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大阪市ビジュアル下水道プラン 

2014年12月16日

ページ番号:194685


はじめに

 下水道の持つ歴史は非常に古く、今から7000年ほど前、メソポタミア文明の中心都市に造られたものが最初だといわれています。このように、人が都市で生活し、その社会が発展していくためには、いつの時代にも、水と正しく関係を持つシステムが必要です。

 大阪市は行政体として、水系伝染病の流行と浸水被害を契機として明治27年から近代的な下水道システムの導入を開始し、施設の拡張、改築更新、維持補修を進めながら、100年を超える歴史を経て、コストを抑えつつ、快適で安心・安全な暮らしを支える必要不可欠な都市インフラとして確立させるとともに、社会の発展に寄与してきました。

 その一方で、老朽施設の改築や耐震化が求められるなど、本市下水道事業を取り巻く経営環境は厳しさを増しており、将来にわたって必要なサービスをお届けできるよう、大阪府市統合本部における議論、基本方針も踏まえながら、事業経営の持続性を確保していくための経営改革に取り組んでいます。

さらに、東日本大震災では、下水処理場の多くが津波により失われ、未処理の下水があふれることにより、生活環境や河川水質の悪化をもたらしました。
このように、普及が進んだ現在においても、下水道が担う様々な役割・サービスを途切れることなく提供すること、すなわち「事業の持続性」が極めて重要であることを改めて認識したところです。

 また、この間の下水道分野における技術開発は目覚ましく、早い時期に高い普及を達成した本市下水道は、いままでの下水道の領域に止まることなく、システムそのものが、まちの良好な環境の創出に寄与するといった、様々な付加価値を有する新たな「スマート下水道システム」となるべく変革を進めています。

 大阪市は今、大都市制度改革の大きな節目にありますが、本市の下水道は、これからも長大なネットワークを有する都市インフラとして、市民の皆さまのご理解、ご協力をいただきながら、市民の暮らしと大阪の発展を支え続けてまいります。

 これまで大阪市は、こうしたことを市民の方にお知らせすべく、様々なツールにより事業のPRを進めてきましたが、いつでもどこでも下水道が使えるようになった今、下水道は「あって当たり前のもの」として、その存在や価値が意識されなくなりつつあるだけでなく、「下水道=汚水処理」という視点から、下水道は汚い、臭いなど、いわゆる迷惑施設としてのマイナスイメージで捉えられるものになっていました。

 このたび作成した「大阪市ビジュアル下水道プラン」は、浸水対策や地震津波対策に見る災害対応、日々の生活環境を保全する汚水処理、各区と下水道の特徴的な関わりなど、暮らしと密接に関わる視点から、大都市制度改革における経営の取組や国内外に向けた事業展開など広域的な視点に至るまで、「可視化(ビジュアル化)」をキーワードとして、下水道というサービスの大切さ・意義を、市民の皆さまに伝え、実感していただくための入口の一つとなるようにまとめたものです。

 今後とも、日ごろの下水道事業の運営やこのプランを通じて、市民の皆さまとの双方向のコミュニケーションに努めつつ、「大阪」を支える下水道事業として持続性を確立しつつ、更なる発展を目指してまいります。

 また、随時、新しい情報に更新してまいります。

目次

はじめに

 本プランの構成

1.下水道の基本的な役割

 ・下水道のしくみ               (大阪市域での下水道の必要性と現状)

 ・運営管理・施設建設の費用       (大阪市下水道の経営状況)

 ・下水道事業のマネジメントとその効果 (他都市との料金比較を例に)

2.暮らしと下水道

 ・ビジュアル化       4つの扉

  1 暮らしをまもる       ~防災(浸水対策、地震対策)~

  2 暮らしをささえる    ~排水処理、新エネルギー創生~

  3 暮らしをうるおす   ~水環境の創生、施設の有効活用~

  4 暮らしを科学する  ~教育、先進技術~

 ・24区と下水道       ~下水道と地域のかかわり~

3.新たな取り組み

 ・事業継続計画(BCP)

 ・下水道の経営形態見直し

本プランの構成

 本プランでは大きく3つの章に分けて、下水道が提供しているサービスやこれからの方向性についてお伝えしていきます。

 下水道は、都市のすみずみまで張り巡らされた長大なネットワークインフラであり、多くの施設・設備、人、技術・ノウハウ、資金など様々な資金を統合し、その活用を最適化しながら運営していく必要がある複雑なものです。
 一方、下水道は市民の皆さまの目に触れないところけで暮らしを支える「縁の下の力持ち」としてサービスに努めてきたこともあり、下水道に対する認識は一般的なものとはいえません。
 このようなことから、そもそも下水道はどのようなものであるのか、下水道が担っている基本的な役割や、大阪市の下水道の特徴などを、まず簡単にご紹介します。

