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答申第236号

2026年3月6日

ページ番号:674290

大個審答申第236号 

令和8年3月6日 

大阪市長 横山 英幸 様

大阪市個人情報保護審議会 

会長 岡澤 成彦 

答申書 

 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号。以下「法」という。)第105条第3項において準用する同条第1項に基づき、大阪市長(以下「実施機関」という。)から令和5年9月22日付け大西成保生第30206号により諮問のありました件について、次のとおり答申いたします。

第1 審議会の結論

 実施機関が令和5年7月11日付け大西成保生第30109号により行った全部開示決定(以下「本件決定」という。)に対する同年8月23日付け審査請求(以下「本件審査請求」という。)は、棄却すべきである。

第2 審査請求に至る経過

1 開示請求

 審査請求人は、令和5年6月27日、法第77条第1項に基づき、実施機関に対し、「2022年度における移送費・通院交通費に係る申請から支給までの保有個人情報」を求める開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 本件決定

 実施機関は、本件請求に係る保有個人情報を、「2022年度における申請から支給にかかる「移送費(通院交通費)支給申請書」、「保護決定調書(一時扶助用)」、「ケース記録票」、「保護変更【医療扶助(通院移送費)】申請書」、「令和4年度医療扶助移送費支給検討表」、「居宅保護費確認書(現金払分)」及び「受領書」」(以下「本件文書」という。)と特定した上で、法第82条第1項に基づき、本件決定を行った。

3 審査請求

 審査請求人は、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき、本件審査請求を行った。

第3 審査請求人の主張

 審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。

1 審査請求の趣旨

 本件決定において開示されなかった「保護決定通知書」につきこれを開示せよとの裁決を求める。

2 審査請求の理由

(1) 審査請求人は、2023年6月27日、大阪市長に対し、保有個人情報の開示請求を行った。

 これに対し大阪市長は、2023年7月11日、大西成保生第30109号「全部開示決定」、大西成保生第30110号「部分開示決定」、大福祉第920号「全部開示決定」を行った。

 しかし、いづれの決定においても、保有個人情報である「保護決定通知書」は開示されなかった。

(2) 「保護決定通知書」は、実施機関の職員が職務上作成したものである。審査請求人による「移送費(通院交通費)支給申請書」は、行政手続上の申請に当たり、実施機関の職員はその諾否の応答として、「保護決定通知書」を作成し、審査請求人に送付しているものである。

 「保護決定通知書」には、その支払方法(支払日、支払場所、支払時間、口座振込の場合は金融機関名、支店名)等が記載されている。また、行政不服審査法上の不服申立に係る教示も記載されており、実施機関の職員が組織的に用いるものとして作成されたものである。

 「保護決定通知書」は、「生活保護関係文書の保存期間について」(昭和36年9月29日、社発第726号)において5年間の保存が義務付けされている。同時に大阪市公文書管理条例においても、「補助金、各種交付金及び給付金に関するもの」に該当し、5年間保存しなければならないものであって、実施期間が保有しているものである。

 「保護決定通知書」は、実施機関の職員が職務上作成し、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているものであって、法第60条第1項に規定する「保有個人情報」に当たるものである。

(3) 「保護決定通知書」には、審査請求人の住所・氏名とともに「病院へ通院するための交通費を自弁できないため移送費を支給します」との記載があり、審査請求人の開示請求に係る保有個人情報であるにもかかわらず、実施期間はこれを開示しなかったため、その開示を求めて審査請求するものである。

3 令和7年7月10日収受審査請求人意見書における主張

(1) 「支払案内書兼受領書」は開示されなければならない。

 処分庁は「弁明書」(令和4年12月1日付)において、現金払い受領時にのみ必要な「支払案内書兼受領書」は、移送費(通院交通費)に関する申請から支給までの事務において、処分庁として「本件請求」による「申請から支給までの全ての記録」には該当しないものであると判断した、と主張しているが、処分庁の職員が受領書も受取らずに現金による支給をすることなどありえず、「申請から支給までのすべての記録」に該当することは当然である。

