「大阪市財政の現状」について(平成22年4月)
2024年9月26日
ページ番号:81417
「大阪市財政の現状」について(平成22年4月)
大阪市の財政について市民の皆さんに知っていただくため、「大阪市財政の現状」についてを作成しました。
ここでは平成22年4月に作成したものを掲載しています。
「大阪市財政の現状」について(平成22年4月)
- 表紙および目次(pdf, 271.93KB)
- 1章:大都市の税財政における現状と課題(1~12ページ)(pdf, 911.61KB)
- 2章:大阪市財政の現状と課題(13~28ページ)(pdf, 838.44KB)
- 2章:大阪市財政の現状と課題(29~35ページ)(pdf, 517.76KB)
- 3章:市政改革の取組と今後の方向性(36~47ページ)(pdf, 673.11KB)
- 巻末資料(48~49ページ)(pdf, 186.52KB)
- CC(クリエイティブコモンズ)ライセンスにおけるCC-BY4.0で提供いたします。
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1章:大都市の税財政における現状と課題
(1)大都市としての大阪市の実態
〈1〉広範な通勤圏
大都市は、政治、経済、文化など各分野において主要な地位を占め、我が国の発展に貢献するという重要な役割を担っており、大阪市も、西日本の中枢都市として、また、大阪都市圏の母都市としての役割を果たしています。
また、大阪市内への通勤者を見ても、西は兵庫県明石市、東は三重県名張市、南は大阪府岬町までと非常に広範囲にわたっています。
〈2〉膨大な昼間流入人口
大阪市の夜間人口は昭和40年の316万人をピークとして減少していますが、昼間人口は多少の増減はあるものの、360万人から380万人の水準で推移しています。平成17年度は夜間人口263万人に対し、昼間人口は358万人、昼夜間人口比率は1.38倍となっています。
また、大阪市は事務所や事業所などが集中しており、昼間流入人口は、大都市の夜間人口に匹敵する規模となっています。このような物と人の集中により、財政需要は増嵩することになります。
大阪市は、大都市圏の母都市として、地下鉄等の都市交通網の整備や社会教育施設など、さまざまな事業を実施しており、高度な都市機能が集積しています。このような母都市施設にかかる税などと利用する市外居住者の割合を見ると、年間152億円を要する地下鉄の乗車人員の66.4%、139億円を要する大阪市立大学の平成21年度入学者の83.5%、80億円を要する社会教育施設の平成21年度利用者では65.2%、また51億円を要する平成21年度中央卸売市場の搬出先の69.9%が市外となっています。
〈4〉充実した都市施設
大阪市では、高密度の人口集中や膨大な昼間流入人口により、市域面積1平方キロメートルあたりの昼間人口が16,112人と横浜市や名古屋市の7千人台と比較しても2倍以上あり、このような経済活動の集積などに対処するため、早くから地下鉄や下水道などの都市基盤と生活環境の整備を進めてきました。都市基盤としては、例えば他の政令指定都市に比較して交通網の整備された営業距離129.9kmの地下鉄や行政区域内普及率がほぼ100%の下水道などがあります。
また、早くから都市施設の整備を進めてきた結果、こうした諸施設が順次更新時期を迎えつつあります。
〈5〉大阪経済の現況
大阪都市圏の中核である大阪市の市内総生産(名目)は、21兆7,461億円(平成18年度)となっており、国内総生産(508兆9,251億円)の約4%を占めています。また、近畿圏(2府4県)においても、大阪市は域内総生産の約27%を占めるなど、経済活動が集中しています。
大阪市経済の特徴として、各種産業の集積密度が高いことがあげられます。また、主要な産業・経済指標を単位面積当たりで換算した「密度」で比較すると、東京都区部に匹敵しています。
〈6〉急速に進む少子・高齢社会
少子・高齢社会が進み、大阪市では、65歳以上の老年人口比率が増加し、2割を超えている一方で、15歳未満の年少人口比率は減少しつつあります。平成17年度では65歳以上が20.1%、15から64歳までが67.9%、15歳未満が12.0%となっています。