 2つめに、普段は直接目にすることはない下水道サービスに触れていただくアプローチとして、「まもる」、「ささえる」、「うるおす」、「科学する」という視点による「4つの扉」をご紹介します。
 さらに、市民のみなさまがお住まいの区の中での、下水道施設、周辺区とのつながり、地域的な特色などを、「24区の下水道」としてまとめました。

 最後に、現在検討を進めている、経営改革の方針についてご紹介します。
 平成23年12月に、大都市制度の検討や広域行政・二重行政の仕分けなどの制度設計を行う「大阪府市統合本部」(本部長:府知事、副本部長:大阪市長)が設置され、これを契機に、平成24年2月、経営形態の見直しを行う事業の一つとして、本市下水道事業が位置づけられました。
 同年6年に経営形態見直しの基本的方向性(案)が府市統合本部会議において確認されたことを踏まえて「大阪市下水道事業経営改革~基本方針と実施計画~(案)」を策定しましたので、概要をお伝えします。

1.下水道の基本的な役割

・下水道のしくみ   (大阪市市域での下水道の必要性と現状)

 下水道には、大きく分けて2つの基本的な役割があります。

 浸水を防ぐため、雨水を速やかに川へと導く役割(雨水排除)と、日々の生活の中で発生する汚水をきれいに処理してから川へ返す役割(汚水処理)です。


 大阪市域のある大阪平野は、淀川等の土砂の堆積によってできた堆積平野であり、上町台地などの一部を除いて大阪市域の約90%がポンプ排水に頼らなければならない雨に弱い地形となっています。

 また、大阪市域では、比較的古くから人口集中、工業の発達などが進み、河川等の水質汚濁を招いたことから、昭和15年には海老江・津守の両下水処理場が通水しています。

 大阪市域内の近代的下水道事業は、約120年前からすすめられてきましたが、現在の大阪市の下水道が持っている施設やその能力の概要は次のとおりです。

・運営管理・施設建設の費用   (大阪市下水道の経営状況)

 下水道事業は、雨水の排除は受益者が特定されないので税金で運営し、汚水処理は、受益者負担を原則として使用料で運営しています。

 現在の大阪市下水道事業では、雨水排除に要する経費として市税等から年間約300億円、汚水の処理経費として下水道使用料から約400億円の収入を得ています。

 ここから、維持管理費として年間約300億円、これに整備した下水道施設の資産価値が年々減っていく分(減価償却費)として約300億円、施設建設に伴い起債した企業債の利息として約100億円を支出として計上しています。

 


 他都市の維持管理費との比較を次に示します。早くから下水道整備を進めてきたため、維持管理に手間を要する老朽施設が増加していますが、他都市以下の維持管理費用での運営を実現しています。


 下水道事業は下水管、ポンプ場、下水処理場など街中に張り巡らされた大規模な施設ネットワークを基盤として運営する事業です。

 大阪市の下水道事業では、老朽化した施設の改築・更新や新規施設を整備するため、年間約400億円の投資をしています。また、これまでの施設建設に伴って起債した企業債の償還金として約300億円を支出しています。

 建設費用は約180億円の企業債と約160億円の国庫補助金、約300億円の減価償却費を中心とした発生資金によって賄われています。


 他都市の資本費単価との比較を次に示します。大阪市では、早期に施設整備がされたことから、平均より約40%程度安くなっています。

・下水道事業のマネジメントとその効果   (他都市との料金比較を例に)

 下水道は大規模なインフラを基にしたサービスであり、様々な資金・関係者が適切に連携することによって初めて機能するものです。
 大阪市の下水道部門は、下水道という巨大なシステムを構成する多様な資金をマネジメントする専門組織として、システムの持続性確保とそのシステムを最大限活用した付加価値の創造に取り組んできました。


 大阪市下水道を支える最も大きな資金の一つとして、市民のみなさまからお預かりしている下水道使用料を挙げることができます。大都市での下水道使用料を比較すると次のようになります。

 一般の家庭で一カ月に使用する水量はおよそ20㎥ですが、大阪市での下水道使用料は1,218円になります。これは大都市(東京都区部と政令指定都市)の中で一番安い下水道使用料であり、大都市平均との比較では約4割安い設定となっています。


 大阪市の下水道部門によるマネジメントは、運営管理費・建設費の最適化により、非常に低廉な下水道使用料を実現しています。

 

2.暮らしと下水道

・ビジュアル化  4つの扉

 普段は目にすることはない上に、さまざまな面を持っている下水道のサービスは、関心があっても分かりにくいものです。本プランでは、下水道サービスに触れていただくアプローチとして、4つの扉を用意しました。

 4つの扉は、下水道と身近な「暮らし」とのつながりを視点において設定しています。また、それぞれの扉は中で相互につながっています。どこかの扉を開けていただくだけでも、下水道について実感し、豊かな「暮らし」に活かしていただけるものと考えています。

