答申第552号
2026年6月29日
ページ番号:681800
大情審答申第552号
令和8年6月29日
大阪市長 横山 英幸 様
大阪市情報公開審査会
会長 小谷 真理
答申書
大阪市情報公開条例(平成13年大阪市条例第3号。以下「条例」という。)第17条に基づき、大阪市長(以下「実施機関」という。)から令和5年6月1日付け大市第16号により諮問のありました件について、次のとおり答申いたします。
第1 審査会の結論
実施機関が令和5年4月28日付け大市第12号により行った公開決定(以下「本件決定」という。)に対する同年5月4日付けの審査請求(以下「本件審査請求」という。)は、棄却すべきである。
第2 審査請求に至る経過
1 公開請求
審査請求人は、令和5年4月15日、条例第5条の規定に基づき、実施機関に対し、請求する公文書の件名又は内容として「令和1年7月19日付決裁文書「マーケティングリサーチツールに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)」には次の記載があります。
『本件の公文書公開請求等は、複数の市民の名前で行われていますが、これまでの状況を勘案すると、同一人物が行っている可能性が高く、実在する他人の名前を騙る“なりすまし”によって、文書偽造が行われた疑いがあることから、今月10日に所轄の天満警察にその旨を報告し、今後の対応について相談しました。』
『同署からのアドバイスは別紙のとおり』
この相談について、その内容が示された文書を公開してください。」と表示して公文書の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 本件決定
実施機関は、本件請求に係る公文書を、「令和元年7月19日付け『マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)』」(以下「本件文書」という。)と特定した上で、条例第10条第1項に基づき、本件決定を行った。
3 審査請求
審査請求人は、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき、本件審査請求を行った。
第3 審査請求人の主張
本件審査請求における審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
1 審査請求の趣旨
「本件決定を取り消し、改めて文書の特定を行うこと。」との裁決を求める。
2 審査請求の理由
請求の趣旨は、本件文書に、「所轄の天満警察署にその旨を報告し、今後の対応について相談しました。」、「同署からのアドバイスは別紙のとおり」と記載されていることを受け、天満警察署への相談の内容や天満警察署の回答について記載された文書の公開を求めるものである。つまり、どのような相談を天満警察に対して行い、天満警察の説明はどのようなものであったのかを明らかにすることがその目的である。
市政改革室はこの公開請求に対して本件文書を対象文書として特定している。市政改革室は、本件文書が既に審査請求人のもとにあり、審査請求人がその内容を承知していることをわかった上で本件文書を公開対象文書として特定しているのであり、文書の特定としては極めて不適切である。
次に本件文書には「天満警察署からのアドバイス」として「1 提出書類の管理について
本件に関して、市民の声はwebで投稿されていますが、公文書公開請求の一部や決定に対する審査請求は封書で提出されています。また、これまでの市民の声や公文書公開請求等と同趣旨の住民監査請求も封書で提出されています。
本件に関するこれらの封書を保管している所属におかれましては、これまでに相手方から送付された書類を不特定多数の職員が直接手を触れないよう、今後はクリアファイル等で保管してください。また、今後送付される書類についても、本件に関する書類と判明すれば、同様にクリアファイル等で個別に保管し、封入されている書類に直接手で触れてしまった場合は、当該職員名を記録しておいてください。
なお、封筒自体も証拠品となりえますが、既に複数の指紋がついているため、封筒自体よりも、封入されている書類を証拠品として管理の徹底をお願いします。
2 電話等の録音について
これまで、中高年男性と思われる名乗らない人物から、本件に関する電話が関係所属に掛けられており、その回数は当室が確認しているだけでも関係所属全体で16回に及んでいます。
本件に関する電話の内容は、今後有力な証拠になりうるため、当室に掛けられた電話は既に録音を徹底しておりますが、特にこれまで電話のあった所属におかれましては、今後同様の電話があった場合は録音の徹底をお願いします。
なお、警察のアドバイスによると、録音内容を現時点で書き起こす必要はなく、音声データを必要に応じて捜査機関などに提出できるよう、保管していればよいとのことです。
《その他》継続的な本人確認のアプローチについて
本件は“なりすまし”の可能性があることから、当室では「公開請求却下決定通知書(令和元年6月6日付分及び6月10日付分)」を、身分証明書等の提示により宛名「本人」であることを確認できないと受け取れない『本人限定受取郵便』で請求者宛てに発送しました。
今後、本件に係る公文書公開請求等や住民監査請求があった場合は、関係所属においても“なりすまし”の可能性を念頭に、手続きには十分ご配慮いただくとともに、何らかの文書を請求者に発送する際は、『本人限定受取郵便』の活用をお願いします。」との記載があるが、どのような相談を天満警察署に対して行い、これに対して天満警察がどのような説明を行ったのかについての記載はない。公開請求は請求対象文書を「この相談について、その内容が示された文書」としている。対象文書の特定が不十分であることは明らかである。市政改革室は天満警察署への相談を踏まえて本件文書による意思決定を行い、大阪市の各部署に対する依頼を行っていることから、天満警察への相談内容が組織的に共有されていたことは明らかであり、これにかかる文書が存在しないはずはない。改めて特定することを求める。
3 令和5年9月14日付け審査請求人意見書
