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答申第538号

2025年3月27日

ページ番号:649984

大情審答申第538
令和7年3月27日 

大阪市長 横山 英幸 様

大阪市情報公開審査会
会長 小谷 真理

答申書

大阪市情報公開条例(平成13年大阪市条例第3号。以下「条例」という。)第17条に基づき、大阪市長(以下「実施機関」という。)から令和5年5月9日付け大デ統第14号により諮問のありました件について、次のとおり答申いたします。

第1 審査会の結論
 実施機関が令和5年1月10日付け大デ統第87号により行った部分公開決定(以下「本件決定」という。)で実施機関が公開しないこととした下記1の部分のうち、下記2の部分を公開すべきである。
 本件決定のその余の部分は妥当である。
1 公開しないこととした部分
(1) 本市職員及び国等職員の業務用個人メールアドレス(以下「本件非公開部分1」という。)
(2) 裁判所から送付された書類中、破産者に関する情報(以下「本件非公開部分2」という。)
(3) 法人等事業者の担当者連絡先(以下「本件非公開部分3」という。)
(4) 不動産競売事件の当事者及び物件に関する情報(以下「本件非公開部分4」という。)
(5) 「相談対応シート」における相談内容(以下「本件非公開部分5」という。)
(6) 大阪市東京事務所から取扱注意・照会厳禁として送付されたメールの内容及び添付資料の内容(以下「本件非公開部分6」という。)
(7) 市民等からの申出等における本人氏名、住所、連絡先等の情報(以下「本件非公開部分7」という。)
(8) 人事関係情報が記載されたデータのパスワードに関する情報(以下「本件非公開部分8」という。)
(9) 「大阪市地域防災計画修正案に対するご意見及び事務局の考え方(共通編、対策編)」の内容(以下「本件非公開部分9」といい、本件非公開部分1から9までをあわせて「本件各非公開部分」という。)
2 公開すべき部分
(1) 本件非公開部分1のうち、内閣府職員のメールアドレス
(2) 本件非公開部分4のうち、担保不動産競売事件における債務者兼所有者の氏名及び不動産登記記録上の住所並びに当該事件における申立債権者である法人の法人名、代表者氏名、住所及び郵便番号
(3) 本件非公開部分5
(4) 本件非公開部分6のうち、メール本文
(5) 本件非公開部分9

