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「大阪市財政の現状」について(平成21年4月)

2023年9月20日

ページ番号:41347

大阪市の財政について市民の皆さんに知っていただくため,大阪市財政の現状について作成しました。

ここでは平成21年4月に作成したものを掲載しています。

なお、PDFの下に各項目の内容説明を追加しました。

「大阪市財政の現状」平成21年4月

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Ⅰ大都市の税財政における現状と課題
(1)大都市としての大阪市の実態
広範な通勤圏(pdf, 185KB)
 大都市は、政治、経済、文化など各分野において主要な地位を占め、我が国の発展に貢献するという重要な役割を担っており、大阪市も、西日本の中枢都市として、また、大阪都市圏の母都市としての役割を果たしています。また、その大阪市内への通勤者を見ても、西は兵庫県明石市、東は三重県名張市、南は大阪府岬町や和歌山県橋本市までと非常に広範囲にわたっています。

膨大な昼間流入人口(pdf, 75KB)
 大阪市の夜間人口は昭和40年の316万人をピークとして減少していますが、昼間人口は多少の増減はあるものの、360万人から380万人の水準で推移しています。平成17年度は夜間人口263万人に対し、昼間人口は361万人、昼夜間人口比率は1.38倍となっています。
 また、大阪市は事務所や事業所などが集中しており、昼間流入人口は、大都市の夜間人口に匹敵する規模となっています。このような物と人の集中により、財政需要は増嵩することになります。

母都市としての役割を果たす大阪市(pdf, 64KB)
 大阪市は、大都市圏の母都市として、地下鉄等の都市交通網の整備や社会教育施設など、さまざまな事業を実施しており、高度な都市機能が集積しています。このような母都市施設にかかる税などと利用する市外居住者の割合を見ると、年間146億円の事業費を要する地下鉄の乗車人員の66.4%、150億円を要する大阪市立大学の平成20年度入学者の81.6%、86億円を要する社会教育施設の平成20年度利用者では68.5%、また49億円を要する平成20年度中央卸売市場の搬出先の67.2%が市外居住者となっています。

充実した都市施設(pdf, 96KB)
 大阪市では、高密度の人口集中や膨大な昼間流入人口、経済活動の集積などに対処するため、早くから地下鉄や下水道などの都市基盤と生活環境の整備を進めてきました。具体的な都市基盤としては、他の政令指定都市に比較して交通網の整備された営業距離129.9kmの地下鉄や市域面積に占める道路面積率が17.9%と他都市よりも整備された道路網、行政区域内下水道普及率100%、などがあります。
 また、早くから都市施設の整備を進めてきた結果、こうした諸施設が順次更新時期を迎えつつあります。

大阪経済の現況(pdf, 76KB)
 大阪都市圏の中核である大阪市の市内総生産(名目)は、21兆8,632億円(平成17年度)となっており、国内総生産(501兆7,344億円)の約4%を占めています。また、近畿圏(2府4県)においても、大阪市は域内総生産の約27%を占めるなど、経済活動が集中しています。
 大阪市経済の特徴として、各種産業の集積密度が高いことがあげられます。また、主要な産業・経済指標を単位面積当たりで換算した「密度」で比較すると、東京都区部に匹敵しています。

急速に進む少子・高齢社会(pdf, 60KB)
 少子・高齢社会が進み、大阪市では、65歳以上の老年人口比率が増加し、2割を超えている一方で、15歳未満の年少人口比率は減少しつつあります。平成17年度では65歳以上20.1%、15から64歳までが67.9%、15歳未満が12%となっています。
 また、大阪府や指定都市との比較では大阪市の65歳以上の老年人口比率は、大阪府18.5%や政令指定都市平均17.9%の比率を上回っている一方で、15歳未満の年少人口比率は、大阪府13.7%、政令指定都市平均13.2%を下回っている状況です。