公開請求は、大阪府警察に対して行った情報公開請求において、令和元年7月10日に市政改革室職員が天満警察署を訪問し、犯罪立証に向けた証拠保全などの相談を行い、その際に何点かの資料を天満警察署に提出したことがわかる文書が公開された。この市政改革室が天満警察署に提出した資料については、大阪府警察が個人情報に該当すると判断し、その大部分が黒塗りの状態で公開されている。このことから、市政改革室が個人情報保護条例に違反し、保有個人情報を目的外に利用し、他機関に提供した疑いが濃厚であることから、どのような相談を天満警察に対して行い、天満警察の説明はどのようなものであったのかを明らかにすることで、保有個人情報の目的外利用などの条例違反を明らかにすることをその趣旨としている。
弁明書の「当該文書には天満警察署に対する報告内容や今後の対応を相談したことが記載されている」との記載について、対象文書の該当部分は、「本件の公文書公開請求等は、複数の市民の名前で行われていますが、これまでの状況を勘案すると、同一人物が行っている可能性が高く、実在する他人の名前を騙る“なりすまし”によって、文書偽造が行われた疑いがあることから、今月10日に所轄の天満警察署にその旨を報告し、今後の対応について相談しました。」である。これに対し、大阪府警察から公開された「広聴相談カード」には、「申出人と、大阪市市政改革室 マネジメント改革担当課長 ○○ ○○ 北区長 ○○ ○○が来訪し、市民の声等の対応状況 情報公開請求対応状況などの資料を示し、別人を騙っての情報公開請求の対応要領 訴訟を前提とした証拠資料保全方法などについて助言願いたいとの内容。現時点では、暴行脅迫などは認められないため、刑事事件として扱うことはできない。すべてを記録化し、封書、文書、デジタルデータ、音声データ等すべて保全する。封書等は、個別に袋などで保管する。などを教示したもの。」と記載されている。ここでは市政改革室は、天満警察に対して「市民の声等の対応状況」「情報公開請求対応状況」(これに加えて大阪府警察からは「審査請求一覧」と題する文書も公開されています。)などの資料を基に説明を行い、その説明の中では、暴行脅迫の事実はないとの説明を行っていることが分かる。つまり、公開対象として特定された文書には、少なくとも市政改革室が上記の提出資料を基にどのような説明を天満警察署に対して行ったのか、暴行脅迫の事実はないとの説明を行ったことなどについての記載はない。提出資料を基にした説明については、この相談の核心部分となるものであり、この資料に記載された内容のどのような点を根拠に市政改革室として「別人を騙っての情報公開請求(なりすまし)」と判断したのかについては、本件相談を犯罪事実に係るものであることを天満警察署に理解してもらう上で最も重要な点であり、これは詳細に説明されているはずである。少なくとも公開対象として特定された文書にあるような「これまでの状況を勘案すると(略)文書偽造の疑いがある」などという簡単なものであるはずがない。
次に「『同署からのアドバイスは別紙のとおり』と記載されているとおり、別紙には天満警察署のアドバイスが記載されている」との記載について、これも公開対象として特定された文書の該当部分には上記広聴相談カードにある「暴行脅迫などは認められないため、刑事事件として取り扱うことはできない」と天満警察署に指摘されている点に関する記載はない。そして、証拠保全に関しては天満警察署の説明をここまで細かく記録しているにもかかわらず、文書偽造の疑いの点については、上記暴行脅迫の点を含め、天満警察からどのような見解が示されたのかについては、ここには全く記載されていない。最も、特定された文書は、天満警察署に対する相談をもとに、証拠保全などの対応を各所属に依頼するものであるので、この文書にそこまでの記載を行う必要はなく、天満警察署に対する説明内容や、天満警察の見解を組織共有するためには別途文書を作成することが自然であり、弁明書にある、「当該文書の決裁によって、天満警察署への相談内容や同署からのアドバイスを組織内で共有しており」との説明はとても信用できるものではない。さらに、弁明書の「また、当時の担当者に確認を行ったところ、当該文書の決裁によって、天満警察署への相談内容や同署からのアドバイスを組織内で共有しており、当該文書以外に請求対象となる文書は作成していないため、当該文書を請求対象文書として特定し、本件決定を行ったものである。」との記載について、市政改革室は請求対象文書を特定する根拠を当時の担当者の、それも5年も前の記憶を根拠にしており、文書の特定としては極めてずさんであるといわざるを得ない。
別件の公開請求でも、市政改革室は天満警察署に提出した文書はすでに廃棄したとして不存在決定を行っているが、廃棄文書目録も存在せず、廃棄の意思決定を行った文書として公開された文書は、天満警察署に提出した文書を廃棄する旨の意思決定を行ったものであることが確認できるものではなかった。そして、この文書を「廃棄の意思決定を行った文書」であると特定した根拠が記載されている文書を公開請求したところ、「当時の担当者への聞き取りにより該当する簿冊を確認しており、当該公文書をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。」として、ここでも当時の担当者の記憶を根拠にしている。つまり、市政改革室は天満警察署に提出した文書を廃棄したという事実を客観的に明らかにすることができないでいる。もはや、保有個人情報を目的外利用したという事実を隠蔽するために関係文書を隠蔽しようとしているものとしか考えられない。改めての特定を求める。
4 令和8年2月26日付け審査請求人意見書
大阪市個人情報保護審議会答申(令和6年12月13日付け大個審答申第212号)では、天満警察に対する相談の際に用いた資料が本件文書を意思決定するまでの期間に「一時利用するための参考資料」であることについて、「この点、事務局職員をして実施機関に対して、警察へ提出した資料を含め相談に係る公文書の存否を確認させたところ、現に決裁、内部検討資料、打合せメモなどの記録として残されておらず、実際に確認することができないことから、記録として作成していたかどうかを含めて詳細は不明であるとしたうえで、仮に当時、記録が作成されていたとしても平成31年度の庶務関係書類(保存期間1年未満)に編綴されるべきものであり、保存期間満了により廃棄しているものになるとのことであり、現に記録として残されていないことについては、警察に相談に行った際に使用した資料は、その後の方針検討にあたって一時利用するための参考資料であり、事務処理上必要な期間経過後は不要となる性質のものであることから、大阪市公文書管理条例(条例第15号)第6条第3項別表の保存期間30年から1年までの公文書の区分のいずれにも当てはまらないため、平成31年度庶務関係書類(保存期間1年未満)に編綴し、保存期間満了により廃棄しているものとのことであった。
