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答申第542号

2026年2月10日

ページ番号:671170

大情審答申第542
令和8年2月13日 

大阪市長 横山 英幸 様

大阪市情報公開審査会
会長 小谷 真理

 答申書

  大阪市情報公開条例(平成13年大阪市条例第3号。以下「条例」という。)第17条に基づき、大阪市長から令和4年3月14日付け大市第52号により諮問のありました件について、次のとおり答申いたします。

 第1 審査会の結論
 大阪市長(以下「実施機関」という。)が令和4年2月9日付け大市第40号により行った不存在による非公開決定(以下「本件決定」という。)は妥当である。

 第2 審査請求に至る経過
1 公開請求
 審査請求人は、令和4年1月26日、条例第5条の規定に基づき、実施機関に対し、請求する公文書の件名又は内容として、「令和2年度運営方針策定要領の4ページに次の記載があります。⑥-2 アウトカム(成果)指標・めざす状態を客観的に測定できるよう数値化した成果指標として、目標年次とともに記載してください。/記載例/・区民モニターアンケートで「・・・・」と回答した割合 ○年度末までに□%以上/一方「運営方針の手引き」(平成30年9月)の8ページには次の通り記載されています。/【15】めざす状態とアウトカム(成果)指標の関係は?/3~5年間を念頭に、設定する戦略によって実現しようとする、経営課題欄で設定しためざすべき将来像に近づいた状態等を、めざす状態として設定し、その状態を客観的に測定できるよう数値化した指標を、アウトカム指標として設定しますので、一般的には、アウトカム指標はめざす状態に包含されています。/現在各区役所では、この要領及び手引きに基づきアウトカム指標の設定や測定がなされています。測定については各区の区民アンケートを用いた測定がなされていますが、いずれの区の区民アンケート結果報告書を見ても、アンケートは区民の状態を測定できるものにはなっておらず、その結果は「その状態を客観的に測定できるよう数値化した指標」としての実質を備えたものには全くなっていないにもかかわらず、アンケート結果を用いた評価が行われています。/1.「記載例」に「区民モニターアンケートで『・・・・』と回答した割合 ○年度末までに□%以上」と記載した意図が確認できる文書を公開してください。/3.「区民モニターアンケート」で「その状態を客観的に測定できるよう数値化した指標」の測定ができると考えた根拠が確認できる文書を公開してください。」(審査会にて原文中の改行箇所に「/」を挿入している。以下同じ。)と表示して公文書の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 本件決定
 実施機関は、本件請求に係る公文書(以下「本件請求文書」という。)を保有していない理由を、「「記載例」に「区民モニターアンケートで『・・・・』と回答した割合 〇年度末までに□%以上」と記載した意図が確認できる文書及び「区民モニターアンケート」で「その状態を客観的に測定できるよう数値化した指標」の測定ができると考えた根拠が確認できる文書については、当該文書をそもそも作成していたかどうかが不明であり、作成していたとしても、平成27年度以前であるため、保存年限(5年)が経過したために廃棄し、実際に存在しないため。」として、条例第10条第2項に基づき、本件決定を行った。
3 審査請求
 審査請求人は、令和4年2月15日、本件決定を不服として、実施機関に対し、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。