第2 審査請求に至る経過
1 公開請求
 審査請求人は、令和4年1124日、条例第5条の規定に基づき、実施機関に対し、請求する公文書の件名又は内容として、「bb0002@city.osaka.lg.jpが受信したメール文書。(件名、fromtoCC、添付ファイルを含む)(202211月1日~10日まで)」と表示して公文書の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。 2 本件決定
  実施機関は、本件請求に係る公文書を、「組織メールアドレスbb0002@city.osaka.lg.jpが受信したメール(添付ファイル含む。202211月1日から同月10日まで)(88件)」(以下「本件文書」という。)と特定した上で、上記第1.1を公開しない理由を次のとおり付して、条例第10条第1項に基づき、本件決定を行った。
【本件各非公開部分を公開しない理由】
本件非公開部分1に掲げる事項
大阪市情報公開条例第7条第5号に該当
(説明)
 当該情報は、職員間や特定の相手方とのやりとりに用いるものとされており、一般の閲覧に供している本市職員名簿などと異なり、公表が前提とされているものではない。
 また、当該情報を公開することにより、業務と関係のないメールが大量に送信され業務に支障が生じるおそれ、迷惑メールに含まれるウイルスによって感染被害が生じるおそれ及び職員に対して直接個人攻撃をするような電子メールが送られるおそれなど、事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。
本件非公開部分2、3に掲げる事項
大阪市情報公開条例第7条第2号に該当
(説明)
 当該情報は、法人等の事業者の経営上又は技術上の情報であり、これを公にすることにより、当該法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり、かつ同号ただし書に該当しないため。
本件非公開部分4に掲げる事項
大阪市情報公開条例第7条第1号に該当
(説明)
 当該情報は、個人に関する情報であって、当該情報そのものにより又は他の情報と照合することにより、特定の個人が識別される情報であると認められ、かつ同号ただし書ア、イ、ウのいずれにも該当しないため。
大阪市情報公開条例第7条第2号に該当
(説明)
 当該情報は、法人等の事業者の経営上又は技術上の情報であり、これを公にすることにより、当該法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり、かつ同号ただし書に該当しないため。
本件非公開部分5に掲げる事項
大阪市情報公開条例第7条第5号に該当
(説明)
 当該情報は、入札・契約に関する相談内容に関する情報であり、これを公にすることにより、公正・公平な入札・契約事務が確保されないおそれがあるなど、事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。
本件非公開部分6に掲げる事項
大阪市情報公開条例第7条第5号に該当
(説明)
 当該情報は、各地方自治体の事業、施策検討を円滑に進めるために、公にしないことを条件に、関係機関等から任意に提供された情報である。そのため、当該情報の送付を受けた所属においても、その取扱に注意するとともに、当該情報を元に関係機関等に照会することを厳禁としている。よって、当該情報を公にすることで、情報提供元との信頼関係に影響を及ぼすおそれがあるなど、事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため 。
本件非公開部分7に掲げる事項 
大阪市情報公開条例第7条第1号に該当 
(説明)
 当該情報は、個人に関する情報であって、当該情報そのものにより又は他の情報と照合することにより、特定の個人が識別される情報であると認められ、かつ同号ただし書ア、イ、ウのいずれにも該当しないため。
本件非公開部分8に掲げる事項
大阪市情報公開条例第7条第5号に該当
(説明)
 当該情報は、令和5年度の人事関係の情報にアクセスするために必要となる情報であり、これを公にすることにより、公正・公平な人事・組織に関する業務が確保されないおそれがあるなど、事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。
本件非公開部分9に掲げる事項
大阪市情報公開条例第7条第4号に該当
(説明)
 当該情報は、計画の修正に向けた検討・調整中の未成熟な情報であり、これを公にすることにより、意思決定の中立性が損なわれるおそれがあり、また、時期尚早な公開により、誤解や憶測に基づき市民等の間に混乱を生じさせるおそれがあるため。
3 審査請求
 審査請求人は、令和5年4月10日、本件決定を不服として実施機関に対して、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき、審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。
 4 本件決定の一部取消し
 実施機関は、令和7年1月14日付け大デ統第92号により、次のとおり、本件決定の一部を取り消した。なお、実施機関は、令和6年1月30日付け大デ統第92号(以下「本件取消決定」という。)により、本件決定を取り消しているが、令和7年1月14日付け大デ統第91号により本件取消決定を取り消しており、結果的に本件決定の変更は、上記の令和7年1月14日付け大デ統第92号によるもののみとなっている。
(1) 取消しを行う部分
 本件決定における「不動産競売事件の当事者及び物件に関する情報」のうち事件番号及び物件に関する情報、並びに「裁判所から送付された書類中、破産者に関する情報」を非公開とした部分
 (2) 取り消す理由
 上記の非公開とした部分については、インターネット官報及び最高裁判所から委託を受けた民間会社が運営する不動産競売物件情報サイトにおいて何人も閲覧が可能であることから、「不動産競売事件の当事者及び物件に関する情報」のうち事件番号及び物件に関する情報は、大阪市情報公開条例第7条第1号ただし書アに該当し、「裁判所から送付された書類中、破産者に関する情報」は、同条第2号に該当しないと判断したため。

第3 審査請求人の主張
 本件各審査請求における審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
1 審査請求の趣旨
 黒塗りにされたすべての部分の不開示を取り消し、公開の決定を求める。
2 審査請求の理由
 本件決定において公開しないこととされた部分は、非公開情報に該当しないため。