また、大阪府や指定都市との比較では大阪市の65歳以上の老年人口比率は、大阪府の18.5%や政令指定都市平均の17.9%を上回っている一方で、15歳未満の年少人口比率は、大阪府の13.7%、政令指定都市平均の13.2%を下回っている状況です。
(2)現行税財政制度における現状と問題点
住民に身近な行政について、地方公共団体が自主的かつ総合的に広く担うようにする地域主権の実現のためには、地方税の充実確保が必要です。しかし、全国的に見ても、歳入に占める地方税の割合は4割程度と、地方税中心の歳入構造とはなっていません。とりわけ大阪市は、現行の税制度による要因や、地価下落などを反映して固定資産税・都市計画税が減収してきたことなどにより、歳入に占める市税の割合が他の指定都市と比較しても低い状況にあります。
平成20年度における歳入に占める地方税の割合は、名古屋市53.1%、横浜市50.8%、指定都市平均44.0%に対して、大阪市は43.1%となっています。
〈2〉配分の少ない市域内税収
大阪市は、高密度な経済活動の場となっており、平成20年度における市内で納められた税は、国税、地方税を合わせて約4.5兆円(平成20年度)と非常に多額となっています。
しかし、豊かな税源を充分吸収し得ない税制度のために、このうち市税として大阪市へ入る割合は、わずか14.8%、6,708億円にすぎません。また、国や府から補助金等として大阪市へ還元される分を含めても、大阪市へ入る割合は、市域内税収額の27.6%、1兆2,533億円にとどまっています。
なお、市内で納められる国税分3兆1,171億円のうち一定割合分は地方交付税の原資となるため、大阪市民は9,180億円もの税収を、地方交付税として地方に還元していることになります。
市町村税は、法人所得課税、消費・流通課税といった経済活動を反映する都市的税目に乏しいため、増大する都市的財政需要に市税収入が対応しきれない大きな要因となっています。具体的に市町村税、道府県税、国税のそれぞれ構成比率を比較すると、市町村税では都市的税目である法人所得課税は12.7%、消費・流通課税は4.7%、その他の個人所得課税などが82.6%であるのに対し、道府県税では法人所得課税34.9%、消費流通・課税32.4%、その他32.7%、また国税においては法人所得課税21.8%、消費・流通課税39.9%、その他38.3%となっています。また、法人所得課税、消費・流通課税から見た市町村税、道府県税、国税への配分状況では、法人所得課税は国税80.9%、道府県税10.4%、市町村税8.7%、消費・流通課税では、国税72.9%、道府県税23.1%、市町村税4.0%となっています。
大都市では、地方自治法に基づき府県に代わって行っている事務のほか、道路法に基づく国・府道管理事務なども行っています。しかし、これらに要する一般財源のうち、税制上の措置がなされているのは、大阪市では約2割にすぎません。
地方自治法に基づくものは、児童福祉、民生委員、身体障害者福祉、生活保護、行旅病人・死亡人、社会福祉事業、知的障害者福祉、母子家庭及び寡婦福祉、老人福祉、母子保健、障害者自立支援、食品衛生、興行場、旅館及び公衆浴場営業規制、墓地、埋葬等規制、精神保健及び精神障害者福祉、結核予防、都市計画、土地区画整理事業、屋外広告物規制の19項目あり、またその他の法令に基づくものとして、国、府県道の管理、衛生研究所、道府県費教職員の任免、研修、定時制高校人件費、土木出張所などがあり、大阪市の平成21年度予算では、これらの所要額として570億円を計上していますが、税制上の措置がなされるのは、127億円にすぎません。
現行の市町村税制をはじめとする税財政制度は、昼間流入人口などによる大都市特有の財政需要や、都市の成熟化に伴う更新需要など、大都市の財政需要の実態に見合ったものになっていません。住民に身近な行政について、地方公共団体が自主的かつ総合的に広く担うためには、国と地方、都道府県と市町村の役割分担を抜本的に見直したうえで、その新たな役割分担に応じた地方税財源の充実確保を図るとともに、大都市の実態に即応した税財政制度を確立することが必要です。
このため、地域主権の実現に向け、国と地方の新たな役割分担を明確にしたうえで、その役割に応じた地方税財源の充実確保を図るために、複数の基幹税からのさらなる税源移譲を進め、地方税中心の歳入体系が構築されるよう、国等に引き続き強く求めていきます。