第3 審査請求人の主張
 審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
1 審査請求の趣旨
 「本件決定を取り消し、改めて文書の特定を行うこと。」との裁決を求める。
2 審査請求の理由
・市政改革室は、処分理由を「「記載例」に「区民モニターアンケートで『・・・・』と回答した割合〇年度末までに□%以上」と記載した意図が確認できる文書及び「区民モニターアンケート」で「その状態を客観的に測定できるよう数値化した指標」の測定ができると考えた根拠が確認できる文書については、当該文書をそもそも作成していたかどうかが不明であり、作成していたとしても、平成27年度以前であるため、保存年限(5年)が経過したために廃棄し、実際に存在しないため。」としている。しかし、運営方針策定要領の当該記載は、令和4年度(すなわち現行)のものにも、「記載例」に「区民モニターアンケートで『・・・・』と回答した割合〇年度末までに□%以上」と記載されている。処分理由で示された通り、請求対象文書が作成されていたのかどうかが不明であり、作成されていたとしても既に廃棄したということであれば、当該記載の意図や根拠が不明であり、どのようなアンケートを行えば、「めざす状態を客観的に測定できるよう数値化した成果指標」として適切なデータが得られるのかも説明不明であるということになる。
・上記の点について、市民の声で、「2.「記載例」に「区民モニターアンケートで『・・・・』と回答した割合〇年度末までに□%以上」と記載した意図について説明してください。/3.「区民モニターアンケート」で「その状態を客観的に測定できるよう数値化した指標」の測定ができると考えた根拠について説明してください。」と質問したところ、市政改革室から、「・「2.「記載例」に「区民モニターアンケートで『・・・・』と回答した割合〇年度末までに□%以上」と記載した意図について説明してください。」についてですが、既述のとおり、「区政(同じ)モニターアンケート」は、比較的容易に人手することができ、過去との比較ができる、測定側の主観が入り込まない数値データを測定する一つの方法であると考えています。また、成果目標が既存データにより把握できない場合は、例えばアンケート調査等により区民・市民の意識等を測定することが考えられるため、運営方針策定要領における「記載例」として記載しています。/・「3.「区民モニターアンケート」で「その状態を客観的に測定できるよう数値化した指標」の測定ができると考えた根拠について説明してください。」についてですが、既述のとおり、「区政(同じ)モニターアンケート」は、比較的容易に入手することができ、過去との比較ができる、測定側の主観が入り込まない数値データを測定する一つの方法であると考えています。」との回答があった。この回答において、市政改革室は区民モニターアンケートについて/・比較的容易に入手することができる/・過去との比較ができる/・測定側の主観が入り込まない数値データを測定する一つの方法である/・「その状態を客観的に測定できるよう数値化した指標」(運営方針策定要領におけるアウトカム指標の定義)の測定ができる/ものであると考えていることが分かる。しかし、処分理由の通り区民モニターアンケートを例示した根拠が不存在であるとすると、この回答の根拠も説明できないということになり、矛盾が生じる。市政改革室は整合性の取れた説明をすべきである。
・此花区役所の区民アンケート結果報告書の7ページに「報告書を読む際の留意点」という名の標本誤差等の記載がある。これは、かつて市政改革室がWebページで公開していた世論調査結果報告書にあった記載と全く同じものである。ここから、各区(住吉区を除く)で行われている区民アンケートは、この世論調査をベースにしたものであるとわかる。そして、この点は各区役所も認めている。そして、ここには標本から得られるデータをもって母集団(区民アンケートにあっては区民全体など)の状況を推計するための統計学的根拠が記載されている。各区役所の運営方針において、区民(モニター)アンケートの結果をもって「〇〇である区民の割合」としている根拠はこれであると考えられることから、請求対象文書はこれであると認められる。
・処分理由にある「当該文書をそもそも作成していたかどうかが不明」という点については、「これらの意思形成過程においても確実に文書を作成し、決裁手続を経て意思決定がされた文書(決裁文書)と同様に、公文書として適正に保存管理しなければならない。」とする公文書作成指針違反であり、同様に「保存年限(5年)が経過したために廃棄し」についても、現行の要領に記載がある以上、その記載の根拠は「決裁文書の保存期間が満了するまでは保存を要するため、保存期間の満了時期が決裁文書と同じになるように編集すること。」とする公文書作成指針違反である。
3 令和4年9月13日付け意見書(弁明書に対する反論)
・まず、本件決定の理由として示されている「『記載例』に『区民モニターアンケートで「・・・・」と回答した割合 〇年度末までに□%以上』と記載した意図が確認できる文書及び『区民モニターアンケート』で『その状態を客観的に測定できるよう数値化した指標』の測定ができると考えた根拠が確認できる文書」については、マーケティング・リサーチ関連文書が該当する。
・市政改革室は市民の声の回答で、「マーケティング・リサーチにより母比率の推定を行うことを目的とした手法を説明したものではありません」とし、情報公開審査会に対しては「調査の回答者の回答状況をとどまるものと取り扱っている」との説明を行っている。マーケティング・リサーチ関連文書については、これらを根拠として該当しないものとして扱っているものであると思料されるが、「マーケティングリサーチツールの手引き」の「7 PDCAサイクルを意識した改善について」は、マーケティングリサーチツールを使用した運営方針のマネージメントについて記載されており、まさに上記請求対象文書に該当するものである。これは、区民アンケートの結果を「母比率の推定値」として扱っているのか、「あくまで当該調査の回答者の回答状況をとどまるもの」として取り扱っているのかは無関係であり、この点が文書の存否にかかる論点になるはずがない。
・そして、「当該文書をそもそも作成していたかどうかが不明」との点については、運営方針策定要領および運営方針の手引きの記載内容、特に請求内容である「区民アンケートでアウトカム指標が測定できると考えた根拠は何か」について、文書をもって説明できないという事態に陥っていることを如実に物語っており、明確に「説明責任を果たすための公文書作成指針」違反である。
・さらに「作成していたとしても、平成27年度以前であるため、保存年限(5年)が経過したために廃棄し、実際に存在しない」についても、保存年限が5年であるというのはどのようにして確認したものなのか。そして、仮に保存年限が経過したものであったとしても、説明責任を果たすうえで必要があるのは明白であり、現に審査請求人はこの点についての満足な説明を得られていない。この意味で保存年限を延長すべきものであり、この点についても公文書管理条例違反である。
・実施機関の弁明書では、区民アンケートの結果について、比較可能性や客観性などが述べられているが、はっきりした根拠は示されていない。
・そして、請求対象である「区民アンケートでアウトカム指標が測定できると考えた根拠は何か」という点については言及を避けている。問題はまさにこの点に集約されるのであり、区民アンケートがマーケティング・リサーチ関連文書に記載されているように標本調査として適切に実施されているものなのであれば、その結果をもって運営方針の評価を行うということについては問題がない。しかし、現実にはそうはなっておらず、マーケティング・リサーチ関連文書に記載されている内容すら満足に理解していない結果として、区民アンケートは標本調査として適切に実施されておらず、都島区役所が認めるように、回答者が偏り、精度は十分なものにはなっていない。
・そして、「アウトカム指標が既存データにより把握できない場合は、例えばアンケート調査等により区民・市民の意識等を測定することが考えられる」については、区民アンケートでアウトカム指標の測定ができるものであるとの前提で書かれているが、公開請求はまさにこの点、「そう考えるのはなぜか」についての説明を求めるものである。
・実施機関の弁明書には、「審査請求人は、令和4年2月15目付け審査請求書の中で、此花区役所の区民アンケート結果報告書及び各区の区民アンケートについて述べているが、市政改革室から区役所に対して世論調査をベースに区民(モニター)アンケートを実施するよう依頼した記録は存在しない。」とあるが、住吉区では民間ネット調査の手法で、その他の区では世論調査の手法で区民アンケートを行っていることは既に述べたが、これは各区役所も否定していない。単に事実関係を述べただけで、記載されているような依頼が市政改革室からあったなどとは一切記載していない。しかしながら、市政改革室が運営方針策定要領で、区民アンケートを用いたアウトカム指標の測定を例示し、マーケティング・リサーチツールの手引きにおいてマーケティング・リサーチツールを用いた運営方針のマネージメントについて説明していたことは客観的事実である。そして、各区役所も区民アンケートを用いて運営方針の評価を行っていることについては、運営方針策定要領が根拠であるとしている。
・実施機関の弁明書には、「審査請求人は、当該請求文書を廃棄していることについて「公文書作成指針違反」と指摘しているが、処分庁は、当該文書を作成していたとしても、公文書作成指針に基づき適切に管理・廃棄を行っていたものと認識している。」とあるが、審査請求人は、区民アンケートを用いた運営方針のマネージメントについて、その妥当性や根拠について、これまでのところ満足な説明を受けられていない。公開請求においてもこの妥当性や根拠に関するものは一切公開されず、市民の声の回答でも市政改革室は肝心な点についてはぐらかしてばかりで一切まともな説明を行っていない。
・市政改革室は市民の声の回答において、その内容をどんどん後退させることを余儀なくされた。そして、その結果だと思われるが、マーケティング・リサーチツールのすべてを廃止するに至った。その際に市政改革室が各所属に通知した文書の中で「既に一部の所属では、独自で『世論調査』を実施している」ことを理由として挙げているが、マーケティング・リサーチツールの目的についての説明が全くできなかったという事実は隠蔽している。その結果として区役所において区民アンケートが問題を抱えたまま継続されるという事態になってしまっている。
・情報公開条例解釈・運用の手引の4ページには第1条の説明として「本条は、この条例の解釈及び運用の指針となるものであり、各条文の解釈及び運用は、前文とともに本条及び第3条の規定に照らして、適正に行わなければならない」と説明されている。しかるに審査請求人はこれまでのところ、運営方針のマネージメントについての合理性、妥当性に関する説明を全く受けられておらず、「知る権利」、ひいては「市政に参加する機会」を不当に侵害されている。情報公開条例の趣旨にのっとった対応をお願いする。
4 令和4年1215日付け意見書(他の事件と共通の意見書)
・国立研究開発法人科学技術振興機構「地方自治体が実施する社会調査の深刻な問題」や日本学術会議の提言「社会調査をめぐる環境変化と問題解決に向けて」の現状認識や問題点の指摘は、現状の大阪市が行う調査にも完全に妥当するものである。
・調査を用いた運営方針のマネージメントについては、それが妥当で合理的であると判断したからこそ、そのように行っていることには疑いはなく、また、市民の声の回答でも「調査は妥当で合理的なものである」との主張になっているので、そのような判断や主張にいたる根拠についての説明を求めるものであり、その根拠が不存在であるはずがない。
・日本学術会議の提言「社会調査をめぐる環境変化と問題解決に向けて」の「社会調査は我々の社会の現状を的確に把握し、その時間的変化を追跡し、他の社会との比較をするために、さらにはエビデンスに基づいた政策立案をするために不可欠である。社会調査から得られる情報がなければ、民主社会の基盤が損なわれてしまう。」との記載は、大阪市の認識とも一致していると認められる。「マーケティング・リサーチツールの手引き」の「7 PDCAサイクルを意識した改善について」や、「運営方針の手引き」「運営方針策定要領」の記載内容について、その趣旨は提言の記載と同じであると認められる。
・また、日本学術会議の提言「社会調査をめぐる環境変化と問題解決に向けて」には、「社会の的確な実態を捉えるためには、適切な母集団を設定し、その母集団に対して代表性のある標本から情報を得る必要がある。このためには回収率が高くなければならないが、近年の社会調査ではこの回収率が低下する傾向にある。」との記載があるが、これに関して大阪市の説明は「母集団の代表になっているとは必ずしも言えないということを認識したうえで…」というものである。提言にあるように代表性のある標本でなければ社会の実態を的確にとらえることはできない。アウトカム指標は「めざす状態を数値化した指標」であるとされており、これを測定するためには、母集団たる区民全体などの実態を的確にとらえる必要があることは論を俟たない。そして、そのためには調査の標本は母集団に対する代表性を有するものでなければならないことは提言にある通りであるが、大阪市が行う調査に関しては、低回収率を起因として標本が偏り、代表性を有するものにはなっていない。
・「区民アンケートの結果は区民の状態を表すものではない」ということはいくつかの区の報告書に記載がある。大阪市はなぜこのような区民アンケートでこの測定ができる(アウトカム指標になりうる)と考えたのかを説明する責任があるはずである。そして、これに関しては、情報公開審査会に対しても「(調査結果は)調査の回答者の回答状況にとどまる」との説明になっている。しかし、「回答者の回答状況にとどまる」に過ぎない調査結果が、区民の状態を表す指標であるアウトカム指標になりうるのかという説明はなされておらず、昨年6月15日付けの情報公開審査会の答申にもこの点に関する記載はない(令和3年6月15日付け大阪市情報公開審査会答申第492号参照)。
・「標本の代表性」については、大阪市において正しく認識できてはいない。これは、マーケティング・リサーチツール関連文書のどこにも標本の偏りに関する言及がないこと、市政改革室の市議会での答弁においても、標本の偏りが説明されることはなく、「一定の精度」の根拠が回答者数のみであることなどからもわかる。
・市政改革室については、平成30年3月段階での市民の声の回答では調査について「母集団あるいはセグメントごとの傾向の把握を行うもの」と母集団の推計を行うものであることを認めていたにもかかわらず、その後の回答では「統計学によるものではない」「母比率の推定は行っていない」などと過去の回答を完全に無視した説明を行い、過去の説明との整合性については説明を行うことなく無視を決め込むといった信じられない対応を続けており、これについては明確に虚偽説明であると言わざるを得ない。また、市民局についても、調査において「分散分析」といった統計学に基づいた手法を用いた分析を行っていながら、同様に「統計学に基づくものではない」などとの説明を行っている。
・昨年6月の情報公開審査会答申に関して、これらの過去の回答や分散分析に関する資料、マーケティング・リサーチツール関連文書の内容については、実施機関から情報公開審査会に対する説明はなかったものと認められるが、これは「隠ぺい」とも評価できるものである(令和3年6月15日付け大阪市情報公開審査会答申第492号参照)。
・なお、提言の内容は、社会調査の実務現場からはやや「理想論」であるように見受けられる。今日、社会調査をめぐる環境には様々な問題点があり、すべてが理論通りに進むわけではない。しかし、調査により社会の状態を的確に把握するためにはどのような問題点があり、それを解決するためにはどのような方法が考えられるかということを検討するにあたっては、やはり社会調査に関する知見が求められることは言うまでもない。そして、調査の結果から得られたデータを実務に活用するにあたり、どのような制約が生じているのか、すなわち「データを読む力」を養うためにもこれは求められるのであり、この知見を欠いたまま不適切な調査によって得られたデータを不適切に使用することは、行政があるべき姿からどんどん乖離してしまうという結果を招くことになる。社会調査の実務の現場では、社会調査をめぐる環境に存在する問題について、これを解決すべく様々な努力がはらわれている。行政だけが例外であるはずがない。大阪市が社会一般の水準に追いつくことを願っている。
5 令和5年8月16日付け意見書(弁明書に対する求釈明)
