答申第543号
2026年3月26日
ページ番号:675478
大情審答申第543号
令和8年3月26日
大阪市長 横山 英幸 様
大阪市情報公開審査会
会長 小谷 真理
答申書
大阪市情報公開条例(平成13年大阪市条例第3号。以下「条例」という。)第17条に基づき、大阪市長(以下「実施機関」という。)から令和5年8月7日付け大大保第e-411号により諮問のありました件について、次のとおり答申いたします。
第1 審査会の結論
実施機関が行った令和4年11月14日付け大大保第e-644号による部分公開決定(以下「本件決定」という。)に対する令和5年2月11日付け審査請求(以下「本件審査請求」)は、棄却すべきである。
第2 審査請求に至る経過
1 公開請求
審査請求人は、令和4年10月31日、条例第5条の規定に基づき、実施機関に対し、請求する公文書の件名又は内容として、「国分寺納骨堂経営許可関係書類及び当該経営等に係る指導、報告書類一式」と表示して、公文書の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 本件決定
実施機関は、本件請求に係る公文書のうち、「国分寺納骨堂経営許可関係書類」を、「令和元年10月16日起案 墓地等経営許可について」、「令和3年1月20日起案 墓地等経営許可事項変更届の受理について」及び「令和3年1月20日起案 墓地等工事しゅん工届の受理について」と特定した上で、公開しないこととした部分及び公開しない理由を次のとおり付して、条例第10条第1項に基づき、本件決定を行った。
なお、国分寺納骨堂の「経営等に係る指導、報告書類一式」については、条例第10条第2項に基づき、本件決定とは別に、公開請求拒否決定を行っている。
(1) 公開しないこととした部分
ア 個人の氏名、住所、電話番号、僧階、免状番号
イ 個人の印影
ウ 法人の取引先事業者の情報、都道府県別信者数及び僧侶人数、宗教法人規則の一部(章ごとに記載された表題及び各条の見出しを除く)
エ 法人の印影
オ 施設図面、施設内部写真
(2) 上記の部分を公開しない理由
ア 条例第7条第1号に該当
個人の氏名、住所、電話番号、僧階、免状番号は、個人に関する情報であって、当該情報そのものにより又は他の情報と照合することにより、特定の個人が識別される情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であると認められ、かつ同号ただし書ア、イ、ウのいずれにも該当しないため。
個人の印影は、個人に関する情報であって、当該情報に含まれる形状や記述により特定の個人を識別できるものであり、また、公にすることにより偽造あるいは転用され当該個人の権利利益を害するおそれも認められ、氏名は公にする慣行があるが、印影まで公にする慣行はないため、同号ただし書アに該当せず、同号ただし書イ及びウにも該当しないため。
イ 条例第7条第2号に該当
法人の取引先事業者の情報、都道府県別信者数及び僧侶人数、宗教法人規則の一部(章ごとに記載された表題及び各条の見出しを除く)は、法人等の事業者の経営上又は技術上の情報で、これを公にすることにより、当該法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり、かつ同号ただし書にも該当しないため。
法人の印影は、法人等の事業活動を行う上での内部管理に属する事項に関する情報であって、公にすることにより偽造あるいは転用のおそれがあり、当該法人等の事業運営が損なわれるおそれがあると認められ、かつ同号ただし書にも該当しないため。
ウ 条例第7条第6号に該当
施設図面、施設内部写真は、公にすることにより、犯罪を誘発・助長するおそれがあり、防犯上の観点から人の生命、身体、財産等の保護その他の公共の安全と秩序の維持に支障が生じると認められるため。
3 審査請求
審査請求人は、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき、本件審査請求を行った。
第3 審査請求人の主張
本件審査請求における審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
1 審査請求の趣旨(令和6年8月13日付け意見書による変更後。以下同じ。)
実施機関が審査請求人に対し令和4年11月14日付けでなした部分公開決定のうち、公開しないとした別紙文書目録記載の公文書に含まれている別紙「真言宗国分寺派 寺院一覧」の各寺院の「僧侶人数」「信者数」に関する部分を取り消す。
実施機関は、審査請求人に対し、別紙文書目録記載の公文書に含まれている別紙「真言宗国分寺派 寺院一覧」の各寺院の「僧侶人数」「信者数」に関する部分を公開せよとの裁決を求める。
2 審査請求の理由
「僧侶人数」及び「信者数」は条例7条2号に該当しない。
(1) 条例7条2号の定め
条例7条2号は、以下のとおり規定する。
「法人その他の団体(国、独立行政法人等(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号)第2条第1項に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。)、地方公共団体、地方独立行政法人及び大阪市住宅供給公社を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの。」
(2) 本件公文書の「僧侶人数」及び「信者数」を公にしたとしても当該法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれはない
ア 条例7条2号の趣旨について
条例7条2号は、法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報を保護している。
イ 実施機関は本件各行政文書における非公開事由について主張立証できていない
(ア)条例7条2号と情報公開法5条2号イの非公開事由に関する条文の規定内容はほとんど同じである。したがって、情報公開法の解釈が条例にも妥当する。
(イ)まず、本件公文書の「僧侶人数」及び「信者数」を公にしたとしても、当該法人等の権利、競争上の地位を害するおそれは考えられない。
次に、「その他正当な利益を害するおそれがあるもの」とは、単に当該情報が他人に知られたくないというだけでは足りず、当該法人等の公正な競争関係における地位を害するおそれがあると客観的に認められるものでなければならない(現代行政法講座Ⅳ自治体訴訟・情報公開訴訟288頁・日本評論社・野田崇執筆部分)。
(ウ)そもそも非公開決定の理由から、宗教法人のいかなる公正な競争関係における地位を害するおそれがあるか何ら記載されていない。
また、本件公文書のうち、「僧侶人数」及び「信者数」を公にしたとしても、当該法人等の活動及び信教の自由が害されることは皆無である。
(エ)以上から、本件公文書の「僧侶人数」及び「信者数」は、条例7条2号に該当しないことは明らかであるから、処分庁の判断は誤っている。
3 令和6年8月13日付け意見書
(1) 条例第7条第2号について
ア 情報公開条例解釈・運用の手引について
大阪市では、情報公開条例解釈・運用の手引(以下「手引」という。)を策定しているところ、手引では、「権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」について、以下の情報を挙げている。
①法人等の事業者が保有する生産技術上又は販売上の情報であって、公開することにより、当該法人等の事業者の事業活動が損なわれるおそれがあるもの
②経営方針、経理、人事等の事業活動を行う上での内部管理に属する事項に関する情報であって、公開することにより、法人等の事業者の事業運営が損なわれるおそれがあるもの
③その他公開することにより、法人等の事業者の名誉、社会的評価、社会的活動の自由等が損なわれるおそれがあるもの
イ 「おそれ」の判断
法人等には様々な種類・性格のものがあり、その権利・利益は多様であるから、「おそれ」の有無については個別具体的な状況に応じて総合的に判断することになる。
「おそれ」については、抽象的な可能性が認められるだけでは足りず、法的保護に値する程度の蓋然性が必要である。すなわち、情報の種類などの一般的な性質に照らし、当該法人等の権利利益を害する蓋然性があるかどうかを客観的に判断すべきである。
(2) 僧侶人数及び信者数
ア はじめに
実施機関は、僧侶人数及び信者数に関する情報を非公開とする理由として、一般に公開されていない宗教法人の宗教活動の分布状況に関する情報であり、専ら当該法人内部で布教のために使用し、法人外に明らかにすることのない内部管理情報であると主張している。