第4 実施機関の主張
 実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。
1 決定の理由
 本件非公開部分4のうち事件番号及び物件に関する情報は、条例第7条第1号のただし書アに該当し、本件非公開部分2(以下「本件非公開部分2」及び「本件非公開部分4のうち事件番号及び物件に関する情報」をあわせて「一部取消し後公開部分」といい、本件非公開部分4のうち事件番号及び物件に関する情報を除いた部分を「一部取消し後本件非公開部分4」という。)については、条例第7条第2号に該当しないため、令和6年1月30日付け大デ統第93号により本件決定の一部の取り消しを行っていることから、一部取り消し部分を除いた部分を公開しないこととした理由に絞って説明する。
1) 本件非公開部分1について
 処分庁では、メールの送受信等を行うため、課などの組織単位で組織メールアドレスを設定し、それとは別に職員個人に個人メールアドレスを付与しており、組織メールアドレス及び個人メールアドレスともに処分庁の職員が行う事務に関する情報である。
 組織メールアドレスの使用用途としては、組織としてのメール送受信等に利用することを目的としており、組織としてのメールとは、市民、他市町村への回答及び他の組織への通知などに利用することを想定しており、公開前提の取扱いとしている。
 一方、個人メールアドレスの使用用途としては、個人のメール送受信等に利用することを目的としており、個人のメールは、職員間での情報交換(特定の職員への会議出席依頼、出席者への議事録の送付、日程の調整など)、 特定の相手方(信頼関係のある相手など日頃面識のある特定の市民や企業・各種団体の個人)との情報交換に利用することを想定しており、職員自身が特定の相手方に伝達する限定的な範囲の取扱いであり、公表していない。
 一般的に、メールアドレスは、メールの送受信など情報伝達等のツールとして利便性が高い反面、メールアドレスに起因するセキュリティリスクにもなり、マルウェア、フィッシング等のメール攻撃が、近年、急激な増加傾向にある。
 攻撃型メールについては、送信者が送信先を選定する際の方法から主にばらまき型メールと標的型攻撃メールの方法があり、特に、標的型攻撃メールは、何らかの方法で入手した組織や個人のメールアドレスなどの情報をもとに、特定の組織や個人に標的を絞ってメールを送信する手法であり、上司や取引先などになりすまして詐欺を行う場合や、ウイルスを含んだ添付ファイルを送り、情報を搾取する場合などに多く見られる方法であり、従来は府省庁や大手企業が中心に狙われてきたが、最近では地方公共団体や中小企業もそのターゲットとなっている。
 処分庁では、インターネットを介した市民からの問い合わせや申請受付等の処理は、基本的にホームページ上のお問い合わせフォームや行政オンラインシステムを活用しており、組織的な回答等をメールにて行う場合は、組織メールアドレスにより送信していることから、標的型攻撃メールの対象となるメールアドレスは、課相当数の組織メールアドレスの件数と、何らかの方法や事情により収集された個人メールアドレスの件数の範囲内と想定されるが、標的型攻撃メールの対象として地方公共団体が挙げられている状況で、個人メールアドレスを公の情報として一般に公開すれば、処分庁に対する標的型攻撃メールの対象として収集され、処分庁に対する攻撃型メールの送信が飛躍的に増加するおそれがあり、攻撃型メールが増加すれば、高度な技術で巧妙に仕掛けられる攻撃の全てに対策を行うことには限界があり、ウイルス感染や不正アクセスなどのリスクが高まり、一たび、攻撃型メールの添付ファイルやURLを誤って操作し、ウイルス感染や不正アクセスなどによりデータ消失・暗号化・個人情報の流出やシステムダウン等生じれば、重大な信用失墜、損害賠償案件となりえる。
 また、メールサーバー等の攻撃対象に対して複数の送信元から同時に大量の迷惑メール等を送信することで、攻撃対象のリソースに負荷をかけ、サービス運用を妨害するDDos攻撃の対象とされるリスクの増加や、直接メールのやりとりをしていない市民等からのメールによる直接個人攻撃を招くおそれもあり、国等の職員の同様のメールアドレスを公開することにより同様の支障が生じた場合、国等との信頼関係に支障が生じ、事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。
 よって、当該情報を公開することの公益性を考慮しても、なお、当該事務の適正な遂行に看過し得ない程度の支障を及ぼす相当の蓋然性があることから、当該情報にかかる非公開部分は条例第7条第5号に該当するものと判断した。
(2) 本件非公開部分3について