・弁明書の説明では、「記載例」に「区民モニターアンケートで『・・・・』と回答した割合〇年度末までに□%以上」と記載した意図が確認できる文書及び「区民モニターアンケート」で「その状態を客観的に測定できるよう数値化した指標」の測定ができると考えた根拠が確認できる文書は「当該文書を作成していたとしても平成27年度以前であり、保存年限(5年)が経過したために廃棄している。」とのことであるが、この通りであれば、令和4年度運営方針策定要領の上記の記載についてもその根拠を説明できないということになり、明白に「説明責任を果たすための公文書作成指針」違反である。上記の記載について、「区民モニターアンケートで『・・・・』と回答した割合〇年度末までに□%以上」と記載した意図及び「区民モニターアンケート」で「その状態を客観的に測定できるよう数値化した指標」の測定ができると考えた根拠について、説明を求める。
・この間の市政改革室の回答は、区民アンケートについて/・比較的容易に結果を入手できる/・過去との結果比較が可能であること/・測定側の主観が入り込まない回答を得られること/を根拠として「アウトカム指標を設定する際に留意すべき点を一定満たすものである」としているが、肝心な「その状態を客観的に測定できる」というのはなぜかという点については一切触れられておらず、回答を避けているが、この点についての説明を求める。
・弁明書にある「アウトカム指標が既存データにより把握できない場合は、例えばアンケート調査等により区民・市民の意識等を測定することが考えられるため、当該所属が検討のうえ、区民(モニター)アンケートの結果を用いると判断することについては特段問題ないと認識している」との説明は、上記不存在決定(令和5年7月14日付け大市第48号)の「公開請求に係る公文書を保有していない理由」の記載や、マーケティング・リサーチの手引きの記載に沿ったものであると認められるが、アンケート調査(区民(モニター)アンケート)により、「区民・市民の意識等を測定」ができるというのはいかなる根拠によるものであるのか、説明を求める。なお、審査請求人が市政改革室に架電し、上記弁明書の説明については、アンケート調査(区民(モニター)アンケート)により、「区民・市民の意識等を測定」ができるとの認識が前提になっているはずであると指摘したところ、担当者の回答はこれを肯定するものであった。
・「当該内容が区民モニターアンケートの一般的な性質であるという認識はない」との説明は、情報公開審査会に対する「統計調査ではない」、「回答者の回答状況を表すにとどまる」などとの整合性を持たせるための虚偽であり、「マーケティングリサーチの一般的な目的」との説明は、本来の認識が露見したものであると認められる。
6 令和5年8月21日付け意見書(弁明書に対する求釈明の追加)
・弁明書には「同一の方法で経年実施していれば一般に過去との結果比較が可能である」と記載されている。しかし、調査の回答率については、年度ごとに異なっている。この回答率の違いが回答傾向に影響を与えず、調査の結果の比較可能性に影響を与えないとする根拠についての説明を求める。
7 令和7年4月22日付け意見書
・市政改革室が出した令和7年2月5日付け「運営方針のアウトカム測定におけるアンケート調査の取扱いについて(通知)」の「区民の代表性を有しているかのような誤解を招く恐れがあり」との部分は、情報公開審査会答申(令和6年1220日付け大情審答申第536号答申)の内容とはずれている。
・市政改革室は、令和7年3月31日付け市民の声No.24-17861No.24-17862No.24-17863の回答で、「当室が実施していたマーケティング・リサーチ事業については、母集団の代表となっているとは必ずしも言えないということを認識した上で、調査結果については、あくまで回答者の回答状況を示すにとどまるものとして取り扱っており、必要に応じて様々な関連情報を合わせて、施策・事業を進める上での総合的な判断を行う際に活用していたものです。」と説明しているが、「当室が実施していたマーケティング・リサーチ事業については、母集団の代表となっているとは必ずしも言えないということを認識した上で、調査結果については、あくまで回答者の回答状況を示すにとどまるものとして取り扱っており」とされているということは、令和6年1220日付け大情審答申第536号の「そうであれば、調査結果について、統計学上、各区の代表性を有していることを保証できないものであり、統計学以外の理論を用いて比較可能な理由を説明できるとも考えられない。」との指摘がマーケティング・リサーチツールについても妥当するということである。
・そして、上記通知に記載されている「(統計学も含めて学問的な検討が行われていない)区民アンケートや同様の手法で行われるアンケート調査結果を運営方針の目標達成の判断材料に使用することは、区民の代表性を有しているかのような誤解を招く恐れがあり、運営方針のアウトカム測定に用いることは望ましくないと考えられる。」との記載は、区民アンケートを使用した目標達成の判断にも妥当するものであり、要するにその合理性や妥当性を説明できないということである。
・市政改革室は運営方針策定要領などにおいて、区民(モニター)アンケートを運営方針におけるアウトカム指標の測定方法として示しているが、これは「統計学も含めて学問的な検討」を行うことなく行われており、答申の「その集計データの理論的な意味や、取組評価の判断資料として区民アンケートを用いていることについての理論的な検討も特段行っていない」、「経年比較についても、どのような前提条件があれば比較可能かについて検討することなく、ただ単純に比較している」との指摘が妥当するものであると認められる。これは区役所も同様で、区民アンケートをアウトカム指標の測定方法としていることについて、何の検討も行うことなく、単純な(その意味が不明な)比較を行っているに過ぎないものであると認められる。
・請求対象文書については、令和4年9月13日付け意見書(上記3)に示した通り、運営方針関連文書、マーケティング・リサーチ関連文書及びこれらの文書の記載内容の根拠が示された文書であると考えられるが、「統計学も含めて学問的な検討」を行っていないということは、市政改革室は何の検討も確認も行うことなくこれら運営方針関連文書、マーケティング・リサーチ関連文書を作成したということを示唆している。
・考えにくいが、仮にこの通りであるとすれば、請求内容である「区民アンケートでアウトカム指標が測定できると考えた根拠は何か」について、文書をもって説明できないという事態に陥っていることを如実に物語っており、明確に「説明責任を果たすための公文書作成指針」違反である。
・請求対象文書である「『区民モニターアンケート』で『その状態を客観的に測定できるよう数値化した指標』の測定ができると考えた根拠が確認できる文書」に関しては、この根拠が存在しなければ、区民アンケートの実施に係る意思決定がなされるはずもなかったということに考え見れば、これは「意思決定過程文書」にほかならず、公文書管理条例第4条で作成が義務付けられているものであり、不存在であるはずがない。
・鶴見区、阿倍野区、生野区、住吉区、城東区、都島区の区役所では答申で指摘されている「学問的検討」を行い、区民アンケートが妥当な結果を得られるようなものにするために必要な条件を満たせるような努力が行われている。しかるに統括部署たる市政改革室は、このような努力や説明責任に背を向け、詭弁を弄することに窮々としており、その姿勢は極めて非難されるべきものである。区民アンケートが市民区民の状況を的確に把握できるものとし、大阪市の行政が真に市民区民に寄り添ったものにするためにも、このような市政改革室の姿勢は改めさせなければならない。
8 令和7年6月13日付け意見書
・令和7年6月6日付け大情審答申第539号には「ある会議において、意思決定の前提となる条件のすべてを議論することが現実的に不可能であることからも明らか」とあるが、意思決定に直接関係する事項については、会議において主要議題になることは明らかである。本件においては運営方針関連文書、マーケティング・リサーチ関連文書の作成における、「統計学も含めて学問的な検討」の内容など、これら関連文書の記載内容の根拠が示された文書は、「説明責任を果たすための公文書作成指針」で例示されている「市としての意思決定に関係する会議等」における議事録に相当するものであり、この点において指針や条例に違反するものであると考えられる。
・審査請求人はこれら関連文書の作成に関する意思決定において、「意思決定の前提となる条件のすべてを議論」し、文書化するべきだということは主張していない。これら関連文書の記載内容の根拠については、この文書を作成するという意思決定の核心的な部分である。この根拠がなければ文書を作成するという意思決定がなされるはずがなかったというほどのものであり、まさに条例や指針で作成が義務付けられているものであると考えられる。
・大阪市公文書管理条例第3条や第4条の解釈は、条例の目的である第1条の規定に基づいて行われるべきものである。すなわち、意思決定に関する文書が適切に作成、管理されていないことにより、「現在及び将来の市民に説明する責務が全う」されず、「市政運営に対する市民の信頼」を損なうという事態になるのであれば、それは条例違反と評価されるべきものである。本件では、市政改革室は運営方針関連文書、マーケティング・リサーチ関連文書の記載内容の根拠が示された文書は不存在であるとしている。これはつまり、これら関連文書の記載内容の根拠が説明できないということを如実に示しており、これら関連文書に基づいて行われる事務に関する市民の信頼を損なうものであり、条例違反であると評価されるべきものである。
・令和7年6月6日付け大情審答申第539号では、「上記事実を踏まえると、審査請求人の主張は、区民の割合を測定するという目的で実施されるものであるなら、それは統計調査であるはずだというものと思われる。/しかし、そこには、論理の逆転が生じている。つまり、「区民の割合」を測定しようと思うならば、統計学に則った統計調査を行わなければならないという論理は成り立ちえても、「区民の割合」を測定することを目的として実施された調査は統計調査であるという論理は成り立たない。なぜなら、目的が正しくてもそれに合致した方法が選択されないことは(望ましくはないが)現にあることだからである。」と指摘されているが、これを本件に当てはめると、「運営方針の評価」という目的は正しくても、そのために作成された運営方針関連文書、マーケティング・リサーチ関連文書の内容がその目的に沿ったものになっていないことは現にあるという判断になるものと考えられる。しかし、これら関連文書の記載内容がその目的に沿ったものにはなっていないということが請求対象文書の不存在を示すものではないはずである。少なくとも市政改革室は「運営方針の評価」という目的を達成できるものとしてこれら関連文書を作成したはずであり、そのように考えた根拠が不存在であるはずがない。
9 令和7年7月30日付け意見書
・鶴見区が公開した「令和6年度鶴見区運営方針自己評価(年度末振り返り)の実施について」では、鶴見区は区民アンケートによる運営方針の評価において、「母比率の検定」、「母比率の差の検定」などを行っており、これら統計学に関する根拠についてもしっかり確認した上で行っていることが分かる。ここからわかることは、鶴見区は令和4年度までは区民アンケートの学問的根拠などを何ら確認することなく漫然と行っていたところ、その信頼性に疑義を提起されるに至り、令和5年度以後はこの根拠を確認した上で回答率の向上など、区民アンケートの信頼性向上に向けた取り組みを進めており、結果を出している。
・公文書管理条例第1条には、「本市及び地方独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の市民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする」とあり、この条例の各条文の解釈はこの目的に沿ってなされなければならない。同条例第6条第6項では、「職務の遂行上必要があると認めるとき」と規定されているが、これを第1条の目的に沿って解釈すると、「本市及び地方独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の市民に説明する責務が全う」されるため、つまりは「職務の遂行上必要があると認めるとき」は保存期間を延長しなければならないものであると解釈される。
・行政機関がその活動を行う上で規範とすべき原則の一つに「適正手続きの原則」がある。これは行政活動が適法(正確)であるだけでなく、手続きも適正でなければならないという原則であるが、公文書管理条例の目的もこの原則から導かれるものである。この原則の観点から上記で述べた鶴見区の事例を評価すると、まず、区民アンケートの理論的根拠を確認しないまま漫然と実施していたという点において、この原則に反していると評価できる。そして、令和4年度の95.3%などという区民の実態からかけ離れたデータで防災計画や運営方針の評価を行っているということに関しては、「住民の福祉の増進」ができていないということであり、地方自治法第1条の2に違反している。つまり鶴見区の事例は令和4年度までは違法状態にあったと評価できるということである。しかし同区は、区民アンケートの理論的根拠を意思決定文書に残すなどしており、公文書管理条例の目的、理念を実践しており、違法状態からは脱却したものと評価できる。
・令和7年4月25日付けの市政改革室の市民の声の回答では、「区民(モニター)アンケートを、比較的容易に入手することができ、過去との比較ができる…」との説明がなされている。そして、この説明は既に何年も前からなされているものであるが、ここにある「過去との比較ができる」について、審査請求人の「過去との比較ができるとする理論的根拠について説明してください。」との質問には一切説明されることがない。仮にこれが、根拠となる文書を廃棄してしまったために根拠を確認することができず、その結果説明することができない状態であるということなのであれば、公文書管理条例第1条の目的を達成することができなくなっているということなのであり、この意味で同条例違反であると解釈できる。
・令和6年1220日に出された情報公開審査会答申(大情審答第申536号)を受けて市政改革室は令和7年2月5日付け「運営方針のアウトカム測定におけるアンケート調査の取扱いについて(通知)」を発出しており、当該文書には、「しかし、答申では、区民アンケートや同様の手法で行われるアンケート調査は、統計学的な調査ではないとの指摘がされています。このため、答申の結果を考慮すると、これらのアンケート結果を運営方針の目標達成の判断材料に使用することは、区民の代表性を有しているかのような誤解を招く恐れがあり、運営方針のアウトカム測定に用いることは望ましくないと考えられます。」と記載されている。これは答申にある「(意味のある)経年比較や目標達成評価ができるのかについて、実施機関において検討がなされたとは認められない」などの指摘を受け入れざるを得なくなって、区民アンケートを運営方針の評価に用いることを「望ましくない」としたものであると認められる。つまり、それまでの区民アンケートを用いた運営方針の評価が妥当なものではなかったということを事実上認めるものであり、これは上記の鶴見区の事例同様、「適正手続きの原則」違反であり、地方自治法違反でもある。そして、これが根拠となる文書を廃棄してしまったために招いた事態なのであれば、文書を廃棄したという事実は、公文書管理条例などに反する違法なものであったと評価できる。
・また、令和7年6月6日に出された情報公開審査会答申(大情審答申第539号)では、「世論調査が統計調査であるという点に争いはなく」、「マーケティング・リサーチ関連文書に従って統計調査として区民アンケートが実施され」と認定されている。これについて、市政改革室に質問を行ったが、この回答で市政改革室は「これまで市民の声等としてお寄せいただいた内容と同じ趣旨でありますことから、過去、お答えした内容をご参照いただきますようお願いいたします」と過去の回答を維持するものとしている。しかし、これまでの回答で市政改革室は世論調査をはじめとするマーケティング・リサーチツールは統計調査ではないとしており、情報公開審査会の認定内容はこれを真っ向から否定するものであるが、これに対して説明する気はさらさらないようである。もっとも、これも根拠文書を廃棄してしまったために説明できない状態に陥っているということなのであれば、これも上記で述べたように公文書管理条例違反である。
・以上をまとめると、請求対象文書が廃棄され存在しないという事実が、区民アンケートによる運営方針の評価の合理性や妥当性を説明できないという事態を招いているのであり、この意味で公文書管理条例第1条に規定する目的を達成するためには文書の保存期間の延長は必須であったと言え、文書の廃棄は公文書管理条例違反である。そして、具体例として挙げた鶴見区の事例のように、根拠となる文書が不存在であるために不適切なデータに基づいて行政運営がなされるという事態は、「住民の福祉の増進」に反するものであり、これも公文書管理条例違反である。さらには、根拠文書を廃棄してしまった時点で、「適正手続きの原則」を満足できない状態になってしまっているのであり、これも公文書管理条例違反であるとする根拠になりえるものである。