(2)現行税財政制度における現状と問題点
歳入に占める割合が低い大阪市税(pdf, 62KB)
 地方分権が本格化するなか、地方公共団体が自主的・自立的な行財政運営を行うためには、地方税の充実確保が必要です。しかし、全国的に見ても、歳入に占める地方税の割合は4割程度と、地方税中心の歳入構造とはなっていません。とりわけ大阪市は、現行の税制度による要因や、地価下落などを反映して固定資産税・都市計画税が減収してきたことなどにより、歳入に占める市税の割合が全国と比較しても低い状況にあります。
 平成19年度における歳入に占める地方税の割合は、横浜市53.6%、名古屋市52.7%、指定都市平均44.8%に対して、大阪市は43.0%となっています。
 なお、地価下落の影響前である平成元年との比較では、指定都市平均が48.0%から3.2%の低下であったのに対し、大阪市は52.4%から9.4%の低下となっています。

配分の少ない市域内税収(pdf, 64KB)
 大阪市は、高密度な経済活動の場となっており、市内で納められる税は、国税、地方税を合わせて約5.2兆円(平成19年度)と非常に多額となっています。
 しかし、豊かな税源を充分吸収し得ない税制度のために、このうち市税として大阪市へ入る割合は、わずか13.1%、6,785億円にすぎません。また、国や府から補助金等として大阪市へ還元される分を含めても、大阪市へ入る割合は、市域内税収額の25.8%、1兆3,366億円にとどまっています。
 なお、市域内税収額のうち国税分3兆7,014億円の一定割合分である1兆1,000億円については地方交付税として地方へ還元しており、市域内税収の市税収入6,785億円の倍に近い金額が他の地方公共団体へ還元されていることになります。

都市的税目に乏しい市町村税(pdf, 73KB)
 市町村税は、法人所得課税、消費・流通課税といった経済活動を反映する都市的税目に乏しいため、増大する都市的財政需要に市税収入が対応しきれない大きな要因となっています。具体的に市町村税、道府県税、国税のそれぞれ構成比率を比較すると、市町村税では都市的税目である法人所得課税は14.0%、消費流通課税は4.8%、その他の個人所得課税などが81.2%であるのに対し、道府県税では法人所得課税36.4%、消費流通課税32.8%、その他30.8%、また国税においては法人所得課税28.0%、消費流通課税36.3%、その他35.7%と、なっています。また、法人所得課税、消費流通課税から見た市町村税、道府県税、国税への配分状況では、法人所得課税は国税70.8%、道府県税20.5%、市町村税8.7%、消費流通課税では、国税72.7%、道府県税23.3%、市町村税4.0%となっています。
 このように、そもそも市町村税は経済活動を支える都市的需要に対応するようにはできていません。

大都市特例事務にかかる税制上の措置不足(pdf, 71KB)
 大都市では、地方自治法に基づき府県に代わって行っている事務のほか、道路法に基づく国・府道管理事務なども行っています。しかし、これらに要する一般財源のうち、税制上の措置がなされているのは、大阪市では約2割にすぎません。
 地方自治法に基づくものは、児童福祉、民生委員、身体障害者福祉、生活保護、行旅病人死亡人、社会福祉事業、知的障害者福祉、母子家庭、老人福祉、母子保健、障害者自立支援、食品衛生、墓地埋葬等規制、環境衛生規制、精神保健、結核予防、都市計画、土地区画整理事業、屋外広告物規制の19項目あり、またその他の法令に基づくものとして、国府道管理、衛生研究所、定時制高校人件費、道府県費教職員の任免研修などがあり、大阪市の平成20年度予算では、これらの所要額として568億円を計上していますが、税制上の措置がなされるのは、143億円にすぎません。

大都市税財政制度の確立への取組(pdf, 101KB)
 現行の市町村税制をはじめとする税財政制度は、昼間流入人口などによる大都市特有の財政需要や、都市の成熟化に伴う更新需要など、大都市の財政需要の実態に見合ったものになっていません。地方公共団体が自主的かつ自立的な行財政運営を行うためには、国から地方への税源移譲により、国・地方の役割分担に即した税源配分の是正を図ること、また、法人所得課税や消費・流通課税などの都市税源の充実により、大都市の実態に即応した税財政制度を確立することが必要です。このため、地方税中心の歳入体系が構築されるよう、また、道府県から指定都市への税源移譲による大都市特例税制の創設に向け、国等に引き続き強く求めていきます。