大阪府は、府下の市町村に補助金を支出する場合に、政令指定都市である大阪市や堺市を対象から除くなど、他の市町村と差を設けており、これを「差等補助」と言います。大阪府の平成22年度予算では、教育や福祉といった基礎的な行政サービス分野において、教育関係の交付金を中心に、大阪市は交付対象外とされ、差等補助は4億4,400万円となっています。その内訳は、特別支援学級への看護師配置事業1,100万円、小学校等への警備員配置事業8,000万円、習熟度別少人数授業等3億2,200万円、放課後ステップアップ事業等1,800万円、学校元気アップ地域本部事業500万円、子育て支援事業800万円となっています。
大阪市民も府内の他の住民と同じように府民税を負担しているにもかかわらず、教育などの基礎的な行政サービス分野において、政令指定都市という理由で差を設けるべきではありません。大阪市民にも補助金が配分されるよう、府に対して強く求めていきます。
2章:大阪市財政の現状と課題
(1)大阪市の当初予算(平成22年度)
〈1〉一般会計の当初予算
大阪市の平成22年度一般会計当初予算の歳出規模は、前年度比3.9%、627億円増の1兆6,905億円となっています。
経費削減の取組に沿った職員数の削減や経常的施策経費及び管理費の見直し、選択と集中による事業費の縮減等を行ったものの、生活保護費の増や子ども手当ての創設などにより、扶助費は前年度比742億円の増となっています。
歳入予算1兆6,905億円の内訳は、市税6,091億円、国府支出金3,765億円、公債収入1,299億円、譲与税・交付金590億円、地方交付税580億円、地方特例交付税64億円、その他諸収入等4,516億円となっています。
歳出予算1兆6,905億円の内訳は、扶助費4,844億円、投資的経費3,537億円、特別会計繰出金等2,569億円、人件費2,362億円、公債費2,204億円、管理費等1,389億円となっています。
〈2〉特別会計の当初予算
大阪市の平成22年度特別会計当初予算は次のとおりです。
まず政令等特別会計では、食肉市場事業会計24億4,900万円、市街地再開発事業会計184億5,900万円、駐車場事業会計11億5,400万円、有料道路事業会計4億3,200万円、土地先行取得事業会計689億3,900万円、母子寡婦福祉貸付資金会計4億1,400万円、国民健康保険事業会計3,404億8,200万円、心身障害者扶養共済事業会計5億1,900万円、老人保健医療事業会計3億1,600万円、介護保険事業会計1,851億6,400万円、後期高齢者医療事業会計249億8,100億円。
準公営企業会計では、中央卸売市場事業会計185億500万円、港営事業会計398億1,500万円、下水道事業会計1,449億8,300万円
公営企業会計では、自動車運送事業会計285億7,900万円、高速鉄道事業会計2,421億3600万円、水道事業会計1,067億9,800万円、工業用水事業会計29億2,500万円、市民病院事業会計493億7,900万円。
公債費会計では8881億500万円と、
特別会計計では2兆1,645億3,400万円を計上しています。
〈3〉予算総額
大阪市の平成22年度全会計の予算総額は3兆8,550億円、一般会計では1兆6,905億円と全会計、一般会計ともに政令指定都市のなかで最も大きくなっています。
(2)大阪市の市税
〈1〉市税収入
最も基本的な収入である市税収入は、近年、堅調に推移してきましたが、依然として厳しい経済情勢を反映して、個人市民税や法人市民税の落ち込みが見込まれることなどから、平成22年度予算における市税総額は、前年度から319億円の大幅な減収となっています。
なお、平成元年度の市税収入を100とした場合、平成22年度予算では84.1となっています。
また、大阪市の平成22年度予算の市税総額は6,091億円で、横浜市6,870億円に次ぐ指定都市で2番目の規模であり、その特徴として、市税総額に占める法人市民税の割合が大きいことが挙げられ、政令指定都市平均9%に対し大阪市15%となっています。
〈2〉個人市民税
個人市民税は、ピークである平成4年度を100とすると、平成22年度予算では全国平均が89.9であるのに対し大阪市は81.0と伸びが低くなっています。また、大阪市の納税者1人当たりの個人市民税額は、府下33市ではトップの箕面市が18万1千円に対して大阪市は12万3千円と16番目となっており、政令指定都市等との比較では、大阪市は13番目となっています。
