「大阪市財政の現状」について(平成24年9月)
2024年9月26日
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「大阪市財政の現状」について(平成24年9月)
大阪市の財政について市民の皆さんに知っていただくため、「大阪市財政の現状」についてを作成しました。
ここでは平成24年9月に作成したものを掲載しています。
「大阪市財政の現状」について(平成24年9月)
- 表紙および目次(pdf, 422.79KB)
- 1章:大都市の税財政における現状と課題(1ページから3ページ)(pdf, 464.56KB)
- 1章:大都市の税財政における現状と課題(4ページから6ページ)(pdf, 560.26KB)
- 1章:大都市の税財政における現状と課題(7ページから13ページ)(pdf, 959.06KB)
- 2章:大阪市財政の現状と課題(14ページ~20ページ)(pdf, 840.43KB)
- 2章:大阪市財政の現状と課題(21ページ~24ページ)(pdf, 758.98KB)
- 2章:大阪市財政の現状と課題(25ページ~31ページ)(pdf, 870.99KB)
- 2章:大阪市財政の現状と課題(32ページ~39ページ)(pdf, 922.45KB)
- 3章:市政改革の取組と今後の方向性(40ページから42ページ)(pdf, 881.77KB)
- 3章:市政改革の取組と今後の方向性(43ページから45ページ)(pdf, 633.80KB)
- 3章:市政改革の取組と今後の方向性(46ページから47ページ)(pdf, 395.05KB)
- 巻末資料(48ページ~49ページ)(pdf, 190.31KB)
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1章:大都市の税財政における現状と課題
(1)大都市としての大阪市の実態
大都市は、政治、経済、文化など各分野において主要な地位を占め、我が国の発展に貢献しており、大阪市も、大阪圏域、関西圏域の中核都市として広い範囲の人々にも貢献する大都市としての役割を担っています。
また、大阪市内への通勤者を見ても、西は兵庫県明石市、東は三重県名張市、南は大阪府岬町までと非常に広範囲にわたっています。
〈2〉膨大な昼間流入人口
大阪市の夜間人口は昭和40年の316万人をピークとして減少していましたが、近年は260万人台で推移しています。また、昼間人口は多少の増減はあるものの、350万人から380万人の水準で推移しています。平成22年度は夜間人口267万人に対し、昼間人口は354万人、昼夜間人口比率は1.33倍となっています。
また、大阪市は事務所や事業所などが集中しており、昼間流入人口は、大都市の夜間人口に匹敵する規模となっています。このような物と人の集中により、財政需要は増嵩することになります。
〈3〉圏域に貢献する大阪市
大阪市は、大阪都市圏や関西の発展に貢献する都市として、地下鉄等の都市交通網の整備や社会教育施設の運営など、さまざまな事業を実施しており、高度な都市機能が集積しています。このような施設等にかかる税などと利用する市外居住者の割合を見ると、年間118億円を要する大阪市立大学の平成23年度入学者の83.2%、104億円を要する地下鉄の乗車人員の66.4%、80億円を要する社会教育施設の平成23年度利用者では66.4%、また46億円を要する中央卸売市場の平成23年度搬出先の67.4%が市外となっています。
大阪市では、高密度の人口集中や膨大な昼間流入人口により、市域面積1平方キロメートルあたりの昼間人口が15,906人と横浜市や名古屋市の7千人台と比較しても2倍以上あり、このような経済活動の集積などに対処するため、早くから地下鉄や下水道などの都市基盤と生活環境の整備を進めてきました。都市基盤としては、例えば他の政令指定都市に比較して交通網の整備された営業距離129.9kmの地下鉄や行政区域内普及率がほぼ100%の下水道などがあります。