他市町村と差を設けられた大阪府からの補助金(pdf, 73KB)
 大阪府は、府下の市町村に補助金を支出する場合に、政令指定都市である大阪市や堺市を対象から除くなど、他の市町村と差を設けており、これを「差等補助」と言います。大阪府の平成21年度予算では、新たに措置される3つの交付金や教育関係の交付金についても、大阪市は交付対象外とされ、差等補助は前年度の7,400万円から5億7,000万円と約8倍に拡大しています。その内訳は平成20年度は、特別支援学級への看護師配置事業1,200万円、小学校等への警備員配置事業6,200万円の計7,400万円でしたが、平成21年度は、特別支援学級への看護師配置事業1,200万円、小学校等への警備員配置事業6,100万円に加え新たな差等補助として習熟度別少人数授業等3億1,900万円、放課後ステップアップ事業等1,100万円、中学校元気アップ地域本部事業200万円、中学校昼食事業1,700万円、出産育児一時金1億4,800万円の計5億7,000万円となっています。
 大阪市民も府内の他の住民と同じように府民税を負担しているにもかかわらず、教育や福祉といった基礎的な行政サービス分野において、政令指定都市という理由で差を設けるべきではありません。大阪市民にも補助金が配分されるよう、府に対して強く求めていきます。


Ⅱ大阪市財政の現状と課題

(1)大阪市の当初予算(平成21年度)
一般会計の当初予算(pdf, 75KB)
 大阪市の平成21年度一般会計当初予算の歳出規模は、前年度比2.2%、353億円の増の1兆6,278億円で、緊急経済対策に伴い、8年ぶりの増となっています。
 ただし、扶助費や公債費の増があるものの、『経費削減の取組』に沿った職員数の削減や給与カット等を行うとともに、経常的施策経費及び管理費の見直し等を行った結果、実質的な歳出規模は、8年連続のマイナスとなっています。
 歳出予算1兆6,278億円の内訳は、扶助費4,102億円、投資的経費3,720億円、特別会計繰出金等2,458億円、人件費2,397億円、公債費2,167億円、管理費等1,434億円、
 歳入予算1兆6,278億円の内訳は、市税6,410億円、国府支出金3,153億円、公債収入1,208億円、譲与税・交付税655億円、地方交付税380億円、地方特例交付金77億円、その他諸収入等4,395億円となっています。


特別会計の当初予算(pdf, 105KB)
 大阪市の平成21年度特別会計予算は次のとおりです。
 まず政令等特別会計では、食肉市場事業会計24億4400万円、市街地再開発事業会計175億8500万円、駐車場事業会計17億9300万円、有料道路事業会計4億6300万円、土地先行取得事業会計6990億500万円、
 母子寡婦福祉貸付資金会計4億3700万円、国民健康保険事業会計3383億9900万円、心身障害者扶養共済事業会計5億2000万円、老人保健医療事業会計6億4700万円、介護保険事業会計1755億5500万円、後期高齢者医療事業会計241億2700万円。
 準公営企業会計では、中央卸売市場事業会計170億1100万円、港営事業会計491億5300万円、下水道事業会計1468億6200万円。
 公営企業会計では、自動車運送事業会計303億6300万円、高速鉄道事業会計2388億5000万円、水道事業会計1054億8300万円、工業用水道事業会計29億9800万円、市民病院事業会計504億9100万円。
 公債費会計では9390億4900万円。
と特別会計では2兆2121億3500万円を計上しています。


予算総額(pdf, 105KB)
 大阪市の平成21年度全会計の予算総額は3兆8,399億円、一般会計では1兆6,278億円と全会計、一般会計ともに政令指定都市のなかで最も大きくなっています。

(2)大阪市の市税
市税収入(pdf, 80KB)
 最も基本的な収入である市税収入は、平成8年度の7,776億円をピークに減少し続け、平成15年度には6,130億円となりました、以降は平成20年度予算では6,868億円まで順調に回復してきましたが、経済環境の急速な悪化に伴って、法人市民税の大幅な落ち込みなどが見込まれ、平成21年度予算における市税総額は、前年度予算から458億円の6,410億円と大幅な減収となっています。
 なお、大阪市税の伸び率を平成元年度を100とした場合、平成21年度予算では88.5となっています。
 また、大阪市の平成21年度予算の市税総額は指定都市で横浜市7,255億円に次ぐ2番目の規模であり、その特徴として、市税総額に占める法人市民税の割合が政令指定都市平均では47%に対し大阪市では52%と大きいことが挙げられます。

