答申第551号
2026年6月29日
ページ番号:681799
大情審答申第551号
令和8年6月29日
大阪市長 横山 英幸 様
大阪市情報公開審査会
会長 小谷 真理
答申書
大阪市情報公開条例(平成13年大阪市条例第3号。以下「条例」という。)第17条に基づき、大阪市長から令和4年3月24日付け大市第63号により諮問のありました件について、次のとおり答申いたします。
第1 審査会の結論
大阪市長(以下「実施機関」という。)が令和4年2月28日付け大市第46号により行った不存在による非公開決定(以下「本件決定」という。)に対する令和4年3月2日付け審査請求(以下「本件審査請求」)は、棄却すべきである。
第2 審査請求に至る経過
1 公開請求
審査請求人は、令和4年2月14日、条例第5条の規定に基づき、実施機関に対し、請求する公文書の件名又は内容として、「かつて市政改革室が公表していた「平成29年度世論調査結果報告書」の2ページに「報告書を読む際の留意点」と題する項目が記載されています。/この記載について、/1.記載の意図、目的がわかる文書を公開してください。/ここには、(4)信頼区間として「今回の調査は標本調査ですので、標本による測定値(調査の結果)に基づいて、母集団値を測定できます。信頼度95%における測定値(%)の信頼区間1/2幅(標本誤差)は、次の式で算出されます。」と記載され、標本誤差を求める式も記載されています。さらに、誤差の一覧表や「つまり、母集団を対象にこの調査を行えば、『よく知っている』と答える男性が14.4%の前後3.0%の区間内、すなわち、11.4%~17.4%の区間内にあることが95%の確率で期待されるということを意味しています。」との記載もあります。2.この記載の根拠がわかる文書を公開してください。」(審査会にて原文中の改行箇所に「/」を挿入している。以下同じ。)と表示して公文書の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った(なお、「2.」は本件審査請求の対象外である。)。
2 本件決定
実施機関は、本件請求に係る公文書(以下「本件請求文書」という。)を保有していない理由を、「「平成29年度世論調査結果報告書」の「報告書を読む際の留意点」は、本市が世論調査を委託した業者が仕様書に基づいて作成したものであり、仕様書上では「報告書を読む際の留意点」の掲載について具体的に明示しておらず、当該文書の記載の意図、目的がわかる文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」として、条例第10条第2項に基づき、本件決定を行った。
3 審査請求
審査請求人は、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき、本件審査請求を行った。
第3 審査請求人の主張
審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
1 審査請求の趣旨
「本件決定を取り消し、改めて文書の特定を行うこと。」との裁決を求める。
2 審査請求の理由
・処分(不存在)理由には、「『報告書を読む際の留意点』は、本市が世論調査を委託した業者が仕様書に基づいて作成したもの」とする一方で、「仕様書上では『報告書を読む際の留意点』の掲載について具体的に明示しておらず」としている。仕様書に具体的な明示のない事項について、受託業者の判断で記載を行うはずがない。そして、「仕様書に基づいて作成したもの」との記載と「仕様書上では『報告書を読む際の留意点』の掲載について具体的に明示しておらず」の記載は完全に矛盾している。仮に仕様書に明示されていない事項について、受託業者の判断で記載を行ったものであるとしても、履行確認や、この報告書を大阪市Webサイトに掲載する際に、記載内容の妥当性や、記載の目的、意図については当然確認しているはずであるので、この点が請求対象文書が不存在である根拠になるはずがない。
・実施機関は、平成30年11月2日付け市民の声No.1869-10144-001-01の回答において、「平素は、何かと大阪市の市政改革の取組について、ご理解、ご協力をたまわり誠にありがとうございます。/早速ですが、先にお寄せいただきました件についてお答えいたします。/本市で実施している世論調査は、母集団の推計のみを目的としたものではなく、回答者の性別や年代などの属性を全てホームページで公表したうえで、例えば回答の偏りの傾向から当該施策・事業の関心の高さを概観したり、その中から頂いたご意見を施策・事業を進めるうえでの参考とするなど、統計データ以外の様々な関連情報も含めて総合的な判断を行う際に活用しています。/なお、報告書に記載の標本誤差に関する説明については、母集団の推計が可能であるかのような印象を与えることがないよう、今後、表現を工夫してまいります。/引き続き、回答率の向上などに努め、より一層、調査制度の適正な運用に努めてまいりますので、何卒ご理解、ご協力をよろしくお願い申しあげます。」と記載している。ここには「本市で実施している世論調査は、母集団の推計のみを目的としたものではなく」と記載され、母集団の推計も目的の一つであったとしている。そして、「報告書を読む際の留意点」には、「今回の調査は標本調査ですので、標本による測定値(調査の結果)に基づいて、母集団値を測定できます。」などと記載されており、目的である「母集団の推計」ができていることなどの説明がその目的であったことが認められる。回答中の「なお、報告書に記載の標本誤差に関する説明については、母集団の推計が可能であるかのような印象を与えることがないよう、今後、表現を工夫してまいります。」との部分については、母集団の推計を目的とするものであるにもかかわらず、標本の偏りなどにより目的を達成できるものにはなっていないとの指摘を受け、母集団の推計ができるものにはなっていないことを認めざるを得なくなって記載したものであり、この指摘を受けるまでは、母集団の推計ができるものであると考えていたものである。ここで重要なことは、処分(不存在)理由にあるように「報告書を読む際の留意点」の記載は受託業者が(勝手に?)記載したというようなものではなく、市政改革室の意図のもとに記載されたものであるということ(だからこそ「表現を工夫」ということが可能なのである。)である。
・実施機関は、平成30年11月30日付け市民の声No.1869-10163-001-01の回答において、「平素は、何かと大阪市の市政改革の取組について、ご理解、ご協力をたまわり誠にありがとうございます。/早速ですが、先にお寄せいただきました件についてお答えいたします。/「平成29年度世論調査報告書」に記載の標本誤差について、式が間違っているとのご指摘をいただきありがとうございます。「平成29年度(2回目)世論調査報告書」に記載の式のとおり修正いたします。/「平成29年度(2回目)世論調査報告書/https://www.city.osaka.lg.jp/shiseikaikakushitsu/page/0000432138.html/に掲載しております「報告書(目次、調査の概要、調査結果)」/https://www.city.osaka.lg.jp/shiseikaikakushitsu/cmsfiles/contents/0000432/432138/houkokusyo.docx/引き続き、より良い行政運営に努めてまいりますので、何卒ご理解、ご協力をよろしくお願い申しあげます。」と記載している。平成29年度世論調査結果報告書については、当初Webページに掲載されたものは、標本誤差を求める式が誤って記載されていたが、その後に修正がされており、この修正は実施機関の判断で行われている。ここで重要なことは、記載内容の妥当性について市政改革室が判断しているということである。
・以上の事実から、処分(不存在)理由として示された内容は、客観的事実関係とは明白に矛盾しており、虚偽であると認められる。「報告書を読む際の留意点」の記載の意図、目的は、世論調査が母集団の推計を目的としていること及び、それが実現されていることやその根拠について読者に説明するものであったと認められるが、市政改革室は、母集団の推計を実現するために必要な前提条件を満たすことができていないとの指摘を退けることができず、また、調査が不適切であるという事を認めることもできず、詭弁を弄するよりほかはなくなっている。処分(不存在)理由として示された内容は明らかに詭弁である。これは、翌平成30年度の世論調査結果報告書からは「報告書を読む際の留意点」の記載がなくなっているにもかかわらず、この記載を削除した理由について説明しないことからも認められる。
3 令和4年3月29日付け意見書(審査請求書の補足)
・審査請求書でも述べたとおり、当初大阪市Webページに掲載されていた平成29年度世論調査報告書の標本誤差を求める式が誤って記載されていた。それについて、その後に修正がされたことから、当該式の修正に係る決裁文書の公開請求を行ったところ、決裁の添付文書として、標本誤差に係る資料が添付されていた。つまり、市政改革室は、「平成29年度世論調査結果報告書」の「報告書を読む際の留意点」について、統計学を用いた調査結果をもって母比率の推定値とする根拠について説明するものであったことを認識していたということである。そして、「当該文書の記載の意図、目的がわかる文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しない」というのもまさに虚偽であり、上記添付資料やそこで引用されている資料が対象文書である。他にもあるかもしれない。市政改革室は、組織的体面を繕うために文書を隠ぺいすることをやめ、真摯に文書を特定すべきである。
4 令和4年9月13日付け意見書(別事件の意見書。下記令和4年10月18日付け意見書に、本意見書も「合わせてご覧ください」との記載があったことから記載。)
・まず、不存在決定(令和4年2月9日付大市第40号)の不存在の理由として示されている「『記載例』に『区民モニターアンケートで「・・・・」と回答した割合 〇年度末までに□%以上』と記載した意図が確認できる文書及び『区民モニターアンケート』で『その状態を客観的に測定できるよう数値化した指標』の測定ができると考えた根拠が確認できる文書」については、マーケティング・リサーチ関連文書が該当する。
・市政改革室は市民の声の回答で、「マーケティング・リサーチにより母比率の推定を行うことを目的とした手法を説明したものではありません」とし、情報公開審査会に対しては「調査の回答者の回答状況をとどまるものと取り扱っている」との説明を行っている。マーケティング・リサーチ関連文書については、これらを根拠として該当しないものとして扱っているものであると思料されるが、「マーケティングリサーチツールの手引き」の「7 PDCAサイクルを意識した改善について」は、マーケティングリサーチツールを使用した運営方針のマネージメントについて記載されており、まさに上記請求対象文書に該当するものである。これは、区民アンケートの結果を「母比率の推定値」として扱っているのか、「あくまで当該調査の回答者の回答状況をとどまるもの」として取り扱っているのかは無関係であり、この点が文書の存否にかかる論点になるはずがない。
・そして、「当該文書をそもそも作成していたかどうかが不明」との点については、運営方針策定要領及び運営方針の手引きの記載内容、特に請求内容である「区民アンケートでアウトカム指標が測定できると考えた根拠は何か」について、文書をもって説明できないという事態に陥っていることを如実に物語っており、明確に「説明責任を果たすための公文書作成指針」違反である。
・さらに「作成していたとしても、平成27年度以前であるため、保存年限(5年)が経過したために廃棄し、実際に存在しない」についても、保存年限が5年であるというのはどのようにして確認したものなのか。そして、仮に保存年限が経過したものであったとしても、説明責任を果たす上で必要があるのは明白であり、現に審査請求人はこの点についての満足な説明を得られていない。この意味で保存年限を延長すべきものであり、この点についても公文書管理条例違反である。
・実施機関の弁明書では、区民アンケートの結果について、比較可能性や客観性などが述べられているが、はっきりした根拠は示されていない。
・そして、請求対象である「区民アンケートでアウトカム指標が測定できると考えた根拠は何か」という点については言及を避けている。問題はまさにこの点に集約されるのであり、区民アンケートがマーケティング・リサーチ関連文書に記載されているように標本調査として適切に実施されているものなのであれば、その結果をもって運営方針の評価を行うということについては問題がない。しかし、現実にはそうはなっておらず、マーケティング・リサーチ関連文書に記載されている内容すら満足に理解していない結果として、区民アンケートは標本調査として適切に実施されておらず、都島区役所が認めるように、回答者が偏り、精度は十分なものにはなっていない。
・そして、「アウトカム指標が既存データにより把握できない場合は、例えばアンケート調査等により区民・市民の意識等を測定することが考えられる」については、区民アンケートでアウトカム指標の測定ができるものであるとの前提で書かれているが、公開請求はまさにこの点、「そう考えるのはなぜか」についての説明を求めるものである。
・実施機関の弁明書には、「審査請求人は、令和4年2月15日付け審査請求書の中で、此花区役所の区民アンケート結果報告書及び各区の区民アンケートについて述べているが、市政改革室から区役所に対して世論調査をベースに区民(モニター)アンケートを実施するよう依頼した記録は存在しない。」とあるが、住吉区では民間ネット調査の手法で、その他の区では世論調査の手法で区民アンケートを行っていることは既に述べたが、これは各区役所も否定していない。単に事実関係を述べただけで、記載されているような依頼が市政改革室からあったなどとは一切記載していない。しかしながら、市政改革室が運営方針策定要領で、区民アンケートを用いたアウトカム指標の測定を例示し、マーケティング・リサーチツールの手引きにおいてマーケティング・リサーチツールを用いた運営方針のマネージメントについて説明していたことは客観的事実である。そして、各区役所も区民アンケートを用いて運営方針の評価を行っていることについては、運営方針策定要領が根拠であるとしている。
・実施機関の弁明書には、「審査請求人は、当該請求文書を廃棄していることについて「公文書作成指針違反」と指摘しているが、処分庁は、当該文書を作成していたとしても、公文書作成指針に基づき適切に管理・廃棄を行っていたものと認識している。」とあるが、審査請求人は、区民アンケートを用いた運営方針のマネージメントについて、その妥当性や根拠について、これまでのところ満足な説明を受けられていない。公開請求においてもこの妥当性や根拠に関するものは一切公開されず、市民の声の回答でも市政改革室は肝心な点についてはぐらかしてばかりで一切まともな説明を行っていない。
・市政改革室は市民の声の回答において、その内容をどんどん後退させることを余儀なくされた。そして、その結果だと思われるが、マーケティング・リサーチツールの全てを廃止するに至った。その際に市政改革室が各所属に通知した文書の中で「既に一部の所属では、独自で『世論調査』を実施している」ことを理由として挙げているが、マーケティング・リサーチツールの目的についての説明が全くできなかったという事実は隠蔽している。その結果として区役所において区民アンケートが問題を抱えたまま継続されるという事態になってしまっている。
・情報公開条例解釈・運用の手引の4ページには第1条の説明として「本条は、この条例の解釈及び運用の指針となるものであり、各条文の解釈及び運用は、前文とともに本条及び第3条の規定に照らして、適正に行わなければならない」と説明されている。しかるに審査請求人はこれまでのところ、運営方針のマネージメントについての合理性、妥当性に関する説明を全く受けられておらず、「知る権利」、ひいては「市政に参加する機会」を不当に侵害されている。情報公開条例の趣旨にのっとった対応をお願いする。
5 令和4年10月18日付け意見書
・令和4年10月7日付け意見書(下記第4、2参照)において実施機関が主張する「審査請求人が主張するような母集団の推計を目的とした標本調査の説明を意味するものではない」、「当庁が実施する世論調査が母集団の推計を目的としたものであると説明したものではない」との点について、世論調査の目的は疑うことなく「母集団の推計」である。以下にその根拠を示す。