・港区の令和2年度運営方針と令和4年度運営方針を比較すればわかるように、令和2年度では区民アンケートの結果は「区民の割合」を表すものとして取り扱われていたが、令和4年度ではこのように取り扱われておらず、「と回答した割合」として用いられている。このような書き換えはほぼすべての区で行われている。これは審査請求人が令和2~3年に各区に対して「区民アンケートの結果が『区民の割合』を表すとする根拠は何か」と質問したところ、この根拠を説明できる区は皆無で、この根拠を説明できないことから、「と回答する割合」に書き換えたものである。
・市政改革室が作成した「マーケティング・リサーチの手引き」の「PDCAサイクルを意識した改善について」にはマーケティング・リサーチツールを用いた運営方針のマネージメントが説明されており、各区の運営方針のマネージメントはこの文書や、やはり市政改革室が作成した関連文書に基づいて行われている。そして、上記「マーケティング・リサーチの手引き」では、アンケート(マーケティングリサーチツール)の結果は「市民の割合」や「区民の割合」を表すものとして説明されている。しかし、上記のようにいずれの区役所も、そして市政改革室さえも、なぜ市民(区民)の割合を表すのかという点について、理論的な説明が全くできない状態である。根拠文書を廃棄したということが事実なのであれば、これにより関連文書の記載内容について説明ができず、運営方針のマネージメントについても説明できず、挙句には運営方針のマネージメントが不適切な方向にねじ曲がったのであり、これは全く公文書管理条例の目的に反するものである。
・平成28年5月23日付けの市政改革室が作成したマーケティング・リサーチ実務担当者学習会資料では、世論調査の結果に基づいて、区の広報紙を閲覧しているのは市民全体の1/3程度であると説明されている。これは市政改革室の「(マーケティングリサーチツールの結果は)市民の状態を表すものではなく、あくまで回答者の回答状況にとどまる」、「この間、申出人様に回答(説明)申しあげてまいりましたとおり、世論調査は母集団の代表となっているとは必ずしも言えないということを認識した上で実施しており、「母集団の推計をするもの」という説明を行ったことはありません」との説明(この説明は情報公開審査会に対しても行われているはずである)とは完全に矛盾している。この実務担当者研修会資料に関しても市政改革室は令和5年5月15日付けで「当室が過去に所管していた「マーケティング・リサーチ」事業については、いずれも統計法に基づく統計調査として実施していたものではなかったため、「調査によって取得したデータは、母集団の代表となっているとは必ずしも言えないということを認識した上で、必要に応じて様々な関連情報を合わせて、施策・事業を進める上での総合的な判断を行う際に活用していた」ものです。したがって、調査結果の数字については、母集団の代表として扱った実績もありませんし、あくまで回答者の回答状況を示すにとどまるものであると判断しているところです。/マーケティング・リサーチ実務担当者学習会(平成28年5月23日)P33P34につきましては、「世論調査結果による市民の現状」として、「世論調査結果による」と明記しているとおり調査結果は回答者の割合にとどまるものになっていることは明らかであり、学習会資料の記載内容につきましても情報公開審査会や市民の声などで、当室が一貫して説明してきた内容と矛盾しないものと認識しております。/よって、「情報公開審査会に対する説明が虚偽である」との主張には、あたらないものと考えます。」と説明している。この回答においては「調査結果の数字については、母集団の代表として扱った実績もありません」とされているが、この実務担当者研修会資料において、世論調査の結果をもとに「市の最強ツールでさえ、1/3程度しか毎月閲覧されていない」のが市民の現状であると示していることこそが「母集団の代表として扱った実績」にほかならない。また、「「世論調査結果による」と明記しているとおり調査結果は回答者の割合にとどまるものになっていることは明らか」との説明に関しても、資料では調査結果を「回答者の割合」とはしておらず、「市民の現状」を表すものとしており、市政改革室の説明は虚偽に塗れている。また、この資料の別の部分では、世論調査の結果をもとに「HPでの情報発信では周知を徹底することが難しい」との判断がなされているが、これは、「市民全体の70%が市のHPをほぼ閲覧していない」という認識によるものであり、上記の「「母集団の推計をするもの」という説明を行ったことはありません」との説明が真っ赤な嘘であることを示している。
・令和6年1220日の情報公開審査会答申(大情審答申第536号)における「そうであれば、調査結果について、統計学上、各区の代表性を有していることを保証できないものであり、統計学以外の理論を用いて比較可能な理由を説明できるとも考えられない。/したがって、本件公開請求の決定通知書やこの間の調査・審議から、各区の代表性が担保されていない結果に基づき、(意味のある)経年比較や目標達成評価ができるのかについて、実施機関において検討がなされたとは認められない。」との認定に対して、市政改革室は令和7年3月4日付けで、「当室が実施していたマーケティング・リサーチ事業については、母集団の代表となっているとは必ずしも言えないということを認識した上で、調査結果については、あくまで回答者の回答状況を示すにとどまるものとして取り扱っており、必要に応じて様々な関連情報を合わせて、施策・事業を進める上での総合的な判断を行う際に活用していたものです。/市議会での答弁内容に関しては、当時の担当課長が本市が実施した世論調査に関する認識を答弁したものです。/過去との結果比較に関する質問については、以前お寄せいただきました市民の声(受付番号24-16590,16591,16592,16593,16594)でお答えした回答のとおり、本市としては、運営方針の策定において、同一の手法で経年実施することで、一般的に過去との結果比較が可能であるとの基本認識を持っています。」との回答を行っている。ここで市政改革室は「同一の手法で経年実施することで、一般的に過去との結果比較が可能である」と説明しているが、その根拠は全く説明されていない。答申の認定を完全に無視している。当該答申では、「実施機関は特段の検討を行うことなく、区民アンケートを実施していると認められ、そうであれば、経年比較についても、どのような前提条件があれば比較可能かについて検討することなく、ただ単純に比較していると認められる」との認定もなされている。これは市政改革室についても妥当するものと認められる。つまり根拠文書が不存在であるということであれば、これは「どのような前提条件があれば比較可能か」などの根拠を市政改革室としては持ち合わせておらず、ただ「単純な比較が可能」であると言っているに過ぎないものであり、その比較にどのような意味があるのかについての説明は全くできないということを示すものである。
・上記のとおり市政改革室はマーケティング・リサーチツールについて、「統計調査ではなく」、「母集団の代表となっているとは必ずしも言えないということを認識した上で、調査結果については、あくまで回答者の回答状況を示すにとどまるものとして取り扱っており」との説明を繰り返しているが、これまでの意見書で述べた通り、市政改革室は平成30年当時はこのような説明を行っておらず、マーケティング・リサーチツールを統計調査であるとして説明していた。そして、現在の回答のとおりなのであれば、そのようなデータがなぜ運営方針におけるアウトカム指標になり得るのかという根本的な疑義に対して一切説明することがない。この理由としては二つ考えることができる。すなわち、ひとつは関連文書を公開した場合に、行っていることの学問的誤謬を指摘されることを恐れて隠蔽している可能性。いま一つは実際に根拠文書を廃棄してしまったために、説明するために必要な根拠を確認することができず、説明不能な状態に陥っている可能性である。今回の公開請求の元となっているのは令和2年度の運営方針策定要領に関するものであるが、この年度までに根拠文書を廃棄したというのであれば、市政改革室は根拠を確認することなくこの年度の関連文書を作成したというのであろうか。いずれにせよ、廃棄したということが事実なのであれば、それにより公文書管理条例第1条に規定する目的を達成できなくなっているのであり、同条例違反は明白である。そして、先にあげた鶴見区の事例のように、区民の実態とかけ離れたデータで防災計画を云々することで区民に実害を与えかねないものであり、到底容認することができるものではない。市政改革室には説明責任が強く求められる。「文書がないから説明できない」などという事態は許されるはずがない。情報公開審査会においては「廃棄したから存在しない」で終わらせず、この点についても検討するよう強くお願いする。
10 令和7年8月27日付け意見書
・大阪市の情報公開条例解釈・運用の手引(令和7年6月版)の50ページには次の記載がある。
(2) 「公開請求に係る公文書を保有していない理由」欄
公文書不存在については、①当該公文書をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しない場合、②当該公文書は存在したが、保存年限が経過したために廃棄した場合、③文書等は存在するが、組織的に用いていないなど解釈上第2条第2項に規定する「公文書」に該当しない場合があり得る。
理由の記入にあたっては、上記の①②又は③のいずれに相当するのかが公開請求者に分かるように記入するだけでなく、公文書作成指針で示されているように、説明責任を果たす観点から、なぜ作成又は取得していないのかということについても、公開請求者に対して明確になるよう具体的に記入する。
ここでは単に①の記載のみではたりず、「なぜ作成または取得していないのか」ということについても説明しなければならない旨が記載されている。すなわち、文書が不存在であっても、事務の執行や説明責任の観点から問題は生じないということも併せて説明しなければならないということのはずである。
・市民局は答申において指摘や認定された内容を全く無視し、「条例第1条の目的に照らせば、実施機関においては、本市の説明責任を全うするため、区民アンケートを含む事務事業について、合理的かつ一貫性のある説明が求められていることを指摘しておく」と付言で指摘された内容についても全く顧みることなく、説明責任を放棄し、従前の対応を続けており、請求人は説明を求めた事項について全く説明されることなく放置されるという結果になっている。
・本年6月30日に、市政改革室に対する「6月27日付「回答」について、/これまで市民の声等としてお寄せいただいた内容と同じ趣旨でありますことから、過去、お答えした内容をご参照いただきますようお願いいたします。/市政改革室はこれまでマーケティングリサーチツールを「統計調査ではない」と説明してきました。/答申では次のとおり認定されています。/世論調査が統計調査であるという点に争いはなく、上記(2)の第1段階においては、(意識的かどうかはともかく)マーケティング・リサーチ関連文書に従って統計調査として区民アンケートが実施され、 実施された区民アンケートの結果からマーケティング・リサーチ関連文書が想定している統計学的に有意な数値が得られたと言える。/ここで情報公開審査会は、世論調査を含むマーケティングリサーチツールを明確に統計調査であると認定しておいます〔ママ〕。これまでの市政改革室の説明は嘘だったということであり、「過去、お答えした内容をご参照」しても嘘が明らかになるばかりではないですか。/また、市政改革室は市民の声の回答で区民(モニター)アンケートを過去との比較ができるものであるとの説明を行ってきましたが、これについても上記答申では次の認定がなされています。/令和3年度区民アンケートが実施された時点では、実施機関において、本件調査が統計調査ではないとの認識を有しており、また、実際になされた調査も統計調査ではなかったと認められる。そうであれば、事実として、本契約により得られた結果により、地域活動協議会の認知度向上に向けた支援の評価が可能であるとも、本契約により得られた結果により、「区同士の比較」、「経年でみる」が可能であるとも言うことができない。/市政改革室は区民(モニター)アンケートをマーケティングリサーチツールのひとつであるとしています。そして、マーケティングリサーチツールが統計調査ではないということであれば、情報公開審査会が認定するように、「過去との比較」ができるものではありません。/これもこれまでの説明が嘘だったということです。/答申でこれまでの市政改革室の説明が嘘だったということが明らかになったということであり、これに関してどういうことなのかとの説明を求めているのです。/「過去の回答を見ろ」では説明になっていませんよ。/真摯に回答してください。」との質問に対する市政改革室の7月14日の回答は、「令和7年6月30日にお寄せいただきましたお問い合わせにつきまして、これまで市民の声等としてお寄せいただいた内容と同じ趣旨でありますことから、過去、お答えした内容をご参照いただきますようお願いいたします。」というものであった。情報公開審査会答申(第539号)では、「世論調査が統計調査であるという点に争いはなく」、「マーケティング・リサーチ関連文書に従って統計調査として区民アンケートが実施され」などと認定されている。市政改革室は市民局同様、答申におけるこれらの指摘ないし認定を完全に無視して、これまでの「マーケティングリサーチツールは統計調査ではなく、母集団の推計を行うものでもない」との説明を継続している。情報公開審査会の「口頭意見陳述について」(令和7年7月23日付け大情審第28号)には「本審査会としてはお求めの文書は公開請求日時点で存在しなかったものと考えています。」と記載されている。仮にこのまま上記情報公開審査会答申(第536号、第539号)と同内容の答申が出された場合、市政改革室も市民局同様文書の不存在を盾(免罪符)として説明責任を果たすことなく請求棄却との裁定を行うことは明白である。
・原決定の不存在決定の理由は、「「記載例」に「区民モニターアンケートで『・・・・』と回答した割合○年度末までに□%以上」と記載した意図が確認できる文書及び「区民モニターアンケート」で「その状態を客観的に測定できるよう数値化した指標」の測定ができると考えた根拠が確認できる文書については、当該文書をそもそも作成していたかどうかが不明であり、作成していたとしても、平成27度以前であるため、保存年限(5年)が経過したために廃棄し、実際に存在しないため。」であり、ここには、情報公開条例解釈・運用の手引(令和7年6月版)の50ページに記載された「なぜ作成または取得していないのか」という理由などは記載されておらず、また、「廃棄した」との説明が事実なのであるとすれば、これに相当する「なぜ廃棄しても問題ないと判断したのか(なぜ運営方針策定要領の記載内容の根拠を説明する上で問題ないと判断したのか)といった理由などの記載はない。上記答申(第539号)には「条例上義務付けられたもの」とあるが、この決定はその理由の記載が条例上の義務に反する違法なものである。逆にこの「文書の不存在により説明責任を果たすうえで問題がない」との理由を記載できないという場合は、やはり廃棄により公文書管理条例の目的を達成できなくなってしまったということであり、同条例違反と言わざるを得ない。そして、この「根拠が示された文書」の廃棄が公文書管理条例第6条第6項などに違反した違法なものであるということは、令和7年7月30日付け意見書に記した通りである。
・上記でも述べたが、このまま情報公開審査会答申(第536号、第539号)と同内容の答申が出された場合、市政改革室は文書の不存在を盾(免罪符)にして、説明責任を放棄する対応を行うことは明らかである。「本市及び地方独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の市民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする」公文書管理条例や、「本市等の有するその諸活動を市民に説明する 責務が全うされるようにするとともに、市民の市政参加を推進し、市政に対する市民の理解と信頼の確保を図ることを目的とする」情報公開条例はいったい何のために存在しているのか。市民局のような対応がまかり通るのであれば、これらの条例は機能していないと言わざるを得ない。情報公開審査会は、一段と強い対応を行うことが求められている。
11 令和7年9月1日付け意見書