そうすると、実機機関は、僧侶人数及び信者数に関する情報を「経営方針、経理、人事等の事業活動を行う上での内部管理に属する事項に関する情報であって、公開することにより、法人等の事業者の事業運営が損なわれるおそれがあるもの」と考えているようである。
しかしながら、僧侶人数及び信者数に関する情報は、①「事業活動を行う上での内部管理に属する事項に関する情報」ではないし、②一般に公開されていない宗教法人の宗教活動の分布状況に関する情報でもないし、③専ら当該法人内部で布教のために使用し、法人外に明らかにすることのない内部管理情報でもない。
以下、詳述する。
イ ①事業活動を行う上での内部管理に属する事項に関する情報ではない
審査請求人が公開を求めているのは、本件公文書に記載のある僧侶人数及び信者数である。
僧侶や信者の名簿であれば、「事業活動を行う上での内部管理に属する事項に関する情報」に該当し得る可能性はあるが、僧侶人数及び信者数自体は、単なる数字に関する情報であって、「事業活動を行う上での内部管理に属する事項に関する情報」とまで言えない。
ウ ②一般に公開されていない宗教法人の宗教活動の分布状況に関する情報ではない
審査請求人が本件公文書を公開請求した年度と同じ年度に文化庁によって策定された宗教年鑑令和4年度版の「第2部」「第6表 包括宗教団体別被包括宗教団体・教師・信者数」(甲2)には、包括宗教法人の「教師」及び「信者」の数が記載されている。そうすると、僧侶人数及び信者数は、一般に公開されていない宗教法人の宗教活動の分布状況に関する情報ではない。
この点について、実施機関において、宗教年鑑記載の情報は、包括宗教法人の情報であって、被包括宗教法人である各寺院の僧侶人数及び信者数は、明らかになっていないと反論することが予想される。
しかしながら、例えば、「文部科学大臣所轄包括宗教法人(神道系)」の「(A) 神社神道系」「7」の「神宮教」は、「神社」「1」(甲2)で、「教師」「2」及び「信者」「680」(甲2)と記載されている。すなわち、神宮教は、神社が1つしかないため、実態としては、当該宗派の教師数及び信者数は、当該宗派の神社の教師数及び信者数とイコールとなる。そうすると、神社、寺院、教会あるいは布教所等が1つしか存在しない包括宗教法人の場合、実質的には、個別の神社、寺院、教会あるいは布教所の教師数及び信者数を公開しているのと同じである。
なお、神宮教と同じく、神社、寺院、教会あるいは布教所等が1つしか存在しない包括宗教法人としては、「(B)教派神道系」「30」「峯高稲荷大社教」「51」「御嶽山曽間本教」「52」「日ノ本教」(甲2)、「(C)新教派系」「17」「大日然教」「30」「大霊道」(甲2)、「仏教系」「(A)天台宗」「13」「大和宗」(甲2)がある。
また、宗教団体のみが神社、寺院、教会あるいは布教所等を保有し、宗教法人が同施設を有していない場合も、実質的には、個別の神社、寺院、教会あるいは布教所の教師数及び信者数を公開しているのと同じである。
以上から、僧侶人数及び信者数に関する情報は、一般に公開されていない宗教法人の宗教活動の分布状況に関する情報ではない。
エ ③専ら当該法人内部で布教のために使用し、法人外に明らかにすることのない内部管理情報ではない
既に述べたように、僧侶人数及び信者数に関する情報は、宗教年鑑により公開されており、専ら当該法人内部で布教のために使用し、法人外に明らかにすることのない内部管理情報ではない。
オ 他の公開された情報では信者数は公開されている
平成29年1月17日、寳藏寺は、大阪市長に対し、墓地埋葬法第10条第1項に基づき、納骨堂の経営許可申請を行い、経営許可申請書類一式を提出した。
この経営許可申請書類について、大阪市情報公開条例に基づき、公開請求が行われ、実施機関たる大阪市長は、部分公開決定をした。
その際、大阪市長は、公開請求者に対し、寳藏寺の檀信徒数が記載されている情報を公開した(甲3)。
すなわち、実施機関は、別の情報公開請求については、檀信徒数(信者数)について公開しているが、本件では、非公開としており、矛盾した対応を執っており、破綻している。
既に述べたとおり、別件情報公開請求で寳藏寺の檀信徒数(6,269人)が公開された(甲3)。寳藏寺は、本件公文書の「内局」に記載のある「宝蔵寺」と同一の寺院である。
4 令和7年4月14日付け意見書(令和7年3月5日付け実施機関意見書に対する反論)
(1) 審査会からの求釈明
(貴殿は、令和6年8月13日付け意見書において、
また、宗教団体のみが神社、寺院、教会あるいは布教所等を保有し、宗教法人が同施設を有していない場合も、実質的には、個別の神社、寺院、教会あるいは布教所の教師数及び信者数を公開しているのと同じである(「宗教団体」から「同じである」まで下線)。
以上から、僧侶人数及び信者数に関する情報は、一般に公開されていない宗教法人の宗教活動の分布状況に関する情報ではない。
と記載されています。
上記について、下線部の意味するところを具体的にご説明いただいた上で、当該部分から、何故、「僧侶人数及び信者数に関する情報は、一般に公開されていない宗教法人の宗教活動の分布状況に関する情報ではない」と言えるのかについて、ご説明をお願いします。
との審査会からの質問に対して)
審査請求人は、令和6年8月13日付け意見書の「宗教団体のみが神社、寺院、教会あるいは布教所等を保有し、宗教法人が同施設を有していない場合も、実質的には、個別の神社、寺院、教会あるいは布教所の教師数及び信者数を公開しているのと同じである。」という部分の主張は撤回する。
(2) 意見書に対する反論
ア 宗教年鑑に関する主張
(ア)諮問庁の主張概要
諮問庁は、宗教年鑑(甲2)における教師数及び信者数については、寺院等が1つしか存在しない包括宗教法人においては、被包括宗教法人のみが寺院等を有し、教師と信者については、包括宗教法人と被包括宗教法人が共に有すると考えるのが自然であると主張する。
(イ)審査請求人の主張
A 「宗教団体」と「宗教法人」が寺院等を1つしか構成していない場合
宗教年鑑(甲2)の「第6表 包括宗教団体別被包括宗教団体・教師・信者数」の「文部科学大臣所轄包括宗教法人」の「項目」欄には、「宗教団体(宗教法人を含む)」と「宗教法人」という項目がある。すなわち、宗教年鑑の記載内容を前提にすると、「宗教団体」が構成する「神社」「寺院」「教会」「布教所」「その他」(以下「寺院等」という。)と「宗教法人」が構成する寺院等が存在する。
このうち、「宗教法人」が寺院等を構成せず、「宗教団体」のみが寺院等を構成している団体で、かつその寺院等が1つのみの団体が存在する(例えば、甲第2号証「大霊道」、「大和宗」である。)。このような、「宗教団体」「宗教法人」併せて1つしか寺院等を構成しないのであれば、当該宗教団体の僧侶数及び信者数=構成している寺院の僧侶数及び信者数となることは明らかである。
そうすると、このような宗教団体であれば、特定の寺院の僧侶数と信者数は公表されていると言え、あえて当該宗教団体以外の寺院の僧侶数及び信者数を非公開とする理由はない。すなわち、ある宗派において、宗教団体や寺院等が減少し、論理的には「大霊道」や「大和宗」のような状態になることはあり得るのであるから、「僧侶人数」及び「信者数」は、外部に公表され得ることも予定していると言える。
B 「宗教団体」と「宗教法人」が実質的には寺院等を1つしか構成していない場合
宗教年鑑(甲2)の「第6表 包括宗教団体別被包括宗教団体・教師・信者数」の「文部科学大臣所轄包括宗教法人」(甲2)のうち、「宗教団体」及び「宗教法人」のいずれもが寺院等を1つしか構成していない団体がある(例えば、甲第2号証「神宮教」、「彌山教」、「峯高稲荷大社教」である。)。
「宗教団体」は「宗教法人」を含んでいることから、「宗教法人」が構成する寺院等が1つで、「宗教団体」が構成する寺院等も1つである場合、「宗教法人」の寺院等の数字がそのまま「宗教団体」に反映されていることとなる。
そうすると、「宗教団体」及び「宗教法人」のいずれもが寺院等を1つしか構成していない団体の場合、当該宗教団体・宗教法人の僧侶数及び信者数=構成している寺院の僧侶数及び信者数となることは明らかである。
C 小括
以上から、「僧侶人数」及び「信者数」は、外部に公表され得ることも予定しているのであるから、一般に公開されていない宗教法人の宗教活動の分布状況に関する情報であり、専ら当該法人内部で布教のために使用し、法人外に明らかにすることのない内部管理情報には該当しない。
イ 甲第3号証で信者数が公開されているとの主張
(ア)諮問庁の主張概要
諮間庁は、納骨堂経営許可申請の審査が適正に行われていることを示す根拠として、信者数を公開するほうが、公開しないことよりも公益性が上回ることから、例外的に公開したと主張する。