 当該情報は、処分庁の職員と業務上の連絡を直接行うため、法人等事業者の社員が処分庁の職員に提供した電話番号やメールアドレスであり、一般的に公開される性質のものではない。本来、提供先の職員からの業務上の連絡を想定して提供されたものであるところ、これを公開することにより、当該法人等事業者の社員に対して、提供先と認識していない相手方から業務外の連絡が行われ、業務が妨害されるおそれがあることから、当該情報は、法人等の事業者の経営上又は技術上の情報であり、これを公にすることにより、当該法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり、かつ同号ただし書に該当しないため、当該情報にかかる非公開部分は条例第7条第2号に該当するものと判断した。
(3) 本件非公開部分4について
 当該情報は、東京地方裁判所より送付された債権届出の催告通知に付随する当事者目録に記載された情報であるが、当該通知は関係自治体のみに送付される性質のものであり、公表されるものではなく、公にすることにより当該当事者が破産したという情報が公開され、個人の権利利益を害するおそれがあることから、当該情報は、個人に関する情報であって、当該情報そのものにより又は他の情報と照合することにより、特定の個人が識別される情報であると認められ、かつ同号ただし書ア、イ、ウのいずれにも該当しない。また、申立債権者に関する情報は、法人等の事業者の経営上又は技術上の情報であり、これを公にすることにより、当該法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり、かつ同号ただし書に該当しない。よって、当該情報にかかる非公開部分は条例第7条第1号及び第2号に該当するものと判断した。
(4) 本件非公開部分5について
 処分庁では、入札・契約業務の制度を所管する契約管財局において「入札・契約業務にかかる相談対応」を実施しており、各所属の専決契約等を取扱うにあたって疑問が生じたときは、相談対応シートを介しての相談対応が行われる。
 当該情報は、契約に関する相談を行う際の相談内容にあたる情報であり、これを公にすることにより、公正・公平な入札・契約事務が確保されないおそれがあるなど、事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため、当該情報にかかる非公開部分は条例第7条第5号に該当するものと判断した。
5) 本件非公開部分6について
 当該情報は、処分庁の東京事務所において国等の施策に関する情報収集を行い、関係機関等から情報提供として送付された文書であり、各地方自治体の事業、施策検討を円滑に進めるために、公にしないことを条件に、関係機関等から任意に提供された情報である。そのため、当該情報の送付を受けた所属においても、その取扱に注意するとともに、当該情報を元に関係機関等に照会することを厳禁としている。よって、当該情報を公にすることで、情報提供元との信頼関係に影響を及ぼすおそれがあるなど、事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため、当該情報にかかる非公開部分は条例第7条第5号に該当するものと判断した。
6) 本件非公開部分7について
 処分庁では、市民より市政に対するご意見・ご要望をいただき、必要に応じて本市施策に反映を行う「市民の声」の取り組みを行っているが、当該情報については、市民より受けつけた市政に関する意見の内容を関係所属に送付したものであり、申出人の情報を当該所属以外に公開することはなく、申出人がホームページ等で意見の公表を求めた際も、個人が特定できる情報を除いたうえで行っていることから、当該情報は、個人に関する情報であって、当該情報そのものにより又は他の情報と照合することにより、特定の個人が識別される情報であると認められ、かつ同号ただし書ア、イ、ウのいずれにも該当しないため、当該情報にかかる非公開部分は条例第7条第1号に該当するものと判断した。
7) 本件非公開部分8について
 当該情報は、令和5年度の人事関係の情報が記載されたファイルにアクセスするために必要となるパスワードであり、これを公にすることにより、職員の人事異動に関する情報等を人事担当者以外が知ることとなり、公正・公平な人事・組織に関する業務が確保されないおそれがあるなど、事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため、当該情報にかかる本件各非公開部分は条例第7条第5号に該当するものと判断した。
8) 本件非公開部分9について
 当該情報は、大阪市地域防災計画の事務局である危機管理室が行った当該計画修正に係る事務局案について各所属に対し実施した意見照会の内容に関するものであり、各所属からの意見及び意見を反映した修正案が記載されており、計画の修正に向けた検討・調整中の未成熟な情報であり、これを公にすることにより、意思決定の中立性が損なわれるおそれがあり、また、時期尚早な公開により、誤解や憶測に基づき市民等の間に混乱を生じさせるおそれがあるため、当該情報にかかる本件各非公開部分は条例第7条第4号に該当するものと判断した。
2 結論
 以上の次第であり、本件決定は条例に則った適正なものである。