・情報公開審査会答申(令和6年1220日付け大情審答申第536号)に係る情報公開請求で請求人が問うていたのは、単に請求対象文書の有無にとどまらず、「行政説明の合理性」や「政策根拠の透明性」である。区民アンケートの制度設計や成果指標の妥当性など、区民アンケートを巡って行われていることに関する疑義は、行政のエビデンスベース評価の信頼性に直結する。情報公開審査会がこのような技術的・政策的な論点に対して、形式的な判断にとどまるならば、制度的な限界が露呈し、市民の知る権利に十分応えているとは言い難い状況となる。しかし、本答申では、情報公開審査会は実施機関の行政運営の内容にも踏み込んだ検討がなされており、また付言において実施機関に対してその説明責任を全うすることを促す記載がなされている。これは情報公開審査会が、実施機関の説明に合理的な疑問を抱いた結果であると考えられ、また、全国の審査会の答申の中でも稀有な事例であり、情報公開制度が市民による政策評価の手段となり得ることを示している。そして情報公開審査会がその橋渡し役として、行政の説明責任を補完する機能を果たすならば、制度の信頼性は大きく向上する。そして、この答申は情報公開審査会が「文書の有無を判断する機関」から、「行政の説明責任を検証する機関」へとその機能を大きく進化させるべきであるという問いを投げかけており、また、その可能性を感じさせるものとなっている。そして、実施機関(市民局)はこれまでの意見書でも述べた通り、この答申の内容を全く無視し、付言で促されているはずの説明責任を全く顧みることなくこれまでの説明を繰り返し、「説明責任の空白」が生じている。これは、上記の審査会が「説明責任の空白」に対応し、「行政の説明責任を検証する機関」へとその機能を大きく進化させる必要性を強く物語っている。
・市政改革室の原決定に記載された不存在理由は、「「記載例」に「区民モニターアンケートで『・・・・』と回答した割合○年度末までに□%以上」と記載した意図が確認できる文書及び「区民モニターアンケート」で「その状態を客観的に測定できるよう数値化した指標」の測定ができると考えた根拠が確認できる文書については、当該文書をそもそも作成していたかどうかが不明であり、作成していたとしても、平成27年度以前であるため、保存年限(5年)が経過したために廃棄し、実際に存在しないため。」であり、これについては令和7年8月27日付け意見書でも触れたが、情報公開審査会の「口頭意見陳述について」(令和7年7月23日付け大情審第28号)には「本審査会としてはお求めの文書は公開請求日時点で存在しなかったものと考えています。」と記載されている。仮に「文書が存在しないから非公開は妥当」というにとどまる答申が出された場合、「なぜ区民アンケートを用いた運営方針の評価が可能であるのか」という根本的な問いに対して、市政改革室の説明責任が全うされることはなく、市民の「知る権利」が保証されないという事態が解消されることはない。この点でも情報公開審査会がその機能を「行政の説明責任を検証する機関」へと進化させる必要性や、社会的要請が存在するものと判断される。
・上記を踏まえて、以下の点について情報公開審査会にお願いする。
(1) 説明責任の空白に対応するための方策
審査会規則や要綱に、「実施機関の説明が不十分な場合、審査会が補完的に検証する」旨を明記することで、役割の拡張を制度的に裏付ける。例えば、文書不存在であっても、情報公開審査会が「本来作成されるべき合理性があるか」を判断する枠組みを導入する。
(2) 答申における「制度的課題」の明示
文書不存在が妥当と判断された場合でも、情報公開審査会が答申の中で「説明責任の履行としては不十分」と明記することで、実施機関に改善を促す。(これは、単なる審査結果ではなく、制度運用へのフィードバックとして機能します。)
(3) 答申内容を行政評価に繋げる仕組みの導入
現状では、答申の内容をどのように行政運営に反映させるかについては実施機関に一任されてしまっている。答申内容を行政評価に有機的に連携させる仕組みを導入することで、情報公開審査会の機能を進化させ、今日情報公開審査会が求められている社会的要請を満足させることができるようなものにすることができるものと考えられる。
これらにより、情報公開審査会は単なる「文書の有無を判断する場」から、「行政の説明責任を監視・補完する場」へと進化できるはずである。
12 令和7年9月3日付け意見書
・情報公開制度は、行政の説明責任を制度的に担保するためのものであり、公文書管理条例第1条でも、「本市及び地方独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の市民に説明する責務が全うされるようにすること。」がその目的であるとされ、また、情報公開条例でも「本市等の有するその諸活動を市民に説明する責務が全うされるようにするとともに、市民の市政参加を推進し、市政に対する市民の理解と信頼の確保を図ること」がその目的であるとされている。そして、この目的が達成されるように、「情報公開条例解釈・運用の手引」では、条例第10条第3項に関して
2 理由の提示は、公開請求を拒否する処分の適法要件であり、本項により理由を提示すべきであるにもかかわらず、理由を提示していない場合又は提示された理由が抽象的、一般的なもので不十分である場合には、手続上瑕疵ある行政処分となるので、本項の趣旨にのっとった十分かつ明確な理由の提示をしなければならない。
(2) 「公開請求に係る公文書を保有していない理由」欄
公文書不存在については、①当該公文書をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しない場合、②当該公文書は存在したが、保存年限が経過したために廃棄した場合、③文書等は存在するが、組織的に用いていないなど解釈上第2条第2項に規定する「公文書」に該当しない場合があり得る。
理由の記入にあたっては、上記の①②又は③のいずれに相当するのかが公開請求者に分かるように記入するだけでなく、公文書作成指針で示されているように、説明責任を果たす観点から、なぜ作成又は取得していないのかということについても、公開請求者に対して明確になるよう具体的に記入する。
と記載されている。
つまり、不存在理由の記載が「抽象的、一般的なもので不十分」で「説明責任を果たす観点から、なぜ作成又は取得していないのかということについても、公開請求者に対して明確になるよう具体的」なものではない場合、手続的瑕疵により違法と評価される可能性があるということである。
これは、情報公開審査会答申(令和7年6月6日付け大情審答申第539号)で「理由の記載については、条例第10条第3項において、「実施機関は、前2項の規定により公開請求に係る公文書の全部又は一部を公開しないときは、公開請求者に対し、当該各項に規定する書面によりその理由を示さなければならない。」と規定されているとおり、条例上義務付けられたものであり、もとより、記載の理由は事実に基づく適切なものである必要がある。」と指摘されている通りである。本件は、情報公開制度の根幹である説明責任が制度的に空白(本意見書において「説明責任の空白」とは、実施機関が制度上求められる説明義務を果たせず、かつその履行能力や体制も欠いていることにより、市民が行政活動の根拠を理解できない状態をいう。)となっている典型例であり、情報公開審査会による制度的補完が不可欠である。本意見書は、実施機関による不存在決定の理由付記が制度趣旨に照らして不十分であること、また区民アンケートを巡る根拠の説明責任が果たされていないことを指摘し、情報公開審査会による制度的補完を求めるものである。
・これまでの市政改革室に関する意見書で述べている通り、市政改革室は過去の市民の声の回答では、区民アンケートを含む「マーケティングリサーチツール」の目的について、「母集団全体やセグメント毎の傾向の把握」などとし、母集団の推計がその目的であるとしていた。そして、関連文書である「アンケートの作業工程別ポイント!!アンケート方法を検討編」では、世論調査などの「アンケート調査」(マーケティングリサーチツール)を「標本調査」であるとし、標本誤差などの説明を行っている。また、「マーケティング・リサーチの手引き」の「4(2)既存の統計データの活用」ではマーケティングリサーチツールのデータを「統計データ」であるとしている。さらに、平成28年5月23日付けの「マーケティング・リサーチ実務担当者学習会」資料では、「世論調査結果による市民の現状①」として、世論調査に対して、区の広報紙を「毎月必ず読んでいる」、「ほとんど毎月読んでいる」と回答した割合が約30%であったことをもって、「市の最強ツールでさえ、1/3程度しか毎月閲覧されていない」、「【必要】や【重要】など、知っておいてほしい情報を確実に伝達する手段は持てていないのが現状である」との評価を行っている。また、この文書では「世論調査結果による市民の現状②」として、世論調査に対して、市のHPを「過去に利用したことがある」、「見たことがない」、「インターネットを利用しない」と回答した割合が90%を超えていることをもって、「70%以上が市のHPをほぼ閲覧していない」、「このことから、HPでの情報発信では周知を徹底することが難しいということを理解しておく必要がある」との評価を行っている。これらは明らかに世論調査の結果をもって母集団たる市民区民全体の状態を推計するものである。しかるに市政改革室は市民の声の回答などで「当室で実施していた世論調査につきましては、「母集団の代表となっているとは必ずしも言えないということを認識した上で、必要に応じて様々な関連情報を合わせて、施策・事業を進める上での総合的な判断を行う際に活用」していたもの」、「当室から情報公開審査会に対して「統計法に基づく統計調査ではない」と説明しております」などとしているが、この説明は市民局のものと全く同じである。なお、情報公開審査会答申(令和7年6月6日付け大情審答申第539号)では、「世論調査が統計調査であるという点に争いはなく」、「マーケティング・リサーチ関連文書に従って統計調査として区民アンケートが実施され、実施された区民アンケートの結果からマーケティング・リサーチ関連文書が想定している統計学的に有意な数値が得られたと言える」と認定され、市政改革室の説明は否定されている。また、平成29年度までの世論調査結果報告書には、「報告書を読む際の留意点」と題する統計学的説明があった。これは、市民局の令和元年度、令和2年度の報告書にあったものと全く同じものである。そして、市政改革室の担当者にこの記載の学問的根拠や記載内容の意味、標本誤差を求める式の係数が1.96になっている根拠などを質問しても全く説明することができなかった。そして、平成30年度の報告書からこの記載が削除されてしまったという経過も市民局と全く同じである。
・鶴見区の令和5年度区民アンケート報告書には「今回の調査結果は母集団値を推定するために必要な標本の代表性の検証が十分に行えていないため、標本誤差以外に大きな非標本誤差が発生している可能性が高く、本調査の結果を母比率の推定値として用いる場合にはこの点に留意する必要があります。」との記載があるが、この記載は区民アンケートの統計学的な限界を明示し、区民に対して注意喚起を行う姿勢を示すものであり、まさに説明責任の実践である。さらに、鶴見区は意思決定文書に統計学的な文献を引用し、説明責任を全うすることができるような形で区民アンケートを実施している。そして、これら文献を読み解き、「・区民アンケートの信頼性の向上のために、督促状の送付など回答率を向上させる取り組み/・区民アンケートの結果に基づく判断の信頼性の向上のために、母比率の検定などの統計学的手法の実践」等を行っており、組織として説明責任を果たす能力があることを示している。なお、鶴見区の報告書のこの記載を含む「調査結果の見方」の記載は市民局や市政改革室の報告書に記載されていた「報告書を読む際の留意点」とほぼ同一の内容である。異なっているのは、非標本誤差に関する言及があることである。なお、この鶴見区の区民アンケート報告書の記載と同様の記載は、阿倍野区、生野区、城東区などいくつかの区役所の報告書でも見られる。
・鶴見区が統計学的文献を読み解き、その内容を区民アンケートにおいて実践しているのに対して、市民局、市政改革室は報告書に記載している内容すら満足に説明できず、挙句「統計調査ではない」などとの主張を行うに至っている。上記で述べたように制度趣旨に反する説明責任の放棄である。このようなことになっている最も大きな要因は、鶴見区が統計学的文献を読み解き、区民アンケートにおいて実践するだけの素養を組織的に備えていた一方、市民局や市政改革室は説明責任を果たすための組織的能力形成が求められるにもかかわらず、現状ではその体制が整っていないものと思われる。統計学は今日、中学高校で履修するものになっているが、そのようになる前は大学の教養課程で履修するものであった。つまり、高校数学を修めていれば理解できるものなのであるが、高校数学で履修したことを忘れてしまっている状態で統計学を理解することはなかなか困難が伴うものであることは事実であろうと思われる。しかし、社会調査を業とする以上、統計学の理解は避けて通れないものであるところ、市民局や市政改革室は職員にそのような素養を身に着けさせる必要性すら認識できず、その結果として説明責任が全うできないという事態に陥っているものであると解される。つまり、市民局や市政改革室が説明責任を果たせないのは、その能力を欠いているということが根本的な原因であると考えられる。理論的批判に対して、どのように対処すべきなのかということを判断することすらできない状態であるということである。鶴見区が統計的限界を明示し、文献を引用して説明責任を果たしているのに対し、市民局や市政改革室は説明不能な状態に陥っており、説明責任の空白が構造的に固定化されている。また、市民局は直近の情報公開請求に対する不存在決定においても、原決定と同じく不存在理由を実質的に「当該公文書をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」としか記載しておらず、「解釈・運用の手引」で求められている記載を行っていない。これについて電話で担当者に「なぜ不存在理由が記載されていないのか」と確認したところ、「実際に作成されていないためである」との説明しか行うことはできなかった。このことからわかるのは、市民局が区民アンケートについて、「その結果が何らかの意味を持ち、比較が可能であることは説明するまでもなく自明である」と考えていることである。このように考えていることから、市民局は情報公開審査会答申における指摘は以下のように理解し、結果的に無視しているように見えるということである。
・各区の代表性が担保されていない結果に基づき、(意味のある)経年比較や目標達成評価ができるのかについて、実施機関において検討がなされたとは認められない。(第536号)
区民アンケートの結果に基づき「(意味のある)経年比較や目標達成評価ができる」ということは説明するまでもなく自明であり、検討がなされていないのは当然である。
・本契約により得られた結果により、地域活動協議会の認知度向上に向けた支援の評価が可能である」とは認められない。(第539号)
区民アンケートの結果に基づき「地域活動協議会の認知度向上に向けた支援の評価が可能である」ということは説明するまでもなく自明であり、審査会の判断は誤っている。
これらは鶴見区が区民アンケートの信頼性を向上させるための前提条件を正しく理解し、回答率の向上などに取り組んでいることとは対照的であり、市民局が区民アンケートの本質や前提条件に関する理解を欠き、その反射的結果として、請求対象文書が不存在である理由を説明できず、「説明責任の空白」が生じていることが分かる。そして仮に「不存在との原決定は妥当」というにとどまる答申が出された場合、市政改革室についても市民局と同様の対応になることは明らかである。そして、「説明責任の空白」が生じ、請求人はその空白に閉じ込められて何の説明も受けられないという事態になり、情報公開条例の理念は実現されないままということになる。
・上記のとおり、実施機関(市民局、市政改革室)の説明責任の履行能力には現状で限界があるのではないかとの疑義がある。このような事態に対応するため、情報公開審査会が制度的に補完する役割を果たしていただくようお願いする。このため、請求対象文書が不存在だということであれば、実施機関に対し原決定を取り消したうえで説明責任を果たせるだけの理由付記を行ったうえで再度決定を行わせるような対応を行ってもらいたい。理由付記の内容が決定を取り消すだけの法的根拠を欠くと判断される場合には、付言において、理由付記が不十分であることを指摘し、何らかの対応を行うよう勧告を行ってもらいたい。これにより、実施機関の説明責任が全うされるように措置していただくようにお願いする。実施機関の対応は、説明責任の空白を放置するものであり、情報公開制度や行政運営の信頼性を損なう結果となっている。情報公開審査会におかれては、この空白を埋める制度的補完を行っていただきたく、強くお願いするものである。
13 令和7年9月16日口頭意見陳述
・本陳述の目的は、原決定における説明責任の不履行と条例違反の可能性を明確に指摘し、情報公開審査会に対して制度的補完の役割を果たすよう強く求めることにある。