また、諮問庁は、上記と同様の理由から、「真言宗国分寺派 寺院一覧」のうち、真言宗国分寺派全体の信者数の形で公開していると主張する。
(イ)審査請求人の主張
A 公益性に関する主張について
(A) 条例第7条第2号本文の定め
条例第7条第2号本文は、法人等に関する情報について、「公にすることにより、当該法人等」「の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの。」について、非公開とすると規定しており、公益性の有無は公開・非公開の判断要素になっていない。
したがって、法人等の情報の公開の要否については、法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるか否かであって、公益性は判断要素ではない。
(B) 公益性の判断は条例第7条第2号本文ではなくただし書の問題である
諮問庁は、納骨堂の経営審査のための公益性から、別件の情報公開請求及び本件公文書で信者数を公開したと主張するが、公益性が高まると、どうして法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがなくなるのか、理解できない。
公益性については、条例第7条第2号ただし書該当性の判断要素である。
(C) 小括
したがって、諮問庁においては、まず公益性が高まると、どうして法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがなくなるのか、明らかにされたい。
B 別件情報公開請求において信者数を公開している対応と本件非公開決定部分が矛盾しているとの主張について
(A) はじめに
大阪市は、墓地埋葬法の経営許可を行うに際して、墓地、埋葬に関する
法律施行細則及び審査基準を定めているところ、同審査基準の3‐1(8)では、以下のとおり規定されている。
(8)墳墓数については、檀信徒数の数に応じたものであること。
すなわち、納骨檀数は「檀信徒数の数に応じたもの」でなければならないため、諮問庁は、公益性の観点から、別件情報公開請求において信者数を公開し、本件公文書においても「真言宗国分寺派 寺院一覧」の真言宗国分寺派全体の信者数を公開したと主張しているようである。
(B) 諮問庁の主張は破綻している
しかしながら、諮問庁の上記主張は破綻している。
すなわち、「真言宗国分寺派 寺院一覧」は、国分寺の納骨堂経営許可申請書類の一部であり、審査基準3‐1(8)を判断するための資料であるところ、納骨堂の経営許可審査が適正に行われているか否かの根拠を示すための資料として、公開するのであれば、申請者である国分寺の檀信徒数を公開しなければ意味がないが、諮問庁はこれを公開していない。
この点について、諮問庁は、真言宗国分寺派全体の信者数の形で公開していると主張しているが、審査基準で問題としているのは、申請者の「檀信徒数の数に応じたもの」であるか否かであるため、納骨堂の経営許可審査が適正に行われているか否かの根拠として示すのであれば、国分寺の檀信徒数を公開しなければならず、そうでなければ、甲第3号証と平仄が合わない。
また、真言宗国分寺派全体の信者数を公開したとしても、納骨堂の経営許可審査が適正に行われているか否かの根拠にはならないし、甲第3号証と整合性がとれないばかりか、後述するように、真言宗国分寺派全体の信者数は宗教年鑑(甲4)で公表されており、諮問庁の主張は失当である。
さらに言えば、別件情報公開請求で一旦公開されている寳藏寺(「真言宗国分寺派 寺院一覧」の「宝蔵寺」)の檀信徒数が、本件で公開請求をした場合において、非公開となっている理由についても、何ら記載はなく、理由の提示(大阪市行政手続条例第8条)の趣旨からしても、理由付記の程度に違反があると言わざるを得ない。
なお、諮問庁は、公益性の観点から、包括宗教法人である真言宗国分寺派の檀信徒数を公開したかのように主張しているが、宗教年鑑では、包括宗教法人の信者数はそもそも公開されている(甲4)ことからも、諮問庁の主張には全く理由はない。
(C) 以上から、諮問庁の主張は後付けにすぎないものであり、破綻している。
C 求釈明
諮問庁は、納骨堂の経営許可申請の審査が適正になされていることの根拠を示すために、公益性の観点から、本来、公開する必要がない檀信徒数を別件情報公開精求及び本件公開請求において公開したと主張している。
既に述べたように、諮問庁のこのような判断は、条例第7条第2号該当性の通常の判断過程とは異なっているため、諮問庁は、当該部分公開決定時点において、この点について検討しているはずであるし、検討していなければならない。
そこで、審査謂求人は、諮問庁に対し、以下の資料の提出を求める。なお、審査請求人としては、釈明を求めた資料の提出があった後、主張を補充する予定である。
①本件部分公開決定をした際の起案文書又は公益性について判断したことがわかる資料
②甲第3号証を公開した際の起案文書又は公益性について判断したことがわかる資料
5 令和7年6月30日付け意見書(令和7年5月19日付け実施機関意見書に対する反論)
(1) 意見書「ア」について
ア 情報公開法と大阪市情報公開条例
情報公開法第5条第2号イと大阪市情報公開条例第7条第2号本文は、「法人その他の団体」の括弧書の内容、条文の規定の仕方が若干異なるものの、その内容において違いはなく、条例の解釈に情報公開法の解釈が妥当する。
イ 「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ」の解釈
(ア)「害するおそれ」があるかどうかの判断に当たっては、「法人等又は事業を営む個人の性格や権利利益の内容、性質等に応じ、当該法人等又は事業を営む個人の憲法上の権利(信教の自由、学問の自由等)の保護の必要性、当該法人又は事業を営む個人と行政との関係等を十分考慮して適切に判断する必要がある。」
この点について、裁判例においても、行政文書の開示を原則とする情報公開法の趣旨・目的を考慮すると、「形式的に営業上、経営上又は財務上の秘密に属する情報に当たれば、そのすべてが非公開とされると解するのは相当でなく、当該情報の性質、内容、公にされている情報との関連性、これらを取り巻く具体的情勢などの要素を総合考慮した上、……その充足性を判断するのが相当である。」(名古屋地裁平成13年12月13日判決・判タ1083号310頁)と判断している。
(イ)また、「おそれ」の有無の判断に当たっては、「単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が求められる」。
この点について、裁判例も「単なる確率的な可能性ではなく法的保護に値する蓋然性が必要である」(東京地裁平成20年11月27日判決・裁判所HP)、「単に行政機関の主観においてその利益が害されるおそれがあると判断されるだけではなく、法人等の権利利益が害されるという相当の蓋然性が客観的に認められることが必要である。」(東京地裁平成21年2月27日判決・判例集未登載)と判断している。
(ウ)要するに、「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ」の該当性判断に当たっては、具体的な害悪発生の客観的な明白性が要件となる。
ウ 諮問庁の主張
諮問庁の主張は、概要、以下のとおりである。
①「僧侶人数」及び「都道府県別信者数」について、他の宗教法人に知られることとなれば、当該情報は地域ごとの現在の布教分布状況や今後の布教戦略の推測の材料となり、他の宗教法人の布教活動を利するおそれが生じ、当該宗教法人の布教の自由という競争上の地位を害するおそれが認められる。
②当該情報について、当該宗教法人の運営に何らかかわりの有しない第三者に知られることになれば、当該第三者からその宗教活動への誹謗、中傷等宗教活動を妨害するための材料となり、「信仰の自由」や「宗教結社の自由」が害されるおそれが生じ、かつ、当該宗教法人の事業活動の自由という権利を害するおそれがあると認められる。
エ 審査請求人の反論
(ア)①について
A 布教の自由という競争上の地位を害するおそれはない
諮問庁の主張内容を理解することができない。
布教の自由とは、宗教上の教義を宣伝・普及する自由である。「僧侶人数」及び「都道府県別信者数」という情報を公開したとしても、当該法人あるいは団体の布教という宗教的行為が制限されるわけではない。また、当該情報を公開したら、どうして他の宗教法人の布教活動を利するおそれが生じるのか、理解できない。
また、諮間庁の主張を前提にしたとしても、諮問庁が主張する害悪の発生内容については、極めて抽象的であり、法的保護に値する蓋然性、法人等の権利利益が害されるという相当の蓋然性が客観的に認められない。すなわち、具体的な害悪発生の客観的な明白性が全く認められない。
