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答申第540号

2025年6月4日

ページ番号:653664

大情審答申第540
令和7年6月6日 

大阪市長 横山 英幸 様

大阪市情報公開審査会 
会長 小谷 真理

 答申書

  大阪市情報公開条例(平成13年大阪市条例第3号。以下「条例」という。)第17条に基づき、大阪市長(以下「実施機関」という。)から令和5年8月29日付け大東成窓第1122号により諮問のありました件について、次のとおり答申いたします。

 第1 審査会の結論
 実施機関が令和5年7月27日付け大東成窓第1079号により行った部分公開決定(以下「本件決定」という。)で実施機関が公開しないこととした部分のうち、下記の部分を公開すべきである。
 本件決定のその余の部分は妥当である。
1 本件対象文書
(1) 事前連絡票(平塚市発表資料、国家賠償法(抄))(以下「文書1」という。)
(2) リーガルサポーターズ報酬額算定表
(3) 検討時間報告書
(4) 相談記録(以下「文書2」という。)
2 公開すべき部分
(1) 文書1の「相談事項欄」のうち、【1】~【3】及び【6】の記載全て
(2) 文書2の「相談内容及び結果欄」のうち、次の部分
ア 【質問1】の記載全て
イ 【質問2】の記載のうち、なお書き部分を除く部分
ウ 【質問3】の記載のうち、「→」から始まる段落の()内の※より後の部分及び「この点」から始まる段落を除く部分

 第2 審査請求に至る経過
1 公開請求
 審査請求人は、令和5年7月13日、条例第5条の規定に基づき、実施機関に対し、請求する公文書の件名又は内容として、「令和5年3月に東成区役所がリーガルチェック(国民健康保険料について)に相談した資料及びその回答に関する書類(事前連絡票、平塚市発表資料、国家賠償法(抄)、リーガルサポーターズ報酬額算定表、検討時間報告書、相談記録)」と表示して公文書の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 本件決定
 実施機関は、本件請求に係る公文書を、上記第1.1のとおり特定した上で、公開しないこととした部分及び公開しない理由を次のとおり付して、条例第10条第1項に基づき、本件決定を行った。
(1)公開しないこととした部分
ア 事前連絡票の「相談事項欄」(以下「本件非公開部分1」という。)
イ 相談記録の「相談内容及び結果欄」(以下「本件非公開部分2」といい、「本件非公開部分1」と「本件非公開部分2」をあわせて「本件各非公開部分」という。)
(2)上記の部分を公開しない理由
大阪市情報公開条例第7条第5号に該当
(説明)
 本件非公開部分1については、国民健康保険料の返還請求にかかる検討事項であり、公にすることにより国民健康保険に関する事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。
 本件非公開部分2については、国民健康保険料の返還請求にかかる検討事項であり、公にすることにより国民健康保険に関する事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。
3 審査請求
 審査請求人は、令和5年8月17日、本件決定を不服として実施機関に対して、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき、審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。

第3 審査請求人の主張
 本件審査請求における審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
1 審査請求の趣旨
 本件決定を取り消し、公開決定を求める。
2 審査請求の理由
 本件決定において公開しないこととされた部分は、非公開情報に該当しないため。
 「国民健康保険料の返還請求にかかる検討事項であり、公にすることにより国民健康保険に関する事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」との理由で大阪市情報公開条例第7条5号に該当するとしているが、5号は例外を定めたもので限定的に解釈されなければならず、抽象的な可能性ではなく、具体的な支障を及ぼす相当の蓋然性が求められている。非公開の部分を公にすることで、返還請求に対する市の判断に影響を与えるとは考えにくいことから、「おそれ」を不当に拡大して解釈しており、5号には該当しない。
 また、区役所は争訟に発展することを危惧しているが、市が故意に不利な情報を隠すことは情報公開条例の趣旨に反することから、非公開にすることは適正な判断とは言えない。
3 意見書の要旨
 大阪市情報公開条例第7条第5号を適用するには蓋然性が求められるが、「公にすることにより国民健康保険に関する事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」について、弁明書には蓋然性が記載されていない。
 弁明書に具体的な支障として「未確定な情報を検討段階で公開することは、当該情報が確定しているものと誤解され、混乱を生じさせる可能性がある」を挙げているが、同一の案件であっても弁護士の意見が様々あるのは当然で、市民がいくら法に無知でもリーガルサポーターズ制度の意見を確定したものだとは考えない。仮に確定した意見だと勘違いされても、そこは丁寧に説明するべきである。これを事務遂行の支障と考えて伝えないのであれば職務怠慢である。非開示にすることで、何を守ろうとしているのか。職員の手間が増えることか。
 また、令和6年に大阪市から示談(合意書)の提案があった際にも、非開示部分の開示は拒まれ、「合意書に署名がなされたのち非開示部分の公開について検討する」との回答であった。検討段階を理由に非開示とするなら、せめて示談の提案時には、開示するべきである。合意書に署名させ異議申し立てできない状態に至るまでは検討段階だとでもいうのか。
 合意がなされるまで検討内容や資料を開示しないということが許されるなら、役所が市に不利な情報を持っていても、市民は知らされないまま合意させられることになる。
 検討内容を明らかにされないと、大阪市が下した結論が適正なものかわからない。大阪市から提示された合意書(案)が適正なものかを判断するためにも、また自身が行っている返還請求自体が適正なものかを判断するためにも、役所が検討に要した資料の開示は必要である。
 今後も、検討段階を理由に安易に非開示の決定が認められるのであれば、検討段階とはどこまでのことを指すのかを、情報公開条例を所管する総務局が明確に示すよう、審査会から要請(答申に含む)してもらえるようお願いする。