第5 審査会の判断
1 基本的な考え方
 条例の基本的な理念は、第1条が定めるように、市民の公文書の公開を求める具体的な権利を保障することによって、本市等の説明責務を全うし、もって市民の市政参加を推進し、市政に対する市民の理解と信頼の確保を図ることにある。したがって、条例の解釈及び運用は、第3条が明記するように、公文書の公開を請求する市民の権利を十分尊重する見地から行われなければならない。
 しかしながら、条例はすべての公文書の公開を義務づけているわけではなく、第7条本文において、公開請求に係る公文書に同条各号のいずれかに該当する情報が記載されている場合は、実施機関の公開義務を免除している。もちろん、この第7条各号が定める情報のいずれかに該当するか否かの具体的判断に当たっては、当該各号の定めの趣旨を十分に考慮しつつ、条例の上記理念に照らし、かつ公文書の公開を請求する市民の権利を十分尊重する見地から、厳正になされなければならないことは言うまでもない。
2 争点
 審査請求人は、本件各非公開部分が非公開情報に該当しないと主張するのに対し、実施機関は、本件各非公開部分のうち、一部取消し後公開部分以外の部分が条例第7条各号に該当するものとして争っている。
 したがって、本件審査請求における争点は、一部取消し後公開部分を除いた本件各非公開部分の条例第7条各号該当性である。
3 争点について
(1) 実施機関が該当性を主張する条例第7条各号の基本的な考え方について
ア 条例第7条第1号について
 条例第7条第1号本文は、「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」は原則として非公開とすることを規定するが、同号ただし書において、「ア 法令若しくは条例…の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報、イ 人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報、ウ 当該個人が公務員等…である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」は、条例第7条第1号本文に該当する場合であっても、公開しなければならない旨規定している。
イ 条例第7条第2号について
 条例第7条第2号は、法人その他の団体(以下「法人等」という。)の事業活動や正当な競争は、社会的に尊重されるべきであるとの理念のもとに、「法人等に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」は、原則として非公開とすることを規定している。そして、この「権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」とは、ア 法人等の事業者が保有する生産技術上又は販売上の情報であって、公開することにより、当該法人等の事業者の事業活動が損なわれるおそれがあるもの、イ 経営方針、経理、人事等の事業活動を行う上での内部管理に属する事項に関する情報であって、公開することにより、法人等の事業者の事業運営が損なわれるおそれがあるもの、ウ その他公開することにより、法人等の事業者の名誉、社会的評価、社会的活動の自由等が損なわれるおそれがあるものがこれに当たると解される。
ウ 条例第7条第4号について
 公開条例第7条第4号は、行政等の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報が公開されると、外部からの圧力や干渉等の影響を受けることなどにより、率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあり、また、未成熟な情報が公開されたり、特定の情報が尚早な時期に公開されたりすると、誤解や憶測に基づき不当に市民等の間に混乱を生じさせ、又は投機を助長するなどして特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるとの考えのもとに、「本市の機関及び国等…の内部又は相互間における適正な意思決定が損なわれないようにするため、審議、検討又は協議に関する情報」は、原則として公開しないことができると規定している。
 この「審議、検討又は協議に関する情報」とは、行政等の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報をいい、これらの審議、検討又は協議を行うために必要な調査研究、企画、調整等を含むものと解される。
 また、「不当に」とは、審議、検討又は協議に関する情報の内容、性質に照らし、検討段階にある情報を公開することによる利益と支障を比較衡量した上で、公開することの公益性を考慮しても、なお、行政等の適正な意思決定に対する支障が看過し得ない程度のものであることをいうものと解される。
エ 条例第7条第5号について
 条例第7条第5号は、本市の機関等が行う事務又は事業の目的を達成し、公正、円滑な執行を確保するため、「本市の機関又は国等が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」は公開しないことができると規定している。