したがって、諮問庁の主張に理由はない。
B 実施機関の主張は公開された資料と矛盾する
実施機関は、大阪市民に対し、情報提供によって、国分寺の納骨堂経営許可に係る以下の資料を提供している。
(ア)平成31年1月18日の相談処理日(甲5)
(イ)平成31年2月1日の相談処理簿(甲6)
(ア)には、国分寺建設予定の納骨檀数のおおよその予定数が記載されており(甲5)、(イ)には、「国分寺としては、近年の自殺者の増加を憂いており、関東に別院を立て、布教活動を行っている。」「布教活動を行う上で、僧侶を育成し、各末寺などに送り込まなければならない。」「僧侶を育成するための道場を建てるのは、国分寺の願いであった。」(甲6)と記載されている。
上記相談処理簿のうち、(イ)については、布教戦略の推測の材料ではなく、まさに今後の布教戦略そのものが記載されているが、当該情報を公開したとしても、現実に諮問庁が主張する害悪あるいは害悪発生の可能性は、全く発生していない。
以上から、諮問庁の主張には全く理由はない。
(イ)②について
諮問庁の主張内容を理解することができない。
「信仰の自由」とは、宗教を信仰し、又は信仰しないこと、信仰する宗教を選択し、又は変更することについて、個人が任意に決定する自由である。また、「宗教結社の自由」とは、特定の宗教を宣伝し、又は共同で宗教的行為を行うことを目的とする団体を結成する自由である。
「僧侶人数」及び「都道府県別信者数」という情報を公開したとしても、特定の信仰を強制させられたり、団体を結成する自由が妨げられたりするなどの事情は考え難く、当該宗教を信仰する個人、当該法人あるいは団体の信仰の自由、宗教結社の自由が制限されることはない。
また、諮問庁の主張を前提にしたとしても、諮問庁が主張する害悪の発生内容については、極めて抽象的であり、法的保護に値する蓋然性、法人等の権利利益が害されるという相当の蓋然性が客観的に認められない。すなわち、具体的な害悪発生の客観的な明白性が全く認められない。
したがって、諮問庁の主張に理由はない。
(2) 意見書「イ」について
ア はじめに
大阪市では、納骨堂の経営許可につき、経営主体については、原則として地方公共団体に限っているが、例外的に宗教法人についても、経営主体と認めている(甲7、審査基準1‐(1))。
また、設置する納骨堂の納骨檀数については、壇信徒等の数に応じたものであることが要求されている(甲7、審査基準3‐1(6)参照)。
イ 諮問庁の見解は誤っている
(ア)宗教法人について
宗教法人は、教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とする団体、つまり「宗教団体」(宗教法人法第2条)が、都道府県知事若しくは文部科学大臣の認証を経て法人格を取得したものである。
宗教法人には、神社、寺院、教会などのように礼拝の施設を備える「単位宗教法人」(宗教法人法第4条、第2条第1号)と、宗派、教派、教団のように神社、寺院、教会などを傘下に持つ「包括宗教法人」(宗教法人法第4条、第2条第2号)がある。単位宗教法人のうち包括宗教法人の傘下にある宗教法人を「被包括宗教法人」、傘下にないものを「単立宗教法人」という。
(イ)「信者数」「28,181」
本件で問題となっている宗教法人のうち、包括宗教法人は真言宗国分寺派であるところ、「真言宗国分寺派 寺院一覧」の「信者数」「28,181」は包括宗教法人の信者数である。これは宗教年鑑(甲4)からも明らかである。
(ウ)納骨堂経営許可の申請者
本件請求文書は、宗教法人国分寺が納骨堂経営許可の申請を行った際に提出された許可申請書類一式の一部である。
すなわち、本納骨堂の経営許可の申請者は、単位宗教法人の宗教法人国分寺である。
大阪市の審査基準では、設置する納骨堂の納骨檀数については、壇信徒等の数に応じたものであることが要求されるところ、審査の対象となる檀信徒数は、申請者である単位宗教法人の宗教法人国分寺の檀信徒数でなければならない。
したがって、諮問庁の主張は、誤っている。
なお、本件において、包括宗教法人である真言宗国分寺派の総檀信徒数を審査の対象であるとの主張を維持するのであれば、「特段の事情」(最高裁平成27年3月3日判決(民集69巻2号143頁、判例時報2267号21頁、判例タイムズ1416号47頁)を主張されたい。
(3) 意見書「ウ」について
ア 諮問庁の主張は審査請求人の求釈明事項の回答になっていない
諮問庁は、縷々主張しているが、諮問庁の主張は、審査請求人の主張に対する回答になっていない。
すなわち、審査請求人は、公益性が高まると、どうして法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがなくなるのか、明らかにされたいと釈明を求めたが、諮問庁の主張は、本来非公開である情報を公益性の観点から公開したと判断過程を述べるだけであって、審査請求人の釈明事項の回答になっていないことは明らかである。
また、宗教年鑑(甲4)において、檀信徒数が公開されている寺院が存在することは、令和7年4月14付け意見書で主張したとおりである。
イ 条例の仕組み
条例は、法人情報について、原則公開の立場を採用する一方で、非公開情報の範囲を条例第7条第2号及び3号で限定することによって法人の利益に配慮し、公開の範囲が不当に狭まらないようにしている。
また、条例第7条第2号及び3号ただし書において、公益上の理由による義務的開示の制度を設けている。これは、非公開情報としての法人情報に該当するとしても、法人の利益より優先する公益がある場合に当該情報の公開を義務付けたものである。すなわち、条例は、第7条第2号及び3号ただし書該当性判断において、比較衡量を行う枠組みとなっている。
このような条例の仕組みからも明らかなように、条例第7条第2号本文の法人情報該当性については、公益性は要素となっておらず、諮問庁は条例第7条第2号の判断枠組みそのものを誤っている。
(4) 審査請求人の主張に対する反論
ア 諮問庁の主張
2段落目において、諮問庁は、宗教年鑑の檀信徒数と納骨堂経営許可申請における檀信徒数の考え方は、必ずしも一致する必要はないと主張するが、諮問庁の主張は意味不明である。
イ 審査請求人の主張
そもそも諮問庁は、宗教年鑑の檀信徒数と納骨堂の経営許可申請における檀信徒数の考え方が一致しているのか否かさえ主張していない。
この点について、大阪市は、納骨堂の経営許可の申請につき許可の判断をする際に、檀信徒数を調査するところ、その際に宗教年鑑を判断資料の1つとしている。そうすると、宗教年鑑の檀信徒数と納骨堂の経営許可申請における檀信徒数の考え方は同じ、あるいは、限りなく同じに近いと言える。
また、ここで問題にされなければならないのは、「僧侶人数」及び「都道府県別信者数」が条例第7条第2号本文の「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある」か否かである。既に述べたとおり、宗教年鑑の檀信徒数と納骨堂の経営許可申請における檀信徒数とでは、その考え方に大きな違いはなく、宗教年鑑で寺院の檀信徒数が公開されているのであれば、それは「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある」情報に該当しないからに他ならない。
以上から、諮問庁の主張に理由はない。
6 令和7年8月15日付け意見書(令和7年7月31日付け実施機関意見書に対する反論)
(1) 諮問庁の主張
ア 諮問庁は、納骨堂の経営許可申請における檀信徒数の考え方と宗教年鑑の考え方は、必ずしも同一である必要はなく、「真言宗国分寺派 寺院一覧」の「信者数」であっても問題ない、と主張するが、諮問庁の主張は、意味不明である。
イ また諮問庁は、本件審査請求は、非公開部分の公開の可否について争っているものであり、国分寺の納骨堂経営許可の適否を争っているものではないと主張しているが、当たり前のことであって、審査請求人及び大阪市情報公開審査会もそのことを当然に認識しており、諮問庁がわざわざこのような主張をしている必要性について理解できない。
(2) 審査請求人の主張
ア 諮問庁の主張は審査請求人の主張に対する反論になっていない
諮問庁は、納骨堂経営許可申請の審査が適正に行われていることを示すために、公益性の観点から、当該納骨堂経営許可申請を行った寺院の檀信徒数を例外的に公開しており、本件請求対象文書では、宗教法人国分寺(単位宗教法人)の納骨堂経営許可申請の事案であるが、上記理由から、「真言宗国分寺派 寺院一覧」のうち、真言宗国分寺派(包括宗教法人)全体の信者数の形で公開していると主張する(令和7年3月5日付け意見書、令和7年5月19日付け意見書)。