第4 実施機関の主張
 実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。
1 決定の理由
 審査請求人は、東成区役所窓口サービス課(保険年金担当)(以下「サービス課」という。)へ来所し、国民健康保険に加入するか元の健康保険を任意継続にするかを検討するため国民健康保険料の試算を依頼し、保険料の概算額及び減免が適用された場合の保険料概算額を記載した国民健康保険料概算見積りの写しの交付を受けた。その後、審査請求人は当時加入していた健康保険を任意継続するよりも、保険料が安価となる国民健康保険への加入を選択し、加入、保険料減免申請を行った。
 サービス課は、保険料減免申請を受け、審査請求人に対し減免適用後の保険料を通知したところ、審査請求人より「以前来庁した際に示された減免適用後の保険料額と大きく異なっている」との申出があった。
 サービス課にて保管していた国民健康保険料概算見積りを確認したところ、減免後の保険料を算出する際に、正しく計算した場合の保険料と比較して低額な保険料を記載していることが判明した。
 結果、審査請求人は、誤った保険料金額を示されたことにより当時加入していた健康保険の任意継続を選択せず、高額な保険料である国民健康保険に加入することになった。
 そして、サービス課は、賠償責任について検討するため、リーガルサポーターズ制度を利用した。
 今回、非開示とした部分は、リーガルサポーターズ制度を利用した際の事前連絡票の「相談事項欄」及び相談記録の「相談内容及び結果欄」であるが、国民健康保険の返還請求にかかる検討事項であり、審査請求人が直接受ける利益・不利益に該当する内容が含まれている。そのため、未確定な情報を検討段階で公開することは、当該情報が確定しているものと誤解され、混乱を生じさせる可能性があり、公にすることにより国民健康保険に関する事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、条例第7条第5号に該当するものと判断した。
2 結論
 以上の次第であり、本件決定は条例に則った適正なものである。