・実施機関は、平成30年3月2日付け市民の声の回答において、「平素は、何かと大阪市の市政改革の取組について、ご理解、ご協力をたまわり誠にありがとうございます。また、貴重なご意見をいただきましてありがとうございます。早速ですが、先にお寄せいただきました件についてお答えいたします。/民間ネット調査は、多様化する市民ニーズを的確に把握し、施策事業の意思決定の基礎資料とするために、また、施策事業に対する成果を測定し、改善することでPDCAサイクルを推進することを目的に実施しており、母集団全体やセグメント毎の傾向の把握を行うものです。/ご指摘の「女性の就職・再就職」に関するアンケート調査にかかるサンプルの収集方法につきましては、本来、幅広い属性を確保できる集団から収集すべきところ、結果的に特定分野の講座修了生及び受講生向けサイトからの収集となったもので、調査過程において受託業者との協議が十分ではなかったことによるものであったと認識しております。/また、その調査結果の公表において、「サンプルの収集方法の影響により一部の設問に対する結果に偏りが見られた」と記載しておりますが、これはその他の設問に対する結果に関しては影響が及んでいないということではなく、ご覧いただくにあたって、特に影響が大きいと思われる結果に対する注意喚起を促したものでしたが、誤解を招いたことにつきましてお詫び申し上げます。/調査の結果につきましては、その中でも、母集団全体の傾向把握を行う上で、大阪市が実施している就労相談事業や窓口の認知の他、その利用に関する設問のように、サンプルの偏りによる影響が比較的少ないと思われるデータに関しましては、有効であったと考えております。加えて、サンプルの偏りによる影響を多少受けるものであっても、セグメント毎の傾向の把握を行う上では、そのセグメントに属する十分なサンプル数が集まっているものに限られますが、有効なものもあると考えております。しかしながら、漏れなく傾向把握を行うのに足りる十分なデータでなかったことは事実であります。/このことから、当該調査以降においては、受託業者と十分な協議を行っておりますが、今後ともご指摘をふまえ、より一層、調査制度の適正な運用に努めてまいりますので、何卒ご理解、ご協力をよろしくお願い申しあげます。」と記載されている。令和4年9月13日付け意見書(上記4参照)でも触れたが、ここには世論調査と同じ「マーケティングリサーチツール」のひとつである「民間ネット調査」の目的として、「母集団全体やセグメント毎の傾向の把握を行うもの」としている。つまりは、「母集団の推計」である。そして、同年3月14日付け市民の声の回答に「全ての調査を『世論調査』の手法により実施することが望ましい」とあることから、この目的は世論調査も同じであると認められる。3月14日付け市民の声の回答には「『民間ネット調査』はサンプルが母集団の代表となっていないことから、非標本誤差が大きく95%信頼区間に関しましては、お示しすることができないことを申し添えます。」との記載がある。一方この回答があった同時期に大阪市Webページに掲載されていた世論調査結果報告書には、「つまり、母集団を対象にこの調査を行えば、『よく知っている』と答える男性が14.4%の前後3.0%の区間内、すなわち、11.4%~17.4%の区間内にあることが95%の確率で期待されるということを意味しています。」と95%信頼区間に関する記載がなされていた。ここからは、世論調査においては調査対象者を無作為抽出していることを根拠に、その標本(サンプル)は母集団の代表になっており、95%信頼区間を示すことができるものであると考えていたことが分かる。しかし、この回答があった頃に市政改革室に対し、「報告書を読む際の留意点」の記載について「標本誤差を求める式についてどのような理論的根拠から導出されるものであるのか」、「係数が1.96になっているのはなぜか」などの質問を行ったが何一つ答えることはできなかった。そして、「『報告書を読む際の留意点』の記載内容は中心極限定理がその理論的根拠であるが、世論調査結果報告書を見る限りこの調査は同定理を適用するための前提条件を満たしておらず、『報告書を読む際の留意点』の記載内容は成立しない」との指摘を退けることができず、世論調査の目的が「母集団の推計ではない」と言い逃れるよりほかはなくなり、3月14日の市民の声の回答では「(母集団全体やセグメント毎の傾向の把握」との調査目的を達成するために)サンプルが母集団の代表となっていないことを踏まえ、より母集団の代表に近づけるための設計を行うなど、可能な範囲で見直しを行ってまいります」、「今後は、大阪市民全体の状況を示すものではない旨の留意事項を記載する」などとしていたものが、11月2日付けの市民の声の回答では「本市で実施している世論調査は、母集団の推計のみを目的としたものではなく」と従前の市民の声に対する回答での説明から後退し、その後の回答では「推計のみ」が「推計を」となり、当初の説明を覆している。つまり、弁明書にある「当庁が実施する世論調査が母集団の推計を目的としたものであると説明したものではない」、「調査によって取得したデータは、母集団の代表となっているとは必ずしも言えないということを認識した上で、必要に応じて様々な関連情報を合わせて、施策・事業を進める上での総合的な判断を行う際に活用しているもの」というお決まりの文句は、当初の市民の声の回答とは明確に矛盾し、「報告書を読む際の留意点」の記載内容についての説明に行き詰った挙句に編み出した詭弁に過ぎず、明白に虚偽説明である。市民の声の回答は以上の経過をたどっており、市政改革室が言うように「当初から一貫した説明を行ってきた」などと言うものではない。そして、当初はマーケティングリサーチツールの目的について「母集団全体やセグメント毎の傾向の把握」としていたのであり、このような回答を行った根拠となる文書が存在しないはずはない。弁明書には「その一文章だけをとらえ、『母集団の推計を目的としている』と解釈している」と記載されているが、審査請求人の主張は上記の市民の声の経過や、後述する論点も踏まえた上で行っているものであり、決して「一文章だけをとらえ」て行っているものではない。なお、「当庁が実施している世論調査は、統計法に基づく統計調査ではなく」としている点について、この主張の根拠は「世論調査は統計調査ではない」であるというものであると考えられ、また、このことをもって世論調査が標本調査ではないと主張するものであると認められる。しかし後述するように市政改革室は、世論調査をはじめとするマーケティングリサーチツールの根拠を統計学においており、このことはマーケティングリサーチツール関連文書の記載から明らかである。そして、これも後述するようにマーケティングリサーチツール関連文書には、世論調査などは標本調査であると明記されている。この点、国への届出を怠っているとすれば違法(統計法第24条違反)の疑いも出てくる。そして、「統計法に基づく統計調査ではない」ということが、調査としての妥当性を欠いてもよいという根拠になるはずがない。公的機関が行う調査である以上、正確性や妥当性が求められるのは当然のことである。そして、社会一般で行われている各種の調査は学問(統計学)的根拠に基づいて行われていることが一般的(朝日新聞社「RDD」方式とは、日経リサーチ「信頼区間」、日本マーケティングリサーチ協会「調査法・統計学基礎講座/統計学応用講座」(https://www.jmra-net.or.jp/activities/seminar/2018/tabid420.html))なのであり、「標本の代表性や、観測された偏りなどが母集団について有意であるかを確認しなければならない」、すなわち学問的根拠に基づいて正確性や妥当性を確保することは、学問的要請であり、また社会的要請でもある。この意味で市政改革室の主張はコンプライアンス違反でもある。蛇足ながら「例えば回答の偏りの傾向から当該施策・事業の関心の高さを概観したり」との説明について、市民の声で「標本(回答者集団)の偏りを評価していないとのことであるのに回答の偏りの傾向が分かるというのはどのような根拠によるものか」と質問したが、まともな回答はなかった。標本の偏りを確認していない場合、観測データに現れた偏りは、標本の偏りの結果生じたものであるのか、それとも実際に偏りが存在しているのかの判断はできなくなる。このように市政改革室は弥縫策を講じてばかりで、あとで綻びを生じては説明不能に陥るという事を繰り返している。
・弁明書には「記載内容に誤りがあったことから、数式を修正しただけであり、審査請求人が言う、記載内容の妥当性、つまり『世論調査が母集団の推計を目的としているもの』と判断したものではない。」と記載されている。ここでは「誤っていたので修正しただけ」とされているが、ここでの論点の本質は「どのような意味で」この式が正しいものであると判断したのかという点である。言い換えれば、この式が何を意味するものとして正しいものと判断したのかという点である。令和4年9月13日付け意見書でも述べたが、この式の修正を行った際の決裁文書には、「①総務省統計局のホームページでは、/“一般的に国などが行っている標本調査は、信頼水準95%=(λ=1.96)として調査の設計がされています”/とされていることから、95%信頼区間における結果を記載している。/https://www.stat.go.jp/koukou/trivia/careers/career8.html#」との記載がある。そして、この記載の末尾にあるURLは、総務省統計局「調査に必要な対象者数」へのリンクである。当該ページには、標本調査における調査対象者数の計算方法が記載されており、そこに記載された式は、定められた信頼水準及び許容標本誤差のもとで母比率(……)を推定するために必要なサンプルサイズの求め方である。信頼水準(λ)は、母比率の推定を行う上で、どの程度の信頼性を求めるのかを定義するために設定されるものである。これを設定しているということは、この調査において母比率の推定などを行う際に、結果が正しい確率が95%以上であることを確保するという意味である。世論調査結果報告書の標本誤差を求める式の係数(λ)は1.96となっていたことから、信頼水準は95%に設定されている。そして、「報告書を読む際の留意点」にある標本誤差を求める式は、上記総務省統計局のページに記載の式を変形して得られるものである。そもそも「標本誤差」とは、標本調査の結果を母比率の推定値とする場合の、真の母比率との誤差を言うのであり、標本誤差を求める式を示していることそのものが、調査の目的が「母比率の推定」すなわち「母集団の推計」であることを示している。弁明書には「一般的な標本調査の説明を記載したものに過ぎず」と記載されているが、「報告書を読む際の留意点」には「今回の調査は標本調査ですので、標本による測定値(調査の結果)に基づいて、母集団値を測定できます。」と記載されている。「今回の調査」(世論調査)の結果に基づき母集団値(母比率など)を測定できると記載し、また「つまり、母集団を対象にこの調査を行えば、『よく知っている』と答える男性が14.4%の前後3.0%の区間内、すなわち、11.4%~17.4%の区間内にあることが95%の確率で期待されるということを意味しています」とも記載しているのであり、「報告書を読む際の留意点」の記載がこの世論調査に関するものであることは明白で、市政改革室の説明は詭弁に過ぎない。上記の標本誤差を求める式や、95%信頼区間に関する記載の根拠は「母比率の信頼区間の求め方」である。当該ページには、母比率の信頼区間を求める式が掲載されている。信頼区間の記載や標本誤差を求める式はまさにこの記載のとおりである。世論調査が統計学に基づいて行われていることは明白である。また、調査の目的が母比率の推定などの母集団の推計であるということもまた明白である。
・弁明書での主張は、「報告書を読む際の留意点」の記載は「一般的な標本調査の説明を記載したものに過ぎず」、世論調査は標本調査ではないというものであると認められるが、この説明はこの項で述べるマーケティングリサーチツール関連文書の記載とは明確に矛盾している。これも令和4年9月13日付け意見書で述べたが、まず「マーケティングリサーチツールの手引き」の37ページには、世論調査について「市民全体の意向把握の客観性が高い」とされており、市民全体の意向が高い客観性をもって測定できるものであるとの説明になっている。これは弁明書に記載されている「当庁が実施する世論調査が母集団の推計を目的としたものであると説明したものではない」などとの記載とは明確に矛盾している。そして、ここでは「アンケート」という用語について、マーケティングリサーチツールを指して呼称するものとして用いられている。このことは、「アンケート方法を検討」において、世論調査が郵送アンケートであるとされていることからもわかる。また、「アンケート方法を検討」の別の部分では、アンケート(世論調査)は標本調査であると明確に書かれており、これも弁明書の説明とは矛盾している。では「標本調査とは何か」については、令和4年9月13日付け意見書に記載しましたのでここでは割愛するが、簡単に言えば「標本の観測結果から母集団に関する知見を得る調査」であり、ここでの記載と弁明書の説明は明白に矛盾している。なお、「アンケート方法を検討」に記載されている標本(サンプル数)300、母数270万人の場合の±5.658などの値は、「報告書を読む際の留意点」にある標本誤差を求める式に、有限母集団補正項を加えた式で求めたものである。有限母集団補正項は、大きな母集団から小さな標本を抽出する(抽出率が低い)場合はほとんど1になるので省略されることが一般的で、「報告書を読む際の留意点」の式でも省略されている。
・以上のとおり、世論調査の目的が「母集団の推計(母比率の推定)」であることは疑いがない。そして、「報告書を読む際の留意点」の記載の根拠となっているのは上記マーケティングリサーチツール関連文書であり、これら文書の記載の根拠となっている「意外なところに統計学」をはじめとする関係文書であり、これらは現に存在している。世論調査の目的が母集団の推計ではないということは、上記の通り記載内容の理論的根拠に関する理解が極めて浅はかでまともに説明ができない事態を言い逃れるための詭弁であり虚偽説明である。