この点について、審査請求人は、宗教法人法に規定されている単位宗教法人と包括宗教法人の違いを説明し、宗教法人国分寺の納骨堂経営許可申請であれば、宗教法人国分寺の檀信徒数が公開されるべきであり、包括宗教法人である真言宗国分寺派の檀信徒数は、そもそも公表されている宗教年鑑で記載されている情報(甲4)であって、諮問庁が主張する公益性の観点から、例外的に公開したとの主張は破綻していると審査請求人は主張したところである(令和7年6月30日付け意見書)。
審査請求人の上記主張に対する諮問庁の主張が意見書記載の内容であるが、諮問庁の主張は、上記審査請求人の主張に対する反論に全くなっていないばかりか、意味不明な主張により、議論自体を錯乱させようとしているものであって、悪質である。
イ 実施機関の檀信徒数に関する主張は破綻している
既に述べたように、寺院の檀信徒数の公開・非公開について、実施機関の対応は統一しておらず、実施機関が主張する害悪は抽象的であり、法的保護に値する蓋然性、法人等の権利利益が害されるという相当の蓋然性が客観的に認められない(令和7年6月30日付け意見書)。
また、寳藏寺を含め、納骨堂等の経営許可申請を行い、実際に檀信徒数が公開されている寺院が存在するが、寳藏寺を含む当該寺院に、諮問庁が主張している害悪が発生していないことも諮問庁の主張に理由がないことを裏付けるものである。
さらには、少なくとも寳藏寺を含む納骨堂等の経営許可申請を行い、実際に檀信徒数が公開されている寺院について、既に檀信徒数は公開されており(甲3)、実際に諮問庁が主張する害悪が発生していない以上、あえて改めて、檀信徒数を非公開とする必要性は全く存在しない。
ウ 小括
以上から、諮問庁の主張には全く理由はない。
第4 実施機関の主張
実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。
1 弁明の趣旨
本件決定は条例に則った適正なものである。
2 弁明の理由(弁明書)
(1) 本件文書において非公開とした情報について
本件決定において、公開しないこととした「僧階」「僧侶人数」「信者数」に関する部分の記載がある公文書は、「令和元年10月16日起案 墓地等経営許可について」であるが、まず、当該公文書を取得及び作成することとなった経過を説明する。
当庁では、墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号)第10条に基づき墓地、納骨堂及び火葬場に係る経営等許可業務を行っている。
宗教法人である国分寺は、納骨堂経営許可を取得しようとして令和元年8月28日に当庁に対して納骨堂経営許可申請を行った。当庁は、令和元年10月4日に国分寺の現場調査を行い、令和元年10月16日に納骨堂経営許可処分を行うため起案し、令和元年10月28日付けで同許可処分を行った。「令和元年10月16日起案 墓地等経営許可について」はこの一連の公文書である。
次に、本件公文書のうち、「僧階」「僧侶人数」「信者数」に関する部分の記載がある頁は、国分寺が当庁に対して提出した納骨堂経営許可申請書類の一部である「真言宗国分寺派 寺院一覧」である。
当庁の納骨堂経営許可における審査項目には「納骨壇数については檀信徒等の数に応じたものであること」という項目があり、納骨堂経営許可申請者が宗教法人の場合は、「檀信徒数が明らかになる書類」の提出を求めているが、「真言宗国分寺派寺院一覧」はこの書類として提出されたものである。
(2) 本件非公開部分の条例第7条第2号該当性について
「僧侶人数」及び「信者数」については、一般に公開されていない宗教法人の宗教活動の分布状況に関する情報であり、専ら当該法人内部で布教のために使用し、法人外に明らかにすることのない内部管理情報である。このような情報を外部に対して明らかにするかどうかは、法人が自らの業務の関わりの中で自主的に決定すべきことであり、国分寺が当庁に対して、納骨堂経営許可申請を行うために「真言宗国分寺派 寺院一覧」を提出したように、「僧侶人数」及び「信者数」を明らかにした書類を提出する相手は、限定されているとも言える。
よって、「僧侶人数」及び「信者数」については、当該法人の内部管理情報として管理されており、広く一般に公開することは、当該法人の布教活動に係る権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることから、条例第7条第2号に該当するものと判断した。なお、文化庁から、毎年、宗教統計がホームページ上で公開されているが、当該情報は明らかにされていない。
3 令和7年3月5日付け意見書(審査請求人提出令和6年8月13日付け意見書の「(2)」の「ウ」、「エ」及び「オ」に対する反論)
(1) 「ウ ②一般に公開されていない宗教法人の宗教活動の分布状況に関する情報ではない」及び「エ ③専ら当該法人内部で布教のために使用し、法人外に明らかにすることのない内部管理情報ではない」について
審査請求人は、宗教年鑑において「神社、寺院、教会あるいは布教所等が1つしか存在しない包括宗教法人の場合、実質的には、個別の神社、寺院、教会あるいは布教所の教師数及び信者数を公開しているのと同じである。」と主張する。
ここでの主張は、要するに、「神社、寺院、教会あるいは布教所等(以下「寺院等」という。)が1つしか存在しない包括宗教法人の場合、実質的には、個別の寺院等の教師数及び信者数を公開しているのと同じ」であるから、「個別の寺院等における教師数及び信者数については公開されている」ものであり、「本件においても、個別の寺院の教師数及び信者数についても公開すべき」というものであると思われる。
これについて、まず、宗教年鑑を公表している文化庁に対して、令和6年9月6日に確認を行ったところ、「文部科学大臣が所轄する包括宗教法人に対して、個別の寺院等の詳細は明らかにしないとの条件のもと、任意の協力を得て情報収集したものであり、そもそも、文化庁において、包括宗教法人における個別の寺院等の教師数及び信者数を公にすることは無い」との見解を得ている。
また、宗教法人法(昭和26年法律126号)第2条において、「「宗教団体」とは、宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とする左に掲げる団体」と定義されていることから、同条第2号の包括宗教法人も第1号の被包括宗教法人と同じく教師と信者を有することとなる(ここでは、便宜上、「団体」のうち法人格を持った「法人」のみとする。以下同じ。)。さらに、第1号においては、「礼拝の施設を備える神社、寺院、教会、修道院その他これらに類する団体」と礼拝施設の要件があるが、第2号においては、「前号に掲げる団体を包括する教派、宗派、教団、教会、修道会、司教区その他これらに類する団体」と礼拝施設の要件がなく、第1号の団体を包括する要件がある。これらを勘案すると、(甲2)における教師数及び信者数については、寺院等が1つしか存在しない包括宗教法人においては、被包括宗教法人のみが寺院等を有し、教師と信者については、包括宗教法人と被包括宗教法人が共に有すると考えるのが自然である。よって、審査請求人が(甲2)を用いて「公開しているのと同じ」であると主張する教師数及び信者数は、そもそも個別の寺院等の教師数及び信者数には相当しない。
以上から、本件決定における対象文書(「令和元年10月16日起案 墓地等経営許可について」の一部である「真言宗国分寺派 寺院一覧」)における「都道府県別信者数」及び「僧侶人数」は一般に公開されていない宗教法人の宗教活動の分布状況に関する情報であり、専ら当該法人内部で布教のために使用し、法人外に明らかにすることのない内部管理情報である。
(2) 「オ 他の公開された情報では信者数は公開されている」について
審査請求人は、「実施機関は、別の情報公開請求については、檀信徒数(信者数)について公開しているが、本件では、非公開としており、矛盾した対応を執っており、破綻している。」と主張する。
まず、(甲3)については、寳藏寺が納骨堂経営許可申請を行った際の書類の一部であり、寳藏寺の檀信徒数は本来、当該法人の内部管理情報であるため、一般に公にすべきものではない。しかし、審査(審査基準3‐1(6)納骨壇数については、檀信徒等の数に応じたものであること)が適正に行われていることを示す根拠として、当該部分を公開する方が、当該部分を非公開とするよりも公益性が上回ると判断したため、例外的に公開したものである。次に、「真言宗国分寺派 寺院一覧」については、国分寺が納骨堂経営許可申請を行った際の書類の一部であり、同様の判断で、国分寺の檀信徒数について、真言宗国分寺派全体の信者数の形で公開している。一方、同一覧における「都道府県別信者数」は非公開情報である当該法人の内部管理情報であるのみで、公益性を鑑みても公開する必要性が認められないことから非公開としている。このように、当庁においては、納骨堂経営許可申請書類の情報公開請求において、納骨堂経営許可の申請者が宗教法人の場合、申請者の檀信徒数(信者数)については、公益性を優先して公開する対応を取っており、決して矛盾した対応を執っているわけでも、破綻しているわけでもない。