なお、実施機関の説明における「事務処理上必要な期間」とは、審査請求人が以前に情報公開請求や市民の声等を行っていた際に審査請求人に対する対応方針として本件文書を意思決定するまでの期間を指しているものであり、当該意思決定により対応方針が決定したことにより、警察への相談内容や相談に行くこととなった経緯等については、職務上必要な情報ではなくなることから、当該意思決定がなされるまでの期間のみ事務処理上保管しておくべきものであるとして位置付けていたとのことである。」と認定されている。
大阪府警察から公開された「広聴相談カード」には、天満警察に対して「訴訟を前提とした証拠資料保全方法」に関しても相談を行った旨が記載されている。大個審答申第212号における市政改革室の説明は「別人を騙っての情報公開請求の対応要領」に限ったものであり、個人情報保護審議会はこの点を見落としている。
訴訟を考えていたのであれば、天満警察に対する相談の際に用いた資料は当然当該訴訟においても必要となることから、本件文書を意思決定すれば不要となるものではない。
また、この本件文書については、令和元年7月18日に決裁がなされ、保存期間3年の「庶務関係書類」の簿冊に編綴されている。そして、天満警察に対する相談の内容が、この意思決定の最も重要な要素になっているのであり、これらの関係書類は「意思形成過程文書」であると認められ、本来この決裁文書と同じ簿冊に編綴されなければならないもののはずである。その場合、保存期間が3年であるので、この簿冊は令和5年度に廃棄処理がなされるもののはずであり、令和5年4月15日の請求日時点では存在していたはずである。
また、「広聴相談カード」には、「暴行脅迫などは認められないため、刑事事件として扱うことはできない」との教示が天満警察から行われたことが記載されている。
市政改革室は文書偽造などを刑事事件として立件することを天満警察に相談しているのであり、そうであればますます関係文書は証拠として保存されるもののはずであり、上記の意思決定が行われたことをもって不要となったとする市政改革室の説明は信用することができない。現に、この本件文書において、市政改革室は各所属に対して、「本件に関するこれらの封書を保管している所属におかれましては、これまでに相手方から送付された書類を不特定多数の職員が直接手を触れないよう、今後はクリアファイル等で保管してください。
なお、封筒自体も証拠品となりえますが、既に複数の指紋がついているため、封筒自体よりも、封入されている書類を証拠品として管理の徹底をお願いします。
なお、警察のアドバイスによると、録音内容を現時点で書き起こす必要はなく、音声データを必要に応じて捜査機関などに提出できるよう、保管していればよいとのことです。」との依頼を行っている。これらにおいて、市政改革室は刑事事件としての立件を念頭に、各所属に対して証拠保全の依頼を行っているのであり、当の市政改革室が真っ先に関係文書を廃棄してしまうなどありえない。
何より、市民に文書偽造との嫌疑をかけ、刑事事件としての立件を図るという重大な事案の関係文書の保存期限が1年未満であるとの説明はとても信用できるものではない。これまでに指摘している通り、市政改革室が天満警察に対して提出した文書には、審査請求人に係る個人情報が記載されていたものと考えられる。市政改革室はこれの発覚を恐れ、様々な詭弁を弄しているものと思われる。
「市民の声等の対応状況一覧」の日付について大個審答申第212号では、「審査請求人が指摘している『市民の声等の対応状況一覧』については、実施機関は令和元年7月12日時点と記載されていることから、その時点において作成されたものであり、実施機関が天満警察署に相談に行った令和元年7月10日以降のものであることから、天満警察署に提出された文書ではないと主張している。この実施機関の主張に対し、審査請求人は、大阪府警から公開された資料が、その大部分が黒塗りであるものの判別できる部分については上記の本件文書に添付されていた『市民の声等の対応状況一覧』と全く同じであることを指摘したうえで、『市民の声等の対応状況一覧』は組織共用しながら時点更新して使用していたものであると反論している。
この点について、時点修正されてきた資料であれば、本件決定の際に、作成時点としては警察に相談に行った令和元年7月10日以降のものではあったとしても、相談日以降に上書きされた部分を白抜きにして文書特定することもありうると考えられることから、不存在であるとした理由について事務局職員をして実施機関に確認したところ、本件文書に添付されていた『市民の声等の対応状況一覧』は、時点更新し使用していた資料であったが、現在は更新していない資料であるとしたうえで、天満警察署に提出又は提示したとされる資料を時点更新し、または加工したものと推測されるが、天満警察署に提出又は提示したとされる資料自体は保存期間経過により既に廃棄済みであるためその内容を確認することができないものであり、現存する最新時点での『市民の声等の対応状況一覧』が令和元年7月12日時点のものを時点更新してきたものであったとしても、記載事項が一部異なるなど、単純に時系列に追記したものではなく、修正が行われており、どの時点でどのような修正が行われていたのか確認できないため、令和元年7月10日の時点の状態のものを復元できるものではなく、本件請求に対する対象文書として特定することが不可能なため不存在として判断したとのことであった。」と認定されている。
ここでは実施機関は、請求対象文書について、「令和元年7月10日に天満警察に提出した文書そのもの」であるという前提で、説明を行っている。これは保有個人情報開示請求において対象文書を「以上のことから、市政改革室が天満警察署に提出した『市民の声等の対応状況一覧』、『情報公開請求』の文書には、請求人の個人情報が記載されていることは明らかです。
これら天満警察署に提出した文書を開示してください。」
としたことによるものだと思われる。
