大阪港湾局の取り組み・上屋の塗装替え(大阪港景観形成への参考資料)
2020年10月1日
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4.大阪港湾局の取り組み(上屋の塗装替え)
大阪港湾局では所管している上屋の塗装替えを定期的に行っており、本章では、こうした上屋の塗装替えを行う際の大阪港湾局の考え方を参考としてお示しします。
4-1.塗装替えの考え方
上屋
大阪港湾局では、荷さばきや保管といった港湾の物流を支える市設上屋を此花、港、大正、住之江の4区に81棟有しています。上屋の建築面積は1,000㎡から8,000㎡とかなりの幅を有していますが、いずれも、都市部の建物に比べ大きなボリュームを有するものとなっており、その機能上、水際に立地しているため、水域から見たときに港らしい景観を形作るうえで重要な要素となっています。
上屋の建築年は昭和20年代から平成11年までと幅広く、建物の機能や美観の維持のため、大阪港湾局では、周期的に外壁等の塗装替えを実施しています。塗装替えにあたっては、地域の景観の状況等をふまえて、塗装替えの色を定めながら進めています。景観における上屋の位置づけ
港湾景観を構成する主要な要素としては水面、堤防等の土木構築物、建築物、クレーンや橋梁等の大規模な構造物、船、コンテナ等があげられます。景観形成にあたっては、それぞれの要素が主張しあうのではなく、いわゆる「図と地」の関係に配慮したメリハリのある景観を構成していくことが重要と考えており、「図」となる景観を引き立てるため、周囲の景観は「地」としての役割を担っていくことが求められると考えています。
こうした考え方では、以下のイメージで港湾景観の構造を捉えることができます。
1.ベースとなる不変の要素
水面や空などの自然的な要素の他、岸壁や道路などの土木構造物が不変のものとして港湾景観のベースを構成しています。
2.ランドマークとなる要素
橋梁や水門などの大規模な構造物や大規模な建築物はランドマークとなり、地域の顔となる景観をつくる要素となっています。
3.間をつなぐ素地となる要素
ベースとなる不変の要素とランドマークとなる要素の間をつなぐ要素で、ランドマークとなる要素を図の景観として引き立てる素地となります。
上屋をこれらのどの要素で捉えるかは、地域ごとに考えていく必要がありますが、概ね上屋の周囲にはランドマークとなる橋梁や水門、海遊館などの特徴的な建物、船舶、コンテナなどがあり、これらの要素と同一フレームに捉えられることが多いため、上屋は景観の「地」を構成する要素として位置づけることが適当であると考えます。
塗装替えの基本的な考え方
大阪港湾局では、上記の考え方を踏まえ、建物部位ごとに以下の考えに基づいて地域ごとに色彩を定めています。
1.外壁
「地」を構成するとは、周囲の建築物と調和し、突出しないことであると考えます。「大阪市景観読本」では、建築物の壁面には彩度が低いグレイッシュな色調の明るめの色彩を用いるなどの配慮を求めており、落ち着いた色彩としては、暖色系でおおむね彩度4以下、寒色系でおおむね彩度2以下の色彩とされています。
上屋の場合、外壁はベースとなる水面や堤防等に接しており、低層であることから、フレーム構成のなかでも下部を占め、また、水平のラインを構成することなどから、カラーフレームの中でも明度は低めの5~6を用いて安定感を生み出していくことが適当と考えます。
2.屋根
上屋の勾配屋根については外壁と同等の存在感を示すため、本来であれば外壁と同様の考え方が適当です。しかし、上屋の中の温熱環境を考慮するとあまり濃色がふさわしくないこと、外壁と同色であれば上屋の大きなボリュームが塊として景観の中に配置され目立ちすぎること、現在の色彩が慣例色となって上屋のイメージが形成されていることなどの理由から、これまで用いられてきたアイボリー系の明度を少し下げた色彩がふさわしいと考えます。
3.建具等
建具等については外壁と一体となって認識されるものであることから、基本的には外壁と同系色が望ましいですが、外壁面の面積が大きい場合には単調な景観となるため、ベースとなる外壁の色彩に対してアクセントとなる色彩を用いることにより変化を生み出すことが考えられます。このため、近景ではアクセントとなるものの、遠景では外壁に溶け込むよう、外壁と同じ色相で明度と彩度を下げた色彩がふさわしいと考えます。
4-2.事例
安治川突堤エリア
安治川突堤の南岸には、勾配屋根を持つ鉄骨造の上屋が立地していますが、突堤部分には近づきにくく、対岸の岸壁も荷役に使用されており、一般市民の方々がこの上屋を近くで見る機会は少ないと思われます。
しかし、遠景となるものの、ユニバーサルシティポートや天保山の渡船場からは、市街地の高層ビル群を背景として、上屋の外壁の大きさが目立つ存在となっています。
突堤の北東の上流には、アーチ状のシルエットを持つ濃い赤色の安治川水門があり、安治川が川から内港という海へ変化する時点で、その場所の持つ意味も含めシンボルとなっています。
このエリアの中でも、特に安治川突堤(図3-3)に位置する上屋は、安治川水門と同様のアーチ状の屋根を有し、安治川を上流に向かう船上やユニバーサルシティポート、天保山渡船場を視点場として、水門と並んで捉えられます。