本件決定において、公開しないこととしたのは、弁明書でも述べているとおり、あくまで包括宗教法人の「都道府県別信者数」であって、当該法人の「信者数」ではない。
4 令和7年4月9日付け意見書
(貴庁は、令和7年3月5日付け意見書において、(甲3)については、寳藏寺が納骨堂経営許可申請を行った際の書類の一部であり、寳藏寺の檀信徒数は本来、当該法人の内部管理情報であるため、一般に公にすべきものではない。しかし、審査(審査基準3‐1(6)納骨壇数については、檀信徒等の数に応じたものであること)が適正に行われていることを示す根拠として、当該部分を公開する方が、当該部分を非公開とするよりも公益性が上回ると判断したため、例外的に公開したものである(「公益性が」から「公開した」まで下線)。次に、「真言宗国分寺派 寺院一覧」については、国分寺が納骨堂経営許可申請を行った際の書類の一部であり、同様の判断で、国分寺の檀信徒数について、真言宗国分寺派全体の信者数の形で公開している。一方、同一覧における「都道府県別信者数」は非公開情報である当該法人の内部管理情報であるのみで、公益性を鑑みても公開する必要性が認められないことから非公開としている。このように、当庁においては、納骨堂経営許可申請書類の情報公開請求において、納骨堂経営許可の申請者が宗教法人の場合、申請者の檀信徒数(信者数)については、公益性を優先して公開する対応を取っており、決して矛盾した対応を執っているわけでも、破綻しているわけでもない。
との主張を行っています。
上記の下線部について、
①「例外的に公開した」というのは、条例第7条第2号ただし書を適用したという意味か?
②なぜ、これらの情報公開請求において、檀信徒数を公開することに公益性があると言えるのか?
という2点の回答を盛り込みつつ、具体的なご説明をお願いします。
との質問に対し)
①について
条例第7条第2号ただし書を適用したという意味ではない。
②について
条例第1条において、「本市等の有するその諸活動を市民に説明する責務が全うされるようにする」とあるように、納骨堂経営許可審査が適正に行われていることについては、当庁が市民に対して一定の説明責任が求められるものである。
檀信徒等の数については、納骨壇数の審査の根拠となるものであり、これを非公開とすることは、納骨壇数の審査に関して、市民に対しての説明責任を果たせていないとの判断から、令和7年3月5日付け意見書でも述べたとおり、公益性が上回ると例外的に公開した。
(貴庁は、令和6年3月26日付け意見書において、
「僧侶人数」及び「信者数」については、一般に公開されていない宗教法人の宗教活動の分布状況に関する情報であり、専ら当該法人内部で布教のために使用し、法人外に明らかにすることのない内部管理情報である。このような情報を外部に対して明らかにするかどうかは、法人が自らの業務の関わりの中で自主的に決定すべきことであり、国分寺が当庁に対して、納骨堂経営許可申請を行うために「真言宗国分寺派 寺院一覧」を提出したように、「僧侶人数」及び「信者数」を明らかにした書類を提出する相手は、限定されているとも言える。
との主張を行っています。
本件非公開情報が内部管理情報であるとして、公にすることにより、なぜ、当該法人等(中略)の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある(条例第7条第2号)
と言えるのかについて具体的にご説明ください。
との質問に対し)
「僧侶人数」及び「信者数」といった宗教法人の宗教活動の分布状況に関する情報が公にされると、宗教が、地域の文化や価値観に深く根ざしている可能性も鑑み、個々の寺院やそれを包括する当該宗教法人の布教活動といった競争上の地位を害するおそれがあると認められ、さらに、第三者からの個々の寺院やその信者、ひいてはそれらを包括する当該宗教法人の宗教活動に対する誹謗中傷に利用されるおそれがあり、憲法第20条で保障されている信教の自由が損なわれるおそれが否定できなくなり、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められるためである。
5 令和7年5月19日付け意見書
(ア 令和7年4月9日付け大大保第e-11号意見書について
貴庁は、令和7年4月9日付け大大保第e-11号意見書において、「「僧侶人数」及び「信者数」といった宗教法人の宗教活動の分布状況に関する情報が公にされると、宗教が、地域の文化や価値観に深く根ざしている可能性も鑑み、個々の寺院やそれを包括する当該宗教法人の布教活動といった競争上の地位を害するおそれがあると認められ、さらに、第三者からの個々の寺院やその信者、ひいてはそれらを包括する当該宗教法人の宗教活動に対する誹謗中傷に利用されるおそれがあり、憲法第20条で保障されている信教の自由が損なわれるおそれが否定できなくなり、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められるためである。」と主張しています。
この点、「僧侶人数」及び「都道府県別信者数」を公開することによって、布教活動にどういった支障があるのか、また、それらを公開することによって、なぜ当該宗教法人等の宗教活動に対する誹謗中傷に利用されるおそれがあり、憲法第20条で保障されている信教の自由が損なわれるおそれが否定できなくなるのかについて具体的にご説明ください。
また、権利、競争上の地位や信教の自由以外の「正当な利益を害するおそれ」について、具体的にご主張ください。
イ 「真言宗国分寺派 寺院一覧」において公開している信者数について
貴庁は、令和7年3月5日付け大大保第e-557号意見書において、「審査(審査基準3‐1(6)納骨壇数については、檀信徒等の数に応じたものであること)が適正に行われていることを示す根拠として、当該部分を公開する方が、当該部分を非公開とするよりも公益性が上回ると判断したため、例外的に公開したものである。次に、「真言宗国分寺派 寺院一覧」については、国分寺が納骨堂経営許可申請を行った際の書類の一部であり、同様の判断で、国分寺の檀信徒数について、真言宗国分寺派全体の信者数の形で公開している。一方、同一覧における「都道府県別信者数」は非公開情報である当該法人の内部管理情報であるのみで、公益性を鑑みても公開する必要性が認められないことから非公開としている。このように、当庁においては、納骨堂経営許可申請書類の情報公開請求において、納骨堂経営許可の申請者が宗教法人の場合、申請者の檀信徒数(信者数)については、公益性を優先して公開する対応を取っており、決して矛盾した対応を執っているわけでも、破綻しているわけでもない。」と主張しています。
これに関して、上記で引用している審査基準は別添の納骨堂経営等の許可に係る審査基準と思われますが、本件で問題となっている「真言宗国分寺派 寺院一覧」は、同審査基準の2、(1)、クの「檀信徒数が明らかになる書類」として申請者から提出されたものであり、審査の対象となる檀信徒数は、「28,181」であるとの理解で間違いないかについてご回答ください(仮に理解が間違っている場合は、間違っている点についてご説明ください)。
ウ 令和7年4月14日付け審査請求人意見書(上記第3、4)について
審査請求人は、令和7年4月14日付け審査請求人意見書の4頁において、貴庁が提出した令和7年大大保第e-12号意見書を受けて、「諮問庁においては、まず公益性が高まると、どうして法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがなくなるのか、明らかにされたい。」との主張を行っています。
この点、当審査会としても、上記に係る貴庁の主張を伺いたいと考えていますので、具体的なご説明をお願いします。
また、審査請求人は、令和7年4月14日付け意見書の6頁において、①本件部分公開決定をした際の起案文書又は公益性について判断したことがわかる資料と②甲第3号証を公開した際の起案文書又は公益性について判断したことがわかる資料の提出を求めていますが、これらについては、貴庁が上記ア、イの回答を含めた主張の証拠等として提出する必要があると考えるのであれば、資料として提出してください。
との質問に対し)
・アについて
信教の自由については、様々なものが考えられるが、「布教の自由」、「信仰の自由」、「宗教結社の自由」もその1つと言える。