・実施機関は、弁明書に、「平成29年度世論調査業務委託(市政に関する市民意識調査)仕様書では、「(7)報告書の作成」の項目において「ア 他の自治体の世論調査の報告書等を参考にしながら、基本的な報告書の構成要素を盛り込んだ読みやすく分かりやすい報告書を作成すること。」と記載している。つまり、「平成29年度世論調査結果報告書」は、仕様書に基づき、委託事業者の判断で作成することが予定されているものである。そして、委託事業者から提出された世論調査結果報告書は、仕様書に記載のとおり、他の自治体の世論調査の報告書等の構成要素を盛り込んだ内容であることが確認できたため、その内容を本市ホームページに掲載したものである。」と記載している。上記で述べた通り市政改革室は「報告書を読む際の留意点」にある標本誤差を求める式の理論的根拠や、係数が1.96であることの根拠、あるいは「報告書を読む際の留意点」の記載内容が成立するための前提条件などについて何一つ理解していなかった。このように自分でも理解できないような内容が記載された報告書を、何を根拠に「分かりやすい報告書」であると判断したのか。そして、このような報告書をWebページに掲載した場合、質問を受けることは当然想定されていたはずであり、事実審査請求人から上記のとおり質問されている。しかし市政改革室は何一つ満足に答えることはできなかったのであり、説明できないような内容を業務委託契約の成果物として妥当であると判断して費用を支出し、市民に対して示すなど、極めて無責任である。そして、その無責任体質は、市民の声での当初の説明を無視して虚偽説明を繰り返すなど現在も継続されている。世論調査が母集団の推計を行ものではないとするのであれば、世論調査の結果は何を意味するものであり、マーケティングリサーチツールの手引きにその目的として記載されている「施策事業を立案する際に現状を分析する」、「施策事業の目標や達成状況を測定する」ことができるのはどのような根拠によるものなのかを説明できなければならないが、現在のところ市政改革室はマーケティングリサーチツールを使用して行っていること全体について、全体的な整合性を持った説明は一切できていない。これまでにも述べてきたように、市政改革室の説明はその場しのぎのものばかりであり、綻びを生じては説明不能に陥るという事を繰り返している。自らの施策事業が妥当なものであると主張するのであれば、全体的な整合性の取れた説明を行わなければならない。市政改革室は文書を公開した場合に、その記載の誤謬を指摘され、説明不能であることが明らかになることを恐れて文書を隠ぺいしているものと思われる。例えば、上記「アンケート方法を検討」では民間ネット調査も含めて標本調査であるとしている。標本調査である以上、標本が母集団の代表になるように調査を設計しなければならないはずであるが、「民間ネット調査」では調査対象は民間事業者が保有するネットモニターなどであり、とても標本調査としての要件を満たすことができるものにはなっていない。これも市政改革室が標本調査がどのようなものであるのかの理解を決定的に欠いていたということを表している。仮に文書を公開した場合、これらの事実が明らかにされ、自らの責任を追及されることを恐れて文書を隠ぺいしているものと考えられる。令和4年9月13日付け意見書でも述べたが、市政改革室はマーケティングリサーチツールの理論的根拠について満足に説明できない事態に陥った結果として、まず各報告書に「市民の状態を表すものではない」との記載を加えたり、あるいは「報告書を読む際の留意点」の記載を削除するなどの弥縫策を講じたが、結局は全ての調査を廃止した。この際に各所属に送付した文書には、これら調査が抱えている問題点などについては一切記載されておらず、この点でも市政改革室の無責任体質が表れている。そして、不適切な調査方法を大阪市役所内にまき散らした張本人が、何らの対応をすることなく、自らのみ事業を廃止して逃げ出すなど、これも極めて無責任である。そして、この結果として各区役所では標本調査としては不適切な区民アンケートの結果を、妥当に行われた標本調査の結果であるかの如く運営方針マネージメントを行っている。まずは、体面を保つために詭弁を弄して言い逃れをしようとする姿勢を改め、現状の社会調査ツールにどのような問題点が存在しているのかを把握し、進むべき方向をしっかり見定めた上で改善に向けた取り組みを行わなければ、職責を果たしたということにはならないはずである。そして、都島区役所は行っていることの問題点を率直に認め、改善に向けた模索を続け、既に動き出している。各区の区民アンケート結果報告書を見て、このようなデータを基に運営方針のマネージメントが行われ、災害対策などが云々されている事態を目の当たりにして、審査請求人は災害が現実のものとなり、避難所に逃れたとしても災害時の計画がまともに機能せず、水も食料も配給されないというリスクを実感している。事実鶴見区では防災担当部署から「区民アンケートのデータはあてにならない」と相手にされていないという話も聞いた。災害が現実のものとなり、「こんなはずでは」という事態を招いても後の祭りであり、犠牲になるのは市民の生命であり財産である。このような事態に陥らないためにも、行っていることの説明責任を果たせるようにしなければならないはずである。審査請求人の行っている公開請求の本旨はこのためのものである。世論調査やそれを受けた区民アンケートなどの社会調査ツールの妥当性に関する説明を求めているのであり、これを説明する文書が存在しないというのであれば、施策、事業の妥当性を説明できないという事態に陥っているということを意味するのである。その通りなのであれば、説明責任を果たせるだけの文書を作成することを通じて、これら社会調査ツールを妥当性のあるものにしていくことを期待している。
・市政改革室は世論調査などについて、令和3年7月15日付け裁決書(大市第6号)には、「しかしながら、上記①のとおり、処分庁の説明によると、世論調査の結果をあくまで当該調査の回答者の回答状況をとどまるものと取り扱っているとのことであり、また実際に処分庁において調査結果の数値はそのまま報告書やホームページに掲載していることが認められる。」と記載されている。この「回答者の回答状況にとどまる」との説明について、この通りなのであれば、例えば600名の回答者中300名が「はい」と答えたのであれば、「はい」との回答率は50.0%であり、ここには誤差を議論する余地などない。しかし、令和4年9月13日付け意見書でも述べた通り、市政改革室は市議会(平成30年11月6日の平成29年度決算特別委員会)では、議員の指摘に対して、「委員御指摘のとおり、本市の世論調査の回答率につきましては40から50%程度で推移しておりますが、毎回1,000件程度の回答を得ていることから一定の精度は確保しているものと考えております。/しかしながら、さらに回答率を向上させるため、アンケート送付先に勧奨はがきを送付し、未返送の方へ督促を行っております。また、少しでも回答しやすくなるよう、可能な限りアンケートの質問数を抑制し、質問構成や文面を読みやすく工夫するとともに、8月から9月といった比較的回答率の高い時期にアンケートを実施するよう関係所属に働きかけております。/市政改革室としましては、今後も一層の回答率向上に向け可能な限り努力してまいります。以上でございます。」(市政改革室マネジメント改革担当課長)と答弁している。ここで市政改革室は「一定の精度は確保している」としている。この「一定の精度」については、これも令和4年9月13日付け意見書でも述べた通り「アンケート方法を検討」に記載されている「誤差±3%を確保するには約1067標本」との記載が根拠であると認められ、約3%の誤差があるという認識であるのは明らかである。つまりこの答弁の段階では「回答者の回答状況にとどまる」という認識ではなく、世論調査は何らかの測定を行うもので、誤差が伴うものであるとの認識であったということである。この答弁が行われた同時期の平成30年11月2日付けの市民の声の回答では、「本市で実施している世論調査は、母集団の推計のみを目的としたものではなく、回答者の性別や年代などの属性を全てホームページで公表したうえで、例えば回答の偏りの傾向から当該施策・事業の関心の高さを概観したり、その中から頂いたご意見を施策・事業を進めるうえでの参考とするなど、統計データ以外の様々な関連情報も含めて総合的な判断を行う際に活用しています。」との記載が認められる。ここではまだ「母集団の推計のみを目的としたものではなく」となっており、母集団の推計も世論調査の目的のひとつであると認めており、これは市議会での答弁とも符合している。しかしその後の平成30年11月16日付け市民の声の回答では、「『母集団の推計が可能であるかどうかの確認をすべき』とのご要望につきましては、現時点ではお応えすることはできません」とさらに後退し、最終的には母集団の推計ができるものにはなっていないという事を認めざるを得なくなったのか、弁明書などにおいて「『各事業によって取得したデータは、母集団の代表となっているとは必ずしも言えないということを認識した上で、必要に応じて様々な関連情報を合わせて、施策・事業を進める上での総合的な判断を行う際に活用』するものであり、『各事業では母集団の推計や母比率の推計値として扱うことは行っておらず』」との説明になった。このように、市政改革室の世論調査を巡る説明は、当初は「母集団の推計を行うもの」であるとの説明であったものが、説明の誤謬を指摘されるたびに後退し、最終的には「母集団の推計を行うものではない」との説明となり、当初の説明との矛盾は「誤解を招く表現になっていた」と誤魔化している。市政改革室は自らの説明について「当初から一貫していた」としているが、上記の通りそれは説明に行き詰るたびに変遷してきたのであり、この「一貫していた」との主張も事実ではない。そして、この「母集団の推計を行うものではない」との説明については、当初の「母集団の推計を行うもの」との説明の根拠が存在しないか、あるいは根拠としていたものの誤りが明らかになったものの、それを認めることができずに今日の事態に至っているものと思われる。(世論調査結果報告書の記載について全く説明できなかったことや、その学問的説明が極めてお粗末なものであることから、おそらくは後者であるものと考えられる。)細かな議論はともかく、本質的な問題点は、大阪市が行っている社会調査が、世間一般の水準に照らして妥当なものになっているのかどうかである。組織的体面に固執して詭弁を弄している場合ではない。このようなくだらない議論をしているうちに大災害に備えるための時間が失われ、大災害が現実のものとなったときに「こんなはずでは」という事態になるリスクが高まるばかりである。区民アンケートなどの社会調査ツールを立て直し、市民区民の状態を適切に把握した上で計画を立案するためには、それなりの時間がかかるはずである。一刻も早くこのようなくだらない議論を終わらせ、都島区役所のようにあるべき方向をしっかり見定めた上での取り組みを始めるべきである。
6 令和4年12月15日付け意見書(他の事件と共通の意見書)
・国立研究開発法人科学技術振興機構「地方自治体が実施する社会調査の深刻な問題」や日本学術会議の提言「社会調査をめぐる環境変化と問題解決に向けて」の現状認識や問題点の指摘は、現状の大阪市が行う調査にも完全に妥当するものである。
・調査を用いた運営方針のマネージメントについては、それが妥当で合理的であると判断したからこそ、そのように行っていることには疑いはなく、また、市民の声の回答でも「調査は妥当で合理的なものである」との主張になっているので、そのような判断や主張にいたる根拠についての説明を求めるものであり、その根拠が不存在であるはずがない。
・日本学術会議の提言「社会調査をめぐる環境変化と問題解決に向けて」の「社会調査は我々の社会の現状を的確に把握し、その時間的変化を追跡し、他の社会との比較をするために、さらにはエビデンスに基づいた政策立案をするために不可欠である。社会調査から得られる情報がなければ、民主社会の基盤が損なわれてしまう。」との記載は、大阪市の認識とも一致していると認められる。「マーケティング・リサーチツールの手引き」の「7 PDCAサイクルを意識した改善について」や、「運営方針の手引き」「運営方針策定要領」の記載内容について、その趣旨は提言の記載と同じであると認められる。
・また、日本学術会議の提言「社会調査をめぐる環境変化と問題解決に向けて」には、「社会の的確な実態を捉えるためには、適切な母集団を設定し、その母集団に対して代表性のある標本から情報を得る必要がある。このためには回収率が高くなければならないが、近年の社会調査ではこの回収率が低下する傾向にある。」との記載があるが、これに関して大阪市の説明は「母集団の代表になっているとは必ずしも言えないということを認識したうえで…」というものである。提言にあるように代表性のある標本でなければ社会の実態を的確にとらえることはできない。アウトカム指標は「めざす状態を数値化した指標」であるとされており、これを測定するためには、母集団たる区民全体などの実態を的確にとらえる必要があることは論を俟たない。そして、そのためには調査の標本は母集団に対する代表性を有するものでなければならないことは提言にある通りであるが、大阪市が行う調査に関しては、低回収率を起因として標本が偏り、代表性を有するものにはなっていない。
・「区民アンケートの結果は区民の状態を表すものではない」ということはいくつかの区の報告書に記載がある。大阪市はなぜこのような区民アンケートでこの測定ができる(アウトカム指標になりうる)と考えたのかを説明する責任があるはずである。そして、これに関しては、情報公開審査会に対しても「(調査結果は)調査の回答者の回答状況にとどまる」との説明になっている。しかし、「回答者の回答状況にとどまる」に過ぎない調査結果が、区民の状態を表す指標であるアウトカム指標になりうるのかという説明はなされておらず、昨年6月15日付けの情報公開審査会の答申にもこの点に関する記載はない(令和3年6月15日付け大阪市情報公開審査会答申第492号参照)。
・「標本の代表性」については、大阪市において正しく認識できてはいない。これは、マーケティング・リサーチツール関連文書のどこにも標本の偏りに関する言及がないこと、市政改革室の市議会での答弁においても、標本の偏りが説明されることはなく、「一定の精度」の根拠が回答者数のみであることなどからもわかる。
・市政改革室については、平成30年3月段階での市民の声の回答では調査について「母集団あるいはセグメントごとの傾向の把握を行うもの」と母集団の推計を行うものであることを認めていたにもかかわらず、その後の回答では「統計学によるものではない」「母比率の推定は行っていない」などと過去の回答を完全に無視した説明を行い、過去の説明との整合性については説明を行うことなく無視を決め込むといった信じられない対応を続けており、これについては明確に虚偽説明であると言わざるを得ない。また、市民局についても、調査において「分散分析」といった統計学に基づいた手法を用いた分析を行っていながら、同様に「統計学に基づくものではない」などとの説明を行っている。
・昨年6月の情報公開審査会答申に関して、これらの過去の回答や分散分析に関する資料、マーケティング・リサーチツール関連文書の内容については、実施機関から情報公開審査会に対する説明はなかったものと認められるが、これは「隠ぺい」とも評価できるものである(令和3年6月15日付け大阪市情報公開審査会答申第492号参照)。
・なお、提言の内容は、社会調査の実務現場からはやや「理想論」であるように見受けられる。今日、社会調査をめぐる環境には様々な問題点があり、全てが理論通りに進むわけではない。しかし、調査により社会の状態を的確に把握するためにはどのような問題点があり、それを解決するためにはどのような方法が考えられるかということを検討するに当たっては、やはり社会調査に関する知見が求められることは言うまでもない。そして、調査の結果得られたデータを実務に活用するに当たり、どのような制約が生じているのか、すなわち「データを読む力」を養うためにもこれは求められるのであり、この知見を欠いたまま不適切な調査によって得られたデータを不適切に使用することは、行政があるべき姿からどんどん乖離してしまうという結果を招くことになる。社会調査の実務の現場では、社会調査をめぐる環境に存在する問題について、これを解決すべく様々な努力がはらわれている。行政だけが例外であるはずがない。大阪市が社会一般の水準に追いつくことを願っている。
7 令和5年8月16日付け意見書(弁明書に対する求釈明)
・「平成29年度世論調査結果報告書」は委託事業者の判断で作成することが予定されていたものであるとする不存在理由について、弁明書では、「『平成29年世論調査結果報告書』は、仕様書に基づき、委託事業者の判断で作成することが予定されているものであ」り、「委託事業者から提出された世論調査結果報告書は、仕様書に記載のとおり、他の自治体の世論調査の報告書等の構成要素を盛り込んだ内容であることが確認できたため、その内容を本市ホームページに掲載し」たため、「当該文書の記載の意図、目的がわかる文書については作成又は取得しておらず、実際に存在しない」とし、また「世論調査が母集団の推計を目的としているもの」と判断したものではない」としている。しかし、マーケティングリサーチの手引きの37ページの「世論調査」の項目には、「回答者は、無作為に抽出するので、市民全体の意向把握の客観性が高い」と記載されている。これは、市政改革室が世論調査について「高い客観性をもって市民全体の意向把握ができるものである」とする根拠を有しているということを表しており、弁明書の「受託業者の判断で作成されることが予定されていたものであり、請求対象文書は不存在である」、「『世論調査が母集団の推計を目的としているもの』と判断したものではない」との説明とは明白に矛盾しているがこれはどういうことか。
・マーケティングリサーチの手引きの59ページには、世論調査を含むアンケートで「☆☆に関する市民の満足度、認知度」を測定する説明であり、「市民の満足度、認知度」はアウトカム指標であると説明されている。「そして、アウトカム指標は、「その状態(めざす状態)を客観的に測定できるよう数値化した指標」であると定義されていることから、上記「市民の満足度、認知度」は母比率(の推定値)に他ならない。これも弁明書の説明とは明白に矛盾しているがこれはどういうことか。
・マーケティング・リサーチ実務担当者学習会(平成28年5月23日)の33ページ及び34ページは、世論調査の結果データを、「区の広報紙を毎月読んでいる市民は1/3程度」、「70%以上(の市民が)が市のHPをほぼ閲覧していない」と母比率の推定値であるとして取り扱っていることに他ならない。つまり「市民の現状」を把握できるものであると説明しており、弁明書の「受託業者の判断で作成されることが予定されていたものであり、請求対象文書は不存在である」、「『世論調査が母集団の推計を目的としているもの』と判断したものではない」との説明とは明白に矛盾しているがこれはどういうことか。