しかし、本件請求に関しては、請求対象文書は「この相談について、その内容が示された文書」である。例えば、本件文書は天満警察からのアドバイスの内容などが記載されており、これも請求対象文書に該当するものである。(現にこの文書は公開決定により特定されているが、審査請求書で示した通り、該当するものはこれだけではないはずである。)
そして、市政改革室は個人情報保護審議会に対して「『マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)』に添付されていた『市民の声等の対応状況一覧』は、時点更新し使用していた資料であった」、「天満警察署に提出又は提示したとされる資料を時点更新し、または加工したものと推測される」と組織共有しながら使用していた文書であることを認めている。
そして、大阪府警察から公開されたものはこの「市民の声等の対応状況一覧」以外にも存在しており、市政改革室はこれ以外の文書も天満警察に提出している。
組織共有しながら使用していた文書はほかにも存在するはずだが、原決定では全く触れられていない。
5 令和8年4月15日付け審査請求人意見書
(1) 天満警察署に相談した際の相談資料について
市政改革室の意見書には「天満警察署に相談した際の相談資料については、令和6年12月13日付け大個審答申第212号(別紙参照)における争点と同一文書である。」と記載されている。
まず、この点は先に提出した令和8年2月26日付意見書(以後「前回意見書」という。)でも述べた通り、保有個人情報開示請求の対象は「以上のことから、市政改革室が天満警察署に提出した『市民の声等の対応状況一覧』、『情報公開請求』の文書には、請求人の個人情報が記載されていることは明らかです。
これら天満警察署に提出した文書を開示してください。」
としており、本件請求の対象と明確に異なっている。
市政改革室は、審査請求人が求めている文書の範囲を意図的に混同し、「別の制度で争われた文書=本件の対象文書」とすり替えている。
これは審査会の審理を誤らせる不適切な主張である。
(2) 「個人情報保護審議会の認定」を根拠とする主張について
市政改革室は、個人情報保護審議会の答申を繰り返し引用し、「相談資料は保存期間1年未満の庶務関係書類であり、廃棄した」と主張している。
しかし、審査請求人が前回意見書で指摘したとおり、個人情報保護審議会の認定は、相談内容の全体像を把握しないまま行われた不完全な事実認定に基づくものである。
大阪府警察が公開した広聴相談カードには、
・訴訟を前提とした証拠資料保全方法
・暴行脅迫の有無に関する警察の判断
など、刑事事件性・訴訟性を含む重大な内容が記録されている。
この文書には「訴訟を前提に」とする大阪市側の相談内容が記載されている。ここで言う「訴訟」は民事訴訟であり、具体的には損害賠償請求訴訟だと考えられる。
また、「暴行脅迫」に関しては、大阪市側が刑事事件としての立件を天満警察に相談したということである。
いずれにおいても、天満警察に対する相談に関する「市民の声等の対応状況一覧」、「情報公開請求」などの資料は、これら訴訟において民事責任や刑事事件の立証のために必要となるものであり、「警察に相談に行った際に使用した資料は、その後の方針検討にあたって一時利用するための参考資料」、「『マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)』を意思決定するまでの期間、一時利用するための参考資料」との説明は天満警察への相談内容とは整合せず、信用できない。
また、このような重要な内容が記載された文書が「保存期間1年未満の庶務関係書類」に分類することは文書管理上あり得ない。
市政改革室の意見書は、この点に対して一切反論していない。
市政改革室の意見書には、「当該文書は天満警察署に相談する際に使用するための資料であり、その資料が『マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)』〈別紙〉の『1 提出書類の管理2 電話等の録音』のいずれにも当たらず、証拠とならないことは明らかである。」と記載されている。
ここでは「当該文書は天満警察署に相談する際に使用するための資料」としている。そして、本件文書では、天満警察への相談内容及び警察の回答の内容が最も重要な要素となっている。つまり、この記載は「当該文書」が、意思形成過程文書であるということを自白するも同然であり、そうであるなら、前回意見書でも述べた通り、本件文書が編綴されている保存期間が3年の「庶務関係書類」の簿冊に編綴されるべきものであり、この点で市政改革室の意見書の説明は破綻している。
そして、ここでは天満警察から教示のあった「1 提出書類の管理2 電話等の録音」のいずれにも該当しないことから「証拠とならない」としているが、これは天満警察への相談内容のうち、「刑事事件として立件」だけを取り出し、しかも天満警察から言及のあったものだけを「証拠」としてする、極めて狭い解釈である。
上記や前回意見書でも述べた通り、この「当該文書」は、民事責任を立証するに当たっても、刑事事件として告発するに当たっても必要となるものであり、市政改革室が「証拠のひとつ」であると考えていたことは明らかである。(これは、刑事事件としての相談に当たり天満警察に持参していることからも明らかである。)
また、市政改革室は本件文書において、各所属に対して
・封書は証拠品となり得る
・音声データは捜査機関に提出できるよう保管
・証拠保全
を依頼している。
犯罪立証や、民事訴訟を念頭に各所属に証拠保全を依頼しておきながら、自らの相談資料だけは「証拠にならない」、「一時利用するための参考資料」と説明することは明確な矛盾であり、この点に関する合理的な説明がない。
市政改革室の意見書は、この矛盾に対して全く答えていない。
市政改革室の意見書には「以上のとおり『マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)』には情報公開請求の対応と、証拠資料保全方法が記載されており、大阪府警察の広聴相談カードの記載内容と齟齬がないと考えられる。」と記載されている。
ここでは本件文書には「情報公開請求の対応と、証拠資料保全方法が記載されて」いるため、広聴相談カードの記載内容と齟齬がないとしている。
しかし、審査請求人が指摘しているのはその点ではない。
広聴相談カードには
・暴行脅迫は認められない
・刑事事件として扱えない
と、大阪市の刑事事件としての告発を相談に対する天満警察の見解が記載されている。