 ここで「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」とは、事務又は事業に関する情報を公開することによる利益と支障を比較衡量した上で、公開することの公益性を考慮しても、なお、当該事務又は事業の適正な遂行に及ぼす支障が看過し得ない程度のものをいい、また、こうした支障を及ぼす「おそれがある」というためには、抽象的な可能性では足りず、相当の蓋然性が認められなければならないと解される。
(2) 本件非公開部分1の条例第7条第5号該当性について
ア 前提
 当該情報には、本市職員の業務用個人メールアドレス(以下「本市職員のメールアドレス」という。)のほか、内閣府、国土交通省、消防庁、地方独立行政法人大阪市民病院機構及び公立大学法人大阪(以下本項目である第5.3.(2)において「国等」という。)の職員の業務用個人メールアドレス(以下「国等職員のメールアドレス」という。)が記載されていることが認められる。
イ 本市職員のメールアドレスについて
 本件非公開部分1のうち、本市職員のメールアドレスについては、実施機関が主張するとおり、公にすると、攻撃メールを含めた利用目的外のメール送信の手段に利用され、コンピュータウイルス感染被害が発生する等のセキュリティリスクが高まるものと認められる。
 一方、本市職員のメールアドレスは、ある程度、推測が可能であり、また、以前は非公開とする取扱いを行っておらず、既に公開されている本市職員のメールアドレスも相当数あることが見込まれることから、公にしたとしても、事務又は事業の適正な遂行への支障は少ないとも考えられる。
 しかしながら、メールアドレスを用いた攻撃のリスクを低減するため、本市職員のメールアドレスを新たに公開すべきではないとする実施機関の主張には、実際にウイルス感染が発生した際の被害の大きさ等を考慮すると、理由があると考えられること、実施機関と市民等との連絡ツールとして組織メールアドレスが用意されていることを踏まえると、本市職員のメールアドレスを公開する公益性は低いと考えられることから、本件非公開部分1のうち、本市職員のメールアドレスは、公にすることにより「事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼす」情報であると認められる。
 さらに、実施機関に確認したところ、現実に本市にメールアドレスを用いた攻撃が行われた事例があることを踏まえると、本市職員のメールアドレスを公開すると、当該メールアドレスが攻撃に用いられ、事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすことに相当の蓋然性があるとする実施機関の主張についても、これを是認せざるを得ない。(参考答申:大情審答申第534号及び第535号)
 以上のことから、当該情報は、条例第7条第5号に該当する。
ウ 国等職員のメールアドレスについて
 本件非公開部分1のうち、国等職員のメールアドレスについては、国等においても、実施機関と同様、職員の業務用個人メールアドレスを公開することには、一定のセキュリティリスクがあると考えるのが妥当である。また、実施機関を通じて、国等における職員の業務用個人メールアドレスの取扱いを確認したところ、国土交通省、消防庁、地方独立行政法人大阪市民病院機構及び公立大学法人大阪では、非公開の取扱いとなっていた一方、内閣府からは、本件文書に記載された担当部署において、特段、非公開とすることを定める規定等はない一方で、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)第5条各号の規定により非公開とも考えられるが、各自治体の判断で良い旨の回答があった。よって、内閣府以外の国等職員のメールアドレスについては、上記の取扱いを踏まえると、当該情報を公にすることにより事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすことに、相当の蓋然性があると認められる。しかし、内閣府職員のメールアドレスについては、一律に非公開とする取り扱いをしておらず、各自治体の判断により公開することも許容されている以上、当該情報を公にすることにより事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすことに、相当の蓋然性があるとは言えず、当該情報を公にすることによる支障は認められないと判断せざるを得ない。
 以上のことから、当該情報のうち、内閣府以外の国等職員のメールアドレスは、条例第7条第5号に該当するが、内閣府職員のメールアドレスは、同号に該当しない。
(3) 本件非公開部分3の条例第7条第2号該当性について
 当該情報には、法人の業務用個人メールアドレス、業務用組織メールアドレス、電話番号、ファックス番号が記載されていることが認められる。
 そして、当該情報は、連絡先を提供した特定の相手方とのやり取りを想定しており、一般には公開されていないことを踏まえると、公にすることにより、不特定の相手方からの連絡により業務に支障が生じ、法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある情報と認められ、条例第7条第2号本文に該当する。
 また、当該情報は、その性質上、条例第7条第2号ただし書には該当しないと認められる。