個人市民税(pdf, 72KB)
 個人市民税は、ピークである平成4年度を100とすると、全国平均が99.2であるのに対し大阪市は84.0と伸びが低くなっています。また、大阪市の納税者1人当たりの個人市民税額は、府下33市ではトップの箕面市が18万円2千円に対して大阪市は12万円1千円と18番目となっており、政令指定都市との比較では、大阪市は浜松市の12万2千円に次いで15番目となっています。

法人市民税(pdf, 67KB)
 法人市民税は、ピークである平成元年度を100とすると、平成21年度予算では大阪市は49.9と5割まで落ち込んでおり、全国平均57.9よりも落ち幅が大きくなっています。なお、業態別では、とくに金融・保険業や卸売業などが大きく落ち込んでいます。

固定資産税・都市計画税(pdf, 62KB)
 固定資産税収入は、近年地価の下落が続いていたことから、大阪市のピークである平成8年度を100とすると、平成21年度予算では全国平均が89.8であるのに対し大阪市は56.9と大きく減少しています。

(3)義務的な経費
義務的な経費(pdf, 78KB)
 市税収入が低水準で推移するなか、生活保護費などの扶助費、市債の償還のための公債費や、国民健康保険、介護保険、下水道などの特別会計への繰出金、都市施設の整備に伴う管理運営費(物件費)などの義務的な経費が高い伸びを示しています。平成元年度を100とすると平成21年度予算では、扶助費232.1、管理運営費178.8、特別会計繰出金等143.7、公債費136.3と大きく増加しています。ただし、義務的な経費が全体として増加しているものの、義務的な経費のうちの職員数の見直しや投資的な経費の見直しにより、歳出額トータルでは減少しています。


経常収支比率(pdf, 73KB)
  経常収支比率とは、地方税、地方交付税などの経常的な一般財源が、どの程度経常的な経費に充てられているかを示す指数で、財政構造の硬直度を表す「ものさし」とされています。経常収支比率が高いということは、義務的経費以外に使える財源に余裕がないことを示し、財政構造の弾力性が低いことになります。平成19年度決算においては政令指定都市平均が93.3に対し大阪市は99.9と政令指定都市の中で最も高くなっています。大阪市では歳出削減に努めているものの、市税収入の伸び悩みや地方交付税などの一般財源の大幅な減少に加え、義務的な経費の増大により、一般財源の大半を義務的な経費に充当せざるをえない状態となっています。

扶助費(pdf, 78KB)
 扶助費のうち約6割を占めている生活保護費は、平成元年には4.7万人3.3万世帯902億円であったものが平成20年度では11.7万人8.9万世帯2,443億円と生活保護人口の増等により、増加を続けています。大阪市の生活保護を受ける人の割合(保護率)は、現在、大阪市人口の約4.29%となっており、政令指定都市の中では最も高く、第2位の札幌市2.78%を大きく上回っています。また、生活保護制度は創設から半世紀を経過し、昭和46年当時では全生活保護世帯の28.7%に過ぎなかった自立が困難と考えられる高齢者世帯が平成19年度では、全生活保護世帯の過半数である50.2%を占めるなど制度疲労を起こしている状況にあることから、抜本的な改正を引き続き国等に求めていきます。

市債残高と公債費(pdf, 88KB)
 大阪市では、都市基盤と生活環境の整備のために、早くから積極的に市債を活用してきました。加えて、近年の多額の財源不足に対し、主に地方債による補てん措置がとられてきたことや、景気対策の観点も含め、事業の積極的な推進を図るため市債を活用してきました。この結果、大阪市の市債残高は、平成19年度末決算で、一般会計は2兆8,170億円、特別会計を含めた全会計では5兆3,058億円にのぼっています。これを夜間人口ひとりあたりに換算すると約202万円、昼間人口あたりでは約148万円となります。近年においては、公共事業費を減少させ、市債の新規発行額を極力抑制することにより、市債残高は平成16年度をピークにようやく減少に転じました。しかし、累積した市債残高の償還は今後本格化し、償還財源である公債費は平成24年度前後にピークとなり、その後、公債費や市債残高は減少していく見込みです。このため、今後、市税や料金収入などにより多額の償還をしていく必要があります。