非公開情報については、請求者のいかんを問わず判断することを踏まえると、「僧侶人数」及び「都道府県別信者数」について、他の宗教法人に知られることとなれば、当該情報は地域ごとの現在の布教分布状況や今後の布教戦略の推測の材料となり、他の宗教法人の布教活動を利するおそれが生じ、当該宗教法人の「布教の自由」という競争上の地位を害するおそれが認められるためである。
また、当該情報について、当該宗教法人の運営に何らかかわりの有しない第三者に知られることとなれば、当該第三者からその宗教活動への誹謗、中傷等宗教活動を妨害するための材料となり、何らかの宗教を信仰し、又は信仰しないという「信仰の自由」や信仰を同じくする者が宗教団体に加入する「宗教結社の自由」が害されるおそれが生じ、かつ、当該宗教法人の事業活動の自由という権利を害するおそれがあると認められるためである。
なお、「正当な利益を害するおそれ」とは、事業運営上のノウハウや内部管理に属する事項など、その公開非公開の取扱いについて当該宗教法人の自由が尊重されるものとの趣旨である。
・イについて
審査の対象となる檀信徒数は、「28,181」であるとの理解で間違いない。
・ウについて
令和7年4月9日付け意見書でも述べたとおり、納骨堂経営許可審査が適正に行われていることについては、当庁が市民に対して一定の説明責任が求められるものである。
一方で、納骨堂経営許可申請者は宗教法人でもあることから、法人情報として保護されるべき要素も考慮したうえで公開非公開の判断を行う必要がある。
当該宗教法人の情報については、納骨堂経営許可について直接的に関係のない文書又は情報と関係のある文書又は情報について分けた後、関係のある文書又は情報については、法人の内部管理情報として保護されるべき要素と納骨堂経営許可審査に関する説明責任という公益性の比較検討を行い、後者が前者を上回ると判断した情報については公開している。
資料に示す文書(「要望書」、「大本山国分寺 国分寺会館(講堂・納骨堂) 建設趣意書」及び「宗教法人「国分寺」顧問会及び責任役員会議事録」)は、いずれも本件決定における対象文書の一部である。今回、意見を求められている国分寺の檀信徒数と同様にこれらの文書の記載事項は、宗教法人に限らず、法人一般において内部管理に属する事項として保護されるべき情報であり、一般に公にすべきものではない。
一方、これらの文書は、納骨堂建設についての意思決定を行った際の文書であり、審査(審査基準3‐1(1)納骨堂の経営主体が的確であり、納骨堂の設置及び拡張の必要性が認められること)が適正に行われていることを示す根拠の一部として、国分寺の檀信徒数と同様に公益性が上回ると判断したため、例外的に公開するに至っている。
以上のとおり、同一の起案文書においても統一した対応を行っていることこそが、法人の内部管理情報として保護すべき要素より、納骨堂経営許可審査に関する説明責任という公益性の方が高いと判断したと言えるものである。
・令和7年4月14日付け審査請求人提出意見書について
「(2)」の「ア」については、審査請求人の主張が不明瞭であるが、当庁の意見としては、令和7年3月5日付け意見書の「(1)」のとおりで変わりない。
「(2)」の「イ」について、審査請求人は5枚目において、「宗教年鑑では、包括宗教法人の信者数はそもそも公開されている」と主張するが、宗教年鑑での信者数の考え方と納骨堂経営許可申請における檀信徒数の考え方は必ずしも同一である必要はなく、公開した理由は令和7年3月5日付け意見書「(2)」のとおりである。
6 令和7年7月31日付け意見書(審査請求人提出令和7年6月30日付け意見書の「(2)」の「イ」の「(イ)」及び「(ウ)」に対する反論)
当庁において、納骨堂経営許可申請の際の添付書類として、審査基準の2、(1)、クにおいて「申請者が宗教法人である場合は、檀信徒数が明らかになる書類」を求めているが、この「檀信徒」については、当該宗教法人と何らかの宗教的関係を有する者であることを前提としているが、厳密に定義を定めているわけではない。
したがって、国分寺が納骨堂経営許可申請を行うための檀信徒数の考え方は、宗教年鑑での信者数の考え方と必ずしも同一である必要はなく、「真言宗国分寺派 寺院一覧」の「信者数」であっても何の問題もない。
なお、そもそも、本件審査請求は非公開部分の公開の可否について争っているものであり、国分寺の納骨堂経営許可の適否について争っているものではない。
第5 審査会の判断
1 基本的な考え方
条例の基本的な理念は、第1条が定めるように、市民の公文書の公開を求める具体的な権利を保障することによって、本市等の説明責務を全うし、もって市民の市政参加を推進し、市政に対する市民の理解と信頼の確保を図ることにある。したがって、条例の解釈及び運用は、第3条が明記するように、公文書の公開を請求する市民の権利を十分尊重する見地から行われなければならない。
しかしながら、条例は全ての公文書の公開を義務付けているわけではなく、第7条本文において、公開請求に係る公文書に同条各号のいずれかに該当する情報が記載されている場合は、実施機関の公開義務を免除している。もちろん、この第7条各号が定める情報のいずれかに該当するか否かの具体的判断に当たっては、当該各号の定めの趣旨を十分に考慮しつつ、条例の上記理念に照らし、かつ公文書の公開を請求する市民の権利を十分尊重する見地から、厳正になされなければならないことは言うまでもない。
2 争点
審査請求人は、実施機関が公開した公文書のうち、別紙「真言宗国分寺派 寺院一覧」の各寺院の「僧侶人数」及び「信者数」に関する部分(以下「本件非公開部分」という。)が非公開情報に該当しないと主張するのに対し、実施機関は、本件非公開部分が条例第7条第2号に該当するものとして争っている。
したがって、本件審査請求における争点は、本件非公開部分の条例第7条第2号該当性である。
3 争点について
(1)条例第7条第2号の基本的な考え方について
条例第7条第2号は、法人等の事業活動は、社会的に尊重されるべきであるとの理念のもとに、「法人等に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」は、原則として非公開とすることを規定している。そして、この「権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」とは、ア 法人等の事業者が保有する生産技術上又は販売上の情報であって、公開することにより、当該法人等の事業者の事業活動が損なわれるおそれがあるもの、イ 経営方針、経理、人事、布教活動等の事業活動を行う上での内部管理に属する事項に関する情報であって、公開することにより、法人等の事業者の事業運営が損なわれるおそれがあるもの、ウ その他公開することにより、法人等の事業者の名誉、社会的評価、社会的活動の自由等が損なわれるおそれがあるものがこれに当たると解される。
この点、審査請求人は、令和7年4月14日付け意見書(上記第3、4)において、内部管理に属する事項に関する情報であるにもかかわらず寳藏寺の檀信徒数を公開したのは公益性が上回ると判断したためであるとの実施機関の主張に対し、「法人等の情報の公開の要否については、法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるか否かであって、公益性は判断要素ではない。」と主張する。また、審査請求人は、令和7年6月30日付け意見書(上記第3、5)において、「「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ」の該当性判断に当たっては、具体的な害悪発生の客観的な明白性が要件となる。」と主張している。
そこで、条例第7条第2号本文の「正当な」利益の該当性判断に当たって、「公益性」を考慮することが可能か、また、条例第7条第2号本文の「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ」の該当性判断に当たって、「具体的な害悪発生の客観的な明白性」が必要かを検討する。