〈3〉法人市民税
法人市民税は、ピークである平成元年度を100とすると、平成22年度予算では大阪市は36.9と3分の1程度まで落ち込んでおり、全国平均44.3よりも落ち幅が大きくなっています。なお、業態別では、特に金融・保険業や卸売業などが大きく落ち込んでいます。
〈4〉固定資産税・都市計画税
固定資産税収入は、近年地価の下落が続いていたことから、ピークである平成8年度を100とすると、平成22年度予算では全国平均が89.6であるのに対し大阪市は57.4と大きく減少しています。
(3)性質別経費
〈1〉性質別経費の推移
市税収入が低水準で推移するなか、人件費や経常的施策経費等の抑制を図ったものの、生活保護費などの扶助費や市債償還のための公債費といった義務的経費や国民健康保険、介護保険、下水道などの特別会計への繰出金が高い伸びを示しています。平成元年度を100とすると、平成22年度予算では扶助費274.1、特別会計繰出金150.2、公債費138.6と大きく増加しています。
〈2〉経常収支比率
経常収支比率とは、地方税、地方交付税、譲与税・交付金などの経常的な一般財源が、どの程度経常的な経費に充てられているかを示す指数で、財政構造の硬直度を表す「ものさし」とされているもので、経常収支比率が高いということは、義務的経費以外に使える財源に余裕がないことを示し、財政構造の弾力性が低いことになります。平成20年度決算においては政令指定都市平均が94.6に対し大阪市は99.2と人件費や扶助費が高いため、政令指定都市の中でも高い数値となっています。大阪市では歳出削減に努めているものの、地方税などの一般財源が大幅な減少となっているなか、義務的な経費の増大により、一般財源の大半を義務的な経費に充当せざるをえない状態となっています。
〈3〉扶助費
扶助費のうち約6割を占めている生活保護費は、平成元年には4.7万人3.3万世帯902億円であったものが平成21年度では13万人10万世帯2,443億円と生活保護人口の増等により、増加を続けています。大阪市の生活保護を受ける人の割合(保護率)は、平成20年度で、大阪市人口の約4.44%となっており、政令指定都市の中では第2位の札幌市2.87%を大きく上回っています。また、昭和46年度当時保護世帯の28.7%を占めていた自立が困難と考えられる高齢者世帯が平成20年度では生活保護世帯の約半数を占めるなど、生活保護制度が創設から半世紀を経過し、制度疲労を起こしている状況にあることから、抜本的な改正を引き続き国等に求めていきます。
〈4〉市債残高と公債費
大阪市では、都市基盤と生活環境の整備のために、早くから積極的に市債を活用してきました。加えて、近年の多額の財源不足に対し、主に地方債による補てん措置がとられてきたことや、景気対策の観点も含め、事業の積極的な推進を図るため市債を活用してきました。この結果、大阪市の市債残高は、平成20年度末決算で、一般会計は2兆8,087億円、特別会計を含めた全会計では5兆2,122億円にのぼっています。これを夜間人口ひとりあたりに換算すると全会計では約198万円、昼間人口あたりでは約146万円となります。近年においては、公共事業費を減少させ、市債の新規発行額を極力抑制することにより、市債残高は平成16年度をピークにようやく減少に転じました。しかし、累積した市債残高の償還は今後本格化し、償還のための公債費は平成25年度前後にピークとなり、その後、公債費や市債残高は減少していく見込みです。このため、今後、市税や料金収入などにより多額の市債を償還していく必要があります。
〈5〉特別会計繰出金等
高齢社会の進展に伴う医療費の増嵩や、市街地再開発事業の収支差補てんの増などにより、特別会計への繰出金等は2,000億円を超えています。とくに国民健康保険事業については、加入割合が高いうえ、加入者に高齢者や低所得者が多く、財政基盤が脆弱であることから、平成2年度当時は245億円であったのに対し、平成22年度予算では438億円を繰入れるなど毎年多額の一般会計からの繰入を行っていますが、累積赤字は平成20年度決算で364億円となっており、事業運営は非常に厳しい状況となっています。
このため被保険者や地方公共団体の負担の増加を招くことなく、長期に安定した制度が確立できるよう、国に対して、引き続き国民健康保険制度の改善を求めていきます。
〈6〉管理運営費