また、早くから都市施設の整備を進めてきた結果、こうした諸施設が順次更新時期を迎えつつあります。
〈5〉大阪経済の現況
大阪都市圏の中核である大阪市の市内総生産(名目)は、19兆6,532億円(平成21年度)となっており、国内総生産(474兆402億円)の約4%を占めています。また、国内総生産の約16%に相当する近畿圏(2府4県)の域内総生産のうち、約4分の1を大阪市が占めるなど、大阪市に経済活動が集中しています。
大阪市経済の特徴として、各種産業の集積密度が高いことがあげられます。また、主要な産業・経済指標を単位面積当たりで換算した「密度」で比較すると、東京都区部に匹敵しています。
〈6〉急速に進む少子・高齢社会
少子・高齢社会が進み、大阪市では、65歳以上の老年人口比率が増加し、2割を超えている一方で、15歳未満の年少人口比率は減少しつつあります。平成22年度では65歳以上が22.7%、15歳から64歳までが65.7%、15歳未満が11.7%となっています。
また、大阪府や指定都市との比較では大阪市の65歳以上の老年人口比率は、大阪府の22.4%や指定都市平均の21.2%を上回っている一方で、15歳未満の年少人口比率は、大阪府の13.3%、指定都市平均の13.0%を下回っている状況です。
(2)現行税財政制度における現状と問題点
住民に身近な行政について、地方公共団体が自主的かつ総合的に広く担うようにする真の分権型社会の実現のためには、地方税の充実確保が必要です。しかし、全国的に見ても、歳入に占める地方税の割合は3割程度と、地方税中心の歳入構造とはなっていません。とりわけ大阪市は、現行の税制度による要因や、地価下落などを反映して固定資産税・都市計画税が減収してきたことなどにより、歳入に占める市税の割合が他の指定都市と比較しても低い状況にあります。
平成22年度における歳入に占める地方税の割合は、横浜市50.1%、名古屋市46.0%、指定都市平均39.9%に対して、大阪市は38.1%となっています。
市町村税は、法人所得課税、消費・流通課税といった経済活動を反映する都市的税目に乏しいため、増大する都市的財政需要に市税収入が対応しきれない大きな要因となっています。具体的に市町村税、道府県税、国税のそれぞれの構成比率を比較すると、市町村税では都市的税目である法人所得課税は9.6%、消費・流通課税は4.9%、その他の個人所得課税などが85.5%であるのに対し、道府県税では法人所得課税21.5%、消費・流通課税40.8%、その他37.7%、また国税においては法人所得課税23.8%、消費・流通課税41.3%、その他34.9%となっています。また、法人所得課税、消費・流通課税から見た市町村税、道府県税、国税への配分状況では、法人所得課税は国税81.6%、道府県税10.5%、市町村税7.9%、消費・流通課税では、国税72.9%、道府県税23.1%、市町村税4.0%となっています。
大都市では、地方自治法に基づき府県に代わって行っている事務のほか、道路法に基づく国・府道管理事務なども行っています。しかし、これらに要する一般財源のうち、税制上の措置がなされているのは、大阪市では約2割にすぎません。
地方自治法に基づくものは、児童福祉、民生委員、身体障害者福祉、生活保護、行旅病人・死亡人、社会福祉事業、知的障害者福祉、母子家庭及び寡婦福祉、老人福祉、母子保健、介護保険、障害者自立支援、食品衛生、精神保健及び精神障害者福祉、結核予防、土地区画整理事業、屋外広告物規制の17項目あり、またその他の法令に基づくものとして、国、府県道の管理、衛生研究所、道府県費負担教職員の任免、研修、定時制高校人件費、土木出張所などがあり、大阪市の平成24年度予算(当初+7月補正)では、これらの所要額として546億円を計上していますが、税制上の措置がなされるのは、129億円にすぎません。
地方公共団体が自主的かつ総合的に行政を担うためには、国と地方の役割分担を抜本的に見直したうえで、その実態と新たな役割分担に応じた地方税財政制度を確立することが必要です。