 このような判断をしたというのはウソであり、審査請求人から開示されていないとの指摘を受けた後から考えられた苦しまぎれのいいわけにすぎないものである。

 さらに、処分庁は情報提供すると提案したと主張しているが、この提案は、あらたに「開示決定」を行うことにより処分庁の不開示の違法性が明らかになることを隠ぺいしようとしてなされたものであると同時に、審査請求人がこれをうけた場合審査請求を「却下」できると考えたものであり、本来の情報提供の趣旨と制度に反する不当なものである。さらに、審査請求は開示請求を行った者として「不要である」などと申し出るはずはなく、処分庁の主張は虚偽である。

(2) 「保護決定通知書」は個人情報である。

 審査請求人による移送費(通院交通費)の支給申請は、行政手続法第2条第3号に規定する「申請」であり、実施機関の職員である西成区保健福祉センター所長は、その諾否について応答しなければならないものである。

 「保護決定通知書」は、その諾否の応答として支給の決定を審査請求人に通知するために、実施機関の職員がその職務として作成した文書記号、文書番号がつけられた公文書であると同時に、審査請求人の個人情報である住所・氏名が記録された開示請求にかかる「保有個人情報」である。

(3) 「保護決定通知書」は5年間保存されなければならない「保有個人情報」である。

 「保護決定通知書」は「生活保護関係文書の保存期間について」(昭和35年9月29日社発第726号 各都道府県知事各指定都市市長宛 厚生省社会局長通知)により、5年間保存しなければならないものである。

 「保護決定通知書」は大阪市公文書管理条例第6条第3項に規定する「別表」において「補助金、各種交付金及び給付金に関するもの」に該当し、5年間保存しなければならないものである。

(4) 移送費(通院交通費)にかかる「保護決定通知書」は電磁的記録である。

 「保護決定通知書」の作成に当たっては、処分庁の職員はコンピューター処理をしている。

 処分庁は「弁明書」(令和6年2月5日付け)において、医療扶助(移送費・通院交通費)に係る事務処理においては、起案者が立案する決定内容を生活保護システムに入力すれば、決裁欄を備えた「保護決定調書(一時扶助用)」と、その記載内容を定例通知文の形式に当てはめた「保護決定通知書」が出力され、前者稟議して決裁すれば、後者の通知内容は前者に従っておのずと定まることとなっている、と弁明しており、審査請求人に送付された「保護決定通知書」は生活保護システム内で作成された電磁的記録としての「保護決定通知書」が記録・保存んされているものである。

 この点につき、審査請求人が福祉局保課及び福祉システム課に確認したところ、「保護決定通知書」は電磁的記録として記録され保有しているが、生活保護システム上出力することができないシステムになっているとの回答であった。

(5) 処分庁は、移送費(通院交通費)にかかる「保護決定通知書」について5年間保存しなければならないものである。

 処分庁は弁明書(令和6年2月5日付け)において、保護決定通知書」は行政処分の通知を行う通知文書であり、その通知は処分対象者である審査請求人に対しすでに交付済みであることから不存在である。「保護決定通知書」は交付用の用紙しか作成されておらず、当該用紙は処分対象者である被保護世帯の申請者に交付されるため、保護法の実施機関である当庁は、本件決定に係る「保護決定通知書」を実際に保有していない、と弁明している。

 しかしながら、(3)において明らかなように、処分庁は移送費(通院交通費)にかかる「保護決定通知書」について5年間保存しなければならないものである。その移送費(通院交通費)にかかる「保護決定通知書」について、「不存在」や「保有していない」ことを理由としてこれを開示しないのは違法である。