・市政改革室は市議会(平成30年11月6日の平成29年度決算特別委員会)では、議員の指摘に対して、「委員御指摘のとおり、本市の世論調査の回答率につきましては40から50%程度で推移しておりますが、毎回1,000件程度の回答を得ていることから一定の精度は確保しているものと考えております。/しかしながら、さらに回答率を向上させるため、アンケート送付先に勧奨はがきを送付し、未返送の方へ督促を行っております。また、少しでも回答しやすくなるよう、可能な限りアンケートの質問数を抑制し、質問構成や文面を読みやすく工夫するとともに、8月から9月といった比較的回答率の高い時期にアンケートを実施するよう関係所属に働きかけております。/市政改革室としましては、今後も一層の回答率向上に向け可能な限り努力してまいります。以上でございます。」(市政改革室マネジメント改革担当課長)と答弁している。ここでは世論調査について「毎回1,000件程度の回答を得ていることから一定の精度は確保している」と説明している。これは、市政改革室が世論調査について「毎回1,000件程度の回答を得」られれば「一定の精度は確保」できるとする根拠を有しているということを表しており、弁明書の説明とは明白に矛盾しているがこれはどういうことか。
・まず、平成30年3月2日付けの市民の声の回答では、民間ネット調査について、その目的が「母集団全体やセグメント毎の傾向の把握を行うもの」であると説明されている。しかし、「調査過程において受託業者との協議が十分ではなかった」ことから、「サンプルの偏り」を生じ、調査結果は満足なものにならなかったことが説明されている。次に平成30年3月14日付けの回答では、「全ての調査を『世論調査』の手法により実施することが望ましい」とし、「母集団全体やセグメント毎の傾向の把握を行う」ものとの調査の目的は、民間ネット調査、市政モニター、世論調査の全てで同じであると説明されている。そして、『市政モニターアンケート』や『民間ネット調査』は、ご指摘のとおり、『世論調査』のように母集団全体から無作為抽出を行い、サンプルを抽出しているものではないため、母集団(大阪市民)の代表となっているとは言えません。」とし、市政モニターや民間ネット調査においては、上記「サンプルの偏り」という問題を生じているが、世論調査においては、無作為抽出を行っていることを根拠にこのような問題を生じていないとしている。これは、この回答で「最後に追加でいただきました数値の信頼区間のご質問については、前述のように『民間ネット調査』はサンプルが母集団の代表となっていないことから、非標本誤差が大きく95%信頼区間に関しましては、お示しすることができないことを申し添えます。」とする一方で、この回答があった同時期に大阪市ホームページに掲載されていた世論調査結果報告書には95%信頼区間が示されていたことからも、世論調査についてはサンプルが母集団の代表となっており、正確な調査ができているという認識であったということを表している。さらに、平成30年4月12日の回答では、「世論調査につきまして、統計的検定は行っておりませんが、一定の精度が確保できるだけの標本を用いて実施し、報告書に記載の標本誤差を考慮しながら」と説明されており、上記のとおり世論調査については、「一定の精度」が確保され、「報告書に記載の標本誤差」は有効であるという認識であったことを表している。また、平成30年11月2日の回答では、「本市で実施している世論調査は、母集団の推計のみを目的としたものではなく」と母集団の推計が世論調査の目的(のひとつ)であるという説明になっている。以上は、世論調査について、その目的が母比率の推定をはじめとする母集団の推計であり、その目的が達成できるという説明になっており、市政改革室がこのように考える根拠を有しているということを表している。これも、弁明書の説明とは明白に矛盾しているがこれはどういうことか。
・平成29年度世論調査結果報告書について、当初大阪市ホームページに掲載された際には、標本誤差を求める式が誤って記載されていた。この誤りを指摘したところ、式は修正された。この式を修正する際の決裁文書を公開請求したところ、公開された文書に標準誤差の説明資料が添付されていた。ここには「総務省統計局のホームページでは“一般的に国などが行っている標本調査では、信頼水準95%(λ=1.96)として調査の設計がなされています”とされていることから、95%信頼区間における結果を記載している」と記載されている。そして、示されているURLは総務省統計局「なるほど統計学園」へのリンクであり、ここには標本調査に関する説明が記載されている。ここでも世論調査が統計学に基づく標本調査であることが示唆されているが、ここで重要なことは、市政改革室がこの式の誤りを誤りであると認識し、正しい式に修正するだけの根拠を有していたということである。つまりこれも弁明書の説明とは明白に矛盾しているがこれはどういうことか。
・弁明書の「2 『市民の声』の回答について」に、「当庁が実施している世論調査は、統計法に基づく統計調査ではなく、標本の代表性や、観測された偏りなどが母集団について有意であるかを確認しなければならないとする法令等の定めはない。/そのため、調査によって取得したデータは、母集団の代表となっているとは必ずしも言えないということを認識した上で、必要に応じて様々な関連情報を合わせて、施策・事業を進める上での総合的な判断を行う際に活用しているものである。」とあるが、上記の各論点との整合性について説明を求める。
・弁明書の「2 『市民の声』の回答について」に、「「世論調査結果報告書」に記載されている「報告書を読む際の留意点」についても、取得したデータが母集団の代表となっているとは必ずしも言えないということを認識した上で、一般的な標本調査の説明を記載したものに過ぎず、当該調査は統計法に基づく統計調査ではなく、「世論調査結果報告書」に記載の数値は、調査結果から得られた数値をそのまま記載したものであるため、審査請求人が主張するような母集団の推計を目的とした標本調査の説明を意味するものではない。」とあるが、これについても、上記の各論点との整合性について説明を求める。特に市民の声の回答において、世論調査の目的が母集団の推計であると説明されている点とどのように整合するのか。
・弁明書の「2 『市民の声』の回答について」に、「なお、審査請求人は、市民の声の回答内容について、「本市で実施している世論調査は、母集団の推計のみを目的としたものではなく」と記載されている、その一文章だけをとらえ、「母集団の推計を目的としている」と解釈している。」とあるが、これについては、これまでに縷々述べてきた通り、これまでの市政改革室の説明や、関連資料の記載などを総合して世論調査の目的が「母集団の推計」であると判断しているので、市政改革室の指摘は失当である。
・弁明書の「2 『市民の声』の回答について」に、「しかし、当庁が回答した内容は、その後の文章があり、「回答者の性別や年代などの属性を全てホームページで公表したうえで、例えば回答の偏りの傾向から当該施策・事業の関心の高さを概観したり、その中から頂いたご意見を施策・事業を進めるうえでの参考とするなど、統計データ以外の様々な関連情報も含めて総合的な判断を行う際に活用しています。なお、報告書に記載の標本誤差に関する説明については、母集団の推計が可能であるかのような印象を与えることのないよう、今後、表現を工夫してまいります。」と記載していることから、当庁が実施する世論調査が母集団の推計を目的としたものであると説明したものではない。」とあるが、まず、「回答者の性別や年代などの属性を全てホームページで公表したうえで、例えば回答の偏りの傾向から当該施策・事業の関心の高さを概観したり」について、そもそも回答者の偏り(母集団に対する代表性)は評価していないとのことであったはずである。この偏りを評価していない場合、「回答の偏り」は、標本の偏りに起因して偏っているように見えているだけなのか、あるいは真に調査の母集団に存在する偏りであるのかの判断ができないが、「回答の偏りの傾向から当該施策・事業の関心の高さを概観したり」することができるというのはいかなる根拠によるものであるのか、説明を求める。
・次に「『報告書に記載の標本誤差に関する説明については、母集団の推計が可能であるかのような印象を与えることのないよう、今後、表現を工夫してまいります。』と記載していることから、当庁が実施する世論調査が母集団の推計を目的としたものであると説明したものではない。」との記載について、審査請求人は上記で述べたように、平成30年11月2日付けの市民の声の回答のみをもって世論調査の目的が「母集団の推計」であると判断しているのではない。この市民の声に関して「当庁が実施する世論調査が母集団の推計を目的としたものであると説明したものではない。」と強弁したところで、他の市民の声の回答や関連文書の記載との整合性については何ら説明されていない。世論調査の目的が「母集団の推計」ではないとするのであれば、これまでに指摘している数多くの論点について、総合的な説明を求める。
・弁明書の「2 『市民の声』の回答について」に、「標本誤差の数式については、当時(平成30年度)、市民の声等で指摘があり、記載内容に誤りがあったことから、数式を修正しただけであり、審査請求人が言う、記載内容の妥当性、つまり「世論調査が母集団の推計を目的としているもの」と判断したものではない。」とあるが、標本誤差に係る説明資料には、「総務省統計局のホームページでは“一般的に国などが行っている標本調査では、信頼水準95%(λ=1.96)として調査の設計がなされています”とされていることから、95%信頼区間における結果を記載している」と記載されている。信頼水準とは、わかりやすく言えば母集団の推計を行う際に、正しく推計できる確率を言うのであり、これを95%にしているということは、正しく母集団の推計ができる確率について、95%を担保するという意味であり、信頼水準の設定を行うことがすなわち母集団の推計を行うということを意味しているのである。「数式を修正しただけ」とあるが、そもそも「標本誤差」(標本誤差に係る説明資料では「標準誤差」と誤っているが、これは後日修正されている。)とは調査の結果数値を母比率の推定値などとして用いる際の、真の母比率との差を言うのであり、そもそも(母集団の推計を行う上で)正しい式に修正したということであり、世論調査の目的が「母集団の推計」ではないとの説明には全くなっていない。
8 令和8年2月24日付け意見書(これまでの意見書の補足)
・令和8年2月13日に出された情報公開審査会答申第542号に関して、その問題点を指摘し、再考を要請するものである。
・北九州市情報公開審査会答申(令和7年10月28日付け答申第191号)においては、まず判断の前提として公文書等の管理に関する法律第4条の規定が挙げられている。言うまでもなくこれは大阪市においても同様である。そして、「北九州市文書管理規則」第14条第1項において「事案の決定に当たっては、文書等を作成して行わなければならない。」と規定されていることも挙げられているが、これについては大阪市公文書管理条例第4条第1項で「本市の機関は、意思決定をするに当たっては、公文書(法人公文書を除く。以下この条及び次条において同じ。)を作成してこれをしなければならない。」と規定されていることと同じである。そして、この答申では、「これらの規定の趣旨は、行政における意思形成過程について、文書による記録化を図ることによって、行政が、市民に対する説明責任を果たすとともに、市民においても事後的に検証可能なものとすることによって、公正で民主的な行政の推進に資するという点にある。かかる意味で、行政の意思決定・政策判断がなされた理由や目的を明らかにする行政文書が存在するということは、民主主義の根幹をなすものであるということができる。」との認定が行われているが、これは大阪市においても全く同じである。
・以上の前提を踏まえ、北九州市情報公開審査会は、「適切に作成された行政文書の存在は、民主主義の根幹をなすものであることに鑑みれば、本件対象文書が存在しないとの処分庁の説明には、にわかに了解しがたいものがあると考え」て実地調査を行うまでして、請求対象文書の有無を調べたが、審査会の権限の限界もあり請求対象文書の存在を確認するに至らなかった。しかし、この点については「協議録等が作成されなかったことについては、前記した行政文書制度の趣旨に照らし、問題があるといわざるを得ない。」との指摘がなされている。そして、請求対象文書の存在が確認できなかったことから、審査会として「本件処分に違法又は不当な点は見受けられず、本審査請求にはその理由がないため、前記第1(本審査請求の対象となった行政文書の開示請求につき、全部不開示とした決定は妥当である。)のとおり判断する。」と判断されている。
・北九州市答申では、「行政の意思決定や政策判断がどのような理由や目的でなされたものか、それが手続面において関係法令等に従って適正になされたものかを示す行政文書の存在及びその公開は、市政に関し、市民への説明責任を果たし、公正で民主的な市政の推進に資することを目的とする情報公開制度の根幹をなすものである。/本件については、市民の関心も高いことから、その意思決定過程に関する文書が、作成されていないことについて、市民に不信感を抱かせることになったことは否めない。現に、福岡県職員においては、意思形成過程に関する文書である協議録を作成しているのであるから(第2の2(3)参照)、北九州市職員に対し、同様に協議の内容等に関する文書を作成するよう求めることが、不可能や困難を強いるものであるとは到底いえない。/処分庁にあっては、今後、市民に対する説明責任が全うされるよう、当該文書の作成について適切な対応が望まれる。」との付帯意見がなされている。このように、北九州市審査会は形式的には「不存在」を認めつつも、実施機関の文書管理や説明責任の在り方に対して極めて厳しい評価を行い、制度の趣旨を守る立場から明確な問題提起を行った。これに対し、大阪市においては、同様に「不存在」とされた文書について、審査会が答申第536号において付言を付したにもかかわらず、実施機関がその趣旨を顧みることなく、従前と変わらない説明を繰り返している現状がある。このような状況は、審査会の問題提起が軽視されていることを意味し、情報公開制度の信頼性を著しく損なうものである。北九州市審査会のように、形式的な判断にとどまらず、実施機関の文書管理・説明責任の在り方に対して明確な付帯意見を付すことが、今後の制度運用において不可欠であると考える。
・一点だけ北九州市の問題点を指摘しておく。この北九州市答申では、結論において、「本件処分に違法又は不当な点は見受けられず」とされているが、不存在理由が不十分である点が行政手続法上どのように評価されるのかについては検討された形跡がない。行政手続法第8条は、申請に対する不許可処分等について、「理由を示さなければならない」と定めている。この北九州市の事案では「不存在」との判断がなされたものの、その根拠となる調査の範囲・方法・判断基準が明示されておらず、理由提示義務の趣旨に照らして不十分と評価され得るが、この点について情報公開審査会が検討した形跡はない。この検討がなされ、理由付記の記載が不十分であり、不存在決定が手続的瑕疵ある行政処分であると判断された場合には、「違法な処分」として取り消しを求める対応も十分に考えられたものと思われる。
・答申第542号は、請求対象文書の「不存在」を否定せず、市政改革室の説明(作成の有無が不明、仮に作成していても保存年限経過で廃棄)を是認した。これは、情報公開制度における「文書不存在」の判断基準が、実施機関の説明に大きく依存しているという制度的限界を示している。これは北九州市の事例を見ても、やむを得ない面があるのかもしれないが、だからこそ、実施機関が「不存在」だという場合には、公文書管理条例や情報公開条例の趣旨、目的の観点からの評価が求められるのだと考える。
・答申第542号は「不存在」ゆえに説明不能であるという構図を追認した形になっている。これは、行政の説明責任を果たせない状態を是認したに等しいものである。情報公開条例及び公文書管理条例の理念(政策形成過程の透明化、説明責任の履行)に照らせば、文書不存在の状態自体が問題であり、審査会はその点に言及すべきだったと考えられる。
・市政改革室が「記載例の根拠を説明できない」ことは、行政文書の作成・保存におけるガバナンスの欠如を示している。審査会は、単に「不存在」で済ませるのではなく、文書管理の在り方自体に対する制度的な問題提起を行う責務があるはずである。この論点は後述する保管スペースに関する問題につながる。