特に都市部においては、昼間流入人口による財政需要や都市の成熟化に伴う更新需要が大きいにも関わらず、現行の市町村税財政制度は、その財政需要の実態に見合ったものになっていないため、都市的税目である法人所得課税・消費流通課税の市町村税への配分割合を高めることが必要です。
現状における国・地方間の「税の配分」は6:4である一方、地方交付税、国庫支出金等も含めた「税の実質配分」は2:8と大きく乖離しており、地方が担っている役割に見合った「税の配分」になっていません。
そのため、国と地方の役割分担を抜本的に見直したうえで、複数の基幹税からの税源移譲により、国と地方の「税の配分」を、その新たな役割分担に応じたものとするよう、他の地方公共団体と連携を図りながら、国等に引き続き強く求めていきます。大阪市では、平成2年から生活保護受給者が増加の一途をたどっています。平成23年度においては、被保護世帯数・人員が約12万世帯約15万人であり、平成2年度を100とした場合の被保護人員の指数は337.5になっています。また、生活保護を受ける人の割合(保護率)は、平成24年3月で、全国では約1.7%であるのに対し、大阪市では約5.7%で17人に1人が生活保護を受給するなど、総じて大都市を中心に保護率が高くなっています。
生活保護世帯の約半数の5万世帯程が、自立が困難と考えられる高齢者世帯であり、また、近年の急激な景気後退により、多くの非正規雇用者が失業し生活保護に直結することなど、生活保護制度が創設から60年を経過し、制度疲労を起こしている状況です。
したがって、雇用・労働施策や、年金制度をはじめとする社会保障制度全般のあり方を含めた生活保護制度の抜本的な改革が必要です。
また、生活保護は、地方に裁量の余地がないことから、ナショナルミニマムとして国の責任において実施すべきものであり、その経費は全額国が負担すべきです。 現行制度では、地方負担に交付税措置がなされていますが、交付税は標準的な財政需要を客観的に算定するものであり、地域の実態が十分に反映されないため、生活保護のような経費になじみません。
大阪府は、府下の市町村に補助金等を支出する場合に、指定都市である大阪市や堺市を対象から除くなど、他の市町村と差を設けており、これを「差等補助」と言います。
大阪市民も府内の他の住民と同じように府民税を負担しているにもかかわらず、教育などの基礎的な行政サービス分野において、指定都市という理由で差を設けるべきではありません。
住民の負担と行政サービスの関係等を踏まえて、府と市の役割に応じた財源負担とするため、差等補助については、大阪府としっかり議論していきます。
2章:大阪市財政の現状と課題
(1)大阪市の当初予算(当初+7月補正)(平成24年度)
大阪市の平成24年度一般会計当初予算(当初+7月補正)の歳出規模は、前年度比△3.2%、553億円減の1兆6,652億円となっています。
職員数の削減や給料月額のカット率拡大により人件費を削減するほか、施策・事業の見直しや補助金等の見直しなど「市政改革の取組み」を反映する一方、「現役世代への重点的な投資」として、乳幼児医療費助成制度の拡充や待機児童解消の取組み、中学校普通教室への空調機等の設置、中学校給食の実施等の教育環境の整備などを計上しています。
歳入予算1兆6,652億円の内訳は、市税6,066億円、国府支出金3,941億円、公債収入1,380億円、譲与税・交付金619億円、地方交付税520億円、地方特例交付金19億円、その他諸収入等4,107億円となっています。
歳出予算1兆6,652億円の内訳は、扶助費5,066億円、投資的経費2,869億円、特別会計繰出金等2,772億円、公債費2,358億円、人件費2,197億円、経常的施策経費及び管理費1,390億円となっています。
大阪市の平成24年度特別会計予算は次のとおりです。
