修景事例紹介 「林寺2丁目長屋」
2024年6月25日
ページ番号:562991
昭和初期の長屋の再生活用

•建物名称:林寺2丁目長屋
•所在地:生野区林寺
•建築年:昭和13(1938)年
•構造・階数:木造、地上2階
•建物評価等:第34回大阪市ハウジングデザイン賞特別賞
•修景実施年度:平成30(2018)年度
モデル修景決定時の講評
当該建物は昭和初期の長屋の様式を備えたもので、下記の点で本事業の対象物件としてふさわしいものと考える。
- 大阪市の昔ながらの景観を象徴する建物タイプの一つである長屋建築であり、竣工当初の意匠に近い改修方法を選ぶ予定であること。
- 人通りの多い大通りに面しており、修景後の地域魅力の発信に効果が期待できること。
- 施主自身が当該建物に入居経験があるなど、建物に愛着をもっている上に、修景の工事計画も工事個所・工事方法・工事予定金額などの検討が具体的で実現性の高いものであること。
- 現在空き家であるが、修景後の活用方法を賃貸と定めており、入居率といった事業効果の定量的指標が観察できる上に、空き家利活用イベントへの参加や住み開きなど、空き家率の高い生野エリアの地域活性化に積極的に寄与する意思がうかがえること。
本建築は現在塗装が上塗りされている1階のタイル部分が大きな魅力をもった特徴といえるので、本事業の実施にあたり、このタイル部分の魅力を最大限発揮する工事方法の検討が強く望まれる。
(大阪市地域魅力創出建築物修景事業推進有識者会議委員 野村 正晴)
建物について
前面道路拡幅により前庭付き長屋であったものが、前庭なしの長屋となって修景の対象となった。それが幸か不幸か現在の修景後の姿となって、街中に溶け込んだ存在感のある長屋に生まれ変わった。
全体の色調は建物のこれまでの歴史を感じさせる落ち着いたものであり、1階では木部の黒っぽい色とは対照的に、腰張りタイルの 色合いやタイルに近い色で塗装した腰壁に加えて、新しく塗り替えられた漆喰の白さが、互いを引き立てあう清潔感漂う印象を与えている。

腰張りタイル

タイルに近い色で塗装した腰壁
街路樹が植えられ歩道が設けられた道路に面して、東の方向に続く前塀様式の町家やさらに東に本2階町家が並ぶ町並み景観はこの建物の修景によって、質の高いものとなっている。

2階の焼杉板

前塀様式の町家や本2階町家が並ぶ町並み景観
内部デザインについては、コメントする立場にはないが、構造用合板などを使用して内装とするなど、低予算のなかで苦労している様子がうかがえる。内部についても、意匠の質が高まるものを 目指せるような行政の対応が望まれる。
(大阪市地域魅力創出建築物修景事業 専門家相談員 松本 正己)
修景について
主な修景の内容
タイル部分を再出現(中央住戸)、腰壁をタイル同系色で塗装

修景前

修景後(タイル部)

修景後(塗装部)
- 大きな魅力をもった特徴である1階のタイル部分は、中央住戸は、上塗りされていた塗装を剥離しタイルを再出現・補修し、その他の部分はタイル同系色で塗装しました。
外壁を焼杉板に張替え、アルミサッシを木製建具に取替え

修景前
修景後
- 改変されていた外壁・建具等は、昭和初期の長屋の様式を尊重した材料を使用した修景が行われました。
出窓撤去、面格子再現
修景前
修景後
- 改築されていた出窓を撤去し、面格子を再現されたことで、長屋全体の統一感が増しました。
建物オーナーさん・設計者さんからのひとこと

部分的な改修でちぐはぐになった外観や劣化した建具の一新、下屋の改修により、長屋独特の懐かしさを感じる魅力ある外観になりました。
道行く人や近隣の人から褒められたり感謝されたり、大きな反響にもうれしく思っています。(建物オーナーさん)

戦前の大大阪時代に庶民の住まいの多くは長屋で大阪の風景をつくっていました。戦争や開発で多くの長屋が取り壊されてきました。5軒全て空き家になっていた「林寺2丁目長屋」は修景を行い新しい時代もまちなみに貢献しながら街を豊かにしていきます。(設計者さん)
魅力発信等について
修景事業の完成見学会の実施

建物オーナーさんの主催で、修景事業及び5軒中2軒の内装工事の完成見学会が実施されました。(平成31(2019)年3月31日実施)
オープンナガヤ大阪への参加
平成30(2018)年度よりオープンナガヤ大阪(大阪長屋の保全活用を目的としたオープンハウスイベント)に参加されています。令和2(2020)年のオンライン開催時の動画がアーカイブとして公開されています。
ホームページ等による情報発信
生野区役所のホームページや「あんじゅ」(大阪市立住まい情報センター発行)などでの情報発信が行われています。
- 「広報いくの」連載記事『リノベしてステキに暮らす!いくのdeリノベ』 ・・・令和元(2019)年7月号に掲載
- 「あんじゅ」 令和元(2019)年7月号
・・・特集記事「素敵に自分らしく、空家を再生して集う・住まう」に掲載
岸和田市「町家・長屋・古民家・空き家利活用セミナー」での講演
岸和田市主催の「町家・長屋・古民家・空き家利活用セミナー『次世代につなぐ古くて新しい大阪長屋』」で建物オーナーさんと設計者さんによる講演が実施されました。(令和2年12月13日開催)
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