第5 審査会の判断
1 基本的な考え方
 条例の基本的な理念は、第1条が定めるように、市民の公文書の公開を求める具体的な権利を保障することによって、本市等の説明責務を全うし、もって市民の市政参加を推進し、市政に対する市民の理解と信頼の確保を図ることにある。したがって、条例の解釈及び運用は、第3条が明記するように、公文書の公開を請求する市民の権利を十分尊重する見地から行われなければならない。
 しかしながら、条例はすべての公文書の公開を義務づけているわけではなく、第7条本文において、公開請求に係る公文書に同条各号のいずれかに該当する情報が記載されている場合は、実施機関の公開義務を免除している。もちろん、この第7条各号が定める情報のいずれかに該当するか否かの具体的判断に当たっては、当該各号の定めの趣旨を十分に考慮しつつ、条例の上記理念に照らし、かつ公文書の公開を請求する市民の権利を十分尊重する見地から、厳正になされなければならないことは言うまでもない。
2 争点
 審査請求人は、本件各非公開部分が非公開情報に該当しないと主張するのに対し、実施機関は、本件各非公開部分が条例第7条第5号に該当するものとして争っている。
 したがって、本件審査請求における争点は、本件各非公開部分の条例第7条第5号該当性である。
3 争点について
(1)実施機関が該当性を主張する条例第7条第5号の基本的な考え方について
 条例第7条第5号は、本市の機関等が行う事務又は事業の目的を達成し、公正、円滑な執行を確保するため、「本市の機関又は国等が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」は公開しないことができると規定している。
 ここで「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」とは、事務又は事業に関する情報を公開することによる利益と支障を比較衡量した上で、公開することの公益性を考慮しても、なお、当該事務又は事業の適正な遂行に及ぼす支障が看過し得ない程度のものをいい、また、こうした支障を及ぼす「おそれがある」というためには、抽象的な可能性では足りず、相当の蓋然性が認められなければならないと解される。
(2)本件非公開部分1の条例第7条第5号該当性について
 本件非公開部分1は、実施機関が賠償責任について検討するため、リーガルサポーターズ制度を利用した際の質問内容である。質問の背景、事情については個別的に検討する必要があるが、通常一般人であれば当然想定できる質問内容、また一般に公開されている情報に関しては、公開された場合に「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」について相当の蓋然性はないというべきである。
 そこで、各質問内容を個別に検討するに、質問1は賠償を行うべき場合にあたるかどうかという質問である。実施機関が、審査請求人から国民健康保険料の試算を依頼され、その際に誤った国民健康保険料概算見積りの写しの交付をしたこと、その賠償責任の検討のための質問事項であることは、公開された「事案の概要」に記載されている。「事案の概要」のこれらの記載からすれば、質問1は当然質問者からなされる質問であるといえる。
 また、質問2については、他自治体の同様事例を引用し、本市事例と殆ど内容が同一であることを指摘し、本市の賠償責任の有無を質問している内容である。ここで引用されている他自治体の同様事例では、自治体が責任を認めて賠償を行った具体的な内容がインターネット上で公表されている。
 次に質問3は、具体的な損害額、損害額についての実施機関の考えを質問しているが、その質問は、他自治体の同様事例と同様に、国民健康保険料と任意継続していた場合の保険料との差額とすることの妥当性を問うものであり、上記のとおり他自治体の同様事例はインターネット上で公開されている。
 以上のとおり、質問1ないし質問3については、通常一般人であれば当然想定できる質問内容、ないしは一般に公開されている情報であって、国民健康保険の「事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」について相当の蓋然性があるとは言えない。
 次に質問4は、実施機関の責任を踏まえた上で、実施機関が取るべき対応、その方法などの質問であり、今後の個別具体的な状況により変わりうるものであって、その内容が公開された場合には、実施機関が取り得る対応に変化が生じる可能性があり、国民健康保険の「事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」について、相当の蓋然性があると言わざるを得ない。
 また、質問5についても、実施機関の責任を踏まえた上で、もっぱらその内部での責任に関する質問であって、公開されれば実施機関が行う対応に影響があると認めざるをえず、国民健康保険の「事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」について相当の蓋然性があると言わざるを得ない。
 以上のとおり、質問4及び質問5はその全部を非公開とすべきである。
 最後に質問6については、質問する場合に最後になされる極めて一般的な質問であって、具体的な内容の質問でもない。したがって、公開されても、「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」はない。
(3)本件非公開部分2の条例第7条第5号該当性について
 本件非公開部分2は、各質問についての弁護士の回答である。回答についても、個別具体的な事情を勘案し検討する必要があるが、通常一般に容易に推察される回答や、公開されている情報については、「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」について具体的な蓋然性はないというべきである。
 質問1ないし質問3についての回答は、主に賠償責任の有無に関する内容であり、公開されている「事案の概要」での説明でも、実施機関が「誤った」ことが明記され、他自治体の同様事例も公表されている。そして、弁護士の回答は、他自治体の同様事例における結論と何ら変わるところはない。また、その他の部分についても、過失相殺の可能性について言及しているものの、過失相殺の一般的な説明に終始している。したがって、質問1ないし質問3の回答のうち、公開されている情報と同様の通常一般に容易に推察される回答というべき部分については、かかる回答が公開された場合に、国民健康保険の「事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」が相当の蓋然性をもってあるとは言えない。
 もっとも、質問2の回答における「なお書き」並びに質問3の「→」から始まる段落の()内の※より後の部分及び「この点」から始まる段落は、今後賠償を果たす場合における個別具体的な方法論及びその内容が推測可能となる内容が記載されており、その回答が公開された場合には、実施機関の対応が予測され、実施機関の円滑な事務遂行に支障が及ぶ可能性が否定できず、「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」について、相当の蓋然性があるというべきである。
 したがって、質問1ないし質問3については、質問2の「なお書き」並びに質問3の「→」から始まる段落の()内の※より後の部分及び「この点」から始まる段落は非公開とし、その余は公開すべきである。
 次に、質問4及び質問5は、その質問自体が、「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」について相当の蓋然性があると認められるのであって、その回答もまた同様に「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」について相当の蓋然性があると認められる。
 最後に質問6については、質問同様、具体的な内容のある回答ではなく、公開すべきである。
(4)その他の審査請求人の主張について
 審査請求人からは、「検討段階とはどこまでのことを指すのかを、情報公開条例を所管する総務局が明確に示すよう、審査会から要請(答申に含む)してもらえるよ うお願いします。」との要望がある。
 しかし、検討段階とは、広くいえば結論が出るまでが検討段階と言いうるのであって、個別具体的にどこまでが検討段階と示すことは困難であり、審査請求人の要望に応えることは出来ない。また、審査請求人は、「検討段階を理由に非開示とするなら、せめて示談の提案時には、開示するべきです。」と述べているが、開示すべきか非開示とすべきかの判断は、決定時点を基準とすべきであって事後の事情によって決定が左右される訳ではない。なお、示談提案後、改めて情報公開請求することは可能である。
4 結論
 以上により、第1記載のとおり、判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
 委員 小谷 真理、委員 奥村 裕和、委員 村田 尚紀

 (参考)答申に至る経過
令和5年度諮問受理第40
(略)

答申第540号

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