 以上のことから、当該情報は、条例第7条第2号に該当する。
(4) 一部取消し後本件非公開部分4の条例第7条第1号及び第2号該当性について
ア 前提
 当該情報は、担保不動産競売事件における「債権届出の催告書」の別紙に記載された情報であり、そして当該情報には、当該競売事件における債務者兼所有者(以下「債務者」という。)の氏名、住所、郵便番号及び不動産登記記録上の住所並びに当該事件における申立債権者(以下「債権者」という。)である法人の法人名、代表者氏名、住所及び郵便番号が記載されており、実施機関は、債務者の氏名、住所、郵便番号及び不動産登記記録上の住所について、条例第7条第1号、債権者の法人名、代表者氏名、住所及び郵便番号について、条例第7条第2号に該当する旨を主張している。
イ 債務者の氏名、住所、郵便番号及び不動産登記記録上の住所の条例第7条第1号該当性について
 実施機関は、当該情報について、関係自治体のみに送付される性質のものであり、公にすることにより、債務者の権利利益を害するおそれがあり、また、本件決定の一部取消しにあたり、東京地方裁判所に確認したところ、事件番号は公開であるが、個人情報は非公開であるとの回答を得た旨を主張している。
 当該情報のうち、債務者の住所及び郵便番号については、個人に関する情報であって、当該情報そのものにより又は他の情報と照合することにより、特定の個人が識別される情報であると認められ、条例第7条第1号本文に該当し、また、その性質上、条例第7条第1号ただし書には該当しないと認められる。
 しかし、不動産競売物件情報サイトにおいて何人も閲覧可能であることを理由に公開された「本件非公開部分4のうち、物件に関する情報」に当該不動産の所在及び地番並びに家屋番号が公開されていることから、債務者の氏名及び不動産登記記録上の住所については、不動産登記簿の取得や法務局での地番検索等により、閲覧可能な情報であり、条例第7条第1号ただし書アに該当する。
 以上のことから、当該情報のうち、債務者の住所及び郵便番号は、条例第7条第1号に該当するが、債務者の氏名及び不動産登記記録上の住所は、同号に該当しない。
ウ 債権者の法人名、代表者氏名、住所及び郵便番号の条例第7条第2号該当性について
 実施機関は、当該情報について、法人等の事業者の経営上又は技術上の情報であり、これを公にすることにより、当該法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある旨を主張している。
 この点、当審査会において、関係法令等を確認したところ、上記の「債権届出の催告書」が「租税その他の公課を所管する官庁又は公署」(民事執行法(昭和54年法律第4号)第49条第2項第3号)である本市を含めた関係者に送付されるまでの流れについては、次のとおりであった。
・まず、当該事件に係る不動産の担保権者等が同法第2条に基づき、裁判所に対して、不動産競売申立てを行う。
・当該申立てを受けた裁判所は、同法第45条第1項に基づき、強制競売の開始決定をする。
・強制競売の開始決定がされたときは、同法第48条第1項に基づき、裁判所書記官は、直ちに、その開始決定に係る差押えの登記を嘱託し、その後、登記官により差押登記がなされる。
・そして、同法第49条に基づき、配当要求の終期の定め、公告及び上記の債権届出の催告が行われる。
 以上により、本市に催告があった時点では、原則として、当該不動産の不動産登記記録に差押登記がなされていると認められる。実際に、当審査会において、当該事件に係る不動産の全部事項証明書を取得して確認したところ、差押登記の記載があり、当該情報における債権者と同一の法人名及び住所の記載が認められた。
 よって、当該情報のうち債権者の法人名及び住所は法令に基づき公にされている情報であり、また、当該情報のうち債権者の郵便番号は、住所から判明し、代表者氏名は、商業登記簿(商業登記法(昭和38年法律第125号)第10条参照)を確認すれば判明することから、これらの情報は、公にすることにより、法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものとは認められず、当該情報は、条例第7条第2号に該当しない。
(5) 本件非公開部分5の条例第7条第5号該当性について
 当該情報には、実施機関の組織であるデジタル統括室から契約管財局への契約変更に関する相談内容及びそれに対する回答が記載されていることが認められる。
 そして、実施機関は、当該情報について、契約に関する相談を行う際の相談内容にあたる情報であり、公にすることにより、公正・公平な入札・契約事務が確保されないおそれがある旨を主張している。
 しかし、当該情報に記載されているのは、契約変更に関する一般的な質問及び説明であり、公にすることにより、事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすとは認められない。
 以上のことから、当該情報は、条例第7条第5号に該当しない。
(6) 本件非公開部分6の条例第7条第5号該当性について
 当該情報には、実施機関の組織である政策企画室の東京事務所から取扱注意・照会厳禁として送付されたメールの件名、添付ファイル名、メール本文及び添付ファイルの内容が記載されていることが認められる。