まず政令等特別会計では、食肉市場事業会計22億6,300万円、市街地再開発事業会計246億2,400万円、駐車場事業会計15億3,700万円、有料道路事業会計4億7,300万円、土地先行取得事業会計736億8,500万円、母子寡婦福祉貸付資金会計5億7,300円、国民健康保険事業会計3,301億500万円、心身障害者扶養共済事業会計5億1,500万円、介護保険事業会計2,032億5,300万円、後期高齢者医療事業会計270億7,000億円。
準公営企業会計では、中央卸売市場事業会計149億9,400万円、港営事業会計325億1,300万円、下水道事業会計1,394億2,000万円。
公営企業会計では、自動車運送事業会計226億4,400万円、高速鉄道事業会計2,378億5,000万円、水道事業会計926億2,900万円、工業用水道事業会計33億8,100万円、市民病院事業会計532億7,000万円。
公債費会計では9,074億3,000万円と、特別会計の合計で2兆1,682億2,900万円となっています。
大阪市の平成24年度全会計の予算総額は3兆8,335億円、一般会計では1兆6,652億円と全会計、一般会計ともに指定都市のなかで最も大きくなっています。
(2)大阪市の税収
最も基本的な収入である市税収入の平成24年度予算(当初+7月補正)は、6,066億円で厳しい経済情勢を反映した法人市民税の減収や、固定資産税・都市計画税において、地価や建築物価の下落を反映した土地・家屋に係る評価替えによる減収が想定されることなどから、2年振りの減収を見込んでいます。そのため、平成24年度予算(当初+7月補正)は、リーマンショック前の平成20年度と比較すると642億円の減収、ピークである平成8年度と比較すると1,710億円の減収となるなど、低い水準となっています。
また、大阪市の平成24年度予算(当初+7月補正)の市税総額6,066億円は、横浜市6,961億円に次ぐ指定都市で2番目の規模となっています。大阪市の市税収入の特徴として、市税総額に占める個人市民税の割合が低く、法人市民税の割合が大きいことが挙げられます。
個人市民税は、ピークである平成4年度を100とすると、平成24年度予算では全国が93.3であるのに対し大阪市は78.9と落ち込みが厳しくなっています。また、納税者1人当たりの個人市民税額は、府下33市ではトップの箕面市が16万3千円に対して大阪市は11万4千円と15番目となっており、指定都市及び東京都特別区との比較では、大阪市は14番目となっています。
法人市民税は、ピークである平成元年度を100とすると、平成24年度予算では大阪市は42.6と大きく落ち込んでおり、全国53.3よりも落ち込みが厳しくなっています。なお、業態別では、特に金融・保険業や卸売業などが大きく落ち込んでいます。
固定資産税は、近年地価が下落傾向にあることから、ピークである平成8年度と比較すると、大きく減少しています。なお、土地に係る固定資産税及び都市計画税は、平成8年度を100とすると、平成24年度予算では全国が87.5であるのに対し大阪市は54.9と大きく落ち込んでいます。
(3)性質別経費の状況
市税収入が低水準で推移するなか、人件費や経常的施策経費等の抑制を図っているものの、生活保護費などの扶助費や市債償還のための公債費といった義務的経費が高い伸びを示しています。平成8年度を100とすると、平成24年度予算(当初+7月補正)では扶助費224.0、公債費223.9と大きく増加しています。
経常収支比率とは、地方税、地方交付税、譲与税・交付金などの経常的な一般財源が、どの程度経常的な経費に充てられているかを示す指数で、財政構造の硬直度を表す「ものさし」とされているものです。経常収支比率が高いということは、義務的経費以外に使える財源に余裕がないことを示し、財政構造の弾力性が低いことになります。大阪市の平成23年度の経常収支比率は99.5%で本市においても、人件費の縮減に努めるなど歳出全般にわたり見直しを行ったものの、市税収入が低い水準のなか、生活保護費などの扶助費や市債の償還のための公債費といった経常的経費の増大により、高い水準となっています。
また、平成22年度で比較すると本市は扶助費が高いため、指定都市平均が95.4に対し、大阪市は99.4と指定都市の中でも最も高い数値となっています。