・この答申に係る公開請求、審査請求においては市政改革室の運営方針策定要領の記載について、その意味や区民(モニター)アンケートによる測定の妥当性に関する根拠の不在が、制度運用上の問題であることを指摘した。しかし、答申はその制度的整合性や説明責任の観点には踏み込まず、あくまで「文書が存在しないなら非公開は妥当」という形式論に終始している。そして、北九州市の答申における「付帯意見」のような言及も見られない。これは、公文書管理条例や情報公開条例が、市民の「知る権利」や「行政に参加する権利」を保証し、間接民主主義を補完することにより、住民自治の充実を図るためのものであり、文書の不存在がこれらの制度の理念を没却せしめ、ひいては地方自治の実質を損なうものであるという点に関する評価が欠落していると言わざるを得ない。
・市政改革室の説明は、「記載例は、区民アンケートが比較的容易に入手でき、主観が入りにくいという“認識”に基づいて記載した」というものであったが、答申がこの説明を是認したということは、制度的な根拠や検討過程の文書がなくても、行政の“認識”に基づく記載であれば問題ないとする立場を取ったことになる。これは、行政の裁量を広く認める一方で、市民の検証可能性や説明責任の確保という観点では大きな課題を残す。
・答申では、文書保管上の問題として、保管スペースの制約を理由挙げている。しかし、電子化の進展により、物理的スペースの制約はもはや保存回避の合理的理由にはならず、これを理由として保存回避を是認することは、現代の行政実務においては時代錯誤も甚だしいものであると言わざるを得ない。
参照:行政文書の電子的管理についての基本的な方針(平成31年3月25日内閣総理大臣決定)
https://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/densi/kihonntekihousin.pdf
また、この点に関しては、審査会が説明責任よりも保管スペースが優先されるものであると考えていると判断されても仕方のないものになっている。上記の国の方針でも「国の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等を適切に管理し、行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、現在及び将来の国民に対しての説明する責務を全うするという「公文書等の管理に関する法律」(平成21年法律第66号)の理念の実現をめざすものであり、求められるのは、行政文書の適切な管理とそれによる説明責任の全うである。
・このような答申の内容では、実施機関において以下のような「逆方向の学習」が進むおそれがある。
「文書を作らなければ、後で説明を求められても『不存在』で逃げられる」
「都合の悪い文書は早期に廃棄すれば、情報公開請求に応じる必要がなくなる」
これはまさに、説明責任の放棄を制度的に容認する構造であり、情報公開制度の根幹を揺るがすものである。上記で示した国の方針は、まさに「説明責任の全う」を目的としており、文書の早期廃棄や作成回避はこの方針に逆行するものである。よって、審査会は国の方針との整合性にも留意し、実施機関の文書管理の在り方を評価すべきなのであり、上記のような「負のインセンティブ」を生じかねない答申を出すことは、このような審査会に求められる権能に逆行するものである。
・審査会は本来、単なる形式的な判断機関ではなく、情報公開制度の理念を体現し、行政の透明性を確保し、説明責任を全うさせるための「制度的防波堤」であるべきだ。「文書不存在(廃棄)の結果として生じる説明責任の不履行」や「国の「公文書等の管理に関する法律」や、大阪市の公文書管理条例や情報公開条例の理念との整合性」などといった本質的な論点に一切踏み込まず、形式的な「不存在」判断に終始している。これは、審査会の役割放棄とも言えるものであり、制度の形骸化を加速させかねない。
・以上を踏まえ、下記の点について審査会に要請する。
(1)原決定の理由付記について、行政手続法の規定に照らした評価を行い、原決定が「手続的瑕疵ある行政処分」に該当するものであるのかどうかについて検討を行うこと。
(2)「不存在」とされた文書について、実施機関の説明が社会通念上妥当といえるか否かを実質的に検討し、必要に応じて付帯意見を付すこと。
(3)答申第536号における付言が実施機関に無視されている現状を踏まえ、より強い表現での問題提起を行うこと。
(4)情報公開制度の趣旨(市民の知る権利の保障、行政の説明責任の確保)を実効あるものとするため、審査会としての見解を明確に示すこと。
・現在国では「地方自治体におけるEBPMの推進」を図っている。コロナで世の中が大騒ぎしていたころ、当時の岸田首相の記者会見において、記者から「現在国が行っているコロナ対策にエビデンスはあるか」との質問が飛んだことがある。これを見て「社会にEBPMの考え方が浸透しつつあるな」と思ったものである。現在の若手職員がそれなりのポジションになるころには、すっかり社会にEBPMの考え方が定着するものと思われる。私が懸念するのは、現在のような社会調査に対する基本的な知識もなく闇雲に行政運営が行われ続けると、その頃になってEBPM時代に求められる説明責任を全うすることができず、現在の若手職員が大変な思いをすることである。そして、これはマスコミも報じないが、コロナでの死亡率は大阪府は全国平均の3倍、大阪市にいたっては全国平均の5倍にも上った。これも大阪府市では適切なエピデンスに基づいて保健衛生医療行政が行われていなかった証拠である。大変な思いをするのは将来の若手職員だけではなく、市民もまた防災対策のあるべき姿からの乖離などで大変な思いをしかねず、だれにとっても不幸せでしかない。情報公開制度と公文書管理制度は、単なる事務手続ではなく、民主主義の基盤であり、将来世代に対する責任を果たすための不可欠な制度である。このような事態に陥らないためにも、行政運営に当たっての説明責任を全うさせ、行政が機能不全に陥らないようにするために事情ご賢察のほどよろしくお願いする。
9 令和8年3月9日付け意見書(令和8年2月24日付け意見書の補足)
・最判平成4年12月10日(警視庁非開示事件)は、不存在(非開示)決定における理由付記の程度がどうあるべきかの一般原則を議論する上で参照すべきものである。この判決において最高裁は、「(ア)「本条例(「東京都公文書開示等に関する条例)7条4項は、実施機関が開示の請求に係る公文書を開示しない旨の決定をする場合には、その通知書に非開示の理由を付記しなければならない旨を規定している。一般に、法令が行政処分に理由を付記すべきものとしている場合に、どの程度の記載をすべきかは、処分の性質と理由付記を命じた各法令の趣旨・目的に照らしてこれを決定すべきである(最高裁昭和36年(オ)第84号同38年5月31日第二小法廷判決・民集17巻4号617頁参照)。/(イ)本条例が右のように公文書の非開示決定通知書にその理由を付記すべきものとしているのは、同条例に基づく公文書の開示請求制度が、都民と都政との信頼関係を強化し、地方自治の本旨に即した都政を推進することを目的とするものであって、実施機関においては、公文書の開示を請求する都民の権利を十分に尊重すべきものとされていること(本条例1条、3条参照)にかんがみ、非開示理由の有無について実施機関の判断の慎重と公正妥当を担保してそのし意を抑制するとともに、非開示の理由を開示請求者に知らせることによって、その不服申立てに便宜を与える趣旨に出たものというべきである。/(ウ)このような理由付記制度の趣旨にかんがみれば、公文書の非開示決定通知書に付記すべき理由としては、開示請求者において、本条例9条各号所定の非開示事由のどれに該当するのかをその根拠とともに了知し得るものでなければならず、単に非開示の根拠規定を示すだけでは、当該公文書の種類、性質等とあいまって開示請求者がそれらを当然知り得るような場合は別として、本条例7条4項の要求する理由付記としては十分ではないといわなければならない。」と判示し、本件非開示決定には理由付記について不備があるとして、上告を棄却した。なお、判決で触れられている東京都公文書開示等に関する条例の趣旨は、大阪市情報公開条例の趣旨と全く同じものである。これを原決定の不存在理由に当てはめると、原決定の不存在理由は、「(請求内容1について)『平成29年度世論調査結果報告書』の『報告書を読む際の留意点』は、本市が世論調査を委託した業者が仕様書に基づいて作成したものであり、仕様書上では『報告書を読む際の留意点』の掲載について具体的に明示しておらず、当該文書の記載の意図、目的がわかる文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」となっている。ここで不存在理由の核となる部分は「仕様書上では「報告書を読む際の留意点」の掲載について具体的に明示しておらず」である。上記の最高裁判決では、不開示理由として法の条項しか示されておらず、なぜその条項が適用されるのかということなどが記載されていないことが違法とされている。これは原決定の不存在理由で言えば、「なぜ具体的に明示する必要がなかったのか」ということを記載しなければならないということに相当するのであり、この記載がなく、単に「具体的に明示していない」と言うだけでは、法の条項を示すにとどまるものと同じだということである。本件のような不存在決定においても、最高裁が示した「開示請求者が理由を了知し得る程度の具体性」が求められる。単に「具体的に明示していない」では、なぜ具体的な明示が不要とされたのか、なぜ文書が作成されなかったのかが不明であり、条例第10条第3項及びその解釈・運用の手引の趣旨に照らしても不十分である。
・そして、(やや議論は脱線するが)この帰結として、市政改革室は平成29年度世論調査結果報告書の「報告書を読む際の留意点」に記載されていた標本誤差を求める式について、「この式の学問的(理論的)根拠は何か」、「式の係数が1.96になっているのはなぜか」などの質問に全く答えることができず、さらに、平成30年末に行われた市議会の平成29年度決算特別委員会において、委員から「世論調査は回答率が低すぎて問題があるのではないか」との指摘を受けたが、これに対してまともに答弁することができず、結局これがとどめとなり、制度廃止に追い込まれている。そして、市政改革室は情報公開審査会答申第536号を受けて、令和7年2月5日付けで「運営方針のアウトカム測定におけるアンケート調査の取扱いについて(通知)」を発出するに至る。この通知では「答申では、区民アンケートや同様の手法で行われるアンケート調査は、統計学的な調査ではないとの指摘がされています。このため、答申の結果を考慮すると、これらのアンケート結果を運営方針の目標達成の判断材料に使用することは、区民の代表性を有しているかのような誤解を招く恐れがあり、運営方針のアウトカム測定に用いることは望ましくないと考えられます。」としているが、要するにそれまでの「アンケート調査による運営方針のマネージメント」が適切には行われておらず、説明責任を果たせるものにもなっていなかったということなのであり、原決定の不存在理由もこれをごまかすための詭弁に過ぎないということである。何にせよ、(悪く言えば)でたらめな行政運営がいったん立ち止まり、再考する機会が生まれたということに関しては、市民にとって幸いだと言ってもよいと思う。しかし、肝心なのはこれから先であり、今後真に市民のためになる行政運営がなされるようになるのかについては今後にかかっているのであり、これは、審査会のような第三者機関が行政に説明責任を果たすように迫れるのかにかかっている。その意味でも審査会に対する市民の期待は大きいものがある。
・他自治体の事例を紹介すると、三重県情報公開審査会「答申第162号」では、「上述のように、ただ「存在しないため」という理由のみにとどまる場合には、違法性が高いと考えるべきであるが、本件の場合は「口頭にて伝えましたので、『何時行われたかが解る情報』に係る公文書は存在しておりません。」とする別添文書が、本決定と同時に交付されている。実施機関は「別添文書は条例に基づくものではないものの、条例で定める公文書不存在決定通知書を送付した上で詳しく補足するために行った」と説明している。/(略)/実施機関が本決定に際して異議申立人の請求の趣旨を十分に満足させるような説明責任が果されていないことは遺憾であるが、別添理由書が付記されていることから、理由付記に不備があり違法であるとまでは言えない、と判断する。」とされている。「ただ『存在しないため』という理由のみにとどまる場合には違法性が高い」とされ、本件では別途理由書が付記されていることを理由に「理由付記に不備があり違法であるとまでは言えない」とされている。
・また、宮城県情報公開審査会「答申第190号」では、「3 本件処分の妥当性について/理由付記の妥当性について/(1) 理由付記について/行政手続条例(平成7年宮城県条例第30号)第8条は、「申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない」と規定しており、条例第6条第3項は、実施機関が行政文書の全部を開示する旨の決定以外の開示決定等をしたときは、その理由を決定通知書に具体的に記載しなければならない旨を規定している。/理由付記制度は,非開示事由の有無について実施機関の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに、非開示の理由を開示請求者に知らせることによって、その不服申立てに便宜を与える趣旨から設けられているものであると解される。このような趣旨に鑑みれば、決定通知書に付記すべき理由としては、開示請求者において条例第8条第1項各号所定の非開示情報のどれに該当するのかをその根拠とともに了知し得るものでなければならず、単に非開示の根拠規定を示すだけでは、当該行政文書の種類、性質等とあいまって開示請求者がそれらを当然知り得るような場合は別として、条例第6条第3項の要求する理由付記としては十分ではない(最高裁判所平成4年(行ツ)第48号、同年12月10日第一小法廷判決参照)。/(2) 理由付記の妥当性について/本件処分において、実施機関は決定通知書に第2の2のとおり理由を記載しているが、この理由の記載は、条例第8条第1項第3号の条文の一部の引用にとどまり、どのような情報が記載され、公開することにより、何故法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益が損なわれるのかが明らかであるとは言えない。/情報公開制度においては、非開示とした情報の具体的な内容を明らかにしてしまうような理由付記ができないという特殊性があることや、非開示情報が大量に存在する場合、それらの情報をその性質に従って類型化し、それぞれの類型ごとに総括的に非開示理由と根拠条号を示すことで足りると解されることを踏まえ、本件処分においては、弁明書程度の具体性のある理由付記をすべきである。/4 結論/以上のとおり、本件処分について当審査会は,理由付記に不備があるので取り消すべきであると判断した。」として、理由付記の不備を理由に原決定を取り消す判断を行っている。
・これら最高裁判決や国の動向、他自治体の答申の動向は、ICT技術の活用により、行政文書の適正管理を行う上での諸課題(保管スペースの問題を含む)を解決し、説明責任を重視するという流れの中にある。このような意味でも答申第542号は時代錯誤であると言わざるを得ない。この点に関しては、大阪市情報公開審査会は答申第536号、第539号で、行政運営の内容に踏み込んだ判断を行っていただけに残念でならない。公文書管理条例や情報公開条例の理念、目的の実現に向け、実施機関に対してその説明責任を全うするように、審査会として強い姿勢を示していただくようお願いする。
10 令和8年3月16日付け意見書(令和8年2月24日付け意見書及び令和8年3月9日付け意見書の補足)