しかし、本件文書には、この重要な相談内容が一切記載されていない。つまりこの文書は天満警察に対する相談内容の一端が記載されているにすぎず、相談内容の全てが記載された文書ではない。
市政改革室の意見書は、この核心に全く答えていない。
市政改革室の意見書には、「当時の担当者に確認を行ったところ、当該文書の決裁によって、天満警察署への相談内容や同署からのアドバイスを組織内で共有しており、当該文書以外に請求対象となる文書は作成していないため、当該文書を請求対象文書として特定し、本件決定を行ったものである。」と記載されている。
「当該文書の決裁によって、天満警察署への相談内容や同署からのアドバイスを組織内で共有して」いるのであれば、これまでに述べてきた通り「天満警察への相談内容が示された文書」は、意思決定文書として「当該文書」と同じ簿冊に編綴されているはずである。
しかし、市政改革室は、文書不存在の根拠として「当該文書以外に請求対象となる文書は作成していない」との「担当者の記憶」を挙げており、都合の良いところだけをつまみ食いしている。
また、市政改革室の意見書には「また、当該文書以外に請求対象となる文書を作成していない理由については、令和5年9月6日付け大市第82号の意見書に記載のとおりである。」と記載されている。
これに関しては過去の意見書で「市政改革室は請求対象文書を特定する根拠を当時の担当者の、それも5年も前の記憶を根拠にしており、文書の特定としては極めてずさんであるといわざるを得ません。」としているとおりである。
市政改革室は
・廃棄文書目録
・廃棄決裁文書
・文書管理簿の記録
などの文書不存在を裏付ける客観的資料を一切示していない。これは文書探索義務の不履行を示すものである。
文書不存在決定の要件を満たしておらず、市政改革室の説明は信用性を欠いている。
市政改革室の意見書は、審査請求人が指摘した論点に対して実質的な反論を行っておらず、また文書管理の原則および大阪府警察の公開文書との整合性から見ても、行政の説明は不合理であり信用性を欠いている。
審査会におかれては、原処分(文書特定)は不適切であり、取消しが相当であるとの判断を強く求める。
(3) 最後に
本件は、行政が一市民に対して「文書偽造」「なりすまし」といった刑事事件の嫌疑をかけ、実際に警察への告発・相談に及んだという、極めて重大な事案である。
このような行政行為には、通常の行政事務とは比較にならないほど強い説明責任が伴う。
行政が市民に刑事事件の嫌疑をかけ、警察に赴き、証拠保全を指示するという行為は、行政権の行使として最も慎重であるべき領域である。
その根拠となる相談内容や提出資料について、「文書がないため説明できない」「保存期間1年未満の庶務関係書類として廃棄した」という説明で済まされる性質のものでは到底ない。
大阪府警察が「広聴相談カード」を公開したのも、相談者が行政機関であり、説明責任が優先されるべき事案であるとの判断によるものである。
行政機関が市民に刑事上の嫌疑をかける行為は、必ずその根拠と経緯を説明できなければならない。
行政の行動には常に説明責任が伴う。
市政改革室は、この説明責任を自覚し、文書不存在を理由に説明を回避するのではなく、情報公開請求に対して誠実かつ適切に対応すべきである。
6 令和8年4月22日付け審査請求人意見書
(1) 警察への相談が、「専ら連絡事項の伝達や情報の収集・共有を行うことを目的とする会合」に該当するとの説明について
情報公開審査会からの「実施機関は、警察に今後の対応の相談に行った際の相談記録について、作成していない旨を述べています。一方、『説明責任を果たすための公文書作成指針』(平成27年4月)には、『一般に、会議等は事務事業の決定の過程において開催される場合が多く、意思決定の過程に関わる会議等においては、市民に対し本市の施策に関する説明責任を十分に果たすために、会議録等その他の会議の記録を作成・保存管理しなければならない。』(2、(1)、①)と記載されていますが、本件において、会議録等に相当する相談記録を作成する必要がない理由について、説明をお願いします。」との照会に対し、実施機関の意見書では「天満警察署への相談については、本件文書を作成するために、情報公開請求の対応や証拠資料保全方法といった記載事項を整理するための情報の収集を行うことを目的として行った。
上記相談については、『説明責任を果たすための公文書作成指針』(平成27年4月)の『2 作成、保存管理を特に徹底すべき公文書の具体例』の(2)②対象とならない会議等の「専ら連絡事項の伝達や情報の収集・共有を行うことを目的とする会合」に該当することから、会議録等を作成すべきと認められる会議等に当たらない。」との「説明」が行われている。
ここで市政改革室は、警察への相談は「説明責任を果たすための公文書作成指針」(平成27年4月)で規定される「専ら連絡事項の伝達や情報の収集・共有を行うことを目的とする会合」に該当するものであると主張している。
しかし、大阪府警察から公開された「広聴相談カード」には天満警察への相談には、市政改革室長、北区長が自ら赴いたことが記載されている。単なる「専ら連絡事項の伝達や情報の収集・共有」が目的なのであれば、係長級職員が対応すれば十分なのであり、わざわざ所属長が出向いているという事実と、相談が「専ら連絡事項の伝達や情報の収集・共有」が目的であるとの説明とは整合しない。
そして、この「広聴相談カード」には警察から「暴行脅迫などは認められないため、刑事事件として扱うことはできない」との説明が行われた旨が記載されている。つまり、市政改革室は本件を刑事事件として告発することを警察に相談しているのであり、弁明書の「天満警察署への相談については、『マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)』を作成するために、情報公開請求の対応や証拠資料保全方法といった記載事項を整理するための情報の収集を行うことを目的として行った。」という説明は、警察への相談の趣旨の理解を誤らせるための虚偽記載である。
また、「説明責任を果たすための公文書作成指針」では、「2 作成、保存管理を特に徹底すべき公文書の具体例」の「会議録等(会議録、会議要旨)」において、
「(2)対象となる会議等
①対象となる会議等
課長級以上の職員を主たる構成員とする会議等で、次に掲げるもの
■市としての意思決定に関係する会議等