被保護世帯数の増に伴う生活保護費の増などにより、扶助費は増加を続けており、平成24年度予算では5,066億円となっています。扶助費のうち約6割を占めている生活保護費は、高齢化の進展や景気の後退によって増加しており、生活保護に要する負担の増加が財政全体を圧迫し、行政運営に支障をきたしています。生活保護受給者が増え続けるなか、生活保護の適正化に向け、平成24年度においても、不正受給や医療扶助の適正化に向け徹底した対策、集中的かつ強力な就労支援の取り組みを行うこととしています。
※生活保護費については、こちらをご参照ください。
大阪市では、都市基盤と生活環境の整備のために、早くから積極的に市債を活用してきましたが、近年においては、臨時財政対策債の多額の発行があるものの、公共事業費を減少させることによって、市債の新規発行額を極力抑制してきました。平成23年度末の市債残高は、全会計では4兆9,993億円で7年連続の減となり、平成12年度以来、11年ぶりに5兆円を下回りました。また、一般会計では2兆8,278億円で、後年度に地方交付税で全額措置される臨時財政対策債を除くと2兆3,611億円で6年連続の減となる見込みです。
市債の活用に伴い、累積した市債残高の償還は今後本格化し、償還のための公債費は平成25年度前後にピークとなりますが、その後、公債費や市債残高は減少していく見込みです。このため、今後、市税や料金収入などにより多額の市債を償還していく必要があります。
高齢社会の進展に伴う医療費の増嵩や、市街地再開発事業の収支差補てんの増などにより、一般会計から特別会計へ多額の繰出を行っており、平成24年度予算では2,772億円となっています。
とくに国民健康保険事業については、加入割合が高いうえ、加入者に高齢者や低所得者が多く、財政基盤が脆弱であることから、平成24年度予算では424億円を繰入れるなど毎年多額の一般会計からの繰入を行っていますが、累積赤字は平成23年度決算見込で178億円となっており、事業運営は非常に厳しい状況となっています。このため被保険者や地方公共団体の負担の増加を招くことなく、長期に安定した制度が確立できるよう、国に対して、引き続き医療保険制度の抜本的改革を求めていきます。
大阪市は、さまざまな市民ニーズに対応するため、都市基盤や生活環境の整備を行ってきました。それらの施設を維持していくためには、多額の管理運営費を要しますが、事務事業等の見直しにより減少し、平成24年度予算の経常的施策経費及び管理費は1,390億円となっています。
一方、近年の市民ニーズの高まりに対応するため新たな経常的施策経費が増大しています。
これらの経費を生み出すためにも、今後ともさらなる管理運営費の削減に取り組む必要があります。(4)地方交付税等の補てん財源
地方交付税とは、国税のうち所得税、法人税、酒税、消費税及びたばこ税のそれぞれ一定割合の額で、地方公共団体が等しくその行うべき事務を遂行することができるよう、一定の基準により国が交付する税のことです。
大阪市は、近年の厳しい税収動向を反映して、多額の地方交付税や特別債などの補てん財源に頼ってきました。平成24年度一般会計予算では、市税収入6,066億円に対して、地方交付税520億円、特別債913億円となっています。しかし、膨大な昼間流入人口や、少子・高齢社会への対応など、都市的な財政需要については、交付税への算入が十分とはいえないため、地方交付税の算定にあたっては、都市的な財政需要を的確に反映させる仕組みを構築することを国に求めています。また、臨時財政対策債とは、地方全体の財源不足に対処するため、特例的に発行する地方債であり、その償還については地方交付税に全額算入されますが、臨時財政対策債の発行等による負担の先送りではなく、地方交付税の法定税率の引上げによって、必要な地方交付税の総額を確保することを国に求めています。