 そして、実施機関は、当該情報について、国等の施策に関する情報収集を行い、各地方自治体の事業、施策検討を円滑に進めるために、公にしないことを条件に、関係機関等から任意に提供された情報であるため、当該情報の送付を受けた所属においても、その取扱に注意するとともに、当該情報を元に関係機関等に照会することを厳禁としていることから、当該情報を公にすることで、情報提供元との信頼関係に影響を及ぼすおそれがあるなど、事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある旨を主張している。
 当該情報のうち、メールの件名、添付ファイル名及び添付ファイルの内容については、公にしないことを条件に、関係機関等から任意に提供された情報であることから、公にすると情報提供元との信頼関係に影響を及ぼし、事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるという実施機関の主張は妥当であり、相当の蓋然性が認められる一方、当該情報には、後に国等において公開されている情報等も含まれていることから、本件決定時点においては、公にしても事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがない情報が存在するとも考えられる。
 この点について、実施機関(担当:政策企画室)に確認をしたところ、公開されている情報であっても、メールの件名、添付ファイル名及び添付ファイルの内容を公にすることにより、実施機関における情報の収集状況が明らかになり、情報提供元との信頼関係に影響を及ぼすおそれがある旨を述べており、当該主張に特段、不自然、不合理な点はない。
 しかし、当該情報のうち、メール本文については、関係所属に対する挨拶文のほか、送付する添付ファイルの内容が取扱注意・照会厳禁である旨を述べているのみであり、また、政策企画室の東京事務所が上記の情報収集活動を行っていることは公になっていることを踏まえると、メール本文を公にすることにより、事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められない。
 よって、以上のことから、当該情報のうち、メールの件名、添付ファイル名及び添付ファイルの内容は、条例第7条第5号に該当するが、メール本文は、同号に該当しない。
(7) 本件非公開部分7の条例第7条第1号該当性について
 当該情報には、実施機関に対し申出を行った市民等の氏名、住所、郵便番号、電話番号、メールアドレスが記載されており、当該情報そのものにより又は他の情報と照合することにより、特定の個人が識別される情報であると認められ、条例第7条第1号本文に該当する。
 また、当該情報は、その性質上、条例第7条第1号ただし書には該当しないと認められる。
 以上のことから、当該情報は、条例第7条第1号に該当する。
(8) 本件非公開部分8の条例第7条第5号該当性について
 当該情報には、実施機関における人事関係のファイルを開くためのパスワードが記載されており、これを公にすることにより、公正・公平な人事・組織に関する業務が確保されないなど、事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとする実施機関の主張に特段、不自然、不合理な点はない。
 以上のことから、当該情報は、条例第7条第5号に該当する。
(9) 本件非公開部分9の条例第7条第4号該当性について
 当該情報には、大阪市地域防災計画を修正するにあたり本市内外の関係機関へ行った照会に対する回答及び当該回答に対する実施機関(担当:危機管理室)の考え方を取りまとめた内容が表形式で記載されていることが認められる。
 そして、実施機関は、当該情報について、計画の修正に向けた検討・調整中の未成熟な情報であり、これを公にすることにより、意思決定の中立性が損なわれるおそれがあり、また、時期尚早な公開により、誤解や憶測に基づき市民等の間に混乱を生じさせるおそれがある旨を主張している。
 しかし、本件決定時点において当該情報の記載を踏まえた大阪市地域防災計画の修正案が、パブリック・コメント実施のため、本市ホームページ上で公表されていたことを踏まえると、当該情報は公になったとしても、実施機関が主張するようなおそれは生じないものと考えられる。
 以上のことから、当該情報は、条例第7条第4号に該当しない。
4 結論
 以上により、第1記載のとおり、判断する。
5 付言
 本件において、実施機関は、本件取消決定を行った際、本件決定の一部取消しを意図していたものの、形式上、全部取消しとなっていたことから、本件取消決定を取り消し、改めて一部取消決定を行っている。
 そのため、本件では、意図せず審査請求の対象となる処分が形式的には存在しない状態が発生しており、この点については、取消決定通知書の作成にあたり、実施機関の確認が不十分であったと言わざるを得ず、今後、実施機関において取消決定等を行う場合には、記載内容の確認に一層留意するよう努められたい。

(答申に関与した委員の氏名)
委員 小谷 真理、委員 奥村 裕和、委員 村田 尚紀 

(参考)答申に至る経過
令和5年度諮問受理第3号

答申第538号

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