・答申第542号において「審査請求人は、文書を廃棄したのであれば、それでどうやって説明責任を果たすのかについても処分理由として記載すべきである旨主張するが、ここで問題となるのは、本件決定(本件では請求文書が不存在であること)の理由であり、『不存在』の理由が明らかであれば、事足りるものである。」とされている。しかし最高裁は「理由付記」の本質を次のように定義している。/(1) 最判平成4年12月10日判決/最高裁は、「本条例(東京都公文書開示等に関する条例)7条4項は、実施機関が開示の請求に係る公文書を開示しない旨の決定をする場合には、その通知書に非開示の理由を付記しなければならない旨を規定している。一般に、法令が行政処分に理由を付記すべきものとしている場合に、どの程度の記載をすべきかは、処分の性質と理由付記を命じた各法令の趣旨・目的に照らしてこれを決定すべきである。(最高裁昭和36年(オ)第84号同38年5月31日第二小法廷判決・民集17巻4号617頁参照)」/「このような理由付記制度の趣旨にかんがみれば、公文書の非開示決定通知書に付記すべき理由としては、開示請求者において、本条例9条各号所定の非開示事由のどれに該当するのかをその根拠とともに了知し得るものでなければならず、単に非開示の根拠規定を示すだけでは、当該公文書の種類、性質等とあいまって開示請求者がそれらを当然知り得るような場合は別として、本条例7条4項の要求する理由付記としては十分ではないといわなければならない。」(※下線は審査請求人による。)/「一般に、法が行政処分に理由を附記すべきものとしているのは、処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服の申立に便宜を与える趣旨に出たものであるから、その記載を欠くにおいては処分自体の取消を免かれないものといわなければならない。」と、ここで示された基準を基に、この判決は「このような理由付記制度の趣旨にかんがみれば、公文書の非開示決定通知書に付記すべき理由としては、開示請求者において、本条例9条各号所定の非開示事由のどれに該当するのかをその根拠とともに了知し得るものでなければならず、単に非開示の根拠規定を示すだけでは、当該公文書の種類、性質等とあいまって開示請求者がそれらを当然知り得るような場合は別として、本条例第7条第4項の要求する理由付記としては十分ではないといわなければならない。」と判示し、本件非開示決定には理由付記について不備があるとして、上告を棄却している。これを市政改革室の不存在決定(令和4年2月9日付大市第40号)で示された不存在理由に当てはめると、細かい点、は省略するとして、不存在理由の核となる部分は「作成していたとしても、平成27年度以前であるため、保存年限(5年)が経過したために廃棄し」である。これが、「処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服の申立に便宜を与える」ものとしては不十分である。
・まず、市政改革室の不存在決定(令和4年2月9日付大市第40号)の不存在理由は、「『記載例』に『区民モニターアンケートで『・・・・』と回答した割合〇年度末までに□%以上』と記載した意図が確認できる文書及び『区民モニターアンケート』で『その状態を客観的に測定できるよう数値化した指標』の測定ができると考えた根拠が確認できる文書については、当該文書をそもそも作成していたかどうかが不明であり、作成していたとしても、平成27年度以前であるため、保存年限(5年)が経過したために廃棄し、実際に存在しないため。」である。
・そして、この決定の基となった公開請求における請求対象文書は、「『記載例』に『区民モニターアンケートで『・・・・』と回答した割合〇年度末までに□%以上』と記載した意図が確認できる文書」、「『区民モニターアンケート』で『その状態を客観的に測定できるよう数値化した指標』の測定ができると考えた根拠が確認できる文書」である。
・また、市政改革室の不存在決定(令和4年2月28日付大市第46号)の不存在理由は、「(請求内容1について)『平成29年度世論調査結果報告書』の『報告書を読む際の留意点』は、本市が世論調査を委託した業者が仕様書に基づいて作成したものであり、仕様書上では『報告書を読む際の留意点』の掲載について具体的に明示しておらず、当該文書の記載の意図、目的がわかる文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」である。
・そして、この決定の基となった公開請求における請求対象文書は、「記載の意図、目的がわかる文書」、「この記載の根拠がわかる文書」である。
・上記の最高裁判決で判示されている理由付記の趣旨は、「開示請求者が不服申立てを行うために理由を“了知し得る程度’に具体的に示す必要がある」、「理由付記は、行政の判断の慎重・公正妥当を担保するための制度である」である。
・つまり、「保存期間経過で廃棄した」、「当該文書の記載の意図、目的がわかる文書を作成又は取得しておらず」などの形式的説明では、理由付記の要件を満たさない。なぜなら、請求者は「なぜその文書が作成されなかったのか」、「なぜ廃棄されたのか」、「廃棄によって説明責任が果たせなくなることを承知していたのか」、「文書管理規程に照らして適切だったのか」、「どのような調査を行ったのか」を知る必要がある。これらが分からなければ、不存在決定の妥当性を争うことができない=理由付記の目的が果たされないということである。繰り返すが、上記最高裁判決が示すとおり、理由付記制度は「処分庁の判断の慎重・合理性を担保し、その恣意を抑制する」ための制度である。したがって、理由付記は単なる“形式的説明”では足りず、行政がどのような調査を行い、どのような判断過程を経て不存在と結論づけたのかなどを具体的に示すことが不可欠である。審査会のいう「不存在理由が明らかなら足りる」という理解は、理由付記制度の趣旨を著しく矮小化するものであり、判例の基準を誤解している。
・本件の請求対象文書は上記のとおり「根拠がわかる文書」などである。この文書が不存在であることにより、市政改革室は「なぜその指標を採用したのか」、「区民(モニター)アンケートで測定できると判断した根拠」、「その妥当性」、「平成29年度世論調査結果報告書の記載内容の意味」を説明できなくなっている。つまり、文書不存在は、行政の説明責任の履行不能という重大な結果を直接引き起こしている。このような重大な結果をもたらす不存在決定において、「保存期間経過で廃棄した」という形式的説明だけで足りるはずがない。本来求められるのは、「なぜ作成されなかったのか」、「なぜ廃棄したのか」、「廃棄によって説明責任が果たせなくなることを承知していたのか」、「文書管理条例に照らして適切だったのか」、「廃棄記録はあるのか」といった、説明責任の観点を含む“実質的な不存在理由”である。審査会はこれを全く求めていない。これは上記最高裁判決で示されている理由付記の趣旨に反するものである。
・そして、答申第542号には「そこで、次に、このような記載が認められるかが問題となるが、例えば、保存年限が経過した過去のある事業の実施理由については、当該事業の実施決裁文書に記載されていた可能性は高いが、もはやその決裁文書自体が保存年限経過のため廃棄されており、当該公文書が作成されていたか否かが不明ということも十分ありうることである。このような場合、本件決定に付されたような理由とならざるを得ず、またそれで必要十分と認められる。」と記載がある。これは、実施が終了した過去の事業に関しては妥当するのかもしれないが、公開請求は現行事務に関するものである。(世論調査そのものは終了していたのかもしれないが、「マーケティングリサーチツール」としての事業は、例えば各区の区民アンケートという形で存続している)。そして、請求対象文書は説明責任を果たすために必要な文書であり、事実上記のように市政改革室はこの文書が不存在であるために説明責任を果たせなくなっている。大阪市の情報公開条例解釈、運用の手引きには次のとおり記載されている。(2)「公開請求に係る公文書を保有していない理由」欄/「公文書不存在については、①当該公文書をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しない場合、②当該公文書は存在したが、保存年限が経過したために廃棄した場合、③文書等は存在するが、組織的に用いていないなど解釈上第2条第2項に規定する『公文書』に該当しない場合があり得る。理由の記入にあたっては、上記の①②又は③のいずれに相当するのかが公開請求者に分かるように記入するだけでなく、公文書作成指針で示されているように、説明責任を果たす観点から、なぜ作成又は取得していないのかということについても、公開請求者に対して明確になるよう具体的に記入する。」と記載がある。ここには、「①②又は③のいずれに相当するのかが公開請求者に分かるように記入するだけでなく」、「説明責任を果たす観点から、なぜ作成又は取得していないのかということについても、公開請求者に対して明確になるよう具体的に記入する」と記載されており、「当該文書をそもそも作成していたかどうかが不明であり、作成していたとしても、平成27年度以前であるため、保存年限(5年)が経過したために廃棄し、実際に存在しないため。」とするのみである理由付記が「必要十分」であるなどとは説明されていない。答申第542号は、この手引きの水準すら満たしていない。本件のように、文書不存在が行政の説明責任の履行不能を直接引き起こす場合、「なぜ廃棄したのか」「なぜ作成しなかったのか」を明らかにすることは、理由付記の核心である。これを欠いた不存在理由は、請求者が不服申立てを行うための基礎情報を欠き、理由付記制度の目的(慎重・公正妥当な判断の担保、不服申立ての便宜)を全く果たしていない。よって、審査会が「形式的な不存在理由で足りる」とした判断は、理由付記制度の趣旨に反するものである。
・令和8年2月18日付け意見書で示したとおり、北九州市審査会(答申第191号)は、文書不存在について「行政文書の不存在は、民主主義の根幹を揺るがす問題である」、「文書が作成されていないこと自体に問題がある」と述べている。そして付帯意見を付し、行政に改善を求めた。大阪市審査会は、同様に文書不存在が生じているにもかかわらず、制度的観点からの指摘を一切行っていない。これは、「大阪市公文書管理条例第4条(意思決定の文書化義務)」、「情報公開条例の目的(説明責任・検証可能性)」、「国の『公文書等の管理に関する法律』の理念」のいずれにも反する。審査会は、制度の健全性を守るために、文書不存在そのものが問題であることを明確に指摘し、付帯意見を付すべきであった。
・本件では、「文書不存在が行政の説明責任の履行不能を直接引き起こしており」、「その不存在理由が形式的で、判例の要請する具体性を欠き」、「文書管理制度・情報公開制度の目的を没却している」ことから、「不存在理由の不備は、原決定を取り消す理由として十分である」と判断される。審査会の「不存在理由が明らかなら足りる」という論理は、判例にも制度趣旨にも明確に反している。
11 令和8年4月3日及び同月6日付け意見書
・市政改革室の不存在決定の内容に踏み込む前に、答申第545号でなされた「7 審査請求人への付言」に関して弁明することをご容赦願う。審査請求人が行う情報公開請求に関しては、本来「市民の声」制度を利用して実施機関に説明を求めるべき性格のものも含まれている。
・しかし、実施機関(政策企画室など)は、審査請求人の申出を「市民の声」として受理せず、説明責任を果たしていない。本来「市民の声」で説明されるべき事項が説明されない以上、審査請求人としては情報公開請求により行政の判断根拠を確認するほかなく、これは制度運用上の問題である。委員各位におかれましては、事情をご賢察願う。
・原決定における不存在理由は、「(請求内容1について)『平成29年度世論調査結果報告書』の『報告書を読む際の留意点』は、本市が世論調査を委託した業者が仕様書に基づいて作成したものであり、仕様書上では『報告書を読む際の留意点』の掲載について具体的に明示しておらず、当該文書の記載の意図、目的がわかる文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」となっている。この不存在理由に関しては、これまでの審査請求書や意見書で述べているとおり、/1.業務委託契約の履行確認の際に、記載の意図、目的は確認されているはずである/2.この報告書を大阪市Webサイトに掲載する際に、記載の意図、目的は確認されているはずである/3.市政改革室が過去に行ってきた市民の声の回答による説明とは矛盾している/4.市政改革室は、この報告書に当初誤って記載されていた標本誤差を求める式について、修正を行った決裁文書に統計学的根拠が明記されており、この記載の意図が統計的推定「母比率の推定」を説明するものであることについて、明確に理解していた/特に4.については、この記載がこの世論調査が統計学に基づく標本調査であり、この「報告書を読む際の留意点」の記載が「母比率の推定」に関する説明であることを理解していないと、標本誤差を求める式を修正すること自体が不可能なのであり、修正できているという事実が、市政改革室がこの記載の意図、目的を理解していたということを証明している。したがって、「意図・目的を示す文書を作成・取得していない」という不存在理由は、市政改革室自身が過去に行った修正行為と矛盾する虚偽の理由付記である。また、3.に関しては、報告書を公表する以上、その内容について「行政としての説明責任」を負うものであり、したがって、報告書の記載の意図・目的を確認していないという主張は、行政の業務プロセスとして成立しない。そして、「仕様書に記載がない」ということが直ちに請求対象文書が不存在であることを説明するものであるはずがない。この理由は仕様書以外に請求対象文書が存在する可能性を排除していない。
・情報公開審査会答申第545号は、市民局の不存在理由(令和4年3月4日付大市民第1026号、令和4年3月16日付大市民第1076号〉について、/原決定が対象文書として挙げた文書は不適切/理由付記は請求対象文書と無関係/事実に基づかない理由付記である/と明確に認定している。これと同様、本件不存在決定の不存在理由も、事実に反する理由付記である。
・条例第10条第3項は、「理由を示さなければならない」と規定しています。これは単なる形式的記載義務ではなく、/実施機関の恣意的判断の抑制/審査請求人の争訟権の保障/行政の説明責任の確保/という制度的目的を持つものである。この目的を確保するため、理由付記は事実に基づく適切なものでなければならないはずであり、この点に関しては情報公開条例第536号においても、「理由の記載については、条例第10条第3項において、『実施機関は、前2項の規定により公開請求に係る公文書の全部又は一部を公開しないときは、公開請求者に対し、当該各項に規定する書面によりその理由を示さなければならない。』と規定されているとおり、条例上義務付けられたものであり、もとより、記載の理由は事実に基づく適切なものである必要がある。」との指摘がされている。
・不存在理由が事実に反する場合、審査請求人は「何を争えばよいのか」を誤認し、結果として審査請求権そのものが実質的に侵害される。したがって、理由付記の適正性は不存在決定の適法性の核心部分であり、「結論に影響しない」とする答申545号の判断は、審査制度の根幹を揺るがすものである。
・「審査請求権の実質的な侵害」について、具体的には、答申第545号の対象となっている市民局の不存在決定(令和4年3月4日付大市民第1026号)では、「令和3年8月30日付け大市民第517号の公開決定通知により既に公開した区長会議資料以外には当該公文書を作成又は取得しておらず」との事実ではない不存在理由が記載された結果、答申第545号でもこの点が争点とされてしまい、本来争点とされるべきであった、「なぜ作成または取得していないのか」という点についての実質的な審議がなされなかった。この公開請求には「請求の趣旨は、調査の目的を達成するために、区民アンケートをどのように設計したのか(つまり、調査の目的が達成可能だとする根拠)ということです。」と記載した。つまり請求の趣旨は、文書の有無はもちろんのこと、不存在だというのであれば、調査の目的が達成されるということに関して、文書不存在でも説明可能であるとする理由(つまりは「なぜ作成または取得していないのか」)を明らかにすることである。しかし、市民局の決定では「なぜ作成または取得していないのか」との記載は行われず、上記の事実ではない理由付記がなされた結果、実質的な審議がなされなかった。これを争訟権の侵害と言わずしてなんというのか。
・答申第545号においては上記のとおりの事実認定が行われている。しかるに結論において「よって、本件各決定において、実施機関が、根拠が記載されているとして示した公文書の当否はともかく、理由の提示として不十分なところは認められないことから、理由付記に違法又は不当な点は認められない。」としている。そして、審査請求人が示した最高裁判決に関しては「これに対して本件は、条例第10条第2項(これが根拠規定であると考える。)に基づく不存在決定であることを明示し、かつ、結果として正しくない部分はあったがなぜ不存在であるかも記載して決定を行った事案である。よって、審査請求人の示す判決は、本件と事案を異にし、審査請求人の主張を認めることはできない。」としている。