特別会計繰出金等(pdf, 78KB)
 高齢社会の進展に伴う医療費の増嵩や、浸水対策などの雨水処理経費、地下鉄新線建設に伴う資本費の負担の増大などにより、特別会計への繰出金等は平成2年度には1,781億円であったものが、平成21年度予算では2,458億円となっています。とくに国民健康保険事業については、加入割合が高いうえ、加入者に高齢者や低所得者が多く、財政基盤が脆弱であることから、平成2年当時は245億円であったものを平成21年度予算では433億円を繰入れるなど毎年多額の一般会計からの繰入を行っていますが、累積赤字は386億円となっており、事業運営は非常に厳しい状況となっています。
 このため被保険者や地方公共団体の負担の増加を招くことなく、長期に安定した制度が確立できるよう、国に対して、引き続き国民健康保険制度の改善を求めていきます。

管理運営費(pdf, 66KB)
 本市は、さまざまな市民ニーズに対応するため、都市基盤や生活環境の整備を行ってきました。それらの施設を維持していくためには、多額の管理運営費を要します。
 事務事業の見直しにより、管理運営費は平成14年度1,709億円をピークに近年減少し、平成21年度予算では1,396億円に削減しましたが、今後ともさらなる経費の削減に取り組む必要があります。

(4)地方交付税等の補てん財源(pdf, 83KB)
 本市は、近年の厳しい税収動向を反映して、多額の地方交付税や特別債などの補てん財源に頼ってきました。平成21年度一般会計予算では、歳出1兆6,278億円の財源として市税収入6,410億円に対して、地方交付税380億円、特別債623億円などを計上しています。しかし、膨大な昼間流入人口や、少子・高齢社会への対応など、大都市特有の財政需要については、交付税での算入が十分とはいえません。また、算定の簡素化に伴う昼夜間人口差補正の廃止などにより、大都市にとってさらに厳しい状況が見込まれます。なお、地方交付税への依存度を示す指標として財政力指数がありますが、これは地方交付税の算定に用いる収入額を需要額で除した値です。指数が高いほど、地方交付税に依存しない、自立した団体といえます。本市の財政力指数は、交付税による措置が十分ではないこともあり指定都市のうち高いほうから川崎市、名古屋市、さいたま市、千葉市、横浜市に次いで6番目となっています。
 なお、地方交付税とは、国税のうち所得税、法人税、酒税、消費税及びタバコ税のそれぞれ一定割合の額で、地方公共団体が等しくその行うべき事務を遂行することができるよう、一定の基準により国が交付する税のことです。

(5)基金の状況
蓄積基金の運用(pdf, 68KB)
 大阪市は、条例によって蓄積基金を設置しています。基金の目的に応じ、短期運用と中長期運用を組み合わせた、確実かつ効率的な運用を行っています。平成21年度3月末時点の水道、交通事業を除く基金運用状況は、総額4.342億円であり、内訳としては短期預金運用2,181億円、中長期預金450億円、有価証券1,711億円となっています。

公債償還基金への積立(pdf, 68KB)
 市債の満期一括償還に備え、国のルールどおり公債償還基金へ確実に積み立てており、償還財源が確保されています。なお、平成21年度一般会計予算における公債償還基金の残高は、2,738億円となっています。
 また、大阪市については、この積立金からの借入れは行わず、公債償還基金に頼らない財政運営をしています。