 このような違法な理由で開示されないのであれば情報公開制度や個人情報開示請求制度はなりたたない。

(6) 処分庁の生活保護システムは違法である。

 処分庁は、審査請求人の保有個人情報開示請求(〇年〇月〇日付け)に対し、「保有個人情報を開示しない旨の決定(通知)」(令和〇年〇月〇付け大西成保生第〇号)において、開示をしないこととし理由として、大阪市の生活保護システムにおいて、移送費(通院交通費)にかかる保護決定通知書は、決定調書入力時のみ出力され、再出力及び生活保護システムの画面上で表示ができない、また出力された保護決定通知書の写しを保有していない、以上のことから当該保有個人情報は存在したが現在保有しておらず実際に存在しないため、と主張している。

 審査請求人に送付された移送費(通院交通費)にかかる「保護決定通知書」は生活保護システム内で作成された電磁的記録を出力したものであり、(4)において主張したように、生活保護システム内には電磁的記録として記録され5年間保存されていなければならないものであるにもかかわらず「存在」しないとの主張は違法である。

 さらに、再出力できないとのシステムは、電磁的記録の開示方法について定めた、個人情報保護の保護に関する法律の施行等に関する規則第9条第3号に反し違法である。

 処分庁はこれに対応できるシステムを使用しなければならない。

(7) 処分庁は居宅保護費にかかる「保護決定通知書」について、これを開示している。

 審査請求人の個人情報開示請求(〇年〇月〇日付け)について、処分庁は「保有個人情報を開示する旨の決定(通知)」(令和〇年〇月〇付け大西成保生第〇号)において開示する保有個人情報、全部開示として、平成27年8月から令和6年9月までに交付した居宅保護費にかかる保護決定通知書(システムデータの出力)、これを開示している。

 同じ生活保護システムであり、同じ電磁的記録である「保護決定通知書」であるにもかかわらず、居宅保護費にかかる「保護決定通知書」については開示されているのにもかかわらず移送費(通院交通費)にかかる「保護決定通知書」についてこれを開示しないのは違法である。

第4 実施機関の主張

 実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。

 審査請求人は「保護決定通知書」は、実施機関の職員が職務上作成し、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているものであって、法第60条第1項に規定する『保有個人情報』に当たるものであるにもかかわらず、実施機関はこれを開示しなかったため、その開示を求めて審査請求するものであるとしている。

 しかしながら、「保護決定通知書」は行政処分の通知を行う通知文書であり、その通知は処分対象者である審査請求人に対しすでに交付済みであることから不存在である。ただし、「保護決定通知書」に記載している内容がわかるものについては保有個人情報開示することができるとし、「保護決定調書(一時扶助用)」、「居宅保護費確認書(現金払分)」、「受領書」については開示を行っている。

 医療扶助(移送費・通院交通費)に係る事務処理においては、起案者が立案する決定内容を生活保護システムに入力すれば、決裁欄を備えた「保護決定調書(一時扶助用)」と、その記載内容を定例通知文の形式に当てはめた「保護決定通知書」が出力され、前者を稟議して決裁すれば、後者の通知内容は前者に従っておのずと定まることとなっている。

 また、「保護決定通知書」は、事務取扱上、その控えの保管が必要とされているものではなく、再発行もできない。

 こうしたことから、「保護決定調書(一時扶助用)」は決裁文書として保護法の実施機関である当庁が保有することとなるものの、「保護決定通知書」は交付用の用紙しか作成されておらず、当該用紙は処分対象者である被保護世帯の申請者に交付されるため、保護法の実施機関である当庁は、本件決定に係る「保護決定通知書」を実際に保有していない。

な お、こうした事務処理については、大阪市の各区生活保護業務主管課等における共通の取り扱いである。

第5 審議会の判断

1 基本的な考え方

 法第3条は、個人情報がプライバシーを含む個人の人格と密接な関連を有するものであり、個人が「個人として尊重される」ことを定めた憲法第13条の下、慎重に取り扱われるべきことを示すとともに、個人情報を取り扱う者は、その目的や態様を問わず、このような個人情報の性格と重要性を十分認識し、その適正な取扱いを図らなければならないとの基本理念を示しており、本市は、かかる基本理念を十分に踏まえて個人情報の保護に取り組む必要がある。