・このような答申第545号の認定は、以下のような悪影響を及ぼすものであると考える。/(l)過去の答申(第536号)との矛盾/これも上記のとおり答申第536号では理由付記に関して「もとより、記載の理由は事実に基づく適切なものである必要がある」と認定されており、答申第545号はこれと矛盾する。/(2)条例の趣旨、目的を没却させる/上記のとおり、条例10条3項の趣旨は、「実施機関の恣意的判断の抑制」などである。しかし、事実と異なる理由付記を容認することにより、この目的を没却させてしまう。
・これは以下の理由による。答申545号の論理を一般化すると、「実施機関は、理由付記が誤っていても(文書が適切なものではないと分かっていても)、とりあえず何か書いておけば不存在決定は適法」になる。これは情報公開制度の「死」である。このような認定が行われると、実施機関は以下のような判断を行うようになる。/「とりあえず区長会議資料と書いておけばよい」/「事実と違っても、審査会は不存在決定を維持する」/「理由付記の適切性は問われない」/これは恣意の濫用を制度的に容認する危険な判断であり、条例第10条第3項の趣旨(恣意の抑制)を完全に無視するものである。そしてこれは、答申第542号での認定が、さっそく実施機関の弁明書などで「悪用」されていることにより証明されてしまっている。答申第545号のこのような判断が定着すれば、実施機関は「虚偽の理由付記」を行っても「適法な決定」と判断され、情報公開制度の根幹である「行政の透明性」やひいては条例第10条3項の趣旨、目的が制度的に損なわれる。
・答申第545号では次の判断が行われている。「逆に、結果的に不存在決定が違法・不当であるとの結論に至った場合に、条例第10条第3項(大阪市行政手続条例第8条第1項)に反することを理由に取り消さなければならないとすれば、実体的な判断を終えているにもかかわらず、すべからく手続違法により取り消されることになり、不必要に時間を要する結果にしかならない。」とされている。ここで示されている審査会の懸念は、一時的には妥当なものかもしれない。しかし、一時的に「不必要に時間を要する結果」になるにせよ、中長期的には、不存在理由を適切なものにすることにつながり、それにより初めて「実施機関の恣意の抑制」を果たすことができるようになるものと考える。現状、「情報公開条例解釈、運用の手引き」に「なぜ作成または取得していないのか」を記載しなければならないことが明記されているにもかかわらず、このような記載がなされず、単に「作成または取得していないので不存在」としか書かれないことが常態化している。総務局情報公開グループの統括部署としての指導性の問題もあるのかもしれないが、情報公開制度が適切に運用されるようにするためにも、理由付記の不備については厳しい判断が必要になるものと考える。理由付記の適正化は、行政の説明責任を確保し、情報公開制度の信頼性を高めるために不可欠である。本件不存在決定のように、事実に反する理由付記を容認することは、制度の健全な運用を損なうものである。
12 令和8年4月14日付け意見書
・3月31日付意見書の「4 条例第10条第3項の趣旨について」において、「情報公開条例第536号」と記載したが、これは「情報公開条例第539号」の誤りであったので訂正する。
・答申第545号における最高裁判決の評価については3月31日付意見書では答申の抜粋にとどまっている。以下、答申の判断を再掲する。「これに対して本件は、条例第10条第2項(これが根拠規定であると考える。)に基づく不存在決定であることを明示し、かつ、結果として正しくない部分はあったがなぜ、不存在であるかも記載して決定を行った事案である。よって、審査請求人の示す判決は、本件と事案を異にし、審査請求人の主張を認めることはできない。」と、この答申の認定では「本件と事案を異にし」と評価されている。
・以下にこの最高裁判決の解説について、「重要判例に学ぶ地方自治の知識」から引用する。/「6 行政処分と理由付記・判例理論について/(1)行政処分は、あらためて述べるまでもなく、法律(条例)に基づき適正になされなければならないものであるし、『公正』に、かつ『透明性』をもってなされなければならないものであり、それ故、行政庁としては、常に、自己の行為(行政処分)が適正であることについての説明責任を求められるものであり、『理由付記』も行政処分が法律に基づき適正に行われたものであることの『証し』としての意味を有するものである。/(2)行政処分と理由付記の関係については、本件最高裁判決も引用するとおり、最高裁昭和38年5月31日判決は、青色申告についてなされた更正決定について、理由付記を命じている旧所得税法45条2項等に関し、『一般に、法が行政処分に理由を附記すべきものとしているのは、処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服の申立に便宜を与える趣旨に出たものであるから、その記載を欠くにおいては処分自体の取消を免かれないものといわなければならない。』と判示するとともに、『理由付記』の程度については、『どの程度の記載をなすべきかは、処分の性質と理由附記を命じた各法律の規定の趣旨・目的に照らしてこれを決定すべきである』と判示し、理由付記の程度については、要するに、処分の性質と理由付記を命じた法律の趣旨・目的に照らして決定されるべきものであると判示しているのであり、その後に出された一連の最高裁判例により、上記基準はまさに判例法として確立するに至っているのである。/(3)本件最高裁判決は、情報公開に関するものであるが、行政処分と理由付記との関係に関する上記最高裁判例が妥当するものであることを明確に判示しているものであるし、条例において理由付記を命じている以上、安易な理由付記は許されないものであり、当該非開示決定は理由付記の不備という点だけで取消されるものであることを判示しているのである。」
・つまり、この判決は最高裁昭和38年5月31日判決において確立された考え方を情報公開制度の不開示決定に適用したものである。そして、これが不存在決定における理由付記にも適用されるものであることは言うまでもなく、答申第545号の「本件と事案を異にし」との認定は失当である。
・答申第545号の基となった市民局の不存在決定(令和4年3月4日付大市民第1026号及び令和4年3月16日付大市民第1076号)の不存在理由は「4.本契約により得られた結果により、地域活動協議会の認知度向上に向けた支援の評価が可能であるとする根拠が示された文書」については、令和3年8月30日付け大市民第517号の公開決定通知により既に公開した区長会議資料以外には当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。/「5.本契約により得られた結果により、『区同士の比較』、『経年でみる』が可能であるという根拠が示された文書」については、本調査は現在継続中であり、本件請求日(令和4年2月19日)時点で結果を取りまとめた資料は未作成であるから、当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。/「『目標達成などと判断した根拠については、アンケート調査の結果数値が目標値に達したかどうかで判断しています。』について、そのような判断方法を採用する根拠や、判断方法の合理性、妥当性がわかる文書」については、令和3年8月30日付け大市民第517号の公開決定通知により既に公開した区長会議資料以外には当該公文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」としている。
・この理由付記に関して答申第545号では次のとおり認定されている。「この点、審査請求人が主張するように、本件決定1については、実施機関が対象文書としている「令和3年8月30日付け大市民第517号の公開決定通知により既に公開した区長会議資料」や(令和3年度区民アンケートの調査)「結果を取りまとめた資料」は、結論として本件請求1の対象文書ではなく、また、本件決定2については、実施機関が対象文書としている「令和3年8月30日付け大市民第517号の公開決定通知により既に公開した区長会議資料」は、結論として本件請求2の対象文書の一部でしかない。
・このように審査会は市民局の不存在決定が事実に基づいていないということを明確に認定している。上記のとおり最高裁判決は「一般に、法が行政処分に理由を附記すべきものとしているのは、処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服の申立に便宜を与える趣旨に出たものであるから、その記載を欠くにおいては処分自体の取消を免かれないものといわなければならない。」としている。この市民局のように事実に基づかない理由付記が取り消されずまかり通るのであれば、「慎重・合理性を担保する」ことも「その恣意を抑制する」こともできない。また、処分理由が正しく請求人に知らされないことにより、「不服の申し立てに便宜を与える」こともできず、法の趣旨を逸脱するものであるから「その記載を欠くにおいては処分自体の取消を免かれないもの」であることは明らかである。
・これを本件市政改革室の不存在決定についてみると、不存在理由は「(請求内容1について)「平成29年度世論調査結果報告書」の「報告書を読む際の留意点」は、本市が世論調査を委託した業者が仕様書に基づいて作成したものであり、仕様書上では「報告書を読む際の留意点」の掲載について具体的に明示しておらず、当該文書の記載の意図、目的がわかる文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」としている。
・この記載が事実に基づいていないということは、これまでに提出した各意見書で主張した通りである。最も重要な点は、当初この報告書が大阪市Webサイトに掲載されたときには、標本誤差を求める式が誤っており、それを審査請求人が指摘したところ、正しい式に修正されたという事実である。審査請求人はこの修正に係る決裁文書を公開請求で入手したが、そこには、総務省統計局Webサイト「なるほど統計学園」のURLが記載されていた。そして、そのWebサイトには、統計学的説明が記載されていたのであり、市政改革室はこのWebサイトの記載などを基にして、この「報告書を読む際の留意点」の意図、目的を理解していたことは明らかである。
・なお、市政改革室はこの決裁文書に関して、「平成29年度世論調査結果報告書」より後に作成されたことを理由に請求対象文書ではないとしているが、何より指摘から短時間のうちに標本誤差を求める式の誤りを修正できているという事実こそが、そもそも市政改革室がこの「報告書を読む際の留意点」の記載の意図、目的を理解していたということを明らかにしているのであり、その理解の基となった文書が存在しないはずはない。また、この理由付記に関しては、仕様書以外に請求対象文書が存在する可能性を否定するものではない。ここにはどのように文書探索義務を尽くしたのかに関する説明が全くなく、仕様書以外に文書が存在する可能性は否定されていない。
・大阪市情報公開条例第29条第3項には「3 審査会は、必要があると認めるときは、諮問庁に対し、公開決定等に係る公文書に記録されている情報の内容を審査会の指定する方法により分類又は整理した資料を作成し、審査会に提出するよう求めることができる。」と規定されている。
・これに関して「情報公開条例解釈、運用の手引き」には「(第3項関係)/本項は、公開決定等に係る公文書が大量であり、複数の非公開事項が複雑に交錯している事案などの審理では、論点を整理し、効率的な調査審議を行うためにも、非公開とされた部分と当該部分に適用された非公開情報の規定及びその理由、存否応答拒否又は公文書不存在の場合はその理由等を、審査会の指定する方法により分類又は整理した資料(以下「ヴォーン・インデックス」という。)を活用することが有効であることから、審査会は、必要があると認めるときは、諮問庁に対し、ヴォーン・インデックスを作成し、審査会に提出するよう求めることができる権限を有することを定めたものである。」と記載されている。ここには「公文書不存在の場合はその理由等」を「審査会は、必要があると認めるときは、諮問庁に対し」、「審査会に提出するよう求めることができる権限を有する」と記載されており、不存在理由の妥当性に関する調査、審議も審査会に求められる役割であることが明らかである。上記のとおり答申第545号では、原決定の理由付記が事実に基づいていないということを認定しながら、「理由付記は適法」と結論付けている。理由付記の趣旨は、上記最高裁判決が認定する通り、「処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服の申立に便宜を与える趣旨に出たもの」である。そして、審査会に求められるのは、この現実になされた理由付記が、この趣旨にかなうものであるのかどうかについて、第三者の観点からチェックすることである。しかし、答申第545号では「実施機関が形式的に理由を書いていれば、内容が誤っていても適法」という結論になってしまっており、審査会に求められる機能を自ら弱めてしまっている。これは審査会の存在意義を自ら否定するものである。
・審査会の答申には「条例の基本的な理念は、第1条が定めるように、市民の公文書の公開を求める具体的な権利を保障することによって、本市等の説明責務を全うし、もって市民の市政参加を推進し、市政に対する市民の理解と信頼の確保を図ることにある。したがって、条例の解釈及び運用は、第3条が明記するように、公文書の公開を請求する市民の権利を十分尊重する見地から行われなければならない。」と記載されている。審査会の審査は「公文書の公開を請求する市民の権利を十分尊重する見地から行われ」ているのか。
・この市政改革室の不存在決定(令和4年2月28日付大市第46号)は事実に基づいておらず、不存在理由の記載が不十分なものであるため、最高裁判決のとおり、「処分自体の取消を免かれないもの」である。特に問題なのは、先の意見書でも指摘した争訟権の侵害である。理由付記が事実ではない場合/審査請求人は「何を争えばよいのか」を誤認し、争点を設定することができない/本来争うべき「なぜ作成・取得していないのか」が審査されない/実質的な審査請求権が奪われる/ということになってしまい、請求人が請求対象文書の存否について争うことができなくなってしまう。
第4 実施機関の主張
実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。
1 弁明の趣旨
本件決定は条例にのっとった適正なものである。
2 弁明の理由(弁明書(意見書))
(1) 請求対象文書について
審査請求人は、「平成29年度世論調査結果報告書」に記載されている「報告書を読む際の留意点」について、この記載の意図、目的がわかる文書の公開を求めているものである。
平成29年度世論調査業務委託(市政に関する市民意識調査)仕様書では、「(7)報告書の作成」の項目において「ア 他の自治体の世論調査の報告書等を参考にしながら、基本的な報告書の構成要素を盛り込んだ読みやすく分かりやすい報告書を作成すること。」と記載している。
つまり、「平成29年度世論調査結果報告書」は、仕様書に基づき、委託事業者の判断で作成することが予定されているものである。
そして、委託事業者から提出された世論調査結果報告書は、仕様書に記載のとおり、他の自治体の世論調査の報告書等の構成要素を盛り込んだ内容であることが確認できたため、その内容を本市ホームページに掲載したものである。
したがって、当該文書の記載の意図、目的がわかる文書については作成又は取得しておらず、実際に存在しない。
(2) 「市民の声」の回答について
当庁が実施している世論調査は、統計法に基づく統計調査ではなく、標本の代表性や、観測された偏りなどが母集団について有意であるかを確認しなければならないとする法令等の定めはない。
そのため、調査によって取得したデータは、母集団の代表となっているとは必ずしも言えないということを認識した上で、必要に応じて様々な関連情報を合わせて、施策・事業を進める上での総合的な判断を行う際に活用しているものである。