・情報公開審査会からの質問に対して、条例違反とする点については、請求した「根拠が確認できる文書」は、説明責任を果たすうえで必要な文書であったことは明らかであり、「運営方針策定要領」での記載が続く限り保管すべきものである。もっと言えば、「運営方針策定要領」を作成する際の意思決定文書と一緒に保管すべきものである。「根拠が示された文書」については運営方針策定要領の記載内容について説明責任を果たすうえで必要不可欠であり、公文書管理条例第6条第6項でいう「職務の遂行上必要があると認める」文書に該当するものである。それをただ単に「保管年限が経過した」との理由だけで廃棄することは公文書管理条例違反である。そして、原決定は「無いものはない」というにとどまっている。意見書にも記した「説明責任の空白」が生じており、条例の理念は形骸化している。この点も含め、「無いものはない」とするにとどまる決定は、条例や行政手続法に違反する可能性のあるものである。
・答申536号及び539号では、「不存在による非公開決定」が妥当とされたが、請求者は根拠や政策評価の妥当性に関する説明文書を求めていた。つまり、この公開請求では、単に文書の有無にとどまらず、「行政説明の合理性」や「政策根拠の透明性」が問われていたのである。情報公開審査会がこのような請求に対して「文書が存在しないから非公開は妥当」とするだけでは、市民の知る権利に十分応えているとは言い難い状況となる。しかし、この答申では行政運営の内容に踏み込んだ検討がなされている。その意味では市民の「知る権利」に応えようとする情報公開審査会の姿勢をうかがうことができる。また、これらの検討に係る記載内容から、情報公開審査会が実施機関の説明に対して合理的な疑義を有し、また、これらの説明が形式的で実質的内容を欠いていると判断したことも読み取れる。その結果として、この答申では「その調査結果は区民を代表するものとは言い得ないことから、「本契約により得られた結果により、地域活動協議会の認知度向上に向けた支援の評価が可能であるとは認められない。」などの認定がなされている。そして付言では「条例第1条の目的に照らせば、実施機関においては、本市の説明責任を全うするため、区民アンケートを含む事務事業について、合理的かつ一貫性のある説明が求められていることを指摘しておく」とも述べられている。しかし、意見書でも述べたように実施機関はこれらを全く無視して、「合理的かつ一貫性のある説明」を行うことなく従来の実質的な内容がない説明を続けており、請求者の提示した疑義は全く説明されないままである。このような状態は、まさに「説明責任の空白」であり、制度的な信頼性を損なうものである。区民アンケートの制度設計や成果指標の妥当性に関する疑義は、行政のエビデンスベースでの評価の信頼性に直結する。情報公開審査会がこのような技術的・政策的な論点に対して、形式的な判断にとどまるならば、制度的な限界が露呈する。情報公開審査会がエビデンスベースでの妥当性や政策評価の根拠に対して、より積極的に検証する役割を担うべきである。大阪市情報公開条例では「市民の市政参加を推進し、市政に対する市民の理解と信頼の確保を図ること」もその目的であるとされている。この答申は、情報公開制度が市民の市政参加を促し、市民による政策評価の手段となり得ることを示している。情報公開審査会がその橋渡し役として、行政の説明責任を補完する機能を果たすならば、制度の信頼性は大きく向上する。これらの答申は、情報公開審査会が実施機関の説明の合理性や妥当性を検証するという役割を果たし、「文書の有無を判断する機関」にとどまることなく、「行政の説明責任を検証する機関」へと進化すべきであるという問いを投げかけているものと思われる。
・仮に請求対象文書が不存在である場合について述べる。上記の議論は、市政改革室が行った原決定にも全く同じことが言える。意見書でも述べた通り、市政改革室は原決定において「無いものはない」というにとどまる不存在理由しか示していない。これでは実施機関の説明責任は全く果たされず、冒頭で述べた通り条例の理念は形骸化してしまっている。「保存年限が過ぎたため廃棄した」という説明は、事務処理の結果を述べるに過ぎず、なぜその文書が保存されるべきではなかったのか、なぜ延長されなかったのかという判断の妥当性が不明である。このような説明では、情報公開条例第1条に定める『市民に説明する責務の全う』という制度目的と整合せず、市民が行政運営の妥当性を理解することができない。この「形骸化」に対応する手段として、情報公開審査会から次の事項について市政改革室に質していただくようお願いする。
原決定の理由付記には「情報公開条例解釈・運用の手引」にある「公文書作成指針で示されているように、説明責任を果たす観点から、なぜ作成又は取得していないのかということについても、公開請求者に対して明確になるよう具体的に記入する。」との記載の「なぜ作成又は取得していないのか」に相当する記載がないが、これはなぜか。
原決定の理由付記には「当該文書をそもそも作成していたかどうかが不明」とある。仮に作成していなかったのだとすれば、上記の「なぜ作成していないのか」という点は明確にしなければならないが、この点に係る記載はない。これはなぜか。
原決定では「当該文書をそもそも作成していたかどうかが不明であり、作成していたとしても、(略)廃棄し、実際に存在しない」とされ、請求対象文書は不存在であるとされているが、この文書が不存在であっても運営方針策定要領の記載内容に関する説明責任を果たすうえで問題がないとする理由は何か。
・請求人は不存在理由には、例えば「法律には〇〇であることが規定されている。これにより△△であることは説明するまでもなく自明であるので、あえて△△であることを説明する文書を作成する必要はないと判断して作成していない」などと具体的に記載する必要があると考えている。このような理由を明らかにするよう、実施機関に対して質してもらいたい。市政改革室は「比較可能である」と言い続ける一方、その根拠は全く説明しない。これは、説明の根拠を持ち合わせていないためであると考えられるが、その場合「なぜ作成していないのか」の理由は「根拠が存在しないため」というものであるはずである。市政改革室は情報公開審査会答申第536号を受けて、各所属への通知を出し、「区民アンケートを運営方針の評価に用いることは望ましくない」としている。これは区民アンケートを運営方針の指標に用いることの合理性や妥当性を説明できない結果であると認められ、同時に、「比較ができる」などの説明にも根拠がなかったことを示しており、これは「文書を廃棄した」ことが原因であると考えられる。情報公開審査会としては、文書が存在しないために説明責任を果たせないようなことになっていることは容認できないとの姿勢を示すべきである。
・鶴見区が行っているように、あるべき姿としては、区民アンケートを説明責任を果たせるような形で、社会調査として適切に行うように努力すべきである。市政改革室のこの通知は、このような努力を放棄し、総務省が進める「地方自治体におけるEBPMの推進」からの乖離が懸念され、この意味で「住民の福祉の増進」に反しており、地方自治法の趣旨に照らして問題があると考えられる。情報公開審査会の姿勢は、市行政をあらぬ方向に進まないようにするうえでも重要である。市民局と同様、市政改革室は説明責任履行能力を欠いている。実施機関の説明責任の履行能力に疑義がある場合、情報公開審査会が制度的に補完する役割を果たすことが求められる。原決定の取消しと、再度の決定において説明責任を果たすよう勧告していただくよう強くお願いする。
・AIも市民局が作成した「代表性検証シート」や福島区、西淀川区、此花区の市民の声の回答等について問題を指摘している。
・本陳述及び請求人が行う一連の情報公開請求が、「説明責任の実質の確保」「市民参加の実質化」を促し、区民アンケートの制度改善がなされ、市民の声が施策事業の立案や表に活かされ、行政運営が市民に寄り添うものとなる契機となることを、心より願っている。
・職員の能力不足が説明責任の欠如の原因である。
・(本件請求文書を実施機関が過去保有していたことを立証する資料はあるかとの質問に対して)そのような資料はないが、平成14年から平成17年までは、学問的根拠をもって調査を行っていた。
・大阪府は、大阪府行政文書管理規則第13条第1項で、「経緯も含めた意思決定に至る過程並びに事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう」文書の作成を義務付けているが、大阪市では指針で定めているだけで、明文化されていないだけである。
・文書が失われているのであれば、それでどうやって説明責任を果たすのか理由付記で記載すべきである。
14 令和7年1014日付け意見書(実施機関の令和7年10月2日付け意見書(下記第4、3)に対する反論)
・「根拠が確認できる文書については、見当たらなかった」との記載について、実施機関の文書の探索が不十分であることは明らかである。以下、その根拠を示す。
A) 意思決定過程文書は、当該決裁文書と同じ簿冊に編綴されるはず
請求対象文書である根拠記載文書は、この根拠が存在しなければ、運営方針策定要領に「区民モニターアンケートで『・・・・』と回答した割合〇年度末までに□%以上」などとの記載が行われるはずもなかったということに考え見れば、これは「意思決定過程文書」にほかならず、公文書管理条例第4条で作成が義務付けられているものであり、不存在であるはずがない。そして、この意思決定過程文書の保管方法については、「説明責任を果たすための公文書作成指針」において、「意思決定の決裁文書が綴じられている簿冊に編集することを基本とする。/決裁文書が綴じられでいる簿冊とは別に編集する場合には、決裁文書との関係を明確にし、また、決裁文書の保存期間が満了するまでは保存を要するため、保存期間の満了時期が決裁文書と同じになるように編集すること。」と定められている。つまり、根拠記載文書は、運営方針策定要領を策定する際の意思決定文書と同じ簿冊に編綴されているはずである。そして、運営方針策定要領のこの記載は令和4年度のものまである。請求日時点で不存在であるはずはない。
B) 根拠記載文書がないままに運営方針策定要領を策定していたとの説明は不自然であることについて
根拠記載文書が存在しないということなのであれば、根拠を確認しないまま運営方針策定要領を策定していたということであり、これは合理性を欠いている。
C)  世論調査報告書に記載されていた標本誤差を求める式を修正する際の決裁文書について
平成29年度世論調査結果報告書について、当初大阪市Webページに掲載された際には、標本誤差を求める式が誤って記載されていた。この誤りを指摘したところ、正しい式に修正されたが、この修正に係る決裁文書の公開請求をしたところ、標本誤差に係る説明資料(市政改革室の平成3012月7日付け決裁文書「世論調査結果の表記事項修正に係るホームページ掲載データの更新について」の添付文書)が公開された。当該資料には、「信頼水準95%(λ=l.96))や標準正規分布表などが根拠として記載されているが、これらの記載の理論的根拠こそが、「マーケティング・リサーチの手引き」で区民アンケートの結果を「〇〇である区民の割合」であるとし、運営方針策定要領に「区民モニターアンケートで『・・・・』と回答した割合〇年度末までに□%以上」と記載した根拠である。各区の区民(モニター)アンケート、区民意識調査は世論調査と同じ手法で行われている。そして、これらの調査によって得られた標本比率が、上記の根拠をもって母比率(「〇〇である区民の割合」)の推定値となっていることを基に、運営方針策定要領のアウトカム指標の記載例「区民モニターアンケートで『・・・・』と回答した割合〇年度末までに□%以上」が成立しているのであり、まさに当該文書こそがこの記載の根拠となる文書であり、請求対象文書である。
市政改革室は、なぜここで正規分布表が登場するのかなどについて全く説明できない。つまり、統計学に関する理解を全く欠いており、自ら作成した文書の内容すら説明責任を果たしているとは言えない状態である。その結果、市政改革室は請求対象文書を正しく判別する能力を欠いているのであり、これでは文書の特定を適切に行えるはずがない。そして、これこそが口頭意見陳述で述べた「能力不足による説明責任の不履行」である。
・(2)「文書の保存年限については…」以下の記載で、市政改革室は文書の保存年限などについて説明を行っているが、市政改革室は文書を特定することなく保存年限などについて述べている。つまり、ここで説明されている文書の保存年限も、編綴される簿冊も実施機関の推定に過ぎない。廃棄したとするためには文書が特定されていなければならないはずであり、ここでも市政改革室の文書の特定は不十分である。
・繰り返しになるが、諮問庁意見書にあるように「そこ(平成29年)まで遡って確認したが、当該文言を記載した意図が確認できる文書及び「区民モニターアンケート」で「その状態を客観的に測定できるよう数値化した指標」の測定ができると考えた根拠が確認できる文書については、見当たらなかった。」ということなのであれば、根拠を確認することなく運営方針策定要領の記載を行っていたということになるのであり、これは極めて不自然である。上記で述べた通り、市政改革室は統計学に関する理解を全く欠いていた状態であったので、運営方針策定要領の記載内容やその根拠に関する理解を欠いたまま漫然と従前の記載を引き継いでいたということも考えられるが、これでは説明責任が果たせるはずもない。上記のとおり「能力不足による説明責任の不履行」である。
・以上のとおり、諮問庁意見書における文書不存在の説明は合理性を欠く。審査会におかれては、「・原決定を取り消し、改めて特定を行うこと/・真に不存在なのであれば、適切な不存在理由を付すこと」との答申を行うことについて検討をお願い申し上げる。
15 令和7年1017日付け意見書(令和7年1014日付け意見書の補足)
・公開請求の趣旨は、運営方針のアウトカム指標の測定方法としで区民(モニター)アンケートを用いることとした意図や根拠について説明を求めるものであるが、弁明書にも諮問庁意見書にもこの説明に係る記載は一切ない。
・情報公開条例やそれを受けて作成された情報公開条例解釈・運用の手引では、情報公開制度の目的は「本市等の有するその諸活動を市民に説明する責務が全うされるようにする」ことであるとされているが、市政改革室は、原決定の不存在理由、弁明書、諮問庁意見書のいずれにおいても公開請求で求めた「運営方針のアウトカム指標の測定方法として区民(モニター)アンケートを用いることとした意図や根拠」に関する説明を一切行っていない。
・情報公開審査会答申(令和6年1220日付け大情審答申第536号及び令和7年6月6日付け大情審答申第539号)においては、実施機関の行政運営に踏み込んだ検討がなされた。この点については評価できるものと考えている。しかし、結論において「大阪市長が行った不存在による非公開決定は、結論において妥当である。」とされ、「審査会の判断」の中で示された数々の指摘や認定については、「付言」において言及があったものの事実上放置されてしまったこと、また、実施機関が「付言」での言及やこれら数々の指摘や認定を無視して従来の説明を続けていることから、情報公開制度の目的、すなわち「本市等の有するその諸活動を市民に説明する責務が全うされるようにする」ことは全く全うされていない。このようなことになってしまった原因は、争点を「文書の有無」としてしまい、情報公開制度の目的が達成されているのかどうかという点がかすんでしまったことにあると考えられる。
・本件において実施機関は、請求対象文書の不存在を主張するのみで、制度運用の根拠や意図についての説明を一切行っていない。これは単なる文書管理上の問題ではなく、情報公開制度の目的である「市民に対する説明責任の履行」が果たされていないことを意味する。さらに、これまでの意見書で述べたとおり、実施機関は統計的手法や測定指標の妥当性についての理解を欠いており、区民アンケートをアウトカム指標として用いることの理論的根拠を説明できない状態にある。これは、制度設計に関する専門的知見の不足によって、説明責任そのものが履行不能となっている「能力不足による説明責任の不履行」であると考える。このような状況は、情報公開審査会が過去の答申(第536号、第539号)において付言等で指摘した「制度運用の透明性」「説明責任の履行の不十分さ」とも深く関係している。審査会がこれらの答申で示した問題意識は、本件請求が照らし出そうとしている制度的課題と地続きであり、実施機関がこれらの指摘を顧みず、従前の形式的説明を繰り返すことは、情報公開制度の理念を形骸化させ、市民から行政運営を検証する機会を奪い、市民の市政参加を阻害するものであり、情報公開制度の理念を根底から空洞化させるものである。以上を踏まえ、情報公開審査会におかれては、実施機関が制度運用の根拠を説明できる能力を有しているかどうか、またその説明責任が制度的に果たされているかどうかという観点も含めて、本件審査請求をご検討いただくようお願いする。