大阪市は、さまざまな市民ニーズに対応するため、都市基盤や生活環境の整備を行ってきました。それらの施設を維持していくためには、多額の管理運営費を要します。
事務事業の見直しにより、管理運営費は平成14年度1,709億円をピークに近年減少し、平成22年度予算では1,351億円まで削減しましたが、今後ともさらなる経費の削減に取り組む必要があります。
(4)地方交付税等の補てん財源
大阪市は、近年の厳しい税収動向を反映して、多額の地方交付税や特別債などの補てん財源に頼ってきました。平成22年度一般会計予算では、歳出1兆6,905億円の財源として市税収入6,091億円に対して、地方交付税580億円、特別債835億円などを計上しています。しかし、膨大な昼間流入人口や、少子・高齢社会への対応など、大都市特有の財政需要については、交付税での算入が十分とはいえません。また、算定の簡素化に伴う昼夜間人口差補正の廃止などにより、大都市にとってさらに厳しい状況が見込まれます。なお、地方交付税の依存度を示す指標として財政力指数がありますが、これは地方交付税の算定に用いる収入額を需要額で除した値です。指数が高いほど、地方交付税に依存しない、自立した団体といえます。本市の財政力指数は、指定都市のうち高いほうから川崎市、名古屋市、さいたま市、千葉市、横浜市に次いで6番目となっています。
なお、地方交付税とは、国税のうち所得税、法人税、酒税、消費税及びたばこ税のそれぞれ一定割合の額で、地方公共団体が等しくその行うべき事務を遂行することができるよう、一定の基準により国が交付する税のことです。
(5)基金の状況
〈1〉蓄積基金の運用
大阪市は、条例によって蓄積基金を設置しています。基金の目的に応じ、短期運用と中長期運用を組み合わせた、確実かつ効率的な運用を行っています。平成22年度3月末時点の水道・交通事業・市民病院整備基金を除く蓄積基金運用状況は、総額4,316億円で、うち短期運用2,343億円、中長期運用1,973億円となっています。
〈2〉公債償還基金への積立
市債の満期一括償還に備え、国のルールどおり公債償還基金へ確実に積み立てており、償還財源が確保されています。なお、平成22年度末の公債償還基金(一般会計・満期一括分)の残高見込は、3,078億円となっています。
また、大阪市については、この積立金からの借入れは行わず、公債償還基金に頼らない財政運営をしています。
(6)健全化判断比率等
〈1〉健全化判断比率等
平成20年度決算に基づく「財政健全化法」における健全化判断比率の4指標である実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率は、すべて「早期健全化基準」を下回るとともに前年度と比べて好転しており、健全な財政運営に努めています。
この判断の基準は、4指標のうちいずれかの指標が早期健全化基準以上となった場合には、早期健全化団体となり、「財政健全化計画」を定めなければなりません。さらに、いずれかの指標が財政再生基準 (将来負担比率については、早期健全化基準のみ)以上となると、従来の財政再建団体にあたる財政再生団体となります。
また、公営企業会計については、会計ごとに算定した資金不足額の事業規模に対する比率である資金不足比率が、経営健全化基準(20%)以上となった場合には経営健全化団体となり、「経営健全化計画」を定めなければなりません。大阪市における公営企業会計10会計の平成20年度決算においては、自動車運送事業会計6.0%、市民病院事業会計8.8%、中央卸売市場事業会計198.7%であり、中央卸売市場事業会計が経営健全化基準を上回っています。その他の7会計については、資金不足額は生じていません。
中央卸売市場事業会計については、「経営健全化計画」を策定・公表し、その実施状況を毎年度議会に報告し、公表します。
平成20年度の大阪市の一般会計や公営事業会計等を含めた連結ベースでは、国民健康保険事業会計、自動車運送事業会計、市民病院事業会計、中央卸売市場事業会計において資金不足が生じているものの、地下鉄事業や水道事業など、大幅な資金剰余が生じている会計があるため、資金収支は360億円の黒字となっています。
〈3〉実質公債費比率
実質公債費比率は、公債費による財政負担の度合いを示す指標で、早期健全化基準は25%以上、財政再生基準は35%以上とされています。また、18%以上の場合は、起債に総務省の許可を要します。大阪市は10.7%と、総務省のルールどおり確実に公債償還基金へ積立を行ってきたことから、いずれの指標も下回っています。