 これをきっかけとして、中に入っていただくことで、よりよいコミュニケーションを図っていきたいと考えています。


 なお、「4つの扉」では、すへての人が、下水道サービスが持つ価値に共感し、それを記憶することではじめて、下水道を「利用している(=行動)」までのコミュニケーションプロセスが完成し、「実感できる下水道(VisualSewaga)」となると考えています。

 ここでは、下水道サービスに対して、認知から行動に至るまでのコミュニケーションプロセスを完成させるため、次の3つのステップを想定しています。


1 暮らしをまもる 

 浸水からまちをまもることは、下水道が提供する最も大きなサービスの一つです。浸水対策に必要な費用は市民の税金で賄われており、事業投資がまちの浸水リスクに見合っているか、その説明責任を果たすことも求められます。

 また、地震などの災害時においても、その汚水を集める下水管網や、処理水を活用することで安全性の高いまちづくりに寄与します。

 防災の取組みは、行政と市民、お客さまが一緒になって対応することが必要です。そのためには迅速な情報発信・共有に基づく日常的な「リスクコミュニケーション」が大切と考えています。

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2 暮らしをささえる  

 汚水の処理は下水道のサービスの中では最もイメージしやすいものです。また、汚水の処理は税金による浸水対策とは異なり、皆さまからいただいている下水道使用料で行っており、経営の合理性も求められるものと考えています。

 さらに、汚水を処理して集めた汚れ(汚泥)は、建築資材などへ再生利用を図っています。加えて、汚水処理の過程でメタンガスを発生させるといった、下水からエネルギーを取り出す試みも進めています。このように、下水道は「地産地消のエネルギー創出拠点」としての役割を担う可能性も秘めています。

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3 暮らしをうるおす 

 下水道から派生する処理水、施設、空間は都市における貴重な資源と考えることができます。革新的な技術の進展が図られる中で、下水道は、水環境を創生し、過密化した都市空間の快適性を向上させるといった付加価値を創出するライフラインシステムとしても機能しています。せせらぎなどによる親水空間の拡大、下水道施設の上部利用など、下水道システムを活用し、直接ご覧いただいたり、ご利用いただけるサービスを提供しています。

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4 暮らしを科学する  

 下水道は幅広い化学分野の集合体です。下水道を学び、科学することで、学校の勉強がいつもと違って見えてきます。下水道といえば環境問題と考えがちですが、数学、物理、化学、生物、社会や歴史まで、さまざまな切り口でご覧いただくことが可能です。

 また、本市の下水道先端技術は、世界への貢献や、日本の売りづくりの一つとして、またの成長戦略にも資する貴重な経営資源でもあります。

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・24区の下水道  ~下水道と地域のかかわり~

 行政区と下水処理区の関係を表で示すと、次のようになります。

 下水道の処理区は多くの場合、複雑の行政区にまたがっています。

 自然の地形に従って下水道施設を配置するため、下水道事業は行政区域単位で完結するものではなく、幹線、ポンプ場、下水処理場、汚泥処理施設と、下流側になるほどより多くの行政区で下水道施設を共同利用する形になっています。



 行政区と下水道施設等の特徴・特色・周辺区との関係などは次のようになっています。

3.新たな取り組み

・事業継続計画(BCP)

 事業継続計画(BCP)とは、企業や事業者が災害や事故などの緊急事態により、限られた資源で最低限の事業活動やサービス提供を継続することや、目標復旧期間内に事業を再開できるよう、事前に策定される行動計画のことをいいます。

 大阪市建設局においては、東日本大震災を踏まえ「事業継続(BCP)」の骨子を作成し、災害時の迅速な応急・復旧対応を寄与する総合対策を基本方針として、平成23年9月に策定した「地震津波対策基本プラン(下水道編)案」でお示ししております。

 基本プランをもとに、地震や津波などの災害時において下水道施設の最低限機能を確保することや、効率化に復旧を行うための復旧行動計画の策定を進め、市民生活の安心・安全を支える本市下水道事業の持続性の確保に努めてまいります。

・下水道の経営形態見直し 

 大阪市下水道事業経営改革~基本方針と実施計画~(案)

 府市統合本部会議による基本的方向性(案)を受けて、上下分離方式による経営形態見直しの基本的な考え方と、平成24年度から平成27年度を対象とした実施の方向性について、次の9項目からなる「基本方針と実施計画(案)」としてまとめました。

1 はじめに

2 府市統合本部会議での検討経過と確認された方向性

3 経営理念と経営改革の基本方針

4 上下分離による「新たな経営形態」への移行

5 ゴール(新たな経営形態)への全体計画

6 (財)都市技術センターの役割と業務

7 新組織の設立と事業方針

8 新組織の設立理念

9 実施工程

 本案に基づき、事業の継続性確保と本市の技術・ノウハウを活かした事業展開に資する取り組みを進めていきます。

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このページの作成者・問合せ先

大阪市 建設局下水道部調整課

住所:〒559-0034 大阪市住之江区南港北2丁目1番10号 ATCビルITM棟6階

電話:06-6615-7586

ファックス:06-6615-7690

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