(6)健全化判断比率等
健全化判断比率等(pdf, 168KB)
 平成19年度決算に基づく「財政健全化法」における健全化判断比率の4指標である実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率は、すべて「早期健全化基準」を下回っており、健全な財政運営に努めています。
 この判断の基準は、4指標のうちいずれかの指標が早期健全化基準以上となった場合には、早期健全化団体となり、「財政健全化計画」を定めなければなりません。さらに、いずれかの指標が財政再生基準 (将来負担比率については、早期健全化基準のみ)以上となると、従来の財政再建団体にあたる財政再生団体となります。
 また、公営企業会計については、会計ごとに算定した資金不足額の事業規模に対する比率である資金不足比率が、経営健全化基準(20%)以上となった場合には経営健全化団体となり、「経営健全化計画」を定めなければなりません。大阪市における公営企業会計10会計の平成19年度決算においては、自動車運送事業会計29.8%、市民病院事業会計39.1%、中央卸売市場事業会計194.0%と3会計が経営健全化基準を上回っています。その他の7会計については、資金不足額は生じていません。
 この3会計における資金不足比率への対応として、市民病院事業会計と自動車運送事業会計については、他会計の支援により平成20年度決算から基準をクリアできる見通しとなりました。また、中央卸売市場事業会計については、資本費平準化債の活用や一層の経営改善により、平成27年度の基準のクリアをめざしています。

各会計の実質収支額・資金剰余(不足)額(pdf, 168KB)
 平成19年度の大阪市の一般会計や公営事業会計等を含めた連結ベースでは、国民健康保険事業会計、老人保健医療事業会計、自動車運送事業会計、市民病院事業会計、中央卸売市場事業会計において実質赤字や資金不足が生じているものの、地下鉄事業や水道事業など、大幅な資金剰余が生じている会計があるため、資金収支は10億4,800万円の黒字となっています。

実質公債費比率(pdf, 172KB)
 実質公債費比率は、公債費による財政負担の度合いを示す指標で、早期健全化基準は25%以上、財政再生基準は35%以上とされています。また、18%以上の場合は、起債に総務省の許可を要します。大阪市は、総務省のルールどおり確実に公債償還基金へ積立を行ってきたことや、平成19年度決算より都市計画税を公債費の控除財源として算定することとなったことから、大きく改善し、平成19年度実質公債費比率は11.8%といずれの指標も下回っています。

将来負担比率(pdf, 168KB)
 将来負担比率は、一般会計等が将来負担すべき実質的な負債の標準財政規模に対する割合で、ストック指標です。大阪市では特定調停が成立しているWTCへの509億円、ATC329億円などの第三セクター等に対する損失補償付債務を将来負担額に全額(100%)算入するなど厳しく算定したうえで、将来負担比率は、早期健全化基準の400%に対し263.8%となっています。

(7)バランスシート等財務諸表
貸借対照表(バランスシート)(pdf, 86KB)
 貸借対照表(バランスシート)は、どのような資産を有しており、その財源は何かを表した財務書類です。正味資産比率(正味資産/資産総額)は、資産のうち、これまでの世代によって既に負担された割合のことで、この比率が高いほど将来世代の負担が比較的低いことになります。大阪市は、早くから大都市としての都市基盤整備を進めてきた結果、正味資産比率は59.5%であり、指定都市平均58.4%を上回っています。また、貸借対照表(バランスシート)を市民1人あたりに換算すると、大阪市の資産は一人あたり309万円と他の政令指定都市の中で最も多く、政令指定都市平均183万円を大きく上回り非常に充実した都市インフラを有しているといえます。一方、資産に比例して負債も多く、一人あたり125万円となっています。なお、これを昼間人口で見ると一人あたり88万円と大幅に減少し、都市インフラは、住民だけでなく、企業や昼間人口も使うものであり、その整備に伴う負債の償還には、法人の経済活動や昼間人口の消費活動等に伴う税収でまかなわれるべき部分が多いと考えられます。

行政コスト計算書(pdf, 81KB)
 行政コスト計算書は、資産形成などを除いた1 年間の経常的な行政活動に伴うコストを表した財務書類です。大阪市の行政コストは平成15年以降連続で減となっており、市税収入に対する割合も改善しています。しかし、大阪市における夜間人口1人あたりの年間行政コストは51万3千円と、政令指定都市平均32万9千円に比べて高く、政令指定都市のなかで一番高くなっています。ただし、昼間人口1人あたりでは35万9千円と北九州市、神戸市、広島市に次いで4番目となります。性質別に他の政令指定都市と比較すると、人件費などすべてにおいて高コスト体質にあります。この理由としては、直接的に行政サービスを行う職員や教職員等が多いことなどにより人件費が高いことや、生活保護費をはじめとする扶助費が多いこと、また、早くから都市基盤整備に努めてきたことにより減価償却費が高いこともコストを押し上げる要因となっています。