〈4〉将来負担比率
将来負担比率は、一般会計等が将来負担すべき実質的な負債の標準財政規模に対する割合で、ストック指標です。大阪市では特定調停が成立している第三セクター等に対する損失補償付債務は、将来負担額に全額(100%)算入しており、今後の処理に伴って比率が悪化することはありません。
3章:市政改革の取組と今後の方向性
(1)市政改革の取組状況
〈1〉経費の圧縮
大阪市は、財政危機を克服するため、平成18年2月に「市政改革基本方針」を策定し、平成22年度までの取組として、2,250億円の経費削減に取り組んできました。
さらに、平成20年度には「経費削減の取組」を行い、その結果、平成22年度までに2,719億円の削減により121%の達成率となりました。
しかし、平成20年の秋以降の急激な景気後退に伴い、いったんは収支均衡の見通しがたっていた財政収支が、税収の大幅な減や生活保護費の増大などにより、大きく悪化しており、このため、今後もさらに経費削減の取組が必要です。
〈2〉職員数の削減
大阪市の人口1万人当たりの職員数は、夜間人口では152人、昼間人口では112人と札幌市、横浜市、名古屋市、京都市、神戸市、福岡市の6市夜間平均92人、昼間平均90人に比較して高く、他の指定都市の中でも最も高くなっています。これは、地下鉄等の都市交通網や市立幼稚園・高等学校等の教育施設が充実していることなどもあり、直接的に行政サービスを行う職員や教職員等が多いことによるものです。
『市政改革基本方針』においては、5年間で5,000人超の職員数の削減、市立大学等の独立行政法人化による2,000人程度の削減により、総職員数3万人台とすることを目標に取組んできました。
この取組みの結果、平成18年度から22年度(予算)の削減数は8,437人となり、平成22年度の職員数は削減目標どおり3万人台となりました。
〈3〉人件費の削減
「経費削減の取組」に基づき、平成21年度から29年度まで、全職員の給料及び管理職手当を10%カットします。また、併せて平成23年度以降も採用抑制を継続することで、平成23年から30年度において累計1,547億円を削減します。
このような給料等のカットなどにより、ラスパイレス指数は、平成21年4月1日現在において、大阪市は98.4と指定都市のうち低いほうから4番目となっています。
なお、ラスパイレス指数とは、地方公共団体の一般行政職の給料月額と国の行政職俸給表(一)の適用職員の俸給月額とを、学歴別、経験年数別に対比させて比較し算出したもので、国を100としたものです。
〈4〉歳入の確保
歳入確保はもとより、市民負担の公平性・公正性の確保の観点などから、未収金対策に取り組んでいます。「新たな未収金を極力発生させない」「既存未収金の解消」を二つの柱として、全市的な取組を総括する「大阪市債権回収対策会議」の設置、各局で対応困難となっている高額事案などを集中的に回収する「市債権回収特別チーム」を設置するなど、全庁的な取組を強化しています。その結果、未収金は減少しつつあり、平成22年1月末時点における未収金は、徴収などにより、670億円となっています。
また、未利用地の売却については、大阪市土地流動化委員会の意見を受け、「大阪市未利用地活用方針」を策定しました。今後も、市民の貴重な財産である未利用地について土地の保有の必要性とのバランスを考慮しつつ、現在の厳しい財政状況の下、可能な限り売却に取り組んでいきます。なお、平成18年度から平成22年度までの累計では、全会計で約1,103億円の未利用地の売却を見込んでいます。
〈5〉外郭団体等の改革
大阪市では、極めて厳しい財政状況のもと、徹底した行政運営の効率化を図るため、これまで外郭団体等(監理団体・関連団体)の抜本的な改革に取り組んできました。この改革をさらに推進するため、平成21年1月に大阪市外郭団体等評価委員会からの新たな提言を踏まえ、平成21年3月に現行の行財政改革期間である平成22年度までに達成すべき新たな計画として「外郭団体等の改革推進について」を策定しました。
これまでの外郭団体等への委託料の削減状況を予算で見ると、平成17年1,081億円、平成18年861億円、平成19年707億円、平成20年580億円、平成21年563億円、平成22年度521億円となってます。また、外郭団体等の統廃合では、平成17年7月時点で146団体を平成22年4月時点で118団体としています。