「世論調査結果報告書」に記載されている「報告書を読む際の留意点」についても、取得したデータが母集団の代表となっているとは必ずしも言えないということを認識した上で、一般的な標本調査の説明を記載したものに過ぎず、当該調査は統計法に基づく統計調査ではなく、「世論調査結果報告書」に記載の数値は、調査結果から得られた数値をそのまま記載したものであるため、審査請求人が主張するような母集団の推計を目的とした標本調査の説明を意味するものではない。
なお、この記載については、各報告書を読んだ方が審査請求人のような誤解をしないよう、平成30年度以降の報告書には記載していない。
したがって、「平成29年度世論調査結果報告書」に記載されている「報告書を読む際の留意点」について、この記載の意図、目的がわかる文書については作成又は取得しておらず、実際に存在しない。
なお、審査請求人は、市民の声の回答内容について、「本市で実施している世論調査は、母集団の推計のみを目的としたものではなく」と記載されている、その一文章だけをとらえ、「母集団の推計を目的としている」と解釈している。
しかし、当庁が回答した内容は、その後の文章があり、「回答者の性別や年代などの属性を全てホームページで公表したうえで、例えば回答の偏りの傾向から当該施策・事業の関心の高さを概観したり、その中から頂いたご意見を施策・事業を進めるうえでの参考とするなど、統計データ以外の様々な関連情報も含めて総合的な判断を行う際に活用しています。なお、報告書に記載の標本誤差に関する説明については、母集団の推計が可能であるかのような印象を与えることのないよう、今後、表現を工夫してまいります。」と記載していることから、当庁が実施する世論調査が母集団の推計を目的としたものであると説明したものではない。
さらに、標本誤差の数式については、当時(平成30年度)、市民の声等で指摘があり、記載内容に誤りがあったことから、数式を修正しただけであり、審査請求人が言う、記載内容の妥当性、つまり「世論調査が母集団の推計を目的としているもの」と判断したものではない。
第5 審査会の判断
1 基本的な考え方
条例の基本的な理念は、第1条が定めるように、市民の公文書の公開を求める具体的な権利を保障することによって、本市等の説明責務を全うし、もって市民の市政参加を推進し、市政に対する市民の理解と信頼の確保を図ることにある。したがって、条例の解釈及び運用は、第3条が明記するように、公文書の公開を請求する市民の権利を十分尊重する見地から行われなければならない。
2 争点
審査請求人は、本件決定に付された理由が不十分である旨主張するとともに、本件請求文書が存在するはずであると主張している。
したがって、本件審査請求の争点は、本件決定の理由付記に違法又は不当な点があるか否か(以下「争点1」という。)と、本件請求文書の存否(以下「争点2」という。)である。
3 争点1について
大阪市行政手続条例(平成7年条例第10号)第8条第1項は、「行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。」と規定し、同条例の特則と位置づけられる条例第10条第3項は、「実施機関は、前2項の規定により公開請求に係る公文書の全部又は一部を公開しないときは、公開請求者に対し、当該各項に規定する書面によりその理由を示さなければならない。この場合において、当該理由の提示は、公開しないこととする根拠規定及び当該規定を適用する根拠が、当該書面の記載自体から理解され得るものでなければならない。」と規定しているところである。
ここで、どの程度の理由の記載が必要かであるが、情報公開条例解釈・運用の手引(令和7年6月版)において、「公文書不存在については、①当該公文書をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しない場合、②当該公文書は存在したが、保存年限が経過したために廃棄した場合、③文書等は存在するが、組織的に用いていないなど解釈上第2条第2項に規定する「公文書」に該当しない場合があり得る。/理由の記入にあたっては、上記の①②又は③のいずれに相当するのかが公開請求者に分かるように記入するだけでなく、公文書作成指針で示されているように、説明責任を果たす観点から、なぜ作成又は取得していないのかということについても、公開請求者に対して明確になるよう具体的に記入する。」と記載されており、この程度の記載があれば、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えていると言えることから(最高裁昭和36年(オ)第84号同38年5月31日第二小法廷判決・民集17巻4号617頁参照)、審査会としても、同手引に記載された程度の理由さえ記載されていれば、違法・不当とはならないと考える。
これを本件について見ると、本件決定においては、条例第10条第2項に基づく不存在決定であることを明示するとともに、「「平成29年度世論調査結果報告書」の「報告書を読む際の留意点」は、本市が世論調査を委託した業者が仕様書に基づいて作成したものであり、仕様書上では「報告書を読む際の留意点」の掲載について具体的に明示しておらず、当該文書の記載の意図、目的がわかる文書を作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」との理由が示されており、上記情報公開条例解釈・運用の手引(令和7年6月版)の分類で言うと、「①当該公文書をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しない場合」であると認められる。また、同手引の「なぜ作成又は取得していないのかということについて」も、「本市が世論調査を委託した業者が仕様書に基づいて作成したものであり」との記載があることから、実施機関自身が作成したものではないことから当該記載の意図、目的がわかる文書が存在しないということが容易に推測できるものである。
よって、本件決定の理由付記は、情報公開条例解釈・運用の手引(令和7年6月版)にのっとった適切なものであり、違法又は不当な点は認められない。
なお、審査請求人は、令和8年3月9日付け意見書において、平成4年(行ツ)第48号同4年12月10日最高裁第一小法廷判決・裁判集民事166号773頁を引用し、本件決定に付された理由が不十分であると主張している。
しかし、上記判決は、令和8年3月9日付け意見書で審査請求人が引用している部分の後で、「この見地に立って本条例〔東京都公文書の開示等に関する条例〕9条8号をみるに、同号は、開示の請求に係る公文書に、「監査、検査、取締り、徴税等の計画及び実施要領、渉外、争訟、交渉の方針、契約の予定価格、試験の問題及び採点基準、職員の身分取扱い、学術研究計画及び未発表の学術研究成果、用地買収計画その他実施機関が行う事務事業に関する情報であって、開示することにより、当該事務事業の目的が損なわれるおそれがあるもの、特定のものに不当な利益若しくは不利益が生ずるおそれがあるもの、大学の教育若しくは研究の自由が損なわれるおそれがあるもの、関係当事者間の信頼関係が損なわれると認められるもの、当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の公正若しくは円滑な執行に支障が生ずるおそれがあるもの又は都の行政の公正若しくは円滑な運営に著しい支障が生ずることが明らかなもの」に該当する情報が記録されているときは、当該請求に係る公文書の開示をしないことができるとするものである。公文書の開示の請求は、開示を請求しようとする公文書を特定するために必要な事項を記載した請求書を提出してしなければならないとされている(本条例6条3号)ので、当該公文書の非開示理由として本条例9条8号に該当する旨の記載のみによって、開示請求者において、当該公文書の種類、性質あるいは開示請求書の記載に照らし、非開示理由が同号所定のどの事由に該当するのかをその根拠とともに了知し得る場合があり得るとしても、同号に該当する旨の記載だけでは、開示請求者において、非開示理由がいかなる根拠により同号所定のどの事由に該当するのかを知り得ないのが通例であると考えられる。これを本件について見るに、被上告人によって前示のとおり特定された本件文書の種類、性質等を考慮しても、本件付記理由によっては、いかなる根拠により同号所定の非開示事由のどれに該当するとして本件非開示決定がされたのかを、被上告人において知ることができないものといわざるを得ない。そうであるとすれば、単に「東京都公文書の開示等に関する条例第9条第8号に該当」と付記されたにすぎない本件非開示決定の通知書は、本条例7条4項の定める理由付記の要件を欠くものというほかはない。」(〔〕内審査会補足)と判示しているとおり、該当する非公開事由が抽象的かつ網羅的な規定であるにもかかわらず、理由として該当条項のみ記載して不開示決定を行った事案について、理由付記の要件を欠くと判断したものである。
これに対して本件決定は、上記のとおり、条例第10条第2項に基づく不存在決定であることを明示するとともに、「本市が世論調査を委託した業者が仕様書に基づいて作成したものであり」と記載されているように不存在である理由も記載して行われたものである。
この点、審査請求人は、令和8年3月9日付け意見書において、「ここで不存在理由の核となる部分は「仕様書上では「報告書を読む際の留意点」の掲載について具体的に明示しておらず」です。上記の最高裁判決では、不開示理由として法の条項しか示されておらず、なぜその条項が適用されるのかということなどが記載されていないことが違法とされています。これは原決定の不存在理由で言えば、「なぜ具体的に明示する必要がなかったのか」ということを記載しなければならないということに相当するのであり、この記載がなく、単に「具体的に明示していない」と言うだけでは、法の条項を示すにとどまるものと同じだということです。」と主張している。しかし、付記理由の「具体的に明示しておらず」は、具体的に明示していないから記載の意図、目的がわかる文書を作成又は取得していないということであり、作成又は取得していない理由としては十分なもので、「なぜ具体的に明示する必要がなかったのか」まで本件決定の理由として付記すべき特段の事情は認められない。
よって、審査請求人の示す判決は、本件と事案を異にし、審査請求人の主張は採用できない。
4 争点2について
(1) 本件請求文書の存否について
審査請求人が求めている文書は、「報告書を読む際の留意点」の記載の意図、目的がわかる文書である。
これについて、実施機関は、「平成29年度世論調査結果報告書」の2ページの「報告書を読む際の留意点」については、平成29年度世論調査業務委託(市政に関する市民意識調査)仕様書の「(7)報告書の作成」の項目における「ア 他の自治体の世論調査の報告書等を参考にしながら、基本的な報告書の構成要素を盛り込んだ読みやすく分かりやすい報告書を作成すること。」との記載をもとに、受託業者の判断で作成されたものであると主張している。
この点、仕様書とは、委託する業務の内容、手順、成果物の仕様、納期、実施条件などを具体的に定めた文書であり、本件の仕様書に実施機関が主張する記載があったことに争いはない。
そして、本件業務委託においては、仕様書の範囲内においてどのような成果物を作成するのかについては受託業者の裁量に委ねられていると言え、まさにその範囲内において、受託業者が何らかの根拠をもとに、自らの意図で、当該文書を作成したものと認められる。
よって、実施機関の「報告書を読む際の留意点」を記載した意図、目的がわかる文書を保有していないとの主張に特段不自然・不合理な点はない。
(2) 審査請求人の主張について
まず、審査請求人は、「平成29年度世論調査結果報告書」の掲載後に実施機関の判断で修正が行われたことをもって不存在であるはずがないと主張する。しかし、業務委託の成果物の提供を受けた後に、実施機関の判断で成果物の修正を行うことは一般的にあり得ることであり、本件のような誤記に近い数式の修正は、受託業者が当該数式を記載した意図、目的がわかる文書がなくても行えるものである。
また、審査請求人は、「平成29年度世論調査結果報告書」の掲載後に審査請求人が行った記載内容に関する質問(市民の声)に対する実施機関からの回答に、「なお、報告書に記載の標本誤差に関する説明については、母集団の推計が可能であるかのような印象を与えることがないよう、今後、表現を工夫してまいります。」と記載されていることをもって、「報告書を読む際の留意点」は実施機関の意図のもと記載されたと主張するが、上記のとおり、「報告書を読む際の留意点」はあくまで受託業者の裁量のもと作成されたものであり、受託業者の作成後に行われた「今後、表現を工夫してまいります。」との回答は、今後の同様の業務委託において誤解を与える記載とならないように、仕様書等による業者への指示によって表現をまさに今後改善していくとの趣旨に解されることから、審査請求人の主張する市民の声の回答をもって、「報告書を読む際の留意点」が実施機関の意図のもと記載されたとは言えない。
以上、いずれの審査請求人の主張も、実施機関の「報告書を読む際の留意点」を記載した意図、目的がわかる文書を保有している理由とはならない。
5 その他の審査請求人の主張について
審査請求人のその他の主張は、いずれも上記審査会の判断を左右するものではない。
なお、審査請求人は、令和8年2月24日付け意見書において、「(1)原決定の理由付記について、行政手続法の規定に照らした評価を行い、原決定が「手続的瑕疵ある行政処分」に該当するものであるのかどうかについて検討を行うこと。(2)「不存在」とされた文書について、実施機関の説明が社会通念上妥当といえるか否かを実質的に検討し、必要に応じて付帯意見を付すこと。(3)答申第536号における付言が実施機関に無視されている現状を踏まえ、より強い表現での問題提起を行うこと。(4)情報公開制度の趣旨(市民の知る権利の保障、行政の説明責任の確保)を実効あるものとするため、審査会としての見解を明確に示すこと。」との4点の要請を行っているが、(1)については、上記3のとおり検討を行った結果、瑕疵は認められず、(2)については、上記4のとおり検討を行った結果、「不存在」であることは妥当であると判断したことから「付帯意見」は不要であり、(3)、(4)については、令和8年3月26日付け大情審答申第545号において詳述したとおり、審査会は、あくまで、条例上の決定の是非について判断する機関であり、現行条例下では、その判断を離れて答申後の実施機関の対応を検証し、それについて意見を述べること等は、審査会の権限外の行為である((4)については、同答申でも述べているとおり、必要に応じて付言を行っているが、本答申においては、実施機関への付言は不要と考える。)。
6 審査請求人からの求釈明申立てについて
審査請求人は、意見書において、審査会から実施機関に質問するよう求めているところであるが、いずれも本件の争点にかかわらないと判断したため、確認を行っていない。
求釈明を行うか否かは、もとより、審査会の裁量によるところであるが、念のため求釈明を行っていない理由について、上記のとおり申し添えておく。
7 審査請求人への付言
条例第25条は、意見書等の提出について、「審査請求人等は、審査会に対し、意見書又は資料を提出することができる。」と定め、審査請求人等にその権利を認めている。
しかしながら、これまで審査請求人は、その相当部分において既提出の意見書と同趣旨の主張の繰り返しである意見書を頻繁かつ大量に提出しており、審査会においてその確認及び精査を行うだけでも相当の時間を要するなど、審査会の運営に多大な負担が生じている。
また、審査会は、時間的制約の下で他の諮問案件の調査審議も同時に進める必要があるところ、審査請求人からの意見書が提出される度にその内容について調査審議を行う必要が生じていることから、他の諮問案件の審議の進行に著しい支障を生じさせざるを得ない状況に立ち至っている。
審議の迅速性及び公正性を確保する観点から、意見書における主張は、当該審査請求の原決定の適否に関する点のみに即して、簡潔かつ明瞭に整理される必要があると考える。とりわけ、同趣旨の主張を重ねることは、審議の進行にさらなる支障を生じさせるおそれがあるため、せめて追加・補充の対象となる事項を明確に区別して記載されることが望ましい。
8 結論
以上により、第1記載のとおり、判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
委員 重本 達哉、委員 小林 美紀、委員 榊原 和穂
(参考)答申に至る経過
令和3年度諮問第66号
(略)
答申第551号
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