これらについては、条例第7条第2号とほぼ同趣旨の規定である行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)の第5条第2号イの適用が問題となった令和2年(行ウ)第212号同5年1月17日東京地裁判決が、「情報公開法5条2号イは、法人等に関する情報のうち、公にすることにより、当該法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものを不開示情報と定めている。ここでいう「おそれ」とは、単に行政機関の長の主観においてそのおそれがあると判断することが相当と認められるというだけではなく、客観的にそのおそれがあると認められることが必要というべきである。さらに、情報公開法の趣旨目的(1条)や、公益性の高い情報については義務的開示の対象とされていること(5条2号柱書きただし書)等を踏まえれば、ここでいう法人等の「正当な」利益とは、営業秘密として保護されるものに限られると解するのは相当ではないものの、開示による公益との比較衡量の上で、なお保護に値する程度に至っているものを指すというべきである。/もっとも、上記「おそれ」があるか否かの判断に当たり、行政文書の個別具体的な記載文言等から法人等の権利利益等がどのように害される蓋然性があるかが具体的に明らかにされなければならないとすることは、結果的に当該行政文書の開示を要求するに等しく、不開示情報を定めた情報公開法の趣旨に反することは明らかである。/そうすると、行政文書に記録された情報につき、情報公開法5条2号イ所定の「おそれ」があるか否かを判断するに当たっては、当該情報が、どのような法人等に関するどのような種類のものであるかなどといった一般的な性質から、当該法人等の権利利益が「正当な」ものと言えるか否か、その権利利益等を害するおそれがあるか否かについて客観的に判断することを要し、かつ、それで足りるものと解するのが相当である。」(審査会にて原文中の改行箇所に「/」を挿入している。)と判示しているとおり、「正当な」利益の判断において公益性を考慮すべきでないとまでは解せない一方で、上記の「おそれ」の判断において「明白性」まで必要であるとは解しておらず、これらの解釈は、条例第7条第2号にも当てはまると考える。
よって、条例第7条第2号本文該当性判断に当たって、実施機関が主張するように一定の公益性を考慮することが違法又は不当とまでは言えず、また、審査請求人が主張するような「明白性」要件は不要である。
なお、「宗教法人法に係る都道府県の法定受託事務に係る処理基準について」(平成16年2月19日付け15庁文第340号各都道府県知事宛て文化庁次長通知)第2において、「2 情報公開条例等に基づき(宗教法人)法第25条第4項の規定により宗教法人から提出された書類の開示請求があった場合の取り扱いについては、当該書類が宗教法人の内部情報であり、・・・当該情報の開示により当該宗教法人及びその関係者の信教の自由が害される恐れがあることから、登記事項等の公知の事項を除き、原則として不開示の取り扱いとすること。」との基準がある。
当該基準は、宗教法人法第25条第4項に基づき提出義務を課された各種書類(役員名簿、財産目録、事業関係書類等)についての定めであるが、本件非公開部分を含む文書もまた、上記第4、2、(1)において実施機関が主張しているように、墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号)第10条第1項に基づく許可を求める宗教法人に対し、実施機関が提出を求めたものであり、かつ、当該宗教法人の内部情報に該当し得るものである。
よって、当該基準の趣旨は本件審査請求の判断にも当てはまる余地があり、本件非公開部分の条例第7条第2号該当性判断について慎重な検討が求められる。
以上に加えて、布教活動を含む宗教法人の事業活動に係る利益も条例第7条第2号による保護の対象となり得るものであることから、本件非公開部分を公開することで、当該宗教法人の「正当な」利益を害するおそれが客観的にあると判断できるか否かについて、対象文書の性質に照らして、以下検討する。
(2) 本件非公開部分の条例第7条第2号該当性について
ア 対象文書について
本件非公開部分を含む文書は、上記第3、1のとおり、「真言宗国分寺派 寺院一覧」(以下「本件文書」という。)である。また、本件文書は、上記第4、2、(1)において実施機関が主張しているように、単位宗教法人である国分寺が納骨堂経営許可申請を行うに当たって、納骨堂経営許可に係る審査項目の「納骨壇数については檀信徒等の数に応じたものであること」という項目を示す書類として提出されたものであると認められる。
ところで、本件審査請求において審査請求人が求めているのは、本件文書に記載のある僧侶人数及び信者数の公開である。そこで、条例第23条第1項に基づき本件文書の提示を求め、審査会において見分したところ、公開部分には、「真言宗国分寺派 寺院一覧」の全体としての僧侶人数と信者数、各寺院名及び所在地都道府県名が記載されていた。一方、本件非公開部分には、僧侶人数は寺院ごとに記載されていたが、信者数は寺院ごとではなく、都道府県ごとの合計信者数のみが記載されていた。
イ 本件非公開部分の条例第7条第2号該当性について
以上のような本件文書における本件非公開部分が公開されると、僧侶人数及び都道府県別信者数が明らかとなり、上記公開部分とあわせ読むことで当該宗教法人の僧侶及び信者の都道府県ごとの分布状況を少なくとも把握できることになる。
一般的に、都道府県ごとの僧侶人数及び信者数の分布状況を比較することで、各地域でどの宗教が信仰されているのか、宗教的帰属意識の強さや多様性がどのような状況にあるのかを把握することが可能である。
したがって、本件非公開部分が公開されることにより、当該宗教法人の各地域における現在の活動状況、影響力を推測することが可能となり、今後の布教戦略を推測することも可能となると考えられ、他の宗教法人の布教活動を利するおそれも否定できない。
また、宗教年鑑(令和3年版)の宗教統計Q&AのQ5のAのオによると、「信者の定義、資格などはそれぞれの宗教団体で定められ、その数え方もおのおの独自の方法がとられています。」とのことであり、本件非公開部分に記載の信者数も、単なる数字ではなく独自の方法で数えられていると考えられる。このような信者数は、みだりに公開されれば当該宗教法人の信教の自由を侵害するおそれのあるものであり、原則として、公開する範囲の選択を当該宗教法人の選択に委ねるべき内部管理に属する事項に関する情報と評価できる。
よって、本件非公開部分における各寺院の僧侶人数及び都道府県別信者数は、少なくとも、当該宗教法人の僧侶及び信者の都道府県ごとの分布状況に関する情報と言え、また、各寺院の僧侶人数は言うに及ばず、信者数のとらえ方自体にも宗教法人の独自性が認められることからすれば、これらの情報は、原則として、当該宗教法人の内部管理に属する事項に関する情報であると言え、これらを公開することにより、当該法人の布教活動を含む事業活動に係る正当な利益を害するおそれがあると客観的に判断できると言える。
なお、審査請求人は、宗教年鑑(甲2)の「文部科学大臣所轄包括宗教法人(神道系)」の「(A) 神社神道系」「7」の「神宮教」は、「神社」「1」で、「教師」「2」及び「信者」「680」(甲2)と記載されている。すなわち、神宮教は、神社が1つしかないため、実態としては、当該宗派の教師数及び信者数は、当該宗派の神社の教師数及び信者数とイコールとなる。そうすると、神社、寺院、教会あるいは布教所等が1つしか存在しない包括宗教法人の場合、実質的には、個別の神社、寺院、教会あるいは布教所の教師数及び信者数を公開しているのと同じであり、僧侶人数及び信者数に関する情報は、一般に公開されていない宗教法人の宗教活動の分布状況に関する情報ではない旨主張する。
しかし、この審査請求人の主張は、たまたま生じているように見える特殊な例を過度に一般化したものに過ぎない。宗教年鑑を公表している文化庁に対して、実施機関が令和6年9月6日に確認を行ったところ、「文部科学大臣が所轄する包括宗教法人に対して、個別の寺院等の詳細は明らかにしないとの条件のもと、任意の協力を得て情報収集したものであり、そもそも、文化庁において、包括宗教法人における個別の寺院等の教師数及び信者数を公にすることは無い」との見解を得ていることからも、上記のように評価することができる。そして、上記(1)で述べたとおり、本件非公開部分の条例第7条第2号該当性判断については慎重な検討が求められることからすれば、この審査請求人の主張を採用することはできない。
以上に加えて、本件非公開部分につき条例第7条第2号ただし書に該当すべき事情は認められない。
したがって、本件非公開部分は条例第7条第2号に該当する。
4 その他の審査請求人の主張について
審査請求人のその他の主張は、いずれも上記審査会の判断を左右するものではない。
5 結論
以上により、第1記載のとおり、判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
委員 重本 達哉、委員 小林 美紀、委員 榊原 和穂
(参考)答申に至る経過
令和5年度諮問第30号
(略)
答申第543号
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