今後も不断の外郭団体等の改革に取り組み、市民サービスの向上を図ってまいります。
(2)中期的な財政収支概算〈一般会計〉(平成22年度予算版)
大阪市では、平成21年7月に平成30年度までの収支概算を公表しましたが、平成22年度予算ベースで、改めて平成30年度までの収支概算を試算し、平成22年2月に公表しました。
今後も市税収入の大幅な回復が見込めない中、地方交付税等の確保に努めたとしても、生活保護費などの扶助費が大幅に増加することや、過去に発行した市債の償還(公債費)がピークを迎え、加えて阿倍野再開発事業などの財務リスク処理も着実に進めていくことから、このままでは、平成24年度には収支不足となり、平成30年度には累積収支不足額が約2,700億円となる見通しです。
このため、平成30年度までの収支不足額約▲2,700億円(9年間)の解消をはかるため、年約▲300億円を収支改善目標額として設定しています。
この内訳は、国に求めるものとして、生活保護費の措置不足解消約150億円、さらなる経費削減総点検の具体化による見直しとして約120億円、また政策推進ビジョンの効果によるもの税収の回復促進約30億円としています。
(3)経営形態のあり方に関する方針(平成21年3月時点)
市政改革基本方針に基づき、平成18年度以降、経営形態の見直しを行ってきた10事業の取組状況は以下のとおりです。内訳は、平成19年度までに方針決定がなされたものとしては工業研究所、市民病院など6事業、平成20年度は環境科学研究所の1事業、平成21年度に方針決定を行う予定のものが弘済院、廃棄物処理事業、博物館施設の3事業となっています。
(4)大阪市債の格付け
地方分権の進むなか、地方公共団体の市債発行においても、これまで以上に自己責任が求められています。このような状況において、客観的で透明性の高い情報開示を一層積極的に行う観点から、大阪市の評価を依頼し、2社から格付けを取得しています。
平成22年4月時点での大阪市債の格付けは、スタンダード&プアーズではAA-で20段階評価の上から4番目、ムーディーズではAa2と21段階表示の上から3番目となっています。
これらの評価は、今後も財政健全化の図られることが前提であり、高い格付けを維持するべく努めています。
巻末資料
政令指定都市の財政状況〈平成20年度決算〉
会計の定義(一般会計・特別会計・普通会計)
○一般会計とは、通常の公共事務事業に要する経費の収入・支出を扱う会計です。
例えば、保健医療、福祉、教育、住宅、道路橋梁、公園、清掃、消防等の各事務事業の収支を経理しています。
○特別会計とは、特定の事業を行う場合に、その他特定の歳入を持って特定の歳出に充て、一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合、法令又は条例に基づいて設置される会計です。大阪市では、特別会計をさらに性質により、次の4つに区分しています。
・政令等特別会計
特別会計のうち準公営企業会計と公営企業会計を除いた会計です。
一般会計と同様地方自治法の財務関係規定の適用をうけ、単式簿記の会計経理の方法により処理されます。
・準公営企業会計
地方公営企業法の規定(財務規定等、組織、身分取扱い)のうち財務規定等の規定が適用される企業にかかる会計です。
・公営企業会計
地方公営企業法の規定の全部が適用される企業にかかる会計です。
・公債費会計
各会計の公債関係の歳入・歳出を一括して経理する整理会計です。
○普通会計とは、総務省の地方財政決算統計上における会計区分です。
公営事業会計以外のすべての会計を普通会計とし、地方公共団体間の比較や時系列比較が可能となるようにされています。
○公営事業会計とは、
・公営企業会計(地方財政法施行令第12条に掲げる事業)
・収益事業会計、国民健康保険事業会計等の事業会計
・上記以外の事業で地方公営企業法の全部又は一部を適用している事業にかかる会計です。
大阪市の場合の普通会計
一般会計に市街地再開発事業会計の一部と土地先行取得事業会計、母子寡婦福祉貸付資金会計、心身障害者扶養共済事業会計を足して会計相互間の重複を除したものです。
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