Ⅲ市政改革の取組と今後の方向性
(1)市政改革の取組状況
経費の圧縮(pdf, 69KB)
 大阪市は、財政危機を克服するため、平成18年2月に「市政改革基本方針」を策定し、平成22年度までの取組として、2,250億円の経費削減に取り組んできています。
 さらに、平成20年度に取りまとめた「経費削減の取組」を実現することで、平成22年度には2,408億円の削減となり、107%の達成率となる見込みです。この削減見込額を内容別にすると経常経費では802億円、投資的経費1,400億円、特別会計繰出金206億円となっています。しかし、現在の経済状況等を勘案すれば、今後ともさらに経費の削減に取り組む必要があります。
 今後、平成23年度以降の次期行財政改革計画については、平成21年度に骨子を策定し、早期に取り組むべき課題についても明らかにしていきます。

職員数の削減(pdf, 70KB)
 大阪市の人口1万人当たりの職員数は、夜間人口あたりでは156人、昼間人口では115人と他の指定都市平均の夜間昼間ともに平均92人に比較して高く、他の指定都市の中で最も高くなっています。これは、地下鉄等の都市交通網や市立幼稚園・高等学校等の教育施設が充実していることなどもあり、直接的に行政サービスを行う職員や教職員等が多いことがあります。
 『市政改革基本方針』においては、5年間で5,000人超の職員数の削減、市立大学等の独立行政法人化による2,000人程度の削減により、総職員数3万人台とすることを目指しています。平成21年度には1,033人の削減を図り、平成18年度から21年度(予算)の削減数は7,493人となっています。この結果、21年度の職員数は4万人余りとなり、22年度には削減目標の3万人台となる見込みです。

人件費の削減(pdf, 76KB)
 経費削減(案)に基づき、平成21年度から29年度まで、全職員の給料を5%、管理職手当を10%カットし、その他の手当についても、超過勤務手当の節減・住居手当の見直し等により、平成21~22年度で95億円削減します。また、平成23年度以降も人員抑制を継続することで、平成21~22年度に115億円を削減します。
 また、ラスパイレス指数は、平成20年4月1日現在において、大阪市は101.8で指定都市のうち高いほうから北九州市と広島市の102.6に次いで9番目となっていますが、今後の給料等のカット等により、97台となる見込みです。
 なお、ラスパイレス指数とは、地方公共団体の一般行政職の給与月額と国の行政職俸給表(一)適用職員の俸給月額とを、学歴別、経験年数別に対比させて比較し算出したもので、国を100としたものです。

歳入の確保(pdf, 72KB)
 歳入確保はもとより、市民負担の公平性・公正性の確保の観点などから、未収金対策に取り組んでいます。「新たな未収金を極力発生させない」「既存未収金の解消」を二つの柱として、「大阪市未収債権管理事務取扱規則」の制定や、全市的な取組を総括する「大阪市債権回収対策会議」の設置、各局で対応困難となっている高額事案などを集中的に回収する「市債権回収特別チーム」を設置するなど、全庁的な取組を強化しています。その結果、未収金は減少しつつあり、平成21年1月末時点における未収金は、徴収などにより、697億円となり、平成19年5月末から比較すると99億円減少しています。
 また、未利用地の売却については、大阪市土地流動化委員会の意見を受け、「大阪市未利用地活用方針」を策定しました。今後も、市民の貴重な財産である未利用地について土地保有との必要性のバランスを考慮しつつ、現在の厳しい財政状況の下、可能な限り売却に取り組んでいきます。なお、未利用地売却の実績を全会計の累計で見ると、平成19年度決算では約574億円、平成20年度予算では約659億円、平成21年度予算では、約772億円となっています。