一方、安治川基部岸壁~第2号岸壁(図3-5)は、対岸などから目にすることはできず、船上からは一般市街地を背景として見ることができます。また、基部岸壁の内陸側は道路を挟んで一般の市街地に接しており、道路側から見れば市街地景観の構成要素ともなっています。こうしたことから、市街地景観への調和を考え、付近の一般市街地の外壁に多く用いられているベージュ系などの黄と赤の中間であるYRの色相をこのエリアの上屋にも採用していきます。外壁に用いる10YR(黄赤と黄の中間)の色相は、下流側で捉えられる阪神高速の10GY系(緑と黄緑の中間)と上流の安治川水門の5R(赤)の中間の色相にもなります。
安治川1号岸壁エリア
天保山大橋上流側の安治川左岸に位置する上屋は、視点場となる対岸のユニバーサルシティポートからは阪神高速道路を背景として、安治川を下る船上からは天保山大橋を背景として見ることができ、これら阪神高速や天保山大橋は緑と黄緑の中間(10GY)の色相が採用されています。
このエリアは遠景としてみることが中心であり、背景にはサイロやパイプラインなどの特徴的な形態の構造物もあることから、阪神高速に用いられている色相(10GY)と同系色ですっきりとした印象の緑系の色相(5G)で今後塗装することを検討しています。

桜島岸壁エリア
桜島岸壁は、対岸の天保山岸壁や天保山公園などが主要な視点場となる他、サンタマリアなどの遊覧船からも見えるなど、一般市民が目にする機会も多いと思われます。
岸壁に位置する上屋の外壁面は防潮堤により4割程度が見えないため、壁面として見える部分は小さいですが、屋根面は存在感があります。
背景の中層倉庫群、前面の防潮堤などが無彩色やアイボリー系の色で構成されており、現在は彩度の低いY系の色相で塗装しています。

参考文献
・秋元洋輔,小林正美.”大阪港における港湾施設の色彩設計プロセスに関する研究” .(社)日本都市計画学会都市計画報告集No.9,2010
・秋元洋輔.水運の歴史と”色”をたどる船とコンテナ”色の裏側”に迫る.大阪港2011.1,社団法人大阪港振興協会,2011,p12-15
・秋元洋輔:天保山客船ターミナル色彩設計プロジェクト.大阪港2011.3,社団法人大阪港振興協会,2011,p14-17
・大阪市計画局.やわらぎ 大阪・まちの色(大阪市色彩景観計画ガイドブック).(財)大阪市都市工学情報センター編,1996
・(財)大阪市都市工学情報センター.千年都市大阪 まちづくり物語.(財)大阪市都市工学情報センター,1999
・大阪市港湾局.大阪築港100年-海からのまちづくり-.日本評論社,1999
・なにわの海の時空間.なにわの海の時空間『展示総合図録』.なにわの海の時空間,2003
・大阪市都市計画局:大阪市景観計画.大阪市都市計画局,2020変更
・大阪市都市計画局:大阪市景観読本.大阪市都市計画局,2020
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