■複数の所属にまたがって開催される会議等
■市外部の者が参画する次の会議等
・市民、関係地域団体又は関係行政機関に属する者その他当該会議等において取り扱われる案件に関係を有する者と協議を行う会議等(本市が主催又は共催するものに限る。)
②対象とならない会議等
次の会合は、会議録等の作成が必要な会議等にはあたらない。
・専ら連絡事項の伝達や情報の収集・共有を行うことを目的とする会合
・例えば市長への説明を行う前に所属内で当該説明内容を整理するために行われる会議など、市としての意思決定に向け、所属内における意思統一のため調整を行うことを目的とした会議等
・軽易な事項について業務遂行上個別打合せを行う会議等」
と規定されている。
市政改革室は天満警察に対する相談が「②対象とならない会議等」に該当するものであるとしているが、所属長が自ら出席し、案件に対する意思決定の内容に関係する相談である以上、「①
対象となる会議等」に該当するものであることは明らかである。
市政改革室は意図的に指針の解釈を誤っている。
そして、「広聴相談カード」には「別人を騙っての情報公開請求の対応要領」について相談があったことが記載されている。この点についてはこれまでの意見書でも述べているが、この警察への相談が、この案件にどのように対応するかの意思決定を行う上で最も重要な要素となるものであり、請求対象文書は意思形成過程文書に該当するものである。これが作成されていないのであれば、大阪市公文書管理条例違反である。
(2) 「公文書等の管理に関する法律」の規定について
この法律の第4条には「第四条 行政機関の職員は、第一条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、次に掲げる事項その他の事項について、文書を作成しなければならない。」と規定されている。
大阪市の「説明責任を果たすための公文書作成指針」にはこうした明文の規定はないが、前文には「しかしながら、本市において、情報公開請求に対して非公開決定がされるものの中には、請求対象となる公文書が存在しないことにより非公開となるケースがあります。
そもそも作成すべき公文書が作成されていなかったり、作成されていても適正な管理がなされていなければ、情報公開制度の円滑で適正な運用ができないばかりでなく、市政に対する信頼を損なうことにもなりかねません。」
と記載されており、また、「1 公文書の作成・取得・保存管理についての考え方
(2)作成、保存管理にあたり特に徹底すべき視点
ウ 意思決定と同時に公文書を作成することが困難な場合は事後に作成すること
意思決定と同時に公文書を作成することが困難である場合は、当該意思決定をした後速やかに公文書を作成しなければならない。
例えば、施策決定が当該決定権限を有する者のトップダウンによる方式で行われた場合においても、事務事業の実績を合理的に跡付け、検証をし、市民への説明責任を果たすために、決議文書等の公文書の作成が必要なことは当然である。
2 作成、保存管理を特に徹底すべき公文書の具体例
(3)作成すべき公文書
③会議録・会議要旨以外の会議等の記録
上記に従い会議録等の作成・保存管理の要否を判断することとなるが、会議録等を作成・保存管理する必要はないと判断された会議等であっても、当該会議等の議事対象となった事務事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、配布資料その他の会議等の記録については適正に保存管理することが必要である。」とも記載されており、この指針が「公文書等の管理に関する法律」第4条の趣旨に基づくものであることは明らかである。
したがって、警察への相談が「専ら連絡事項の伝達や情報の収集・共有を行うことを目的とする会合」に該当するか否かにかかわらず、説明責任が果たせるだけの文書が作成されていなければならないことは明らかである。
請求対象文書は、例えば本件文書における意思決定や事務執行の「事務事業の実績を合理的に跡付け、検証」を行う上で必要となるものであり、指針に基づいて作成が求められるものである。
(3)警察への相談に当たり、事前に面会の約束をするための連絡について
情報公開審査会の「実施機関は、警察への相談にあたり、事前に面会の約束をするための連絡等を行っているのでしょうか。そうであれば、その連絡等にあたり、相談内容が記載された文書を作成していないのでしょうか。
作成している場合、当該文書を特定してない理由について、説明をお願いします。」との照会に対し、実施機関の意見書では「当時の担当者に確認を行ったところ、警察への相談に当たって事前に面会の約束をするための連絡については、電話にて用件を伝達し日程の調整を行ったため相談内容が記載された文書は作成していない。」との「説明」が行われている。
この説明は極めて不合理である。
しかし、本件は先にも述べた通り、市民を刑事告発に及ぶという重大な案件である。警察に相談に行くに当たり、どのような相談を行うか、相談に当たり警察に提示ないし提出する文書の内容は適切か、誰が相談に行くのか等の調整が内部で行われることが当然であり、これらに係る文書が存在しないというのは極めて不合理である。
(4)過去の弁明書との矛盾について
市政改革室の弁明書には「また、当時の担当者に確認を行ったところ、当該文書の決裁によって、天満警察署への相談内容や同署からのアドバイスを組織内で共有しており、当該文書以外に請求対象となる文書は作成していないため、当該文書を請求対象文書として特定し、本件決定を行ったものである。」と記載されている。
しかし、この弁明書で言う「当該文書」すなわち「本件文書」には、市政改革室がどのような相談を行ったのかに関する記載は一切ない。そして、天満警察からのアドバイスに関しても、『刑事事件として扱うことはできない』などとの説明があったことは記載がない。
そして、今回の意見書では「会議録等を作成すべきと認められる会議等に当たらない」として、相談内容が記載された文書そのものが存在しないと主張している。
弁明書のとおりであるなら、相談に行った際の相談記録」は、上記「当該文書」になるはずであり、この点において意見書の主張は過去の弁明書の内容と矛盾している。
第4 実施機関の主張
実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。
1 決定の理由