 第4 実施機関の主張
 実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。
1 弁明の趣旨
 本件決定は条例に則った適正なものである。
2 弁明の理由(弁明書)
(1) 本件決定の理由について
・審査請求人は「運営方針策定要領において、「記載例」に「区民モニターアンケートで『・・・・』と回答した割合年度末までに%以上」と記載した意図が確認できる文書」や「『区民モニターアンケート』で『その状態を客観的に測定できるよう数値化した指標』の測定ができると考えた根拠が確認できる文書」を求めているが、令和4年2月9日付け大市第40号による「不存在による非公開決定通知書」に記載したとおり、当該文書を作成していたとしても平成27年度以前であり、保存年限(5年)が経過したために廃棄している。
・なお、区民(モニター)アンケートは、実施所属において経費等を考慮するなど現実的な方法で実施しているため、比較的容易に結果を入手できること、同一の方法で経年実施していれば一般に過去との結果比較が可能であること、また、一般に測定側の主観が入り込まない回答を得られることと考えられるため、アウトカム指標を設定する際に留意すべき点を一定満たすものであると認識している。また、アウトカム指標が既存データにより把握できない場合は、例えばアンケート調査等により区民・市民の意識等を測定することが考えられるため、当該所属が検討のうえ、区民(モニター)アンケートの結果を用いると判断することについては特段問題ないと認識している。このことから、「運営方針策定要領」に、アウトカム指標の一例として区民(モニター)アンケート結果を記載している。
・また、審査請求人は、令和4年2月15日付け審査請求書の中で、此花区役所の区民アンケート結果報告書及び各区の区民アンケートについて述べているが、市政改革室から区役所に対して世論調査をベースに区民(モニター)アンケートを実施するよう依頼した記録は存在しない。
(2) 審査請求人に対する反論について
・審査請求人は、当該請求文書を廃棄していることについて「公文書作成指針違反」と指摘しているが、処分庁は、当該文書を作成していたとしても、公文書作成指針に基づき適切に管理・廃棄を行っていたものと認識している。
3 令和7年10月2日付け意見書
・(審査会からの「実施機関は、本件請求に係る公文書を保有していない理由について、「「記載例」に「区民モニターアンケートで『・・・・』と回答した割合〇年度末までに□%以上」と記載した意図が確認できる文書及び「区民モニターアンケート」で「その状態を客観的に測定できるよう数値化した指標」の測定ができると考えた根拠が確認できる文書については、当該文書をそもそも作成していたかどうかが不明であり、作成していたとしても、平成27年度以前であるため、保存年限(5年)が経過したために廃棄し、実際に存在しないため。」と記載していますが、なぜ、令和2年度運営方針策定要領に係る記載根拠文書が、仮に記載されているとしても平成27年度以前の文書となるのかについて、具体的にご説明ください。」との質問に対して)令和2年度運営方針策定要領において、「記載例」に「区民モニターアンケートで『・・・・』と回答した割合〇年度末までに□%以上」と記載しているが、それ以前の年度の策定要領でも当該文言を記載しており、諮問書を作成した時点で確認できる限り、平成28年度に策定した平成29年度運営方針策定要領でも当該文言を記載していた。そこまで遡って確認したが、当該文言を記載した意図が確認できる文書及び「区民モニターアンケート」で「その状態を客観的に測定できるよう数値化した指標」の測定ができると考えた根拠が確認できる文書については、見当たらなかった。文書の保存年限については、令和3年度に公文書公開請求があり、その場合はその時点から起算して5年前の平成28年度以降の文書は保存対象となるものの、平成27年度以前の文書については、保存年限(5年)が経過したために廃棄し、実際に存在しない状況であった。よって、令和2年度運営方針策定要領に係る記載根拠文書は、仮に記載されているとしても平成27年度以前の文書となるものである。