なお、財政力指数とは、地方交付税の算定に用いる収入額を需要額で除した値であり、指数が高いほど、地方交付税に依存しない、自立した団体といえますが、本市の平成23年度の財政力指数は0.91であり、指定都市のうち高いほうから7番目となっています。
(5)基金の状況
大阪市は、条例によって蓄積基金を設置しています。基金の目的に応じ、短期運用と中長期運用を組み合わせた、確実かつ効率的な運用を行っています。平成24年3月末時点の交通・水道事業・市民病院整備基金を除く蓄積基金運用状況は、総額4,897億円で、うち短期運用3,384億円、中長期運用1,513億円となっています。
市債の満期一括償還に備え、国のルールどおり公債償還基金へ確実に積み立てており、償還財源が確保されています。なお、平成23年度末の公債償還基金(一般会計・満期一括分)の残高は、3,580億円となっています。
また、この積立金からの借入れは行わず、公債償還基金に頼らない財政運営をしています。
(6)健全化判断比率等
平成23年度決算に基づく健全化判断比率は、4指標とも早期健全化基準をクリアしています。
4指標のうちいずれかの指標が早期健全化基準以上となった場合には、自主的な改善による財政健全化のため、年度内に議会の議決を経て、「財政健全化計画」を定めなければなりません。さらに、いずれかの指標が財政再生基準 (将来負担比率については、早期健全化基準のみ)以上となると、従来の財政再建団体にあたる財政再生団体となります。
平成23年度決算で資金不足が生じている2会計のうち、中央卸売市場事業会計は、経営健全化基準(20%)を超えています。
平成20年度決算で経営健全化基準以上であった中央卸売市場事業会計は、平成28年度に資金不足を解消する「経営健全化計画」を、平成22年3月に議会の議決を経て、策定しています。なお、経営健全化計画の平成23年度実施状況は、計画(137.5%)より31.2ポイント改善しています。
平成23年度の大阪市の一般会計や公営企業会計等を含めた市全体では、累積赤字や資金不足が生じている会計があるものの、水道事業会計や高速鉄道事業会計など、資金剰余となっている会計があるため、資金収支は492億円の黒字となっています。
実質公債費比率は、借入金(地方債)の返済額及びこれに準じる額の程度を示し、数値が大きいほど、返済の資金繰りが厳しいことを表します。大阪市の平成23年度の実質公債費比率は10.0%で早期健全化基準である25%を下回っています。なお、実質公債費比率が18%以上の団体については、地方債の発行にあたり総務大臣の許可が必要となりますが、本市はこの基準も下回っています。
将来負担比率は、借入金(地方債)や将来支払っていく可能性のある負担額等の現時点での残高の程度を示し、数値が大きいほど、今後の財政を圧迫する可能性が高いことを表します。大阪市の平成23年度の将来負担比率は199.9%で、早期健全化基準(400%)を下回っています。
(参考)大阪市債の格付け
客観的で透明性の高い情報開示を一層積極的に行う観点から、大阪市の評価を依頼し、2社から格付けを取得しています。
大阪市債の格付けは、ムーディーズではAa3と21段階評価の上から4番目、スタンダード&プアーズではAA-で20段階評価の上から4番目となっており、地方自治体で最上位、国債と同格であり、高い格付けを得ています。今後もこの格付けを維持するべく努めていきます。
(7)財務書類4表
現行の公会計制度(現金主義・単式簿記)に加え、企業会計的手法も導入し、より正確な財務情報を公開するとともに、資産・債務の適正な管理を一層進めるため、「公会計制度改革」に取り組んでおり、国が示した「総務省方式改訂モデル」に基づき、財務書類4表を作成・公表しています。なお、現在、「大阪府と同様の新公会計制度」の導入に向け、「公会計制度改革プロジェクト全体計画(第2.0版)」を策定し、取り組みを進めております。新公会計制度による財務書類の作成・公表については、平成27年度決算からを予定しています。
貸借対照表は、大阪市が持っている資産と債務を表しています。大阪市は8兆5,262億円の資産を保有しており、全体の約8割は行政サービスを提供するために必要な資産です。また負債は3兆4,358億円となっています。