審査請求人は、天満警察署への相談について、その内容が示された文書の公開を求めているものである。
審査請求人は、本件文書には「どのような相談を天満警察署に対して行い、これに対して天満警察署がどのような説明を行ったのかについての記載はありません。」と主張しているが、本件文書には、「本件の公文書公開請求等は、複数の市民の名前で行われていますが、これまでの状況を勘案すると、同一人物が行っている可能性が高く、実在する他人の名前を騙る“なりすまし”によって、文書偽造が行われた疑いがあることから、今月10日に所轄の天満警察署にその旨を報告し、今後の対応について相談しました。」と記載されているとおり、当該文書には天満警察署に対する報告内容や今後の対応を相談したことが記載されているとともに、「同署からのアドバイスは別紙のとおり」と記載されているとおり、別紙には天満警察署のアドバイスが記載されている。
また、当時の担当者に確認を行ったところ、当該文書の決裁によって、天満警察署への相談内容や同署からのアドバイスを組織内で共有しており、当該文書以外に請求対象となる文書は作成していないため、当該文書を請求対象文書として特定し、本件決定を行ったものである。
2 結論
以上の次第であり、本件決定は条例にのっとった適正なものである。
3 令和8年3月27日付け意見書
(1) 天満警察署に相談した際の相談資料について
天満警察署に相談した際の相談資料については、令和6年12月13日付け大個審答申第212号における争点と同一文書である。
ア 当該文書の存否
当該文書の作成の有無、保管状況については、同答申の「第5 審議会の判断」において、「事務局職員をして実施機関に対して、警察へ提出した資料を含め相談に係る公文書の存否を確認させたところ、現に決裁、内部検討資料、打合せメモなどの記録として残されておらず、実際に確認することができないことから、記録として作成していたかどうかを含めて詳細は不明であるとしたうえで、仮に当時、記録が作成されていたとしても平成31年度の庶務関係書類(保存期間1年未満)に編綴されるべきものであり、保存期間満了により廃棄しているものになるとのことであり、現に記録として残されていないことについては、警察に相談に行った際に使用した資料は、その後の方針検討にあたって一時利用するための参考資料であり、事務処理上必要な期間経過後は不要となる性質のものであることから、大阪市公文書管理条例(条例第15号)第6条第3項別表の保存期間30年から1年までの公文書の区分のいずれにも当てはまらないため、平成31年度庶務関係書類(保存期間1年未満)に編綴し、保存期間満了により廃棄しているものとのこと」と確認されている。また、事務処理上必要な期間については、「審査請求人が以前に情報公開請求や市民の声等を行っていた際に審査請求人に対する対応方針として本件文書を意思決定するまでの期間を指しているものであり、当該意思決定により対応方針が決定したことにより、警察への相談内容や相談に行くこととなった経緯等については、職務上必要な情報ではなくなることから、当該意思決定がなされるまでの期間のみ事務処理上保管しておくべきものであるとして位置付けていた」ことが確認されている。
以上の答申における当庁の主張及び個人情報保護審議会の決定の理由と同様に、当該文書については、保存期間が経過したために廃棄しており、実際に存在しない。
イ 当該文書の保存期間
審査請求人は、「市政改革室は刑事事件としての立件を念頭に、各所属に対して証拠保全の依頼を行っているのであり、当の市政改革室が真っ先に関係文書を廃棄してしまうなどありえません。」と主張している。
しかし、当該文書は、本件文書を意思決定するまでの期間、一時利用するための参考資料であり、事務処理上必要な期間経過後は不要となる性質のものである。
よって、大阪市公文書管理条例(条例第15号)第6条第3項別表の保存期間30年から1年までの公文書の区分のいずれにも当てはまらず、平成31年度庶務関係書類(保存期間1年未満)に編綴していた。
なお、当該文書は天満警察署に相談する際に使用するための資料であり、その資料が本件文書<別紙>の「1提出書類の管理 2電話等の録音」のいずれにも当たらず、証拠とならないことは明らかである。
(2) 大阪府警察の広聴相談カード記載内容について
審査請求人は、個人情報保護審議会の事実認定について、「天満警察に対して『訴訟を前提とした証拠資料保全方法』に関しても相談を行った旨が記載されており、天満警察に対する相談の際に用いた資料については、『マーケティングリサーチに係る公文書公開請求等への対応について(依頼)』を意思決定するまでの期間に『一時利用するための参考資料』との市政改革室の説明は『別人を騙っての情報公開請求の対応要領』に限ったものであり見落としている」と主張している。
大阪府警察の広聴相談カードには、申出内容として「別人を騙っての情報公開請求の対応要領、訴訟を前提とした証拠資料保全方法などについて助言願いたいとの内容」との記載がある。当該文書である本件文書には情報公開請求の対応が記載されている。
また、別紙には提出書類の管理と電話等の録音といった証拠保全方法が記載されている。
以上のとおり本件文書には情報公開請求の対応と、証拠資料保全方法が記載されており、大阪府警察の広聴相談カードの記載内容と齟齬がないと考えられる。
また、当該文書以外に請求対象となる文書を作成していない理由については、令和5年9月6日付けの意見書(弁明書)の内容である上記1及び2に記載のとおりである。
4 令和8年3月31日付け意見書
(1) 警察に今後の対応の相談に行った際の相談記録について
天満警察署への相談については、本件文書を作成するために、情報公開請求の対応や証拠資料保全方法といった記載事項を整理するための情報の収集を行うことを目的として行った。
上記相談については、「説明責任を果たすための公文書作成指針」(平成27年4月)の「2作成、保存管理を特に徹底すべき公文書の具体例」の(2)②対象とならない会議等の「専ら連絡事項の伝達や情報の収集・共有を行うことを目的とする会合」に該当することから、会議録等を作成すべきと認められる会議等に当たらない。
(2) 警察への相談に当たり、事前に面会の約束をするための連絡について
当時の担当者に確認を行ったところ、警察への相談に当たって事前に面会の約束をするための連絡については、電話にて用件を伝達し日程の調整を行ったため相談内容が記載された文書は作成していない。