 そして、法第76条は、何人も自己を本人とする保有個人情報について、開示(法第76条第1項)、訂正(法第90条第1項)及び利用停止(法第98条第1項)を請求することができることを規定するとともに、これらの請求を受けた行政庁が、一定の場合に開示(法第78条第1項)、訂正(法第92条)又は利用停止(法第100条)をすべき義務を負っていることを規定しているところである。

 したがって、当審議会において、法の定める個人情報の開示、訂正、利用停止の各請求に対する処分の当否を審議するに当たっては、上記の法の理念を踏まえ、個人の人格と密接な関連を有するものであることに配慮し、個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する市民の権利を十分に尊重する見地から行うこととする。

2 争点

 審査請求人は、本件決定で特定されなかった「保護決定通知書」を開示するべきである旨を主張する一方で、実施機関は本件決定に問題は無い旨を主張している。そのため、本件審査請求における争点は、本件請求の対象となる保有個人情報として、本件文書以外に保有個人情報が存在するか否かである。

3 本件請求の対象となる保有個人情報について

(1) 保護決定通知書について

 審査請求人は、実施機関から送付された保護決定通知書を受け取っていることから、当該文書を本件請求の対象となる保有個人情報として特定されるべき旨を主張している。この点について実施機関は、保護決定通知書は支給対象世帯に送付され、事務取扱上、その控えの保管が必要とされているものではない旨を主張している。当審議会において、実施機関より提供を受けた移送費(通院交通費)に係るマニュアルを見分したところ、実施機関の主張通り、保護決定通知書の控えを保管する取扱いは定められていなかった。

 また、実施機関は、保護決定通知書は再発行できない旨を主張している。この点について、事務局職員をして実施機関に確認させたところ、保護決定通知書はシステムの設定上1通のみ出力可能な仕様となっているため、審査請求人に対して交付した保護決定通知書そのもののデータは保有しておらず、保護通知書に記載されている移送費(通院交通費)の支給内容については、システム上のデータとして保有しているものの、同データを出力した文書「保護決定調書(一時扶助用)」については本件決定で既に開示しているとのことであった。

 この点、審査請求人は、実施機関が過去に、居宅保護費に係る保護決定通知書の電磁的記録を開示しており、同じ生活保護システムであり、同じ電磁的記録である「保護決定通知書」であるにもかかわらず、居宅保護費にかかる「保護決定通知書」は開示され、移送費(通院交通費)にかかる「保護決定通知書」についてこれを開示しないのは違法であると主張している。

 これについて、実施機関から、本市システムの仕様上、居宅保護費にかかる保護決定通知書は、システムから決定通知書の再出力が可能なため開示する決定を行い、一方、移送費(通院交通費)にかかる保護決定通知書は、システム上再出力ができず、同一形状の電磁的記録も存在しないため、不存在による不開示決定を行ったとの説明があった。

 上記、実施機関の説明に、特段、不自然、不合理な点は認められず、また、実施機関の説明を覆すに足る事実は認められないことから、保護決定通知書を本件決定で保有個人情報として特定しなかったことは妥当である。

(2) その他の本件請求の対象となる保有個人情報について

 当審議会において、実施機関より提供を受けた移送費(通院交通費)に係るマニュアルを見分したところ、マニュアルで作成又は取得されることとなっている文書のうち、本件決定で保有個人情報として特定されていないものがいくつか見受けられたが、事務局職員をして実施機関に確認させたところ、いずれも、審査請求人にかかる事案については作成又は取得の必要が無いものであるか、審査請求人にかかる保有個人情報が含まれない文書であるとのことであり、かかる説明を覆すに足る事実は認められないことから、ほかに本件請求の対象となる保有個人情報は無いと認められる。

4 結論

 したがって、第1記載のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)

委員 塚田 哲之、委員 林 晃大、委員 堀田 善之、委員 矢口 智春

(参考)調査審議の経過 令和5年度諮問受理第16


答申第236号

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