行政コスト計算書は、1年間の経常的な行政活動にかかるコスト(費用)を表しています。大阪市の行政サービスのコストは1兆3,403億円で生活保護等の社会保障給付といった「移転支出的なコスト」が約6割を占めています。
純資産変動計算書は、貸借対照表の純資産(過去・現世代がすでに負担したお金)の1年間の変動額を表しています。純資産は、1年間で128億円減少しました。
資金収支計算書は、1年間の資金(現金)の流れを性質別に表しています。地方税などの収入により経常的収支で生じた資金をその他の収支に充てた結果、年度末の資金(現金)は14億円となりました。
1人当たり資産額は336万円で、公共事業の縮減により減少傾向にあります。
しかしながら、他都市(横浜市、名古屋市、京都市、神戸市)との比較(21年度)では、多くの資産を保有していることも分かります。これは本市が早くから道路などの都市基盤整備に取り組んできたことによるものです。
1人当たり負債額は135万円で、地方債の発行抑制や職員数の削減により、資産額と同様に減少傾向にあります。
しかしながら、他都市との比較(21年度)では、多くの負債(将来世代の負担)を 負っていることも分かります。今後も負債額の縮減に努めていく必要があります。
1人当たり経常行政コストは53万円で、これまでの市政改革の取り組みにより、「人にかかるコスト」及び「物にかかるコスト」は減少していますが、生活保護の急激な増加や、22年度は子ども手当の支給など、「移転支出的なコスト」は大幅に増加しています。
また、他都市との比較(21年度)では、本市が一番多くの行政コストを掛けていることが分かり、その主な「移転支出的なコスト」は、他都市と比べ突出していることも分かります。なお、「人にかかるコスト」及び「物にかかるコスト」も他都市と比べ依然として高いことから、今後も行財政改革に取り組む必要があります。
3章:市政改革の取組と今後の方向性
(1)今後の財政収支概算(粗い試算)[平成24年2月版]
大阪市は、将来世代に負担を先送りしないため、「補てん財源に依存」するのではなく、「収入の範囲内で予算を組む」ことを原則に、市政の抜本的改革を進め、「通常収支(単年度)の均衡」を目指すこととしました。なお、通常収支とは、補てん財源(不用地売却代、都市整備事業基金(除く特定財源分)、公債償還基金(剰余分)、退職手当債)を活用しない収支(歳入-歳出)を意味します。
この財政収支概算(粗い試算)は、そのために必要となる収支改善の目安を、一定の前提により試算したものです。
その結果、平成26年度に最大の収支不足が見込まれるなど、ここ10年は約500億円の通常収支不足が見込まれます。ただし、この試算は不確定要素を多く含んでおり、相当の幅をもってみる必要があります。
今後、府市統合本部や改革プロジェクトチームでの検討を踏まえ、補てん財源に依存せず、収入の範囲内で予算を組むことを目指し、持続可能な財政構造の構築を図ります。
(2)市政改革の取組状況
大阪市は、平成24年7月に、大阪にふさわしい大都市制度の実現を見据え、基礎自治行政について、現在の大阪市の下で「ニア・イズ・ベター(補完性・近接性の原理)」を徹底的に追求した新しい住民自治と区政運営の実現、ムダを徹底的に排除した効果的・効率的な行財政運営をめざし、「市政改革プラン」を策定しました。
今後、ムダを徹底的に排除し、成果を意識した行財政運営を行うため、歳入の確保を図るほか、団体への運営補助金等の見直し、施策・事業のゼロベースの見直しなどに取り組みます。これらの取組により、「こども」「教育」「雇用」といった現役世代への重点投資のための財源を捻出し、政策転換を支えるとともに、財政の健全化をめざしていきます。
「市政改革プラン」では、スリムで効率的な業務執行体制をめざし、経営形態の変更、施策事業の再構築などにより、職員数約1万9,000人を目指すこととしています。