第5 審査会の判断
1 基本的な考え方
条例の基本的な理念は、第1条が定めるように、市民の公文書の公開を求める具体的な権利を保障することによって、本市等の説明責務を全うし、もって市民の市政参加を推進し、市政に対する市民の理解と信頼の確保を図ることにある。したがって、条例の解釈及び運用は、第3条が明記するように、公文書の公開を請求する市民の権利を十分尊重する見地から行われなければならない。
2 争点
審査請求人は、本件請求において求めている公文書が他に存在する旨を主張している。
したがって、本件審査請求における争点は、本件文書以外の本件請求に係る公文書の存否である。
3 公文書の存否について
本件請求は、実施機関が令和元年7月10日に行った天満警察署への相談に関し、その内容が記載された公文書を求めるものである。そして、当該内容が記載された公文書としては、警察署への相談内容を記載した文書や警察署に提示等をした資料等、警察署への相談に当たり、作成又は取得した文書(以下「相談資料」という。)及び相談結果が記載された文書(以下「相談記録」という。)が想定されることから、以下、相談資料及び相談記録の存否について検討する。
(1) 相談資料について
実施機関は、警察へ提出した資料を含めた相談に係る公文書について、決裁、内部検討資料、打合せメモなどの記録として残されておらず、実際に確認することができないことから、記録として作成していたかどうかを含めて詳細は不明であり、仮に当時、記録が作成されていたとしても、警察に相談に行った際に使用した資料は、その後の方針検討に当たって一時利用するための参考資料であり、事務処理上必要な期間経過後は不要となる性質のものであることから、平成31年度の庶務関係書類(保存期間1年未満)に編綴されるべきものであり、保存期間満了により廃棄している旨を主張している。
これに対し、審査請求人は、警察に対する相談の内容が、本件文書の意思決定の最も重要な要素になっているのであり、これらの関係書類は「意思形成過程文書」であると認められ、本来この決裁文書と同じ簿冊に編綴されなければならないはずであり、その場合、保存期間が3年であるので、令和5年度に廃棄処理がなされることから、本件請求日時点では存在していたはずである旨を主張している。
実施機関が作成すべき公文書は、大阪市公文書管理条例(平成18年大阪市条例第15号。以下「公文書管理条例」という。)第4条に定めがあり、審査請求人の主張する「意思形成過程文書」については、同条第3項に「本市の機関は、審議又は検討の内容その他の意思決定の過程に関する事項であって意思決定に直接関係するものについては、事案が軽微なものである場合を除き、公文書を作成しなければならない。」と規定され、「大阪市公文書管理条例解釈・運用の手引(令和5年4月改正版)」の解説には「『意思決定の過程に関する事項であって意思決定に直接関係するもの』とは、『意思決定に大きく影響を与える会議や協議における審議又は検討の内容』や『市長、副市長への説明資料や説明時の指示の内容』など」(同手引18頁参照)をいう旨が記載されている。
そして、上記の解説の内容を踏まえると、相談資料が本件文書の意思形成過程文書に該当するとは考え難いところである。
また、仮に審査請求人が主張するように意思形成過程文書に該当し、保存期間を3年とするべきであったとしても、実施機関が当時、1年未満の簿冊に編綴すべきものと認識していた以上、対象となる文書が存在しないとする実施機関の主張に不自然・不合理な点はなく、実施機関の判断は結論において妥当である。
(2) 相談記録について
公文書管理条例第4条第5項には、「市長は、本市の機関の意思決定の過程に関する事項に係る公文書が適切に作成されるようにするため、公文書の作成に関する指針を定めるものとする。」と規定されており、「大阪市公文書管理条例解釈・運用の手引(令和5年4月改正版)」の解説には、「本項で定めることとされている指針については、『説明責任を果たすための公文書作成指針』(以下『作成指針』といいます。)として定めており、意思決定の過程に関する事項については、この指針に基づき適切に公文書を作成しなければなりません。」(同手引18頁参照)と記載されている。また、作成指針の2(1)①には、「一般に、会議等は事務事業の決定の過程において開催される場合が多く、意思決定の過程に関わる会議等においては、市民に対し本市の施策に関する説明責任を十分に果たすために、会議録等その他の会議の記録を作成・保存管理しなければならない。」と記載されている。そして、本件では、当時の市政改革室長及び北区長といった課長級以上の職員が、文書偽造の疑いのある事案に関し、警察署に今後の対応について相談し、当該相談内容を踏まえ、本件文書による通知を行っているのであるから、本件においては、会議録等を作成すべきだったとも考えられる。
この点、実施機関は、作成指針の2(2)②「対象とならない会議等」の「専ら連絡事項の伝達や情報の収集・共有を行うことを目的とする会合」に該当し、当該相談は、会議録等を作成すべきと認められる会議等に当たらないことから、会議録等を作成していない旨を主張するが、上記のとおり、当該相談内容を踏まえて本件文書の作成という意思決定を行っていることを考慮すると、「対象とならない会議等」に該当するという実施機関の主張には疑義がある。
しかし、仮に審査請求人が主張するとおり、意思形成過程文書に該当し、作成すべきであったとしても、実施機関に当時、会議録等を作成すべきという認識がなく、会議録等を含め本件文書の他に相談記録を作成していない以上、本件文書の他に対象となる文書が存在しないとする実施機関の主張に不自然・不合理な点はなく、実施機関の判断は結論において妥当である。
(3) その他の審査請求人の主張について
審査請求人のその他の主張は、いずれも上記審査会の判断を左右するものではない。
4 結論
以上により、第1記載のとおり、判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
委員 重本 達哉、委員 小林 美紀、委員 榊原 和穂
(参考)答申に至る経過
令和5年度諮問受理第5号
(略)
答申第552号
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