ダニが媒介する感染症
2019年12月3日
ページ番号:225622
ダニが媒介する感染症は、日本国内でも多く発生しています。感染症を媒介するマダニ等のダニは、屋外に生息し吸血するダニで、家庭内に生息しているダニとは種類が異なります。マダニ等の活動が活発になる、春から秋にかけては特に注意が必要となります。
どんな病気があるの?
感染症法で、全数把握疾患として指定されている主なダニ媒介感染症は以下の8疾患です。
疾患名 | 病原体 | 感染経路 | 発生地域 | 潜伏期間 | 症状 | 治療・予防方法 | 日本国内での発生状況 | |
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一類感染症 | クリミア・コンゴ出血熱 | クリミア・コンゴ出血熱ウイルス | ・感染マダニに咬まれる ・感染動物の血液や組織と接触する ・感染者や患者の血液、血液の混入した排泄物、汚物などに接触する | アフリカ大陸、東ヨーロッパ、中近東、中央アジア諸国、中国西部 | 2~9日 | 発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、関節痛、腹痛、嘔吐がみられ、続いて咽頭痛、結膜炎、黄疸及び種々の知覚異常が現れる。点状出血が一般的にみられ、進行すると紫斑も生ずる。重症化するとさらに全身出血、血管虚脱を来し、死亡例では消化管出血が著明である。肝・腎不全も出現することがある。血液と体液は感染力がきわめて強い。 | 特異的な治療法はないが、リバビリン(抗RNAウイルス薬)がウイルスの増殖を抑制すると言われている。ワクチンはなく、ガウン、マスク、手袋等の基本的防御策で予防できる。 | 国内でまだ発生が報告されていない |
四類感染症 | 回帰熱 | 回帰熱ボレリア(細菌) | 感染ダニ(オルニソドロス属ダニ)若しくは感染シラミに咬まれる | アメリカ大陸、アフリカ、中東、ヨーロッパの一部 | 5~10日 | 菌血症による発熱期、菌血症を起こしていない無熱期を3~5回程度繰り返す、いわゆる回帰熱を主訴とする。発熱期には、頭痛、筋肉痛、関節痛などをともなう発熱、悪寒がみられる。また、このとき点状出血、紫斑、結膜炎、肝臓や脾臓の腫大、黄疸もみられる。発熱期は3~7日続いた後、一旦解熱(無熱期)し、5~7日後再び発熱期に入る。 | テトラサイクリン等の抗菌薬による治療が有効である。ワクチンはない。 | 国内での感染・流行はないが、輸入例が報告されている。 |
重症熱性血小板減少症候群(SFTS) | SFTSウイルス | 感染マダニに咬まれる | 中国、日本 | 6~14日 | 発熱、消化器症状が主症状で、頭痛、筋肉痛、神経症状、出血傾向等を起こすこともある。 | 抗ウイルス薬はなく、対症療法を行う。ワクチンはない。 | 2013年に初めて発生が報告され、以降西日本を中心に報告が続いている。 | |
ダニ媒介脳炎 | フラビウイルス属ウイルス(主なものとして、ロシア春夏脳炎ウイルス、中部ヨーロッパ脳炎ウイルス) | ・感染マダニに咬まれる ・感染した羊や山羊の原乳を飲む | ヨーロッパからアジアにかけて標高1400mまでの地域 | 7~14日 | 発熱、頭痛、脳炎症状(中部ヨーロッパ脳炎では二相性の病状を呈し、一旦解熱したのちに脳炎症状を発症する) | 抗ウイルス薬はなく、対症療法を行う。また、中部ヨーロッパ脳炎の場合はガンマグロブリン製剤の投与が行われることもある。ヨーロッパでは不活化ワクチンが流通しており、ワクチンによる予防も行われているが、日本にはない。 | ダニ媒介脳炎としての報告が定められた2007年以降では、2016年に国内発生例が1例報告されている。 | |
ツツガムシ病 | オリエンティア・ツツガムシ(リケッチア) | 感染ツツガムシ(ダニの一種)に咬まれる | 日本を含むアジア、東南アジア | 5~14日 | 39度以上の高熱、特徴的なダニの刺し口、発疹が主症状。リンパ節腫脹が患者の50%程度にみられる。重症化すると、肺炎や脳炎にいたるケースもある。 | 早期に本症を疑い、テトラサイクリン系の抗菌薬による治療を行うことが重要。ワクチンはない。 | 国内での発生があり、毎年多くの患者が報告されている。 | |
日本紅斑熱 | リケッチア・ジャポニカ | 感染マダニに咬まれる | 日本 | 2~8日 | 頭痛、発熱、倦怠感を伴って発症し、ツツガムシ病と同じく、発熱、ダニの刺し口、発疹を主症状とする。 | 早期に本症を疑い、テトラサイクリン系等の抗菌薬による治療を行うことが重要。ワクチンはない。 | 国内での発生があり、毎年患者が報告されている。 | |
ライム病 | ライム病ボレリア(細菌) | 感染マダニに咬まれる | ヨーロッパ、アジア、北米 | 数日~数週間 | 感染初期には特徴的な遊走性紅斑がみられ、随伴症状として、発熱、頭痛、関節痛等のインフルエンザ様症状がみられることがある。病原体が全身に広がる播種期には、皮膚症状、神経症状等の多彩な症状がみられる。また、治癒しないまま感染から数カ月から数年を経過した慢性期には、播種期に発症した症状に加え、重度の皮膚症状、関節炎を示す。 | 抗菌薬による治療が有効である。アメリカではワクチンが流通しているが、日本ではない。 | 国内での発生があり、毎年少数ではあるが患者が報告されている。 | |
ロッキー山紅斑熱 | ロッキー山紅斑熱リケッチア | 感染マダニに咬まれる | アメリカ東南部、カナダ | 3~12日 | 高熱とほぼ同時に、発疹が多発し、部位によっては点状出血を伴う。ときにリンパ節腫脹がみられる。その後、中枢神経系症状、不整脈、乏尿、ショックなどの合併症を呈する。診断・治療の遅れ、高齢者、発疹がみられない、ダニの刺咬歴がある、冬季の発症などでは、致死率が高い。 | 早期に本症を疑い、テトラサイクリン系等の抗菌薬による治療を行うことが重要。ワクチンはない。 | 国内でまだ発生が報告されていない |
これらの疾患の他に、ダニに咬まれることが主な感染経路ではありませんが、ダニが媒介する可能性のある疾患にQ熱や野兎病などがあります。
ダニの予防・対策について
ダニが媒介する病気を予防するには、ダニに咬まれないようにすることが重要です。これらの病気を媒介するダニは、家庭内に生息しているダニとは種類が異なり、屋外の草むらなどに生息しているダニなので、以下のようなことに注意しましょう。
・草むらや藪など、ダニが多く生息している場所へ入る場合には、長袖、長ズボン、足を完全に覆う靴を着用し、肌の露出をなるべく少なくしましょう。
・屋外で活動した後は、ダニに刺されていないか確認しましょう。
・吸血中のダニに気付いた場合は、できるだけ病院で処置してもらいましょう。無理に引き抜くと、ダニの一部が皮膚の中に残ることがあります。
・ダニに咬まれた後に発熱などの症状が出た場合は、病院を受診しましょう。
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