外郭団体等の改革(pdf, 66KB)
 大阪市では、極めて厳しい財政状況のもと、徹底した行政運営の効率化を図るため、これまで外郭団体等(監理団体・関連団体)の抜本的な改革に取り組んできました。この改革をさらに推進するため、大阪市外郭団体等評価委員会からの新たな提言(平成21年3月)を踏まえ、現行の行財政改革期間である平成22年度までに達成すべき新たな計画として「外郭団体等の改革推進について」(平成21年3月)を策定しました。
 これまでの外郭団体等への委託料の削減状況を予算で見ると、平成17年1,081億円、平成18年861億円、平成19年707億円、平成20年581億円、平成21年563億円となってます。また、外郭団体等の統廃合では、平成17年7月時点146団体を平成21年4月時点122団体としています。
 今後も不断の外郭団体等の改革に取り組み、市民サービスの向上を図ってまいります。

(2)中期的な財政収支概算(平成20年10月版)(pdf, 155KB)
 本格的な人口減少・少子高齢社会の到来を迎え、福祉費の増嵩や多額の借入金残高を抱える本市の財政をどのように運営していくべきかを検討するため、平成20年9月に公表した「経費削減の取組について(素案)」、市税収入の平成21年度概算見込みの減収状況等を加味し、またリスク内容がほぼ確定している市街地再開発事業や此花西部臨海土地区画整理事業などの財務リスクを織り込み、今後10年間の収支概算試算しました。なお、WTCなど財務リスクの確定していないものについては、処理方針が明らかになり一般会計に影響を及ぼす場合には、その段階で織り込むこととしています。
 この結果、法人市民税の減による市税の減等はあるものの、「経費削減の取組について(素案)」による見直しや、不用地の売却等によるさらなる歳入の確保などにより、平成29年度には概ね収支が均衡する見通しであり、早期健全化基準をもクリアする見通しとなっています。
 また、平成26・27年度において、一時的に単年度赤字となることが見込まれますが、その対応としては、不用地の売却時期の前倒しや、さらなる未利用地の精査など、財源の確保に積極的に努める必要があります。ただし、不確定要素もあることから、引き続き行財政改革に取り組むとともに、国に抜本的な制度改正(生活保護、国民健康保険、地方財政対策等)を求め、行財政基盤の確立を図ることが必要だと考えています。

 なお、世界的な金融危機による景気の悪化に伴う当面3年間の財政収支に及ぼす影響については、平成21年度の市税収入が大幅に減少し、平成20年10月公表の財政収支概算より約1,500億円減少する見通しであり、交付税や基金等の活用など約1,200億円の財源確保で対応しても、なお約300億円の影響が見込まれます。このため今後も引き続き無駄のない効率的な行政を目指した改革を推進するとともに、「次期行財政改革計画」の検討を早急に進め、財政の健全化に努めます。

(3)経営形態のあり方に関する方針(平成21年3月)(pdf, 136KB)
 市政改革基本方針に基づき、平成18年度以降、10事業について経営形態の見直しを行ってきました。平成20年度までに、工業研究所、市民病院など7事業について方針決定がなされました。
 工業研究所、市民病院については、経営形態を変更し、機能向上を図るものとし、港湾事業、水道事業、中央卸売市場、地下鉄・バス事業については、現行の経営形態のもと、経営の改善・効率化に取り組んでいくものとし、環境科学研究所については、現行の経営形態のもと、効率化・機能向上を図るものとしました。
 なお、弘済院、廃棄物処理事業、博物館施設の3事業については、平成21年度に方針決定を行う予定となっています。

(4)大阪市債の格付け(pdf, 88KB)
 地方分権の進むなか、地方公共団体の市債発行においても、これまで以上に自己責任が求められています。このため客観的で透明性の高い情報開示を一層積極的に行う観点から、大阪市の評価を依頼し、3社から格付けを取得しました。
 平成21年4月時点での大阪市の格付けは、スタンダード&プアーズではAA-で20段階評価の上から4番目、ムーディーズではAa1と21段階表示の上から2番目、日本格付研究所ではAA+で20段階評価の上から2番目となっています。
 これらの評価は、今後も財政健全化の図られることが前提であり、高い格付けを維持するべく努めています。

(巻末資料)
  政令指定都市の財政状況(pdf, 63KB)
  会計の定義(一般会計・特別会計・普通会計)(pdf, 64KB)

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