第5 審査会の判断
1 基本的な考え方
 条例の基本的な理念は、第1条が定めるように、市民の公文書の公開を求める具体的な権利を保障することによって、本市等の説明責務を全うし、もって市民の市政参加を推進し、市政に対する市民の理解と信頼の確保を図ることにある。したがって、条例の解釈及び運用は、第3条が明記するように、公文書の公開を請求する市民の権利を十分尊重する見地から行われなければならない。
2 争点
 審査請求人は、本件決定に付された理由が不十分であると主張するとともに、本件請求文書が存在するはずであると主張している。
 したがって、本件審査請求の争点は、理由付記に違法又は不当な点があるか否か(以下「争点1」という。)と、本件請求において公開を求めている公文書の存否(以下「争点2」という。)である。
3 争点1について
 大阪市行政手続条例(平成7年条例第10号)第8条第1項は、「行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。」と規定し、同条例の特則と位置づけられる条例第10条第3項は、「実施機関は、前2項の規定により公開請求に係る公文書の全部又は一部を公開しないときは、公開請求者に対し、当該各項に規定する書面によりその理由を示さなければならない。この場合において、当該理由の提示は、公開しないこととする根拠規定及び当該規定を適用する根拠が、当該書面の記載自体から理解され得るものでなければならない。」と規定しているところである。
 ここで、どの程度の理由の記載が必要かであるが、審査請求人も主張するように、情報公開条例解釈・運用の手引(令和7年6月版)において、「公文書不存在については、①当該公文書をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しない場合、②当該公文書は存在したが、保存年限が経過したために廃棄した場合、③文書等は存在するが、組織的に用いていないなど解釈上第2条第2項に規定する「公文書」に該当しない場合があり得る。/理由の記入にあたっては、上記の①②又は③のいずれに相当するのかが公開請求者に分かるように記入するだけでなく、公文書作成指針で示されているように、説明責任を果たす観点から、なぜ作成又は取得していないのかということについても、公開請求者に対して明確になるよう具体的に記入する。」と記載されており、この程度の記載があれば、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えていると言えることから(最高裁昭和36年(オ)第84号同38年5月31日第二小法廷判決・民集174617頁参照)、審査会としても、同手引に記載された程度の理由さえ記載されていれば、違法・不当とはならないと考える。
 これを本件について見ると、本件決定においては、「「記載例」に「区民モニターアンケートで『・・・・』と回答した割合〇年度末までに□%以上」と記載した意図が確認できる文書及び「区民モニターアンケート」で「その状態を客観的に測定できるよう数値化した指標」の測定ができると考えた根拠が確認できる文書については、当該文書をそもそも作成していたかどうかが不明であり、作成していたとしても、平成27年度以前であるため、保存年限(5年)が経過したために廃棄し、実際に存在しないため。」との理由が示されており、上記情報公開条例解釈・運用の手引(令和7年6月版)の分類でいうと、①当該公文書をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しない場合と②当該公文書は存在したが、保存年限が経過したために廃棄した場合をあわせた記載であると認められる。
 そこで、次に、このような記載が認められるかが問題となるが、例えば、保存年限が経過した過去のある事業の実施理由については、当該事業の実施決裁文書に記載されていた可能性は高いが、もはやその決裁文書自体が保存年限経過のため廃棄されており、当該公文書が作成されていたか否かが不明ということも十分ありうることである。
 このような場合、本件決定に付されたような理由とならざるを得ず、またそれで必要十分と認められる。
 よって、本件理由付記に違法又は不当な点は認められない。
 この点、審査請求人は、文書を廃棄したのであれば、それでどうやって説明責任を果たすのかについても処分理由として記載すべきである旨主張するが、ここで問題となるのは、本件決定(本件では請求文書が不存在であること)の理由であり、「不存在」の理由が明らかであれば、事足りるものである。
 なお、下記4、(3)に記載のとおり、本件決定の理由中の「作成していたとしても、平成27年度以前であるため」との部分については、なぜ、令和2年度運営方針策定要領に係る記載根拠文書が、仮に記載されているとしても平成27年度以前の文書となるのかが一読して不明確であることから、違法・不当とまでは言えないものの、より詳細に記載することが望ましい点申し添えておく。
4 争点2について
(1) 審査請求人が公開を求めている文書について
 第2、1に記載のとおり、以下の2件の文書である。
・令和2年度運営方針策定要領の「記載例」に「区民モニターアンケートで『・・・・』と回答した割合年度末までに□%以上」と記載した意図が確認できる文書(以下「公開請求1」という。)
・「区民モニターアンケート」で「その状態を客観的に測定できるよう数値化した指標」の測定ができると考えた根拠が確認できる文書(以下「公開請求2」という。)
(2) 令和2年度運営方針策定要領について
 市政改革室マネジメント改革担当が作成した運営方針の手引き(平成30年9月版)によれば、「運営方針は、企業活動などで使われる「戦略計画」(経営戦略)の考え方を行政に取り入れたもので、成果を常に意識して取組の有効性をチェックし、改善や新たな展開につなげるPDCAサイクルの徹底を狙いとしています(市政改革プラン2.0【中間見直し版】・69頁)。/戦略計画とは、/・部門ごとに、自らのミッション(使命・役割)を認識したうえで、/・現状分析や将来予測などを踏まえ、めざすべき状態の実現に向けて解決すべき課題が何かを明らかにし、/・課題を解決するための効果的な方策を練り、/・その方策に即した具体的な行動を明らかにする/という計画で、/・事業の実施によってめざす成果(状態の変化)の目標を測定可能な指標を用いて設定し、定期的に測定することで、達成状況をチェックし、フィードバックすること/を前提にしています。/事業が実施できたかどうかではなく、課題の解決に有効だったか(成果があったか)どうかを、評価するためには、このような戦略計画が必要になります。それが運営方針です。」とのことである。
 当該運営方針を各所属が策定するための要領が運営方針策定要領であり、その令和2年度版には、運営方針策定のための各様式が示されており、「(2)重点的に取り組む主な経営課題(様式2)」の「⑥-2 アウトカム(成果)指標」欄では、審査請求人が指摘する「めざす状態を客観的に測定できるよう数値化した成果指標として、目標年次とともに記載してください。」との記載があり、記載例では、「区民モニターアンケートで『・・・・』と回答した割合○年度末までに□%以上」との記載も認められる。
(3) 本件決定の理由について
 ここで、まず、本件決定に付された理由のうち、「作成していたとしても、平成27年度以前であるため」との点について、なぜ、令和2年度運営方針策定要領に係る記載根拠文書が、仮に記載されているとしても平成27年度以前の文書となるのかについて、実施機関に意見書の提出を求め確認したところ、「令和2年度運営方針策定要領において、「記載例」に「区民モニターアンケートで『・・・・』と回答した割合〇年度末までに□%以上」と記載しているが、それ以前の年度の策定要領でも当該文言を記載しており、諮問書を作成した時点で確認できる限り、平成28年度に策定した平成29年度運営方針策定要領でも当該文言を記載していた。そこまで遡って確認したが、当該文言を記載した意図が確認できる文書及び「区民モニターアンケート」で「その状態を客観的に測定できるよう数値化した指標」の測定ができると考えた根拠が確認できる文書については、見当たらなかった。文書の保存年限については、令和3年度に公文書公開請求があり、その場合はその時点から起算して5年前の平成28年度以降の文書は保存対象となるものの、平成27年度以前の文書については、保存年限(5年)が経過したために廃棄し、実際に存在しない状況であった。よって、令和2年度運営方針策定要領に係る記載根拠文書は、仮に記載されているとしても平成27年度以前の文書となるものである。」とのことであった。
 要するに、審査請求人が求めている意図や根拠が確認できる文書については、(それがいつかは不明であるが)「記載例」に「区民モニターアンケートで『・・・・』と回答した割合〇年度末までに□%以上」と記載した最初の年度の運営方針策定要領に係る決裁では記載があったかもしれないが、平成28年度以降は、運営方針評価を区民アンケートを用いて行うことや、また、なぜそれが可能であるかを認識せず、(その当否はともかく)前例踏襲的に決裁がされていたものと認められる。
 そうであれば、本件請求時点において、審査請求人の求める公文書が不存在であるとの実施機関の説明に、不自然・不合理な点はないと考える。
(4) 公開請求1及び2について
 実施機関によれば、公開請求1及び2ともに、「当該文書をそもそも作成していたかどうかが不明であり、作成していたとしても、平成27年度以前であるため、保存年限(5年)が経過しているために廃棄し、実際に存在しないため」不存在とのことであり、「作成していたとしても、平成27年度以前である」理由は、上記(3)のとおりである。
 そこで、条例第23条第4項に基づき、実施機関に対し質問権を行使し、仮に当該公文書を作成していた場合の編集簿冊名及び当該簿冊に編集した理由を確認したところ、簿冊名は「行政評価関係簿冊(平成2227年度)」とのことであり、その理由は、大阪市公文書管理条例第6条第3項に基づき、別表保存期間「5年」の「5 事務管理及び改善に関するもの」と整理していたためとのことであった。
 また、大阪市公文書管理条例施行規則(平成18年規則第65号)の第6条第1項に、「本市の機関は、条例第8条第1項の規定により公文書(保存期間が1年未満のものを除く。以下この項において同じ。)を廃棄するときは、当該公文書を編集した簿冊の名称、当該簿冊に最初に公文書が編集された年度(当該簿冊が暦年により編集されたものである場合は暦年)、当該簿冊に編集された公文書に係る前条第1項の公文書の完結日のうち最も遅い日の属する年度(当該簿冊が暦年により編集されたものである場合は暦年)、当該簿冊に係る次条第3項及び第4項の規定による公文書の管理に係る単位の名称その他の廃棄する公文書を編集した簿冊を特定するために必要と認める項目を記録した目録を作成しなければならない。」との規定があることから、廃棄の有無を確認するため、当該(廃棄簿冊)目録の提出を求め、審査会において確認したところ、廃棄した簿冊の名称として「行政評価関係書類」(平成22年度から平成27年度までの分)の記録があり、当該簿冊が実施機関の主張どおり廃棄されていることが確認できた。
 あわせて、審査会において、運営方針関係文書がどの簿冊に編集されているのかを公文書検索システムで確認したところ、「令和2年度運営方針等の策定について(通知)」は、簿冊名称「行政評価関係書類」・保存期間「5年」の簿冊に編集されており、それ以前の年度の運営方針関係文書も、当該簿冊に編集されていたことが推認されるところである。
 以上を踏まえれば、本件請求時点で本件請求文書が存在しなかったことに不自然・不合理な点はなく、実施機関による「不存在」との決定は妥当である。
 本件決定に対する審査会の判断は以上であるが、審査請求人が主張するように、編集すべき簿冊が誤っており本来の保存年限前に公文書が廃棄されていたり、編集すべき簿冊は誤っていなくても延長手続をすべきであるにもかかわらず行わなかった結果本来残しておくべき文書を廃棄したりということになれば、条例第1条の「本市等の有するその諸活動を市民に説明する責務が全うされるようにする」との目的が達成されないことになるから、以下、公文書の編集及び保存が適切であったか否かについて検討する。
5 編集簿冊が適切であったか否かについて
 大阪市公文書管理条例(平成18年条例第15号)第6条第1項は、「本市の機関は、前条第2項の規定により定める基準に従い、市規則(議長にあっては、その定める規程。以下この章において同じ。)で定めるところにより、公文書(法人公文書及び特定歴史公文書等を除く。以下この章において同じ。)を簿冊(相互に密接な関連を有し、保存期間を同じくすることが適当である公文書の集合物をいう。以下同じ。)に編集しなければならない。」と規定し、同条第3項は、「公文書の保存期間は、別表の左欄に掲げる公文書の区分に応じ、同表の右欄に定める期間とする。」と規定している。
 本件で、実施機関は、本件請求文書を編集する簿冊について、別表の保存期間「5年」の「5 事務管理及び改善に関するもの」と整理していたとのことであるが、本件請求文書の内容は事務管理に関するものと言えることから、当該区分としたことに不合理な点は認められない。
 なお、審査会において、より長期の「10年」及び「30年」の区分内容を確認したところ、当該区分中に本件請求文書が当てはまるような項目は認められなかった。
 この点、審査請求人は、審査請求書において、現行の要領に記載がある以上、その記載の根拠は「決裁文書の保存期間が満了するまでは保存を要するため、保存期間の満了時期が決裁文書と同じになるように編集すること。」とする公文書作成指針違反である旨主張する。
 当該主張については、説明責任を果たすための公文書作成指針(最近改正 平成27年4月)の「2 作成、保存管理を特に徹底すべき公文書の具体例」の「会議録等(会議録、会議要旨)」の「(4) 保存方法」の「意思決定の決裁文書が綴じられている簿冊に編集することを基本とする。/決裁文書が綴じられている簿冊とは別に編集する場合には、決裁文書との関係を明確にし、また、決裁文書の保存期間が満了するまでは保存を要するため、保存期間の満了時期が決裁文書と同じになるように編集すること。」との部分を指していると思われる。
 そうであれば、審査請求人指摘部分は、会議等を経て意思決定がなされた場合に、当該会議録等を意思決定の決裁文書と同じ簿冊に編集することを示すものであり、会議録等に該当しない公文書の保存期間が問題となる本件とは事案が異なるものである。
 以上より、実施機関が本件請求文書を保存期間5年の「行政評価関係書類」簿冊に編集した点について、不適切な点は認められない。
6 編集簿冊が適切であったとして延長しなかったことが適切であったか否かについて
 大阪市公文書管理条例第6条第6項は、「本市の機関は、保存期間が満了した公文書について、職務の遂行上必要があると認めるときは、一定の期間を定めて当該保存期間を延長するものとする。この場合において、当該延長に係る保存期間が満了した後なお職務の遂行上当該公文書を保存する必要があると認めるときも、同様とする。」と規定している。
 また、本件請求日時点である令和4年1月26日に施行されていた令和4年1212日達第28号による改正前の大阪市公文書管理規程(平成13年達第9号)第38条第1項は、「保存期間が満了する公文書のうち次の各号に掲げるものは、条例第6条第6項の規定により保存期間を延長するものとする。/(1) 現に監査、検査等の対象になっているもの/(2) 現に係属している訴訟における手続上の行為をするために必要なもの/(3) 現に係属している不服申立てにおける手続上の行為をするために必要なもの(不服申立てに対する裁決又は決定の日の翌日から起算して1年を経過していないものを含む。)/(4) 大阪市情報公開条例(平成13年大阪市条例第3号)第10条第1項若しくは第2項又は大阪市個人情報保護条例(平成7年大阪市条例第11号)第23条第1項若しくは第2項、第32条各項若しくは第40条各項の決定の日の翌日から起算して1年を経過していないもの/(5) 前各号に掲げるもののほか、主管課長が職務の遂行上なお保管の必要があると認めるもの」と規定している。
 ここで、上記の第1号から第4号までについては、本件請求文書には当てはまらないと認められる。そこで、第5号の適用が問題となるが、公文書の保存期間を延長するか否かは、職務遂行上の必要性によって決まるものであり、実施機関に広範な裁量が認められるところである。
 この点、審査請求人に対し、どういった理由で、本件請求日時点において公文書管理条例違反であると考えるのかを確認したところ、その回答は、実施機関が審査請求人の求める根拠について説明できない状況に現在陥っており、大阪市公文書管理条例第1条に反するとのことであった。
 当該主張については、現在実施機関が根拠を説明できない状況に陥っている点について説明責任の観点から問題となり得るかもしれないが(大阪市職員基本条例(平成24年条例第71号)第4条第4項参照)、当時公文書の保存期間を延長しなかったことの違法性又は不当性に直結しないと考える。
 というのも、公文書の保管については、当然に保管スペースの問題が生じるのであり、たとえ当該事業が依然として継続していたとしても、その根拠文書をすべからく保管しておくことは現実的ではないと言えるからである。
 また、だからこそ、大阪市公文書管理条例第8条第1項は、「本市の機関は、保存期間が満了した公文書については、市規則で定めるところにより、適正に廃棄しなければならない。」と規定していると考える。
 そうであれば、上記の大阪市公文書管理規程第38条第1項第5号の「前各号に掲げるもののほか、主管課長が職務の遂行上なお保管の必要があると認めるもの」についても、第1号から第4号までと同程度の必要性があるにもかかわらず延長を行わなかった場合に違法又は不当となると考えられるが、仮に本件請求文書が作成されていたとしても、運営方針の策定及びその評価が年度ごとに完結するものである以上、第1号から第4号までと同程度の必要性があったとは認められない。
 よって、「行政評価関係書類」(平成22年度から平成27年度までの分)の保存期間を延長しなかった点に裁量権の逸脱又は濫用は認められず、実施機関の対応に不適切な点はなかったと言える。
7 その他の審査請求人の主張について
 その他審査請求人は縷々主張するが、いずれも上記審査会の判断を左右するものではない。
8 審査請求人からの求釈明申立てについて
 審査請求人は、意見書において、審査会から実施機関に質問するよう求めているところであるが、いずれも本件の争点にかかわらないと判断したため、確認を行っていない。
 求釈明を行うか否かは、もとより、審査会の裁量によるところであるが、念のため求釈明を行っていない理由について申し添えておく。
9 結論
 以上により、第1記載のとおり、判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
委員 重本 達哉、委員 小林 美紀、委員 榊原 和穂

(参考)答申に至る経過
令和3年度諮問第64
(略)

答申第542号

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