職員の給料および管理職手当のカットなどにより、人件費の削減を進めてきました。今後も、給料等のカットを継続し、さらに削減します。また、給料のカットにより、平成23年4月1日現在において、大阪市の職員一人当たりの給料は指定都市で3番目の低さとなっています。
歳入確保はもとより、市民負担の公平性・公正性の確保の観点などから、未収金対策に取り組んでいます。
「新たな未収金を極力発生させない」「既存未収金の解消」を二つの柱として、平成20年度に、全市的な取組を総括する「大阪市債権回収対策会議」の設置、各局で対応困難となっている高額事案などを集中的に回収する「市債権回収特別チーム」を設置するなど、全庁的な取組を強化してきました。
さらに平成24年8月に、「市債権回収特別チーム」を母体として、「市債権回収対策室」を設置し、未収金回収担当を集約化するなど、未収金対策を一層促進しています。
今後も取組みを徹底し、平成26年度末に未収金の残額を551億円まで圧縮します。
また、未利用地の売却については、大阪市土地流動化委員会の意見を受け、平成19年度に「大阪市未利用地活用方針」を策定し、平成23年度末までに973億円(一般会計)を売却しました。
現在の厳しい財政状況の下、今後も可能な限り売却に取り組み、平成24年度254億円、平成25年度150億円、平成26年度150億円の売却を目指します。
大阪市では、極めて厳しい財政状況のもと、徹底した行政運営の効率化を図るため、これまで外郭団体等の抜本的な改革に取り組んできました。
この改革をさらに推進するため、平成24年7月に、外郭団体の個別の方向性及び外郭団体への競争性のない随意契約による事業委託について、「外郭団体見直しの方向性」及び「外郭団体への競争性のない随意契約による事業委託の見直し」として取りまとめました。外郭団体数については平成24年7月時点の70団体から平成26年度末で21団体に、随意契約については平成22年度決算の325件321億円から平成25年度で21件55億円となる見込です。
今後も不断の外郭団体等の改革に取り組み、市民サービスの向上を図ってまいります。
巻末資料
指定都市の財政状況〈平成22年度決算等〉
会計の定義(一般会計・特別会計・普通会計)
○一般会計とは、通常の公共事務事業に要する経費の収入・支出を扱う会計です。
例えば、保健医療、福祉、教育、住宅、道路橋梁、公園、清掃、消防等の各事務事業の収支を経理しています。
○特別会計とは、特定の事業を行う場合に、その他特定の歳入を持って特定の歳出に充て、一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合、法令又は条例に基づいて設置される会計です。大阪市では、特別会計をさらに性質により、次の4つに区分しています。
・政令等特別会計
特別会計のうち準公営企業会計と公営企業会計を除いた会計です。
一般会計と同様地方自治法の財務関係規定の適用をうけ、単式簿記の会計経理の方法により処理されます。
・準公営企業会計
地方公営企業法の規定(財務規定等、組織、身分取扱い)のうち財務規定等の規定が適用される企業にかかる会計です。
・公営企業会計
地方公営企業法の規定の全部が適用される企業にかかる会計です。
・公債費会計
各会計の公債関係の歳入・歳出を一括して経理する整理会計です。
○普通会計とは、総務省の地方財政決算統計上における会計区分です。
公営事業会計以外のすべての会計を普通会計とし、地方公共団体間の比較や時系列比較が可能となるようにされています。
○公営事業会計とは、
・公営企業会計(地方財政法施行令第12条に掲げる事業)
・収益事業会計、国民健康保険事業会計等の事業会計
・上記以外の事業で地方公営企業法の全部又は一部を適用している事業にかかる会計です。
大阪市の場合の普通会計
一般会計に市街地再開発事業会計の一部と土地先行取得事業会計、母子寡婦福祉貸付資金会計、心身障害者扶養共済事業会計を足して会計相互間の重複を除したものです。
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