれば、当該文書にその旨が記載されると考えられるから、審査請求人の主張をもって、本件文書以外に対象情報が存在すると認めることはできない。
(2) 本件審査請求2について
 本件不存在決定について、審査請求人は、審査請求において、審査請求人に係るケース記録の記事に対して、課長代理までの押印はあるが課長の押印がないことを指摘するにとどまり、開示請求の対象となる他の文書が存在している点について主張していないこと、また、開示請求において、課長印の押印のある正式なケース記録の開示を求めていることからすると、審査請求においては、課長印の押印がないという事務処理の誤りを糺すこと、あるいは、押印しなおした文書を新たに作成して開示することを目的としているものと解され、かかる審査請求は不適法であると言わざるを得ない。
 なお、審査請求が不適法である以上、その主張の当否については検討を要しないことは明らかである。
4 結論
 以上により、第1記載のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
委員 塚田 哲之、委員 林 晃大、委員 堀田 善之、委員 矢口 智春

(参考)調査審議の経過 令和5年度諮問受理第40号及び第41

答申第227号

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